交通事故の過失割合が8対2の場合とは?賠償額の計算方法を解説

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)


過失割合

この記事でわかること

  • 過失相殺の仕組み
  • 過失割合8対2の賠償額の計算方法
  • 過失割合8対2となる主な事故態様
  • 片側賠償の概要

過失割合が8対2のときの過失相殺はどのように行う?

過失相殺とは

交通事故の発生について、被害者側にも何らかの落ち度がある場合、その落ち度の分だけ賠償額が差し引かれます。

このことを過失相殺といいます。

過失割合が8対2というのは、被害者側にも過失が20%あるということです。

過失相殺の決まり方

過失相殺の割合は、基本的には加害者側(主に保険会社)と交渉して決まります。

もっとも、交渉で決まらない場合には裁判となり、裁判所が過失割合(過失相殺される割合)を決定します。

過失割合を検討するにあたっては、「別冊判例タイムズ38民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版(東京地裁民事交通訴訟研究会 編)」という書籍を参考にして検討します。

この書籍は、事故態様に応じた過失割合が掲載されており、裁判所も参考にする書籍です。

過失割合の決まりの方の大まかな流れは、以下のとおりです。

過失割合の流れ

過失相殺は変更できるか?

多くの交通事故事件では、事故後、保険会社から「今回の事故は、◯対◯です」といった感じで、過失割合についての提示がなされます。

保険会社側は、それが決定事項のような言い方をされるかもしれませんが、提示内容によっては、交渉によって過失を変更することが可能です。

保険会社の提示を鵜呑みにすることなく、適正な過失割合なのか十分に検討すべきです。

 

 

過失割合8対2の場合の賠償額の計算方法は?

電卓

賠償額の計算

過失割合8対2とは、被害者側の過失が20%、加害者側の過失が80%ということです。

したがって、賠償額もその割合に応じて減額されます。

例えば、被害者の損害額が200万円、過失が20%である場合、加害者に請求できるのは、160万円ということになります。

200万円 × (100% - 20%) = 160万円

賠償の請求金額

過失割合が20%あるということは、20%分は被害者側にも責任があるということです。

つまり、加害者側の損害の20%分を被害者は負担しなければなりません。

例えば、被害者の損害額が200万円、加害者の損害が100万円の場合で考えてみます。

被害者が加害者に請求できる金額は、上記の計算式のとおり、160万円です。

他方で、加害者が被害者に請求できる金額は、下記の計算式のとおり、20万円となります。

100万円 ☓ (100% - 80%) = 20万円

被害者は、加害者の20万円分の損害については、負担しなければならないのです。

具体的な処理としては、物損(自動車の修理費用など)の場合は、160万円から20万を差し引いた140万円を加害者側が被害者に支払って処理することが多いです。

他方で、人損(治療費、慰謝料など)に関しては、原則、お互いの賠償額を相殺することができないため、被害者は160万円を加害者に支払ってもらうことができます。

 

 

どのような事故のとき過失割合8対2となる?

※本文中の交通事故図は別冊判例タイムズ38民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版(東京地裁民事交通訴訟研究会 編)を参考にしています。

歩行者と自動車の交通事故

歩行者が道路を横断している最中の事故

図37

このケースでは、歩行者の基本過失割合は20%です。

以下の事情がある場合には、歩行者に不利に過失割合が修正されます。

過失割合
夜間 +5%
幹線道路 +10%
横断禁止の規制がある +5〜10%
直前直後横断、佇立・後退する +10%

 

他方で、以下の事情がある場合には、歩行者に有利に過失割合が修正されます。

過失割合
住宅街・商店街等 -5%
歩行者が児童・高齢者 -5%
歩行者が幼児・身体障害者等 -10%
集団横断 -10%
自動車に著しい過失がある場合 -10%
自動車に重過失がある場合 -20%
歩車道の区別がない場 -5%

 

「著しい過失」は、以下のような場合を指します。

著しい過失
  • 脇見運転等著しい前方不注視
  • 著しいハンドル・ブレーキ操作不適切
  • 携帯電話の使用
  • 画像を注視しながらの運転
  • 時速15〜30Kmのスピード違反
  • 酒気帯運転

 

「重過失」は、以下のような場合をさします。

重過失
  • 居眠り運転
  • 飲酒運転
  • 無免許運転
  • おおむね時速30kmのスピード違反
  • 過労、病気、薬物などにより正常な運転ができない恐れがある場合

以下の「著しい過失」「重過失」も同様の意味合いです。

歩行者が後退している自動車の直近を横断した場合の事故

このケースでは、歩行者の基本過失割合は20%です。

以下の事情がある場合には、歩行者に不利に過失割合が修正されます。

過失割合
夜間 +5%
歩車道の区別のある道路上の車道 +5%
バックブザー・後退アナウンス有り +10%

 

他方で、以下の事情がある場合には、歩行者に有利に過失割合が修正されます。

過失割合
住宅街・商店街等 -5%
歩行者が児童・高齢者 -5%
歩行者が幼児・身体障害者等 -10%
自動車に著しい過失がある場合 -10%
自動車に重過失がある場合 -20%

 

四輪自動車同士の事故

信号機がない交差点で左方からのA車が減速し、B車が減速しなかった場合の事故

 

このケースでは、A車の基本過失割合は20%です。

以下の事情がある場合には、A車に不利に過失割合が修正されます。

過失割合
A車に著しい過失がある場合 +10%
A車に重過失がある場合 +20%

 

他方で、以下の事情がある場合には、歩行者に有利に過失割合が修正されます。

過失割合
見とおしがきく交差点 -10%
夜間 -5%
B車に著しい過失がある場合 -10%
B車に重過失がある場合 -20%

 

B車一時停止をせず、A車B車が同程度の速度で衝突した事故

このケースでは、A車の基本過失割合は20%です。

以下の事情がある場合には、A車に不利に過失割合が修正されます。

過失割合
A車に著しい過失がある場合 +10%
A車に重過失がある場合 +20%

 

他方で、以下の事情がある場合には、A車に有利に過失割合が修正されます。

過失割合
見とおしがきく交差点 -10%
夜間 -5%
B車に著しい過失がある場合 -10%
B車に重過失がある場合 -20%

 

互いに青信号で交差点の直進車と右折車の事故

以下の事情がある場合には、A車に不利に過失割合が修正されます。

過失割合
右折が完了又はそれに近い状態 +10%
道交法50条違反の交差点進入 +10%
15km以上の速度違反 +10%
30km以上の速度違反 +20%
A車に著しい過失がある場合 +10%
A車に重過失がある場合 +20%

 

他方で、以下の事情がある場合には、A車に有利に過失割合が修正されます。

過失割合
徐行なし -10%
直近右折 -10%
早回り右折 -5%
大回り右折 -5%
合図なし -10%
B車に著しい過失、重過失がある場合 -10%

 

道路外から道路に進入するために右折する場合の事故

図147

以下の事情がある場合には、A車に不利に過失割合が修正されます。

過失割合
右折が完了又はそれに近い状態 +10%
頭を出して待機 +10%
15km以上の速度違反 +10%
30km以上の速度違反 +20%
ゼブラゾーンを進行 +10%〜20%
A車に著しい過失がある場合 +10%
A車に重過失がある場合 +20%

 

他方で、以下の事情がある場合には、A車に有利に過失割合が修正されます。

過失割合
徐行なし -10%
幹線道路 -5%
B車に著しい過失がある場合 -10%
B車に重過失がある場合 -20%

 

道路外から道路に進入するために左折する場合の事故

図148

以下の事情がある場合には、A車に不利に過失割合が修正されます。

過失割合
頭を出して待機 +10%
15km以上の速度違反 +10%
30km以上の速度違反 +20%
A車に著しい過失がある場合 +10%
A車に重過失がある場合 +20%

 

他方で、以下の事情がある場合には、A車に有利に過失割合が修正されます。

過失割合
徐行なし -10%
幹線道路 -5%
B車に著しい過失がある場合 -10%
B車に重過失がある場合 -20%

 

転回(Uターン)する場合の事故

図155

以下の事情がある場合には、A車に不利に過失割合が修正されます。

過失割合
15km以上の速度違反 +10%
30km以上の速度違反 +20%
A車に著しい過失がある場合 +10%
A車に重過失がある場合 +20%

 

他方で、以下の事情がある場合には、A車に有利に過失割合が修正されます。

過失割合
転回危険場所 -10%
転回禁止場所 -20%
合図なし -10%
B車に著しい過失がある場合 -10%
B車に重過失がある場合 -20%

転回危険場所とは、見とおしがきかない道路、交通量が多い道路などです。

転回禁止場所とは、道路標識により転回が禁止されている道路です。

自動車とバイクの交通事故

バイク

交差点を左折する自動車と直進するバイクの事故

図213

以下の事情がある場合には、バイクに不利に過失割合が修正されます。

過失割合
A車に著しい前方不注視 +10%
A車に15km以上の速度違反 +10%
A車に30km以上の速度違反 +20%
A車に著しい過失がある場合 +10%
A車に重過失がある場合 +20%

 

他方で、以下の事情がある場合には、バイクに有利に過失割合が修正されます。

過失割合
A車が大回り左折・進入路鋭角 -10%
B車が合図遅れ -5%
B車が合図なし -10%
直近左折 -10%
徐行なし -10%
B車に著しい過失がある場合 -10%
B車に重過失がある場合 -20%

 

前方の自動車が進路変更して直進していたバイクと衝突する事故

図225

以下の事情がある場合には、バイクに不利に過失割合が修正されます。

過失割合
A車に15km以上の速度違反 +5%
A車に30km以上の速度違反 +15%
A車に著しい過失がある場合 +5%
A車に重過失がある場合 +10%

他方で、以下の事情がある場合には、バイクに有利に過失割合が修正されます。

過失割合
進路変更禁止場所 -20%
B車に合図なし -20%
A車に著しい過失がある場合 -5%
A車に重過失がある場合 -10%

 

自動車と自転車の交通事故

同幅の交差点で自転車と自動車の出会い頭の事故

このケースでは、自転車の基本過失割合は20%です。

以下の事情がある場合には、自転車に不利に過失割合が修正されます。

過失割合
夜間 +5%
右側通行かつ左方から進入 +5%
横断禁止の規制がある +10%
直前直後横断、佇立・後退する +10〜15%

他方で、以下の事情がある場合には、自転車に有利に過失割合が修正されます。

過失割合
自転車が児童・高齢者 -5%
自転車が自転車横断帯通行 -10%
自転車が横断歩道通行 -5%
B車に著しい過失がある場合 -10%
B車に重過失がある場合 -10〜20%

 

自転車が右側通行で自動車が直進している際の事故

このケースでは、自転車の基本過失割合は20%です。

以下の事情がある場合には、自転車に不利に過失割合が修正されます。

過失割合
ふらふら走行 +10%
自転車に著しい過失がある場合 +10%
自転車に重過失がある場合 +20%

他方で、以下の事情がある場合には、自転車に有利に過失割合が修正されます。

過失割合
自転車が児童・高齢者 -10%
B車の前方不注視 -15%
B車の著しい前方不注視 -30%
B車に重過失がある場合 -10〜20%

 

 

過失割合8対2を有利に変更できるか

保険会社から、過失割合8対2を提示されたものの、納得いかない場合には過失割合について交渉することができます。

交渉にあたっては、保険会社がどのような根拠で8対2と主張しているのかを説明してもらいましょう。

保険会社も「別冊判例タイムズ38民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」を参考にしていることから、この書籍のどの図に当てはめて過失割合を出しているのか説明してもらう必要があります。

その上で、以下のポイントをチェックします。

  • 保険会社の主張する事故状況に誤りがないか
  • 事故状況と「別冊判例タイムズ38民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」の図は整合しているか
  • 修正要素が適切に考慮されているか

こうした事情を検討して、保険会社の主張に誤りや不適切な部分があれば、それを主張して過失割合を変更するように求めています。

参考:民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準|判例タイムズ社

 

 

過失割合の交渉に行き詰まった場合、過失割合8:0も検討しましょう

過失割合8:0とは

過失割合の交渉を継続してもなかなか合意に至らない場合に、8:0で解決できなか提案されることがあります。

8:0とは、被害者の賠償は80%しか請求できないものの、被害者は、相手方の賠償を一切しなくてよいという解決方法です。

こうした解決方法を片側賠償と呼びます。

例えば、被害者の損害額が200万円、加害者の賠償額が100万円の場合で考えてみます。

8対2と8対0の場合で、以下のように金額が変わります。

過失割合  8対2 8対0
被害者の支払い 20万円 0円
加害者の支払い 160万円 160万円
被害者の受取額 140万円 160万円

過失割合の交渉に行き詰まった場合には、片側賠償も検討すべきでしょう。

 

 

デイライト法律事務所の解決事例

1 交差点の手前で突然Uターンした車と直進していたバイクの事故

加害者側の保険会社は、双方動いていた事故であること、被害者の前方不注視が疑われることなどを理由に過失が存在することなどを主張していました。

しかし、弁護士において実況見分調書を取り寄せ、事故の発生原因は左車線から反対車線に車線をまたがってUターンをするという加害者の極めて危険な走行が原因であることなどを主張しました。

その結果、被害者の過失は0%であることを前提として解決することができました。

2 自動車とバイクの右直事故

自動車(右折)とバイク(直進)の右直事故の基本過失割合は、85対15です。

しかし、事故態様等の検討の結果、95対5で解決することができました。

 

まとめ

過失割合は、賠償額に大きく影響します。
過失割合に納得いかない場合には、専門の弁護士に相談されることをお勧めします。

 

過失割合


 
賠償金の計算方法



なぜ交通事故は弁護士選びが重要なのか

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