賃金センサス|意味や見方を弁護士が解説【最新版】
賃金センサスとは、政府が毎年発表する「賃金構造基本統計調査」の結果をもとに、平均収入をまとめた資料をいいます。
最新(2025年3月17日に発表された2024年の賃金センサス)の賃金センサスは、5,269,900円となっています(男女計・学歴計・全年齢の平均額)。
賃金センサスは、交通事故の損害賠償請求のための算定等のために活用されており、弁護士などの法律実務家にとって極めて重要な資料です。
しかし、賃金センサスの最新情報が書籍として出版される時期は遅く、かつ、高価です。
そのため、当事務所は、毎年「賃金構造基本統計調査」が公表されしだい、このウェブサイト上に最短で賃金センサスをアップデートしています。
また、法律実務家以外の一般の方にもご理解いただけるように、賃金センサスの意味や計算式、推移等も解説しています。
この記事が賃金センサスを活用される方のお役に立てれば幸いです。
目次
賃金センサスとは?
賃金センサスとは、政府が毎年発表する「賃金構造基本統計調査」の結果をもとに、平均収入をまとめた資料をいいます。
最新(2025年3月17日に発表された2024年の賃金センサス)の賃金センサスは、5,269,900円となっています(男女計・学歴計・全年齢の平均額)。
賃金センサスの目的
賃金構造基本統計調査は、統計法という法律に基づいています。
主要産業に雇用される労働者について、その賃金の実態を労働者の雇用形態、就業形態、職種、性、年齢、学歴、勤続年数、経験年数別等に明らかにするものです。
この調査は、日本の賃金構造の実態を詳細に把握することを目的として、昭和23年以来毎年実施されています。
この調査結果は、賃金決定や最低賃金の決定、労災保険の年金額の算定など、様々な分野で活用されます。
令和6年(2024年)賃金センサス(令和6年賃金構造基本統計調査)
下表は、2025年3月17日に発表された2024年(令和6年)の賃金センサスをまとめたものです。
逸失利益等の算定を行う法律実務家にとって必要性が高いと思われるデータのみをピックアップしています。
【全労働者の平均】 | (単位:円) |
---|---|
男女計・学歴計・全年齢の平均額 | 5,269,900 |
【学歴別・男女別】 | (単位:円) | |
---|---|---|
年齢 | 男性 | 女性 |
全学歴 | 5,908,100 | 4,194,400 |
中卒 | 4,573,900 | 3,221,300 |
高卒 | 5,118,300 | 3,534,900 |
専門学校卒 | 5,265,700 | 4,245,600 |
高専・短大卒 | 5,988,800 | 4,432,000 |
大学卒 | 6,835,500 | 4,951,500 |
大学院卒 | 8,848,100 | 6,913,100 |
不明 | 4,581,200 | 3,264,900 |
【年齢別・男女別】 | (単位:円) | |
---|---|---|
年齢 | 男性 | 女性 |
全年齢 | 5,908,100 | 4,194,400 |
〜19歳 | 2,845,800 | 2,528,600 |
20〜24 | 3,583,900 | 3,343,000 |
25〜29 | 4,537,500 | 3,981,600 |
30〜34 | 5,248,400 | 4,148,700 |
36〜39 | 5,897,800 | 4,334,500 |
40〜44 | 6,408,700 | 4,448,600 |
45〜49 | 6,837,700 | 4,629,200 |
50〜54 | 7,041,400 | 4,581,200 |
55〜59 | 7,242,100 | 4,508,600 |
60〜64 | 5,321,800 | 3,810,700 |
65〜69 | 4,162,800 | 3,246,800 |
70歳〜 | 3,554,000 | 3,195,500 |
賃金センサスの見方
上表は、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」のデータを使用して作成したものです。
このデータの量は膨大であり、かつ、データを見ても、賃金センサスという言葉は記載されていません。
賃金センサスの具体的な作成の手順は以下のとおりです。
「産業大分類」から「第1表 年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」(産業計・産業別)を使用

区分「企業規模計(10人以上)」において「男女計・学歴計」の項目の数値を抽出し、以下の計算式で算出
きまって支給する現金給与額 × 12 + 年間賞与その他特別給与額

区分「企業規模計(10人以上)」において男性と女性それぞれのそれぞれの学歴計、中学卒、高校卒、専門学校卒、高専・短大卒、大学卒、大学院卒、不明の項の数値を抽出し、上記と同じ計算式で算出

区分「企業規模計(10人以上)」において男性と女性それぞれの学歴計、各年齢の項の数値を抽出し、上記と同じ計算式で算出
賃金センサスの動向
過去数年間の動向を見ると、2019年まで右肩上がりだった平均賃金が2020年になって減少に転じました。
おそらく、新型コロナウィルスによって業績が悪化した企業が賃金カットや解雇を行ったことによるものだと考えられます。
しかし、2021年には再び増加し、2023年にはコロナ直前よりも高い水準となりました。
さらに、2024年には一層上昇しています。
しかも、下のグラフを見ると、過去と比較して、高い上昇率であることがわかります。
これは、近年のインフレによる物価高と大手企業を中心とする賃上げが背景にあるものと考えられます。
年 | 全労働者 | 男性 | 女性 |
---|---|---|---|
2024 | 5,269,900 | 5,908,100 | 4,194,400 |
2023 | 5,069,400 | 5,698,200 | 3,996,500 |
2022 | 4,965,700 | 5,549,100 | 3,943,500 |
2021 | 4,893,100 | 5,464,200 | 3,859,400 |
2020 | 4,872,900 | 5,459,500 | 3,819,200 |
2019 | 5,006,900 | 5,609,700 | 3,880,000 |
2018 | 4,972,000 | 5,584,500 | 3,826,300 |
2017 | 4,911,500 | 5,517,400 | 3,778,200 |
2016 | 4,898,600 | 5,494,300 | 3,762,300 |
2015 | 4,892,300 | 5,477,000 | 3,727,100 |
全労働者:男女計・学歴計・全年齢の平均額
男性:男性の学歴計・全年齢の平均額
女性:女性の学歴計・全年齢の平均額
令和5年(2023年)の賃金センサス(令和5年賃金構造基本統計調査)
参考として、令和5年の賃金センサスもご紹介します。
【全労働者の平均】 | (単位:円) |
---|---|
男女計・学歴計・全年齢の平均額 | 5,069,400 |
【学歴別・男女別】 | (単位:円) | |
---|---|---|
学歴 | 男性 | 女性 |
全学歴 | 5,698,200 | 3,996,500 |
中卒 | 4,515,900 | 3,027,300 |
高卒 | 4,958,400 | 3,420,600 |
専門学校卒 | 5,163,600 | 4,118,100 |
高専・短大卒 | 5,921,000 | 4,259,300 |
大学卒 | 6,552,700 | 4,700,200 |
大学院卒 | 8,390,300 | 6,588,200 |
不明 | 4,499,800 | 3,030,400 |
【年齢別・男女別】 | (単位:円) | |
---|---|---|
年齢 | 男性 | 女性 |
全年齢 | 5,698,200 | 3,996,500 |
〜19歳 | 2,675,900 | 2,549,600 |
20〜24 | 3,515,300 | 3,180,300 |
25〜29 | 4,393,300 | 3,811,600 |
30〜34 | 5,035,900 | 3,978,200 |
36〜39 | 5,642,900 | 4,134,600 |
40〜44 | 6,132,100 | 4,241,600 |
45〜49 | 6,512,400 | 4,372,900 |
50〜54 | 6,850,200 | 4,411,000 |
55〜59 | 6,981,600 | 4,326,300 |
60〜64 | 5,115,100 | 3,572,800 |
65〜69 | 4,119,400 | 3,012,300 |
70歳〜 | 3,679,000 | 2,956,900 |
賃金センサスについてのQ&A
ここでは、賃金センサスについて、疑問に感じられそうなことをQA形式でご紹介しています。
賃金センサスのデータと、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」の「賃金」と数値が一致しないのはなぜですか?

他方で、同調査結果の概況で示されている「賃金」は定義が異なり、賃金センサスの意味ではありません。
すなわち、ここでいう「賃金」は、「きまって支給する現金給与額」のうち、残業代等(超過労働給与額)が含まれていません。
また、ボーナス等(年間賞与その他特別給与額)も含まれていません。
したがって、賃金センサスの数値とは一致しないのです。
賃金センサスは、厚生労働省のデータをもとに算出しますが、厚生労働省が概況で発表している賃金とは異なるので注意してください。
参考:令和6年賃金構造基本統計調査の概況4ページ|厚生労働省
まとめ
賃金センサスは、政府の調査の結果に基づく資料であり、日本の労働者がおかれている賃金の状況等を理解するための資料です。
また、交通事故などの人身障害事案において、逸失利益や休業損害の算定にも活用されています。
賃金センサスの数字は毎年異なるため、専門家の方々は、常に最新の正確なデータを確認するようにされてください。
この記事が交通事故に遭われた方や専門家の方のお役に立てば幸いです。