好意同乗とはなんですか?【弁護士が解説】

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

好意同乗とは、好意で他者を無償で自動車に乗せることです。

運転者が、事故を起こした場合、好意で乗せてもらった人は、運転者に損害賠償請求することができます。

この場合に、運転者側の保険会社から、好意同乗だから運転手の責任も小さくなるので、賠償額を減額します!という主張がされることがあります。

 

好意同乗の問題点

好意同乗で、事故が発生したとしても基本的には、その運転手の運転操作の誤り、あるいは第三者の運転操作の誤りで事故が発生しているのですから、同乗している人にはなんら落ち度はありません。

他方で、無償で同乗させてもらっているのだから、万一、事故が発生しケガをして損害が発生したとしても、運転手の責任は少し軽減してあげなければならないのではないか、という考え方もできます。

こうした問題意識から好意同乗の場合の賠償の範囲について議論となっているのです。

 

 

最近の裁判例の傾向

最近の裁判例の傾向としては、好意同乗であったとしても、単に同乗者というだけでは、原則、損害額は減額しないという取り扱いがされています。

もっとも、例外はあります。

裁判例では、同乗者自身において事故が発生する危険性を増大させたような場合、あるいは、事故が発生する危険性があることを承知の上で同乗していたような場合など、事故が発生したことについて、被害者に非難すべき事情があるような場合には、被害者の損害額を一定割合で減額されることがあります。

 

 

好意同乗を理由に減額されるケース

同乗者にも交通事故を誘発させた原因があるとみられる場合や、交通事故を十分予想できたにも関わらず同乗していたような場合は、例外的に賠償額が減額されるおそれはあります。

その最たるものが飲酒運転です。

飲酒運転前に飲酒し、運転者が酔っていることを分かって同乗したような場合に、裁判例も同乗者に対する賠償額を10%~20%減額しているものがみられます。

飲酒に関与した同乗者の賠償額を減額したものとして、下記のような裁判例があります。

飲酒に関与した同乗者の賠償額を減額した裁判例

判例 【東京地判 平成18年7月26日】

運転者と共に居酒屋で飲酒し、自宅に送ってもらう途中で運転者が交通事故を起こした事案です。

裁判所は、同乗者の賠償額を10%減額しました。

判例 【東京地判 平成19年3月30日】

同乗者が自ら運転者を呼び出して飲食店で飲酒し、その後運転者の車の助手席にシートベルトをせずに同乗中、運転者が交通事故を起こした事案です。

裁判所は、同乗者の賠償額を25%減額しました。

上記のように、飲酒運転に加え、シートベルトを締めていなかったなどの事情も加われば、さらに賠償額が減額されることもありえます。

また、飲酒運転ではないものの、運転者の無免許や無謀運転を認識していた同乗者の賠償額を減額したものとして、下記のような裁判例があります。

 

無免許や無謀運転を認識していた同乗者の賠償額を減額した裁判例

判例 【東京地判 平成15年5月27日】運転者が無免許であることを知りつつ、改造車に乗って深夜ドライブしていた際に、運転者が交通事故を起こした事案です。

裁判所は、同乗者の賠償額を40%減額しました。

他にも定員オーバーの状態で乗っていたところ、交通事故にあった場合などでも、そのような状態を知りつつ同乗していたとして、過失相殺の対象となる場合があります。

したがって、運転者が交通事故を起こしそうな事情や法令違反の状態がある場合は、同乗しないようにすべきです。

 

 

好意同乗を理由に減額されなかったケース

判例 【大阪地判 平成13年10月26日】

被害者が友人と徹夜で遊んだ後、夜中に、その友人が運転するバイクの後部座席に同乗していたところ、事故に遭い亡くなった事案では、被害者の損害は減額されませんでした。

判例 【東京地判 平成2年7月12日】

4人で運転を交代しながら深夜ドライブをしていた最中の事故について、損害の減額を認めませんでした。

判例 【東京地判 平成7年12月27日】

交際相手の運転でとドライブに出かけた際の事故について、被害者が無償で自発的に同乗していましたが、損害の減額は認めませんでした。

 

 

同乗中の交通事故の注意点

保険会社の主張を鵜呑みにしない

これまで解説してきたとおり、ただ同乗していただけでは、賠償金が減額されることはありません。

保険会社が、好意同乗による賠償金の減額を主張してきた場合には、同乗していた理由を説明し、減額の対象とならないことを説明すべきです。

 

加害者が知人や友人であるという特殊性がある

同乗していた運転者が交通事故を起こした場合、運転者が全くの他人というケースはそれほど多くなく、むしろ、知人や友人というケースも多いでしょう。

したがって、被害者が示談交渉をするのは、知人や友人の保険会社ということもあり、やりづらく考えられる方もいるかも知れません。

しかしながら、交通事故によって損害を被った以上は、毅然と交渉すべきです。

被害者自身で交渉しづらいのであれば、弁護士に依頼して、保険会社と交渉してもらうことも検討すべきでしょう。

 

 

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