交通事故の同乗者|慰謝料の相場や責任の範囲をわかりやすく解説

監修者:弁護士 鈴木啓太 弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

交通事故の同乗者がケガを負った場合には、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料などの慰謝料を含む損害賠償請求が可能です。

慰謝料を含む賠償金の請求先は事故の状況によって異なり、相手方や、同乗車両の運転者、またはその双方に対して請求できる場合があります。

同乗者は原則として事故の責任を負いません

ただし、例外的に、同乗者が車の所有者であった場合や、事故の発生を誘発した場合、または義務違反などにより被害を拡大させた場合などには、過失相殺により賠償金が減額される可能性があります。

請求の相手方から「好意同乗」のみを理由に不当に減額を主張されているケースでは、適切に反論する必要があります。

この記事では、交通事故の同乗者の慰謝料の相場や、慰謝料の請求先、事故に対する同乗者の責任などについて、弁護士がわかりやすく解説していきます。

交通事故同乗者の慰謝料の相場とは?

交通事故同乗者が請求できる慰謝料の種類

交通事故に巻き込まれた際、車の同乗者であっても、負傷した場合には加害者に対して慰謝料を請求することができます

交通事故の慰謝料とは、交通事故によって被害者が受けた精神的な苦痛を金銭的に償うために支払われる賠償金であり、被害者は民法第710条に基づき、加害者に支払いを請求することができます。

同乗者が交通事故によって負傷や死亡した場合に請求できる慰謝料は、主に以下の3つの種類に分けられます。

  • 入通院慰謝料:負傷によって入院や通院を余儀なくされたことに対する精神的苦痛への補償(傷害慰謝料とも呼ばれます)
  • 後遺障害慰謝料:治療を継続しても治癒せず、後遺症が残存し、それが後遺障害等級として認定されたことによる精神的苦痛への補償
  • 死亡慰謝料:交通事故により死亡した場合の、被害者本人および遺族の精神的苦痛に対する補償

例えば、負傷して通院したが後遺症が残らなかった場合は「入通院慰謝料」のみを、後遺症が残った場合は「入通院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」を、それぞれ請求することになります。

なお、交通事故によって、同乗者の物が破損しただけの場合には、原則として慰謝料は請求できません。

また、交通事故の慰謝料を計算する際には、主に以下の3つの算定基準が存在します。

  • 自賠責基準
    自賠責保険が損害賠償金を算出する際に用いる基準で、もっとも低い水準の基準です。
  • 任意保険基準
    各任意保険会社が独自に定めている非公開の内部基準で、自賠責基準と同等かやや高い水準の基準です。
  • 弁護士基準
    過去の裁判例に基づいて作られた基準であり、弁護士に依頼した場合に適用されるもっとも高い水準の基準です。

 

同乗者が請求できる慰謝料の相場

適正な慰謝料額を得るためには、裁判所でも認められる弁護士基準で算定することが重要です。

以下では、自賠責基準による慰謝料の相場と弁護士基準による慰謝料の相場について、それぞれご紹介します。

【入通院慰謝料の相場】

入通院慰謝料は、入院期間や通院期間の長さやケガの程度によって異なります。

通院期間 自賠責基準 弁護士基準
むちうち等の軽傷の場合 骨折等の重症の場合
1か月 12万9000円 19万円 28万円
2か月 25万8000円 36万円 52万円
3か月 38万7000円 53万円 73万円
4か月 51万6000円 67万円 90万円
5か月 64万5000円 79万円 105万円
6か月 77万4000円 89万円 116万円

※自賠責基準は、治療期間日数の内半分以上を通院していることを前提としています。
自賠責基準は、治療費や入通院慰謝料、休業損害等の損害の補償は120万円が上限です。

【後遺障害慰謝料の相場】

後遺障害慰謝料は、認定された後遺障害等級によって金額が大きく変動します。

交通事故でむちうち症を負い、後遺症が残った場合、12級あるいは14級の後遺障害等級認定がなされる可能性があります。

後遺障害慰謝料については、以下の表のとおり、等級が重いほど慰謝料額は高くなります。

後遺障害等級 自賠責基準 弁護士基準
1級 1150万円(1650万円) 2800万円
2級 998万円(1203万円) 2370万円
12級 94万円 290万円
14級 32万円 110万円

※( )内は「介護を要する後遺障害」の場合の金額です。

【死亡慰謝料の相場】

交通事故で被害者が亡くなった場合の死亡慰謝料の相場は以下のとおりです。

自賠責基準
被害者の慰謝料 400万円
請求権者 1名 550万円(750万円)
請求権者 2名 650万円(850万円)
請求権者 3名 750万円(950万円)

※請求権者は、亡くなった方の父母、配偶者及び子です。( )の金額は請求権者に被扶養者がいる場合の金額です。

弁護士基準
一家の支柱 2800万円
専業主婦・主夫・配偶者 2500万円
子ども、高齢者、その他 2000万円~2500万円

死亡慰謝料の算定については、自賠責基準では、被害者の家族内における立場に関わらず一定額となっていますが、弁護士基準では、被害者の家庭内における立場に応じて相場が異なります。

なお、以下の記事では、交通事故慰謝料の相場、計算方法、増額のポイントのほか、弁護士の選び方などについて詳しく解説しておりますので、ぜひ参考にされてください。

 

 

交通事故同乗者は誰に慰謝料を請求できる?

交通事故同乗者は誰に慰謝料を請求できる?

相手方車両の運転者に請求できるケース

交通事故の同乗者として負傷した場合、被害者は精神的苦痛に対する慰謝料を含む損害賠償金を加害者に対して請求することができます。

しかし、交通事故の状況や、同乗していた車両の運転者と相手方車両の運転者それぞれの過失割合によって、具体的に誰に対して請求できるのかが変わってきます。

同乗していた車両の運転者に一切の過失がない場合、同乗者は事故の相手方車両の運転者に対してのみ損害賠償請求を行うことができます

これは、相手方車両の運転者のみが民法上の不法行為責任(民法第709条)を負うためです。

同乗していた車両の運転者に一切の過失がない交通事故として、以下のようなものがあります。

具体例 同乗していた車両の運転者に一切の過失がない交通事故

  • 駐停車車両に対する追突事故:同乗車両が完全に停車中に後方から追突された交通事故の場合、相手方車両の過失が100%とされます。
  • センターラインオーバーの事故:対向車がセンターラインをオーバーして衝突した交通事故の場合、相手方車両の過失が100%とされます。
  • 信号無視の事故:相手方車両が信号無視をしたことで発生した交通事故の場合、相手方車両の過失が100%とされます。

このような交通事故の場合、同乗者は相手方車両の運転者(およびその任意保険会社)に対して、慰謝料を含む損害賠償の全額を請求することになります。

 

同乗していた車両の運転者のみに請求できるケース

同乗していた車両の運転者に100%の過失がある交通事故によって同乗者が負傷した場合は、同乗車両の運転者に対して慰謝料を含む損害賠償を請求することになります。

このような交通事故として、同乗していた車両の運転者が、電柱やガードレール、壁に衝突するなど、相手方がいない単独事故を起こした場合が挙げられます。

また、事故の相手方がいる場合であっても、駐停車車両への追突事故や、センターラインオーバーの事故、信号無視により事故を起こした場合など、同乗していた車両の運転者にのみ過失がある場合(過失割合が10対0となる場合)についても、同乗していた車両の運転者にのみ慰謝料を請求することになります。

この場合、同乗車両の運転者が加入している自賠責保険や任意保険会社(対人賠償責任保険)に賠償金を請求することができます。

運転者と同乗者が家族である場合であっても、自賠責保険は「運行供用者以外の他人」に対する補償を目的とするため原則として使用可能ですが、任意保険の対人賠償責任保険の適用外となるケースもあるため、注意が必要です。

 

相手方と同乗者の運転者の双方に請求できるケース

同乗車両の運転者と相手方車両の運転者の双方に過失が認められる交通事故の場合、両者は民法第719条に定められた共同不法行為者として扱われます。

このような事故の場合には、負傷した同乗者は事故の当事者双方に対して、慰謝料を含む損害賠償を請求することができます。

相手方の車両の運転者と同乗していた車両の運転者にそれぞれ過失が認められる交通事故の類型として以下のようなものがあります。

具体例 事故の当事者双方に過失が認められる交通事故の類型

  • 交差点で直進車同士の衝突事故
    双方の車両が一時停止無視や安全確認不足で交差点で衝突した場合には、当事者双方に過失が認められます。
  • 進路変更時の事故
    一方が無理な進路変更をし、もう一方が車間距離を詰めていたなどの事情がある場合には、双方に過失が認められます。

このように、交通事故の当事者が共同不法行為責任を負う場合、同乗者は、どちらか一方の加害者に対して、または双方の加害者に対して、慰謝料を含む損害賠償の全額を請求することが可能です。

なお、被害者は交通事故の双方に対して全額を請求できますが、損害賠償の総額が2倍になるわけではありません

一方の加害者が全額を支払った場合、その加害者はもう一方の加害者に対して、双方の過失割合に応じた金額を求償することになります。

被害者である同乗者としては、どちらの加害者に請求するかを自由に選択できるため、例えば保険会社との交渉がスムーズな方を選んで請求するという選択も可能です。

 

 

同乗者は交通事故の責任を負う?

同乗者は交通事故の責任を負う?

運行供用者として第三者への賠償責任を負うケース

同乗者が事故車両の所有者であった場合、たとえ自身が運転していなかったとしても、その車両の運行供用者として、事故の被害者に対する損害賠償責任を負う可能性があります

この運行供用者責任とは、「自己のために自動車を運行の用に供する者」が他人の生命または身体を害した場合に、その損害を賠償する責任を負う、というものです(自動車損害賠償保障法第3条)。

この「運行供用者」とは、「自動車の使用について支配権を有し、かつその使用により享受する利益が自己に帰属するもの」のことで、運行支配と運行利益が必要となります。

運行支配とは、一般的に考えて、自動車の運行について支配を及ぼすことができる立場にあって、実質的に自動車の使用をコントロールできるような場合に認められます。

運行利益とは、実際に具体的な利益が生じている場合だけでなく、客観的外形的にみて何らかの利益が生じている場合にも認められます。

車の所有者は、他人に運転を許可し、その運行から利益を得ていると評価されるため、一般的に運行供用者と見なされます。

したがって、ご自身の車に同乗中に事故が発生し、相手方に損害を与えた場合、車の所有者として運転者と連帯して賠償義務を負うことになる点に注意が必要です

 

同乗者が事故を誘発させた場合

原則、同乗者に運転行為を制止する法的な義務はありませんが、危険な運転を積極的に煽ったり、許容したりした場合には、同乗者も事故の責任を負う場合があります

このような場合、同乗者は共同不法行為責任(民法第719条)を問われる可能性があります。

たとえば、「もっとスピードを出せ」や「あの車を追い越せ」などと危険な運転を促した場合や、運転者を驚かせたり、わき見運転を誘発したりして意図的に運転を妨害した場合などが挙げられます。

特に、運転者が飲酒または無免許であることを知りながらも、その運転を制止せずにあえて同乗した場合は、その違法行為を幇助したと評価され、高い過失割合が認められる可能性が高まります

 

同乗者に義務違反がある場合

同乗者が適切な安全措置を講じなかったために被害の程度が拡大したと認められる場合、過失相殺によって、賠償金が減額される可能性があります。

このようなケースとして、シートベルトやチャイルドシートの非着用などが挙げられます。

シートベルトの非着用が負傷の程度を増した原因となった場合、同乗者の過失として一般的に10%から20%程度の過失相殺が適用されます。

また、チャイルドシートの着用義務がある幼児(6歳未満)が適切に着用されていなかった場合も、同乗者(多くは親権者)がその義務を怠ったとして、損害拡大に対する責任が問われる可能性があります。

その他、窓から身体を乗り出す「箱乗り」など、明らかに危険な態様で乗車していた場合も、過失相殺の対象となり得ます。

 

 

同乗者の慰謝料等賠償金請求の注意点

好意同乗を理由に減額される可能性がある

交通事故に遭った同乗者が、運転者の「好意」によって無償で車両に乗せてもらっていた場合、その事実を理由に損害賠償額を減額されるという考え方があり、これを「好意同乗減額」と呼びます。

しかし、最近の裁判例の傾向としては、好意同乗であったとしても、単に同乗者というだけでは、原則、損害額は減額しないという取り扱いがなされています。

ただし、同乗者が運転者の飲酒に関与していた場合や、無免許や無謀運転を認識していた場合など、同乗者自身において事故が発生する危険性を認識していた・増大させた場合などは、事故が発生したことについて、被害者の損害額を一定割合で減額されることがあります。

運転者の保険会社から「好意同乗だから減額する」と主張された場合でも、安易に応じることなく、具体的な状況を弁護士に相談し、適正な賠償額を求めることが重要です。

 

 

同乗者の慰謝料等賠償金請求のポイント

交通事故に強い弁護士に相談する

交通事故の同乗者としての賠償金請求には、複数の請求先が絡む場合や不当な減額リスクなど、複雑な問題が潜んでいる可能性があります。

同乗者が適正な賠償金を獲得するためには、交通事故に強い弁護士に相談・依頼することがポイントとなります。

まず、保険会社が提示する慰謝料は、自賠責基準や任意保険基準といった、本来の適正額(弁護士基準)よりも低く設定されている可能性があります

弁護士が代理人として交渉することで、裁判所でも認められている最も高額な弁護士基準を適用して交渉することができるようになるため、結果として受け取る賠償金を大幅に増額できる可能性が高まります

また、保険会社は「好意同乗」や「危険性の黙認」などを理由に不当な過失相殺を主張してくることがあります。

弁護士は、事故の状況を詳細に分析し、不当な減額を回避し、適切な過失割合(過失なし)の主張を行います。

さらに、負傷が完治せず後遺症が残った場合、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求するために後遺障害等級認定を受ける必要があります。

この認定手続きには、適切な診断書や必要書類の準備が欠かせません。

弁護士は、申請に必要な資料の精査や、診断書の記載内容に関する医師との連携など、認定獲得のための戦略的なサポートを提供し、適正な等級認定を得られる可能性を高めます。

 

 

交通事故の同乗者の方のよくあるQ&A

事故の同乗者は警察に報告する義務はある?

同乗者にも警察への事故報告が求められる可能性があります。

交通事故の通報義務は、車両の「運転者」または「乗務員」に課せられています(道路交通法第72条)。

家族や知人の車に単に同乗していただけの人は、「乗務員」にはあたりませんので、直ちに同乗者自身に警察への報告義務が発生するわけではありません。

しかし、運転者が報告義務や救護義務を怠っていることを知りながら、これを黙認していると、運転者に対する幇助とみなされ、警察の捜査の対象となる可能性があります。

そのため、事故の発生を把握した時点で運転者に警察への通報を促す、または自ら通報することが、その後のトラブルを回避するためには重要となります。

 

事故の同乗者にも過失割合の相殺が影響しますか?


同乗者と運転者の関係性によっては、運転者の過失相殺が同乗者に及び、同乗者の賠償額が減額する可能性があります。

過失相殺が適用される基準は、「運転者と同乗者が身分上または生活関係上一体をなすとみられるような関係にあるか否か」です。

運転者との関係が、夫婦や同居の親族などの場合は生活関係上の一体性が認められる可能性がありますが、単なる友人・知人の場合には生活関係上一体とはいえません。

いずれのケースも個別具体的な事情によって判断が異なるため、運転者の過失を理由に賠償額の減額を主張された場合は、専門家である弁護士に相談するようにしてください。

 

 

まとめ

交通事故の同乗者も、負傷すれば入通院慰謝料や後遺障害慰謝料などの賠償請求が可能です。

慰謝料を含む賠償金の請求先は事故の状況によって異なり、相手方、同乗車両の運転者、またはその双方に対して行うことになります。

同乗者の場合は、「好意同乗」を理由に不当に減額を主張されるケースがあります。

同乗者は原則として事故の責任を負いませんが、車の所有者である場合や、危険な運転を煽るなど事故に積極的に関与した場合、またはシートベルト非着用などで損害を拡大させた場合などには、責任を問われたり、賠償金が減額されたりするリスクがあります。

同乗者が交通事故に巻き込まれ、適正な賠償金の獲得を目指す場合は、交通事故に強い弁護士への相談することをおすすめします。

当法律事務所の人身障害部は、交通事故に精通した弁護士のみで構成されており、事故の被害者を強力にサポートしています。

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