解決事例
更新日2021年11月19日

膝蓋骨骨折後の膝関節可動域制限で後遺障害等級が認定された事例

執筆者:弁護士 木曽賢也 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)



※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

ご相談者Uさん

受傷部位膝蓋骨(膝骨下棘骨折)、股関節(寛骨骨臼骨折)
等級12級7号
ご依頼後取得した金額
約1200万円 治療費などの既払金を除く

内訳
損害項目 弁護士によるサポート結果
傷害慰謝料 約225万円(裁判基準90%)
後遺障害慰謝料 約261万円(裁判基準90%)
後遺障害逸失利益 約1100万円(賃金センサス平均額を基礎収入とし、労働能力喪失期間は67歳まで)
最終支払額 約1200万円(うち、自賠責224万円は自賠責保険金、治療費などの既払金は除く)
※過失割合はUさん:相手方=2:8

 

事故で膝関節に後遺症が残ったUさん

Uさんは、普通自動車を運転中、十字の交差点に差し掛かったところ、反対車線から交差点を右折してきた普通自動車に衝突し、膝蓋骨下棘骨折、股関節寛骨臼骨折などの大怪我を負い、病院に緊急搬送されました。

その後、Uさんは約3ヶ月間入院し、その後約1年間通院して、症状固定となりました。

Uさんは、保険会社とのやり取りに不安があり、適切な補償が受けられるか心配となったため、専門家である弁護士に示談交渉をしてもらおうと考え、デイライト法律事務所に依頼されました。

なお、物損(車の修理費など)については、Uさんが相談に来られる前に保険会社と直接示談しており、過失割合はUさん:相手方=2:8となっていました。

 

 

膝蓋骨骨折後の可動域制限について、後遺障害12級7号に認定

弁護士は、Uさんの症状を聞き取るとともに、保険会社から診断書などの資料を取り寄せ、内容を検討しました。

その結果、Uさんの残存症状については、後遺障害認定を受けられる可能性があるため、後遺障害申請を行うことにしました。

弁護士は、Uさんに後遺障害診断書の書式を渡し、整形外科で後遺障害診断書を作成してもらいました。

そして、診断書などの書類を取り揃え、必要な情報を取捨選択した上で、後遺障害申請(被害者請求)を行いました。

その結果、Uさんの膝蓋骨骨折後の可動域制限については、後遺障害12級7号に認定されました。

そのため、この時点で自賠責保険金224万円の支払いを受けることができました。

その後、弁護士は保険会社との示談交渉に移ることにしました。

示談交渉に移る前に、過失割合について調査を行いましたが、過失割合はUさん:相手方=2:8で妥当であることが判明したため、過失割合は争いにはなりませんでした。

示談交渉では、以下の点が問題となりました。

 

入院諸雑費

Uさんは事故による怪我の治療のため、約3ヶ月間入院していました。

入院中には様々な日用品を購入する必要がありますが、これを入院諸雑費と言います。

入院中に買う日用品につき、いちいち領収書をとることも煩雑であることから、裁判の基準では、入院1日当たり1500円の入院諸雑費が認められます。

Uさんの場合も、裁判基準どおり、入院1日当たり1500円の入院諸雑費が認められました。

 

傷害慰謝料

Uさんは、今回の事故により約3ヶ月間入院した後、約1年間の通院が必要でした。

弁護士は骨折という重大な結果が発生し、Uさんが長期間ギブスを固定しなければいけなかったことなどを主張しました。

その結果、傷害慰謝料については、裁判基準の90%である約230万円を獲得することができました。

 

後遺障害慰謝料

Uさんは今回の事故により後遺障害12級7号に該当するとの認定を受け、膝関節の可動域が健側の4分の3以下に制限されてしまいました。

弁護士は、このようなUさんの残存症状による制限が、日常生活や仕事上で発生していることを詳細に主張しました。

その結果、後遺障害慰謝料についても、裁判基準の90%である約260万円を獲得することができました。

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後遺障害逸失利益

Uさんは、事故に遭う前は、飲食店の従業員として月給20万円ほどの給与を得ていましたが、事故を原因に職場を辞めざるを得ませんでした。

そのため、後遺障害逸失利益が問題となりました。

後遺障害逸失利益は後遺障害が存在することで、将来にわたって労働制限を受けることに対する賠償であり、Uさんのように仕事を辞めている場合は、将来どの程度の収入を得る見込みがあるかが不透明だからです。

そこで、弁護士は、Uさんの事故前までの収入状況を聞き取り、Uさんが将来にわたって、賃金センサス平均額程度の年収を得る見込みがあったことを主張しました(賃金センサスについては、「賃金センサスとは」の項目内の解説をご覧ください。)。

具体的には、勤めていた飲食店の雇用契約書などUさんの収入が記載されている資料を提出し、事故がなければ昇給により賃金も上昇したはずであることなどを主張しました。

その結果、Uさんの事故当時の年齢に該当する賃金センサス平均額を元に後遺障害逸失利益の基礎収入が認定され、労働能力喪失率は14%、労働能力喪失期間は67歳までで算定された逸失利益約1100万円を獲得することができました。

 

結果

以上のような交渉の結果、Uさんは自賠責保険金224万円に加え、相手方保険会社から約980万円を獲得することができました。

 

 

弁護士のアドバイス

下肢の後遺障害について

膝関節は、下肢の3大関節に分類されます(その他は、股関節、足関節です)。

下肢の3大関節の後遺障害は、その程度によって、1級6号、5級7号、6級7号、8級7号、10級11号、12級7号の後遺障害等級の可能性があります。

可動域の測定は、適切な方法によって医師に測定してもらう必要があります。

 

賃金センサスとは

賃金センサスとは、正式には「賃金構造基本統計調査」といい、厚生労働省が行なっている統計調査の一種です。

主要産業に雇用される労働者について、労働者の雇用形態、就業形態、職種、性別、年齢、学歴、勤続年数、経験年数などによってその年度の平均賃金などを把握することができます。

交通事故の場合、休業損害や後遺障害逸失利益を算定する際、被害者の基礎収入を明らかにする必要がありますが、給与所得者以外の場合、被害者の基礎収入を算定することが難しい場合があります。

例えば、主婦の方が事故にあった場合、主婦の家事労働に対する金銭評価をすることは困難であるため、女子全年齢平均の賃金センサスが用いられます。

また、Uさんのように、稼働能力があるのに仕事を辞めてしまっていたりする場合も基礎収入の算定が困難です。

このような場合に、公的な統計である賃金センサスに基づいて基礎収入を算定することが客観性があり、説得力があります。

ただし、賃金センサスはあくまで全国の労働者の賃金の平均額を算出したものであり、被害者の実際の収入とかけ離れている場合もあります。

そこで、被害者の属性を細かく主張したり、収入の見込みを具体的に説明する必要があります。

どのような点がポイントなるかは、専門家である弁護士でないと把握が困難といえます。

 

 


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