LGBT(性的少数者)問題に対する法的・社会的考察

LGBTとは

lgbt

LGBTとは、

レズビアン(女性同性愛者)、
ゲイ(男性同性愛者)、
バイセクシュアル(両性愛者)、
トランスジェンダー(性同一性障害を含む心身の性別不一致)の頭文字を取ったものであり、

性的少数者を意味する言葉です。

 

近年、このLGBTの方々に対する対応が問題となっています。
例えば、自分がLGBTであることをカミングアウトした場合、職場や学校で、理解がない人々から誹謗中傷や、虐めにあうといったものです。

 

また、親兄弟などの家族ですら理解を示してくれず、孤立し、苦しまれている方々がいます。

そこで、ここでは、このLGBTの問題について、法的観点と社会的観点から考えてみたいと思います。

 

法的問題について

憲法違反

094645例えば、最近は、LGBTであることを理由に、国や会社が採用を拒否したり、人事管理上、不利益な処遇を行ったりすることが認められるか、といったご相談がよせられています。

 

憲法は、第14条第1項において、次のように規定しています。
すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

 

LGBTは、性的指向であり、憲法14条が列挙する、「人種、信条、性別、社会的身分又は門地」には該当しないようにも思えます。

しかし、同条は、差別の対象を限定したものではなく、例示したものだと考えられています。

 

性的指向のように本人が自由に選択できない事由による差別は、人種や性別による差別と同様、原則としてこの規定に違反すると考えられます。

 

ただし、この憲法が保障する人権は、対国家に対する権利であって、会社対労働者といった私人間には直接的には適用されないと考えられています。憲法の人権規定を直接私人間に適用すれば、私的自治の原則を害することとなるからです。

 

そのため、例えば、国が公務員の採用にあたって、LGBTを理由に採用を拒否したりすることは、憲法に違反すると言えますが、民間企業の場合は、直接に憲法違反とはいえません。

 

では、憲法14条は、民間企業の場合、まったく無関係なのか。

 

現代においては、社会的権力を持つマスコミや大企業などの私的団体による人権侵害の危険性が実在しています。
そのため、私人間において、憲法の保障をまったく考慮しないとすれば、人権保障が不十分となるおそれがあります

 

そこで、裁判例では、私人間の場合、憲法を間接的に適用することがあります。
これは、民法など、私法の一般条項を適用する際に、憲法の趣旨を読み込んで解釈するという方法です(「間接適用」と呼ばれます。)。

 

【参考判例:日産自動車事件(最判昭56.3.24)】

定年年齢の男女により差のある就業規則が憲法14条に反しないかが問題となった事件

裁判所は、概要、次のように判示しており、憲法の間接適用を認めたものと捉えられています。
「もっぱら女子であることを理由として女子の定年年齢を男子より低く定める就業規則は、性別による不合理な差別を行うものである。憲法の人権保障は、私人間に当然に及ぶものではないが、憲法14条の規定の趣旨に鑑み、民法90条の規定により無効である。」

 

したがって、民間企業であっても、LGBTであることだけを理由に採用を拒否したり、労働条件を不利益にしたりすることは、憲法上も問題があると言えます。

 

労働法令違反

労働基準法第3条(均等待遇)は、次のように規定しています。

使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。

 

「性的指向」については、上記に明記されていませんが、上記も憲法と同様に限定列挙と解されています。

したがって、性的志向を理由とした不利益な取り扱いは、労働基準法上も禁止されているといえます。

ただし、雇用機会均等法は、現在のところ、性差別やハラスメントの禁止を明示していますが、性的指向に対する差別の禁止については明示していません。
今後、LGBTの方々への保護を盛り込んだ改正が望まれます。

 

労働問題以外の法的問題点

労働問題以外でも、LGBTの方々は、マイノリティであるがゆえに苦しまれており、法的保護は十分ではありません。

 

 

実際に問題となった有名な裁判例では、1991年に「動くゲイとレズビアンの会」が東京都の青年の家(公的施設)の利用を申請したところ、同性愛であることを理由に利用を拒否されました。この事件では、LGBTの方々が東京都を訴え、全面勝訴しています。

 

日本は差別行為を包括的に禁じる条項を盛り込んだ「市民的及び政治的権利に関する国際規約」の締約国であり、性的指向や性自認による差別を行った者への処罰の必要性が記された「性的指向と性自認に関する声明」にも賛成の意を示していますが、未だ法整備が追いついていない状況です。

 

 

社会的な問題点

1d3f1ea9551047d0e21209d940fa07d5_sLGBTの方々を差別してならないのは法的には当然のことです。

むしろ、LGBTやマイノリティの方々に対しては、認め合い、相互に良い影響を与え合える関係を構築していくことこそが社会全体の発展にとっては必要です。

過去の歴史を振り返ってみると、社会は常に自分たちにとって「異質なもの」を排除しようとしてきました。

 

社会的に認められた「正しい関係」だけが押し付けられ、本来人間が持つべき「自由」を抑圧しようとした結果、何が起こったのか、過去の歴史に学ぶべきです。

また、現代は、「ダイバーシティ(多様性)がなければ、社会は発展しない。」といっても過言ではありません。

 

例えば、より良い社会を創るためには、イノベーション(技術革新)が必要です。人間社会は、これまで、イノベーションによって、新石器革命、農業革命、産業革命、情報革命という大革命を起こしてきており、それによって現在の便利な生活があります。

 

このようなイノベーションを促進するには、不必要な規制や抑圧を行なうのではなく、自由を尊重し、ダイバーシティを受け入れることが必須といえます。

 

また、企業は、LGBT等のマイノリティの方々の考え方や価値を尊重して受け入れ、マジョリティとの「違い」を積極的に活かすことによって、変化しつづけるビジネス環境や多様化する顧客ニーズに効果的に対応し、優位性を創り上げることができます。

 

ダイバーシティは、企業の競争力や差別化の源泉であり、それなくしてイノベーションは生まれなくなっています。

 

さらに、イノベーションのためには優秀な人材が必要です。LGBT等のマイノリティーの方々が働きやすい職場であれば、LGBTに限らず、優秀な人材が集まりやすくなり、また、忠誠心を持って働いてくれるようになります。そして、優秀な人材が集まれば、組織としての層の厚さにつながり、ひいては企業全体の生産性も大きく上がります。

 

したがって、社会の発展のスピードをあげるためには、LGBTを否定するのではなく、相互に認め合い、良い影響を与え合う関係性を構築し、育んでいくことが必要です。

なお、当事務所は、人材についてはLGBTを差別などせず、むしろ多様性を求めています。
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