一定の条件を満たす生前贈与に対しては、遺留分侵害額請求が可能です。
一定の条件を満たす生前贈与とは、次の①②です。
- ① 相続開始前の10年間※にされた相続人への生前贈与のうち特別受益にあたるもの
- ② 相続開始前の1年間※にされた相続人以外への生前贈与
※両方の当事者が遺留分権利者に損害を与えることを知っていた場合、10年または1年の期間より前にされた生前贈与であっても、遺留分侵害額請求が可能
この記事では、そもそも「生前贈与」や「遺留分」とは何か、遺留分はどのように計算されるのか、生前贈与がどのように遺留分に影響するのか、遺留分の請求をする場合のポイントなどの点について、相続問題にくわしい弁護士がわかりやすく解説します。
目次
生前贈与とは?
生前贈与とは、被相続人が生きている間(生前)に他人に財産を無償で与えるという内容の契約(合意)をすることをいいます。
生前贈与は相続人に対して行われる場合と、相続人以外に対して行われる場合があります。
相続人とは?
相続人(「法定相続人」ともいいます。)とは、被相続人の権利(プラスの財産)や義務(借金などのマイナスの財産、債務など)を包括的に引き継ぐ人のことをいい、相続人の範囲は法律(民法)が定めています。
基本的には、被相続人の配偶者(妻・夫)、子ども、父母・祖父母等の直系尊属(縦のラインでつながる上の世代の親族のことです。)が相続人にあたります。
法定相続人の範囲について詳しくはこちらをご覧ください。
なお、生前贈与によく似た制度として、遺贈(被相続人が遺言書によって他人に財産を与えることです)があります。
遺贈は、他人に財産を与える効果がある点で生前贈与と共通していますが、以下のような点で違いがあります。
- 生前贈与は財産を受け取る相手の合意が必要なのに対して、遺贈は被相続人が一方的に遺言書を作ればよい(相手の同意はいらない)点
- 生前贈与は基本的に贈与の時点(被相続人の生前)に相手が財産を取得することとなるのに対して、遺贈は被相続人が亡くなった後に財産を取得することになる点
生前贈与の具体例
相続人への生前贈与の例
例えば、被相続人には妻と長男、次男、長女がいるというケースで、被相続人が亡くなる5年前に長男に対して自宅マンションを購入するための資金として2000万円を援助した場合です。
この場合、被相続人から長男に対する2000万円の金銭援助は生前贈与にあたります。
相続人以外への生前贈与の例
例えば、被相続人には妻と長男、長女がいるというケースで、被相続人が亡くなる半年前に、かわいがっていた孫(長男の子共)に対して5000万円相当の土地を無償で与える契約をする場合です。
このケースでは、被相続人の子どもである長男が生きているため、孫は相続人にあたりません。
そのため、被相続人が孫に土地を与えた行為は、相続人以外への生前贈与にあたります。
また、被相続人がお世話になった恩人(A男)に対して、亡くなる直前に1000万円相当の絵画を無償で与える契約をするというケースは、被相続人からA男(相続人以外)に対する生前贈与にあたります。
孫が遺産相続できるかについて詳しくはこちらをご覧ください。
遺留分とは?
遺留分(いりゅうぶん)とは、一定範囲の相続人に対して法律が保障している最低限の遺産の取り分のことです。
遺留分を保障されている相続人のことを「遺留分権利者」といいます。
遺留分権利者にあたるのは、相続人のうち被相続人の配偶者、子ども、父母・祖父母などの直系尊属です。
被相続人の兄弟姉妹(第3順位の相続人)は遺留分権利者にあたりません(相続遺留分の保障がありません)。
遺留分の割合
法律(民法)は、遺留分を「◯分の1」という割合の形で定めています。
それぞれの相続人の遺留分の割合は、被相続人の遺産について誰が相続人になるのか(相続人の続柄や人数)によって変わります。
具体的な遺留分の割合は次のとおりです。
<遺留分の割合の早見表>
相続人になる人 | 遺留分の割合 | 全員の遺留分の合計 | |||
---|---|---|---|---|---|
配偶者 (妻/夫) |
子 | 直系尊属※1 (父母等) |
兄弟姉妹 | ||
配偶者のみ | 1/2 | – | – | – | 1/2 |
子のみ | – | 1/2(÷人数) | – | – | 1/2 |
直系尊属(父母等)のみ | – | – | 1/3(÷人数) | – | 1/3 |
兄弟姉妹のみ | – | – | – | 0 | 0 |
配偶者と子 | 1/4 | 1/4(÷人数) | – | – | 1/2 |
配偶者と直系尊属 | 1/3 | – | 1/6(÷人数) | – | 1/2 |
配偶者と兄弟姉妹 | 1/2 | – | – | 0 | 1/2 |
例えば、被相続人の妻と子ども2人(長男・長女)が相続人となる場合、妻の遺留分は1/4です。
子どもの遺留分は、1人あたり1/8(計算式:1/4 × 1/2 = 1/8)です。
遺留分の割合について詳しくはこちらをご覧ください。
遺留分侵害額(減殺)請求
遺留分権利者は、遺留分に満たない遺産しか相続できなかった場合、つまり遺留分を侵害された場合に、侵害された遺留分を金銭で請求することができます。
これを「遺留分侵害額(減殺)請求」といいます。
例えば、被相続人の妻と長男・次男が相続人になるケースで、被相続人が「すべての財産を長男に相続させる」という遺言書を残した場合には、被相続人の妻と次男の遺留分が侵害されています。
この場合、被相続人の妻と次男は、侵害の原因となっている長男に対して、遺留分侵害額請求をすることができます。
遺留分侵害額(減殺)請求について詳しくはこちらをご覧ください。
遺留分の計算方法
遺留分の具体的な金額は、「遺留分算定の基礎となる財産額」に「遺留分の割合」をかけあわせて算出します。
これを計算式で表すと次のようになります。
上の計算式のうち「遺留分の割合」については、「遺留分とは?」の項目ですでに説明したとおりです。
具体例 被相続人の妻と子ども(長男・長女)が相続人となるケースで遺留分算定の基礎となる財産額が4000万円の場合
妻の遺留分の金額は1000万円(計算式:4000万円 × 1/4 = 1000万円)
子どもの遺留分の金額はそれぞれ、長男が500万円(4000万円 × 1/8 = 500万円)、長女が400万円となります。
遺留分算定の基礎となる財産額
遺留分の計算に使われる「遺留分算定の基礎となる財産額」とは、被相続人の遺産(財産)を金銭的に評価した金額のことであり、遺留分を計算する際のベースとなる数字(金額)です。
民法は、被相続人のどの時点の・どのような財産が「遺留分算定の基礎となる財産」に含まれるのかについて、次のようなルールを定めています。
まず、相続開始の時点(被相続人が亡くなった時点)で被相続人がもっているプラスの財産は遺留分算定の基礎となる財産にあたります。
これに加えて、一定の条件を満たす生前贈与が遺留分算定の基礎となる財産に含まれます。
この意味で、生前贈与が遺留分の金額に影響する場合があります。
また、被相続人から相続される借金やローンなどのマイナスの財産がある場合には、その金額が遺留分算定の基礎となる財産の金額から差し引かれます。
これを計算式で表すと次のようになります。
(相続開始時点の被相続人の財産の金額)+(生前贈与した財産の金額)-(相続債務の全額)
計算シミュレーターで遺留分を簡単に計算!
当事務所では、相続問題に強い弁護士が監修した、遺留分の金額の目安(概算)を簡単に計算できるシミュレーターをご用意しています。
遺産のおおよその金額と相続人の人数を入力するだけで簡単に計算することができますので、ぜひご活用ください。
遺留分の計算シミュレーターはこちらをご覧ください。
生前贈与が遺留分に影響する?
この記事の「遺留分の計算方法」の項目(「遺留分算定の基礎となる財産額」の項目)でも説明したように、一定の条件を満たす生前贈与は「遺留分算定の基礎となる財産」に含まれ、その結果、遺留分の金額が大きくなるという影響をもたらします。
生前贈与が遺留分算定の基礎となる財産に含まれるための条件は、①相続人への生前贈与か、それとも②相続人以外への生前贈与か、によって異なります。
具体的には、次のような生前贈与が遺留分算定の基礎に含まれます。
遺留分算定の基礎に含まれる生前贈与の条件 | |
---|---|
相続人への 生前贈与 |
相続開始前(被相続人が亡くなる前)の10年間(※1)にされた生前贈与で、かつ、特別受益(※2)にあたるもの |
相続人以外への 生前贈与 |
相続開始前(被相続人が亡くなる前)の1年間(※1)にされた生前贈与 |
両方の当事者が遺留分権利者に損害を与えることを知っていた場合は、10年または1年の期間より前にされた生前贈与であっても、遺留分算定の基礎となる財産に含まれます。
「特別受益」にあたる生前贈与とは
被相続人が一部の相続人を特別扱いして行った生前贈与のことをいいます。
民法は、相続人が「婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与」は特別受益にあたるとしています。
例えば、相続人が結婚するときに与えた支度金、一部の相続人に与えた住宅購入資金などは「特別受益」にあたる可能性があります。
生前贈与と遺留分の関係について詳しくはこちらをご覧ください。
生前にできる遺留分対策
ここでは、遺留分侵害額請求による影響を避けたい方(被相続人)が生前にできる対策についてご紹介します。
①遺言書の作成
特定の相続人に遺産を集中させたい意図や遺留分請求を控えてほしい旨を記載することで、遺留分侵害額請求を防止できる場合があります。
ただし、法的な拘束力はありません。
②遺留分の負担割合の指定
遺留分を請求される場合に備え、誰がどれだけ負担するかを遺言書で指定できます。
③早めの生前贈与
亡くなる10年以上前の贈与は遺留分計算の対象外になり得ます。
④生命保険の活用
受取人を希望する人に指定すれば、遺留分対策になり得ます。
⑤遺留分の放棄
相続人に遺留分を放棄してもらうことができます。
ただし、強制はできません。
⑥相続人の廃除
虐待や著しい非行があった場合、家庭裁判所の認可を得て相続権を剥奪できます。
⑦相続欠格の主張
法律上当然に相続権を失う行為(例:被相続人の殺害など)があれば、相続権を否定できます。
遺留分対策について、くわしくはこちらのページをご覧ください。
遺留分侵害額請求をする側の注意点
合意書を作成して支払いを受ける
遺留分を請求して相手が適正額の支払いに応じてくれたら、合意書を作成しましょう。
合意書は法律上、必ず必要というわけではありません。
しかし、後々のトラブルを回避するために、できるだけ作成することをお勧めしています。
合意書の雛形については、こちらのページをご覧ください。
遺留分の時効に注意する
遺留分の請求には期限(時効)があり、時効が完成した場合には遺留分を請求する権利がなくなってしまいます(遺留分侵害額の請求は認められなくなります)。
具体的には、①被相続人が亡くなった事実と②侵害の原因となる贈与や遺贈があったことを知ったときから1年が過ぎると時効が完成し、権利が消滅します。
1年という期限は意外と早く過ぎてしまうため、遺留分が侵害されていることを知ったときは、できるだけ早く請求をすることが大切です。
遺留分の時効について詳しくはこちらをご覧ください。
遺留分は内容証明で請求する
遺留分の請求は内容証明郵便で行うのがポイントです。
内容証明郵便とは、誰が・誰に対して・いつ・どのような内容の郵便を出したのかを郵便局が証明するサービスのことです。
法律(民法)は遺留分の請求方法を指定していないため、口頭(電話)や普通郵便で行うこともできます。
しかし、口頭や普通郵便で請求した場合には、後になってから相手が「請求を受けていない」「遺留分の権利は時効にかかっている」などと言い出したときに、期限内に遺留分の請求をしたこと(時効にかかっていないいこと)を証明するのが非常に難しいのです。
そのため、内容証明郵便を利用することで、時効完成前に遺留分の請求をしたことを証明することが大切です。
遺留分侵害額(減殺)請求の手順について詳しくはこちらをご覧ください。
相続問題にくわしい弁護士に相談する
遺留分の請求(遺留分侵害額請求)について少しでも疑問や不安がある場合には、相続問題にくわしい弁護士に相談することをおすすめします。
遺留分の請求は、対処方法を間違えると、そもそもの権利がなくなってしまったり、争いが長期化してしまったり、せっかく労力と時間をかけても無駄になってしまったりするリスクがあるためです。
相続問題にくわしい弁護士に相談することで、内容証明郵便による遺留分の請求をはじめ、適切な時期に適切に対処することができます。
特に、遺留分などの相続にかかわる問題は、相続人同士が感情的になってしまい折り合いがつかないというケースが少なくありません。
最終的には、裁判所を介した調停や訴訟の手続きを利用して解決せざるを得ないケースもありますが、調停や訴訟になると解決までに長い時間がかかるのが一般的です(半年から長い場合には数年程度の時間がかかります)。
そこで、当事務所では、弁護士に相手との交渉を依頼し、できるだけ調停や訴訟によらずに解決する方法をおすすめしています。
法律の専門家である弁護士が第三者的な立場から交渉を行うことで、論理的な話し合いによる解決が期待できるためです。
相続問題を弁護士に相談すべき理由はこちらをご覧ください。
遺留分を主張された側の対処法
ここからは、反対に遺留分侵害額の請求をされた場合の対処法について解説します。
時効が完成していないか確認する
遺留分を主張(請求)された場合には、まずは遺留分の権利(遺留分侵害額請求権)について時効が完成していないかを確認しましょう。
上で説明したように、遺留分の請求(遺留分侵害額請求権)には1年の時効があり、時効が完成している場合には、遺留分の請求をする権利が消えてしまいます(請求を拒否することができます)。
そこで、まずは、遺留分を請求している人が①相続人の死亡(相続の開始)を知った日と、②贈与や遺贈があったことを知った日がそれぞれいつなのかを確認します。
①、②のうち、より遅い日から1年を過ぎている場合には時効が完成しています。
遺留分の時効について詳しくはこちらをご覧ください。
遺留分権利者にあたるかを確認する
遺留分を主張(請求)している人がそもそも遺留分権利者にあたるのかを確認することも大切です。
当然のことながら、遺留分権利者にあたらない人には遺留分を請求する権利がありません。
以下の人は、遺留分権利者にあたりません。
- 被相続人の兄弟姉妹
- 相続放棄した推定相続人(相続人となる予定の人のことです。)
- 相続廃除された推定相続人
- 相続欠格にあたる推定相続人
「相続放棄」、「相続廃除」、「相続欠格」はいずれも相続人としての地位を失わせる制度です。
相続人としての地位を失う場合には、相続人に対して保障される遺留分の権利も失うこととなります。
相続放棄・相続廃除・相続欠格とは、それぞれ以下のような制度です。
相続放棄 | 推定相続人が自分の意志で相続を辞退することを認める制度です。 |
---|---|
相続廃除 | 推定相続人から被相続人に対する著しい非行行為(重大な侮辱や虐待など)があった場合に、被相続人の意志で相続人から除外する制度です。 |
相続欠格 | 推定相続人が違法行為などによって相続を自分に有利に進めようとした場合に、法律上当然に被相続人から除外されるという制度です。 |
正当な請求金額かを確認する
請求されている遺留分の金額が正当な金額かを確認しましょう。
不当に多くの金額を請求されている場合には、請求の金額を争うことができます。
請求の金額が不当である場合には、当事者同士の話し合いによる解決をめざします。
弁護士に話し合いの交渉を依頼するのもおすすめです。
遺留分侵害額の計算方法について詳しくはこちらをご覧ください。
遺留分の請求を無視しない
遺留分の請求を無視してはいけません。
思わぬ不利益を受ける可能性があるためです。
「遺留分の請求を無視していればあきらめてくれるかも」などと考えて放置していると、遺留分権利者から調停や訴訟を起こされる可能性があります。
特に、訴訟を起こされた場合には裁判所に出廷しなければならず、出廷せずに欠席を続けると「敗訴判決」を受ける場合があります。
さらに、遺留分権利者が「敗訴判決」をもとに財産の強制執行(財産の差押さえや競売などのことです。)を申し立てる可能性もあります。
遺留分を支払うための金銭的な余裕がない場合には、分割払いや支払い期日の延長などについて交渉することも検討しましょう。
相続問題にくわしい弁護士に相談する
遺留分を主張(請求)された場合には、相続問題にくわしい弁護士に相談されることをおすすめします。
遺留分の分野は専門知識が必要であり、一般の方が自力で適切な反論をするのは難しい面があるためです。
例えば、遺留分の時効が完成しているかどうか、請求者は遺留分権利者にあたるのか、請求の金額は正当なものか、などの点について正確な判断が必要となります。
相続問題にくわしい弁護士に相談することで、正確な知識に基づき、確認すべきポイントや反論のポイントなどについて適切なアドバイスをもらえることが期待できます。
相続問題を弁護士に相談すべき理由はこちらをご覧ください。
遺留分侵害額請求する際の流れ
遺留分侵害額請求をする流れは、以下のとおりです。
遺留分侵害額請求の意思表示
遺留分侵害額請求には1年間という時効があります。
したがって、まずは書面で遺留分侵害額請求の意思表示をしましょう。
書面は、内容証明郵便※を使うことをお勧めします。
※内容証明郵便に配達証明を加えると、いつ相手に書面が配達されたかを証明することができます。
遺留分侵害額請求の書面については、弁護士に依頼されるとその弁護士が作成し、代理人として相手に差し出してくれます。
弁護士に依頼せずに、ご自身で遺留分侵害額請求をする場合、書面もご自身で作成することとなります。
遺留分侵害額請求の書面の雛形については、こちらのページをご覧ください。
別に作成した書式(新カテゴリーの遺留分侵害額請求通知書)へリンク
ただし、最適な書面の内容は具体的な状況で異なります。
したがって、上記雛形は参考程度とし、専門の弁護士に相談されることをお勧めします。
当事者間での話し合い
遺留分侵害額請求権を行使した後は、具体的な解決に向けて行動していきます。
解決方法の一つに、当事者間での話し合いがあります。
遺留分の回復のため、誰から誰に、どれだけの金額を、いつ支払うか、といった点について、当事者同士で話し合うのです。
当事者間での示談交渉であれば、裁判所を通さず、比較的少ない労力で短期間に問題解決できます。
しかし、あくまで当事者同士での話し合いとなるため、法律にのっとった適切な解決は保障されません。
また、相手方が交渉に応じない場合や決裂した場合には解決できません。
遺留分侵害額請求を当事者のみで解決するのは一般的には難しいケースが多いです。
相手との交渉が難しい場合、弁護士に交渉を依頼されるとよいでしょう。
遺留分侵害額請求の調停
遺留分侵害額の請求調停は、家庭裁判所の調停で話し合い、当事者間の合意により解決する方法です。
当事者間での話し合いによる解決が難しい場合、裁判所の調停委員が間に入ってくれることで、解決できる場合もあります。
ただし、一般に調停手続は長い期間がかかり、裁判所に出向く必要もあるので相当な労力を要します。
なお、遺留分侵害額請求については、訴訟を提起する前に家庭裁判所での調停をする必要があります(調停前置主義といいます。家事手続法257条)。
訴訟
調停で解決できなかった場合、次は、訴訟を提起して裁判をすることになります。
裁判では、最終的には裁判所が判決を下して、結論を出してくれます。
しかし、調停と同じく、一般に長期間を要します。
また、手続が複雑で、専門的知識が必要です。
まとめ
- 生前贈与とは、被相続人が生きている間に無償で財産を与える契約をすることです。
- 遺留分とは、被相続人の配偶者(妻・夫)、子ども、直系尊属(父母、祖父母等)に対して法律上保障されている最低限の遺産の取り分のことをいいます。
- 具体的な遺留分の金額は、遺留分を計算するためのベースとなる財産の金額に「遺留分の割合」を掛けあわせて計算します。
- 生前贈与のうち、①相続開始前の10年間にされた相続人への生前贈与であり、かつ特別受益にあたるもの、または、②相続開始前の1年間にされた相続人以外への生前贈与は、遺留分に影響します。これら①②にあたる生前贈与の金額は、遺留分を計算するためのベースとなる財産の金額に足し合わされることとなり、その結果、遺留分の金額が大きくなります。
- 遺留分の分野は高度の専門知識が必要となる分野であるため、遺留分の請求をしたい場合や遺留分の請求を受けた場合には、相続問題にくわしい弁護士に相談されることをおすすめします。
当事務所では、相続問題にくわしい弁護士で構成する相続問題対策チームを設置しており、遺留分に関するご相談はもちろんのこと、遺産分割協議や遺言書の作成、相続登記、相続税の申告、相続人同士のトラブルなど、相続に関する幅広いご相談に対応しております。
遠方の方についてはオンラインでのご相談も承っておりますので、ぜひお気軽にご利用ください。