腕神経叢とは?場所・構造・治療法をわかりやすく解説

監修者:弁護士 鈴木啓太 弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士


「腕神経叢(わんしんけいそう)」とは、首の付け根から腕や手にかけて広がる神経の集まりです。

首の横から鎖骨の下を通り、脇の下(腋窩)にかけて位置しています。

人間の体にはいくつかの神経叢がありますが、その中でも上肢(肩や腕、手)をコントロールする重要な神経の集まりが「腕神経叢」です。

そして、バイクや自転車の転倒事故、あるいは労働災害などで腕神経叢が損傷を受けると、上肢に重い麻痺やしびれを残すことが多く、最悪の場合は腕が完全に動かなくなる深刻な後遺症へとつながります。

治療には専門医による早期の外科的手術やリハビリが不可欠ですが、万一、症状が残ってしまった場合には、その後の人生を守るために、適切な後遺障害等級の認定や、賠償金・労災給付の請求を行う必要があります。

この記事では、腕神経叢の基本的な場所や構造、具体的な治療法から、事故に遭った際の法的補償の仕組みなどについて、弁護士がわかりやすく解説していきます。

腕神経叢(わんしんけいそう)とは?

腕神経叢の場所と読み方

腕神経叢の場所と読み方
「腕神経叢(わんしんけいそう)」とは、首の付け根から腕や手にかけて広がる神経の集まりであり、英語では「Brachial Plexus(ブレキアル・プレクサス)」と表記されます。

その具体的な場所は、首の横から鎖骨の下を通り、脇の下(腋窩)にかけてのエリアに位置しています。

私たちは脳からの指令を体幹や四肢に伝えるために脊髄という神経の幹を持っていますが、腕神経叢はこの脊髄(首の部分の頸髄)から出た細い神経の根(神経根)が、首の骨(頸椎)の隙間から外側へと進むことで形成されます。

脊柱の側面から出た神経は、複雑に入り組みながら束(たば)となり、鎖骨と第1肋骨の間にある狭い隙間を通過して脇の下へと向かいます。

そして、脇の下に到達するまでの間に神経線維が複雑に入れ替わりながら、最終的に1本の太い束から枝分かれして、二の腕(上腕)、前腕、そして指先へとつながる広大なネットワークを構築しています。

このように、首から腕の付け根にかけて網の目のように張り巡らされた構造をしており、上肢全体をコントロールする場所が腕神経叢です。

 

神経叢とは?

「神経叢(しんけいそう)」の「叢」という漢字は、音読みでは「ソウ」ですが、訓読みでは、「くさむら」や「むら(がる)」と読みます。

「叢」には、草木が群がり生えている様子や、多くのものが一か所に集まるという意味があります。

したがって、神経叢は、「神経の集まり」や「神経が網の目のように複雑に交差している場所」を指します。

脊髄から出た神経は、そのまま1本ずつ独立して目的地に向かうわけではありません。

特に腕や足といった複雑かつ精密な動きが求められる器官に向かう神経は、途中で一度お互いの線維を細かく交換し合い、合流と分岐を繰り返しています。

人間の体にはいくつかの神経叢がありますが、その中でも上肢(肩や腕、手)を支配する重要な神経の集まりが「腕神経叢(わんしんけいそう)」です。

 

腕神経叢の支配領域と機能

腕神経叢の主たる機能は、人間の上肢(肩、腕、手、指先)におけるほぼ全ての「運動」と「感覚」を司ることです。

たとえば、私たちが日常生活で何気なく行っている、「腕を持ち上げる」、「肘を曲げる」、「手首を返す」、「指を細かく動かして物を掴む」といった運動命令も、この腕神経叢を経由して脳から筋肉へと伝えられています。

また、手が物に触れたときの触覚、熱さや冷たさ、痛みなどの皮膚感覚を脳にフィードバックする役割も持っています。

腕神経叢は複雑に線維を入れ替えた後、最終的に以下の重要な「5つの主要な末梢神経」へと分岐し、それぞれに支配領域があります。

腕神経叢の支配領域と機能

 

筋皮神経(きんぴしんけい):首から腕に伸びる末梢神経です。

肘を曲げる(屈曲運動)動作を司るほか、前腕の外側の皮膚感覚を支配しています。

 

正中神経(せいちゅうしんけい):首から腕を通って手のひらや指先まで伸びている重要な末梢神経です。

手首を曲げる動作や、親指と他の指を向かい合わせるような精巧な手指の動きを可能にします。

障害されると「猿手」と呼ばれる変形を来すことがあります。

 

尺骨神経(しゃっこつしんけい):腕から小指・薬指へと通じる神経です。

手の精密な運動を行うための多くの小さな筋肉(手内筋)をコントロールしており、小指や薬指の運動と感覚を司ります。

障害されると「鷲手(かぎ爪指変形)」を呈することが知られています。

 

橈骨神経(とうこつしんけい):腕の親指側を通り、手首や指を伸ばす筋肉と手の甲の感覚をコントロールする神経です。

ここを負傷すると手首が上がらなくなる「下垂手(ドロップハンド)」や「下垂指」を引き起こします。

 

腋窩神経(えきかしんけい):首から腕へと伸びる神経の束から分岐し、主に肩の運動と感覚をコントロールする末梢神経です。

腕を外側に持ち上げる(外転運動)など、肩関節の重要な動きを制御し、肩の周囲の感覚を支配しています。

このように、腕神経叢は上肢が機能するために不可欠な5大神経の源流であり、私たちの手が自由に動くための根幹を支えています。

 

 

【図解】腕神経叢の構造と走行|覚え方と分岐の仕組み

構造の基本「根・幹・束・枝」の流れ

構造の基本「根・幹・束・枝」の流れ

腕神経叢は、首の脊髄から出た神経が複雑に入れ替わりながら腕へと向かうネットワークです。

この複雑な構造は、近位から遠位にかけて「根(Roots)」、「幹(Trunks)」、「束(Cords)」、「枝(Branches)」という4つの段階を経て流れていきます。

構成の源流となるのは、第5頸神経から第1胸神経(C5〜T1)の前枝である5本の神経根です。

これらが前斜角筋と中斜角筋の間を通りながら合流して「上・中・下」の3つの神経幹を形成し、さらに鎖骨と第1肋骨の間を通過する際に「外側・内側・後」の3つの神経束へと再編成され、最終的に各末梢神経の枝へと分岐します。

 

国家試験対策にも!腕神経叢の有名な「覚え方」

医療系の国家試験において、腕神経叢の構成やそこから分岐する主要な末梢神経の名称を正確に暗記することは必須の知識であり、定番の語呂合わせが存在します。

まず、腕神経叢を構成する神経根の範囲「C5〜T1」は、「5時から1時まで猛勉強」というフレーズで覚えるのが効果的です。

さらに、そこから最終的に分岐する5本の主要な末梢神経(筋皮神経、腋窩神経、正中神経、橈骨神経、尺骨神経)の順番を覚えるための有名な語呂合わせが、「筋肉(筋皮)の腋(腋窩)に、正(正中)直(橈骨)な尺(尺骨)」というフレーズです。

また、構造の順番である「根・幹・束・枝」のプロセスが混同しやすいときは、英語の頭文字をとった「R-T-C-B(Root – Trunk – Cord – Branch)」の並びを意識すると、解剖学的な流れを頭の中でスムーズに整理することができます。

 

重要な分岐点「後神経束」とその他の束

腕神経叢の神経束は、腋窩動脈という太い血管との位置関係によって「後神経束(こうしんけいそく)」、「外側神経束」、「内側神経束」の3つに分類されます。

上腕の後面(伸側)に位置する後神経束からは、主に肩を動かす「腋窩神経(えきかしんけい)」と、腕や手首を伸ばす動作を司る「橈骨神経(とうこつしんけい)」の2大神経が分岐します。

さらに、背中や肩甲骨まわりの筋肉を支配する肩甲下神経や胸背神経もここから発生します。

一方で、外側神経束からは筋皮神経が、内側神経束からは尺骨神経がそれぞれ分岐します。

また、外側神経束と内側神経束のそれぞれから伸びた外側頭と内側頭が合流することで、正中神経が形成されます。

このように、どの束からどの神経が生まれるかを把握することが病態の理解には不可欠です。

 

 

腕神経叢に関連する医療処置とリスク|ブロック注射とMRI

腕神経叢ブロックとは?適応手術と効果

「腕神経叢ブロック」とは、首から手先へと向かう神経の根幹である腕神経叢の周辺に局所麻酔薬などを注入し、上肢の感覚や運動を一時的に遮断する局所麻酔・治療法の一種です。

痛みの伝達経路を直接遮断することで強力な鎮痛効果を発揮し、交感神経の遮断による血流改善も期待できます。

かつては医師の感覚や手探りに頼る部分もありましたが、現代の医療においては超音波診断装置(エコー)を用いた「エコーガイド下」で行うのが一般的です。

リアルタイムで血管や神経、軟部組織の構造を画像確認しながらきわめて細い針を進められるため、不要な組織へのダメージや神経損傷、血管穿刺といったリスクを回避し、より安全かつ正確に薬液を標的へ届けることが可能になっています。

 

MRI検査でわかること・わからないこと

交通事故やスポーツによる外傷、あるいは医療処置後に腕が動かなくなった場合、その原因を特定するために画像検査が行われます。

しかし、一般的なレントゲン(X線)やCT検査は主に骨折や出血の有無を迅速に確認するのを得意としており、肉眼では見えない軟らかい組織である「神経そのもの」を写し出すことはできません。

そのため、腕神経叢の損傷や圧迫が疑われるケースでは、磁場と電波を利用して軟部組織を精密に描出する「MRI検査」が重要となります。

MRI検査を行うことで、腕神経叢が周囲の組織や骨片によってどこで圧迫されているか、あるいは神経の連続性が保たれているか(有連続性損傷)といった詳細な病態を視覚的に評価できます。

ただし、MRIであっても神経線維の細かな微視的損傷や、神経の「機能的な麻痺(形は保たれているが電気信号が通らない状態)」までは完全に判別できないことがあります。

そのため、引き抜き損傷のより確実な診断や手術適応の決定には、同検査に加えて、脊髄の硬膜下に造影剤を注入して神経根の形態を撮影する「脊髄造影(ミエログラフィー)」や、電気生理学的検査(針筋電図など)を組み合わせて総合的に判断することが不可欠です。

 

医療処置に伴う合併症・後遺症のリスク

腕神経叢ブロックは、エコーガイド下の普及によって安全性が向上しているものの、針を身体に突き刺して神経の至近距離に薬剤を注入するという特性上、一定の合併症や後遺症のリスクが存在しています。

代表的な合併症としては、首の深い位置を穿刺する際に肺を包む膜を傷つけてしまう「気胸」、誤って太い血管に薬液が注入されたり基準値を超えて吸収されたりすることでめまい、痙攣、最悪の場合は心停止を来す「局所麻酔薬中毒」、そして針が直接神経を傷つけたり薬液の圧力で神経が圧迫されたりする「神経損傷」が挙げられます。

また、斜角筋間アプローチなどでは、同側を走る横隔神経の麻痺が必発するため、呼吸機能が低下している高齢者などでは注意が必要です。

通常、局所麻酔によるしびれや運動麻痺は、薬の代謝とともに数時間から長くとも翌日には自然に消失します。

しかし、万が一、ブロック注射などの医療処置を受けた後、数週間や数ヶ月が経過しても永続的な腕のしびれ、感覚鈍麻、あるいは腕や手指が動かないといった重度な麻痺が残ってしまった場合、「医療過誤(医療ミス)」の可能性もあります。

このような場合には、適切な救済を受けるために弁護士に相談することをおすすめします。

 

 

腕神経叢損傷の原因と症状|交通事故や労災の被害者へ

代表的な受傷原因(交通事故・分娩麻痺など)

腕神経叢損傷を引き起こす原因は、外部から急激に加わる強い衝撃、すなわち高エネルギー外傷です。

たとえば、オートバイや自転車の転倒事故、あるいは歩行者として車にはねられる交通事故などです。

特にバイクの転倒時に、肩と側頭部が地面に強く叩きつけられるように着地すると、首と肩が反対方向へ強制的に引き離される強烈な牽引力が働き、腕神経叢が根元から引き抜かれたり激しく引き伸ばされたりします。

このほか、建設現場などの高所からの転落事故や、重機や工場機械に腕を巻き込まれる労災事故でも重篤な損傷が発生します。

スポーツ領域では、スキーやスノーボードでの高速滑走時の転倒、ラグビーやアメリカンフットボールといった激しいコンタクトスポーツでの衝突も原因となります。

さらに、成人以外では「分娩麻痺(ぶんべんまひ)」と呼ばれる産科的損傷もあります。

これはお産の際、難産や骨盤位分娩において赤ちゃんの頭や肩が産道に引っかかり、分娩操作によって頭と肩が引き離されるような強い力が加わることで生じるものです。

 

重症度の分類と症状(全型麻痺と部分的麻痺)

腕神経叢損傷の症状は、神経が傷ついた位置(高位)や範囲によって異なり、大きく「全型」、「上位型」、「下位型」の3つに分類されます。

最も重篤な「全型(全腕神経叢麻痺)」は、C5からT1までのすべての神経根がダメージを受けた状態であり、肩から指先に至るまで上肢全体の運動機能と感覚が完全に失われます。

腕全体がだらりと垂れ下がり、自力では動かすことはできません。

一方、一部分が障害される部分的麻痺のうち、「上位型(エルブ麻痺)」は主にC5・C6の損傷で起こります。

肩を持ち上げる動作や肘を曲げることが不能になりますが、指先は動かせるのが特徴です。

さらに、「下位型(クランプケ麻痺)」はC8・T1の損傷で、手首や指を細かく動かす筋肉が麻痺し、物をつかむなどの精密な動作ができなくなり、「かぎ爪指(クローハンド)」変形などを引き起こす可能性があります。

なお、神経根が脊髄から引き抜けるほどの重症例では、交感神経が阻害されて眼瞼下垂や瞳孔縮小などが起きる「ホルネル症候群」を合併することがあり、重症であることを示すサインとなります。

 

治療法と予後(神経移植・移行術)

腕神経叢損傷の治療法は、神経の連続性が保たれている軽度のもの(神経不全症など)であれば、安静や投薬、長期的なリハビリテーションによる保存的療法で自然回復を待つことができます。

しかし、神経根が脊髄から完全に引き抜けてしまった「引き抜き損傷」や、神経が完全に断裂している重症例では、自然に機能が回復することは絶対に期待できません。

外科的治療としては、自家神経を欠損部に橋渡しする「神経移植術」や、損傷していない他の健常な神経(肋間神経や副神経など)を移動させて麻痺した筋肉に繋ぎ変える「神経移行術」などが実施されます。

一般的に再建手術は受傷後3〜6ヶ月以内に行うのが望ましいとされており、治療への着手が遅れると、一生涯にわたって上肢の機能回復が困難になる重大なリスクを背負うことになります。

 

 

腕の麻痺・しびれが残った場合の法的補償と後遺障害認定

交通事故による腕神経叢損傷の「後遺障害等級」

交通事故で腕神経叢を損傷し、適切な治療や手術を行っても腕の麻痺やしびれが完治しなかった場合、「後遺障害等級」の認定を受ける必要があります。

認定される等級は、障害が残った部位(関節や手指)とその可動域制限の程度、あるいはしびれや痛みの重症度によって細かく規定されています。

腕神経叢損傷に伴う主な後遺障害等級の基準は以下のとおりです。

後遺障害等級 後遺障害の内容
5級6号 一上肢の用を全廃したもの
6級6号 一上肢の三大関節中の二関節の用を全廃したもの
7級7号 一手の五の手指又はおや指を含み四の手指の用を全廃したもの
8級6号 一上肢の三大関節中の一関節の用を全廃したもの
10級10号 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
12級6号 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号 局部に神経症状を残すもの

腕神経叢の完全麻痺などにより片腕が一切動かなくなってしまった状態(一上肢の用を全廃したもの)は、後遺障害等級「第5級6号」に該当します。

さらに、激痛が持続し、通常の生活を営むことが著しく困難であると判断された場合は、単なる麻痺の5級に留まらず、より上位の重い等級(別等級)の認定が考慮される可能性があります。

後遺障害の審査において、医師による専門的な「他覚的所見」によって、障害の存在を客観的に証明することが必要です。

具体的には、前述したMRI検査や脊髄造影(ミエログラフィー)による神経根の形態的異常の証明に加え、針筋電図検査や神経伝導速度検査などの「電気生理学的検査」を行い、神経の電気信号が遮断されている事実を科学的に立証することが等級認定の成否を分けます。

 

適切な賠償金を得るためのポイント

  • ポイント 後遺障害認定、示談交渉を弁護士に依頼する

腕神経叢損傷により、腕が上がらない、手指を細かく動かせないといった機能障害は、製造業や建設業などの肉体労働はもちろん、デスクワークにおけるタイピングや、営業職・医療職に至るまで、あらゆる仕事において労働能力の低下を引き起こします。

そのため、後遺障害が残ったことで将来得られるはずだった減収分を補償する「逸失利益(いっしつりえき)」の算定においては、労働能力喪失率が非常に高く評価され、賠償額が数千万円から1億円を超えるようなケースも少なくありません。

同様に、後遺症を負ったことに対する精神的苦痛への補償である「後遺障害慰謝料」の金額も高額になる可能性があります。

ただし、加害者側の任意保険会社が被害者に対して提示してくる賠償額(自賠責基準や任意保険社内基準)は、本来法的に受け取るべき「弁護士基準(裁判基準)」に比べて、著しく低く抑えられています。

したがって、交通事故事件や後遺障害認定に精通した弁護士に早期に依頼し、正当な裁判基準での交渉を進めることが、適切な補償を獲得するためのポイントとなります。

 

労災事故による腕神経叢損傷

勤務中(仕事中)の事故や通勤中の交通転落事故などによって腕神経叢を損傷した場合、国の制度である「労災保険」から補償を受けることができます。

労災事故に遭った場合、まずは「療養(補償)給付」によって、治療費や入院費、手術費などが原則として自己負担なしで全額支給されます。

また、怪我の治療のために仕事を休まざるを得なくなった場合には、休業4日目から「休業(補償)給付」が支給されます。

そして、これ以上治療を続けても医学的に症状の改善が見込めないと医師が判断した段階でも、なお腕の麻痺や激しいしびれ・痛みが残ってしまった場合、労働基準監督署に対して「障害(補償)給付」を申請できます。

ただし、勤務先の安全配慮義務違反(現場の安全対策を怠っていたなど)が原因で事故が起きた労災事案においては、労災保険から給付された金額を差し引いた上で、不足する慰謝料や逸失利益の全額について、勤務先や加害者個人に対して直接「損害賠償請求」を行う必要があります。

労災事故における賠償の請求手続きにおいても、適切な障害等級の獲得と、弁護士による法的な交渉が不可欠となります。

 

 

腕神経叢についてのQ&A

腕神経叢が障害されるとどうなる?

腕神経叢が障害されると、その損傷した部位や程度に応じて、上肢(肩、腕、手、指先)に運動麻痺や感覚障害、自律神経障害が現れます。

そのため、「肩が上がらない」、「肘を曲げられない」、「手首や指を動かせない」といった運動機能の低下が生じます。

また、腕から手先にかけて激しい痛みやしびれを感じたり、逆に感覚が完全に消失したりすることもあります。

軽度の損傷であれば時間の経過とともに自然回復が期待できますが、神経が引き抜かれるような重度の損傷では麻痺が全く回復せず、一生涯にわたって腕全体の機能が失われる深刻な後遺症となるリスクがあります。

 

腕神経叢の分類は?

腕神経叢は、腋窩動脈との位置関係によって「外側神経束」、「後神経束」、「内側神経束」の3つに分類され、それぞれ筋皮神経、橈骨・腋窩神経、尺骨神経などへ分岐します。

一方、外傷による損傷範囲の分類としては、主にC5・C6が傷つき肩や肘が動かなくなる「上位型(エルブ麻痺)」、C8・T1が傷つき手指の運動が阻害される「下位型(クランプケ麻痺)」、そしてC5〜T1のすべてが破壊され肩から指先までの全機能が消失する「全型(全腕神経叢麻痺)」の3つに分類されます。

 

腕神経叢損傷は何科を受診すべきですか?

腕神経叢損傷が疑われる場合は、まず「整形外科」を受診してください。

整形外科の中でも特に手の外科治療を専門とする「手外科」や、首の神経に精通した「脊椎外科」の外来がある総合病院や専門クリニックを選択することが推奨されます。

早期に専門医の診察を受けることで、MRI検査や電気生理学的検査による的確な病態把握が可能となり、将来的な後遺症を最小限に抑えるための神経移植や神経移行術といった高度な再建手術へスムーズに移行できます。

 

腕神経叢ブロックは痛いですか?

腕神経叢ブロックは注射であるため、針が皮膚を通る瞬間のチクッとした痛みや、薬液が注入される際の特有の重だるい感覚を伴います。

しかし、一般的には事前に皮膚へ局所麻酔を施してから行うことが多いため、大人であれば十分に耐えられる痛みです。

また、現代の医療においては、超音波診断装置(エコー)を用いてリアルタイムで神経や血管の位置を確認しながら安全かつ正確に針を進める手技が確立されています。

これにより、余計な組織を傷つけるリスクが大幅に低減されており、過度な痛みを心配する必要はありません。

 

交通事故で腕が動かなくなりました。治りますか?

交通事故で腕が動かなくなった場合、治るかどうか(回復の可否)は原因と損傷の重症度によって大きく異なります。

原因が骨折や脱臼、むちうちによる一時的な神経の炎症であれば、適切な手術やリハビリを行うことで完治する可能性が十分にあります。

しかし、「腕神経叢損傷」を負い、神経が脊髄から引き抜けているような重度の場合は、自然に治ることは絶対にありません。

受傷後3〜6ヶ月以内の早期に神経再建手術を受けなければ、一生涯にわたる深刻な麻痺(後遺障害)が残るおそれがあります。

 

 

まとめ

腕神経叢損傷は、日常生活や仕事に大きな影響を及ぼすおそれのある外傷です。

適切な医療処置や手術を行っても腕の麻痺や激しいしびれ、痛みが完治しなかった場合は、交通事故の後遺障害等級や労災保険の障害等級において、その重症度に見合った正しい等級認定を獲得することが何よりも重要になります。

しかし、加害者側の保険会社から提示される賠償額は、本来被害者が受け取るべき「弁護士基準(裁判基準)」よりも大幅に低く抑えられているのが現実です。

正当な権利を主張し、将来の生活を守るための適切な補償を手に入れるためには、弁護士に相談するようにしてください。

デイライトでは、交通事故を専門とし、後遺障害に詳しい弁護士がチームで被害者のサポートを全力で行っており、多くの被害者の相談に対応してきた実績もあります。

オンラインでの相談も可能ですので、まずはお気軽にご相談ください。

 

 

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