頚椎骨折とは?弁護士が後遺症のポイントについて解説

執筆者:弁護士 西崎侃 (弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士)

頚椎骨折とは、交通事故により、首にある頚椎を骨折してしまった状態のことをいいます。

交通事故により頚椎を骨折してしまうと、変形障害(頚椎が曲がってしまった状態)や運動障害(頚椎が動かない状態)になる可能性があります

突然の交通事故で頚椎骨折になられた被害者は、これまで不自由なくできていた動きや態勢ができなくなり、いつも通りの日常生活をおくることが難しくなっていると思います。

ここでは、以下のような事項について解説しておりますので、頚椎を骨折してしまった被害者のお役に立てれば幸いです。

この記事でわかること

  • 頚椎骨折の意味がわかる
  • 頚椎骨折になった場合に認定される可能性がある後遺障害がわかる
  • 頚椎骨折になった場合の具体的な後遺障害慰謝料等がわかる
  • 頚椎骨折で適切な賠償金を得るためのポイントがわかる

頚椎骨折とは

頚椎骨折とは、交通事故により、首にある頚椎を骨折してしまった状態のことをいいます。

頚椎骨折は、大きく分けると以下の3つに分けることができます。

  1. ① 環椎部分(下記図の「第1頚椎」の部分)を骨折すること(ジェファーソン骨折)
  2. ② 軸椎部分(下記図の「第2頚椎」の部分)を骨折すること
  3. ③ 椎体部分(下記図の「第7頚椎」の部分)を骨折すること

頚椎図

①環椎部分の骨折は、自転車やバイクを運転していて首に強い衝撃・圧力を受けた場合に多く見られる症状です。

②軸椎部分の骨折は、首の動きが固定された状態になると後遺障害が残る危険性があります。

③椎体部分の骨折は、交通事故にあわれた被害者の中で多く見られる症状です。

なかでも、椎弓骨折(第7頚椎の後方部分の骨折)の場合には後遺障害が残る危険性があります。

 

頚椎骨折と頸椎骨折との違い

「頚椎(けいつい)」と似た漢字に「頸椎(けいつい)」というものがあります。

しかし、「頚椎骨折」と「頸椎骨折」は同じ意味であり、「頚」か「頸」かの違いで意味が異なるということはありません。

そのため、病院によって診断書に記載する漢字が異なることがありますが、法的に何か影響があることはないのでご心配はいりません。

 

頚椎骨折したらどうなる?

頚椎骨折の症状

交通事故により頚椎を骨折すると、主に次のような症状がでることがあります。

  • 頚部の痛み
  • 頚部、肩、腕の可動域(動かすことが可能な範囲)が制限される
  • 頚部の姿勢が異常になる

また、交通事故により頚椎を骨折すると、事故時の強い衝撃で脊髄(背骨の中の空間に保護された神経)を損傷することもあります

交通事故の衝撃で脊髄も損傷すると、上肢(肩関節よりも下の部分)や下肢(股関節よりも下の部分)の麻痺が生じる危険性もあります。

 

頚椎骨折の日常生活への影響

頚椎骨折の場合、治療方法としては、頚部の痛みが出たり悪化したりしないようにギプス等で固定することが考えられます。

ギプス等で固定した頚部は安静にする必要があるため、これまで当たり前のようにしていた立ち座りや歩行が困難になる可能性が高いです。

また、ギプス等で固定しても強い痛みがある場合には、手術をしなければならない可能性もあります。

 

 

頚椎骨折の原因

交通事故や労災事故で頚椎骨折となる原因としては、事故により首の骨に強い衝撃が加わったことが考えられます。

事故により首の骨に強い衝撃が加わるケースとしては、次のようなケースが考えられます。

  • 被害者または加害者の車の損傷の程度が大きい場合
  • 加害者の車が法定速度を大きく超える程度にスピードを出していた場合
  • 加害者の車が貨物自動車や大型トラックなどの大型車である場合
  • 被害者が歩行中または自転車で走行中の場合

 

 

頚椎骨折の後遺障害認定の特徴と注意点

交通事故により被害者が頚椎骨折になってしまった場合、後遺障害としては、次のように大きく2つに分けることができます。

  • 変形障害(頚部が曲がってしまった状態)
  • 運動障害(頚部が動かない状態)

具体的には、以下のような後遺障害等級のいずれかに認定される可能性があります。

等級 具体的な症状
変形障害 運動障害
第6級5号
  • ①背骨(頚椎を含む。)の骨折により、2個以上の椎体(背骨を構成する骨)の前方の高さが著しく減少し、②後彎(こうわん)が生じているもの
  • ①背骨(頚椎を含む。)の骨折により、1個以上の椎体(背骨を構成する骨)の前方の高さが減少し、②後彎(こうわん)が生じ、③コブ法による側彎の程度が50度以上となっているもの
  • ①頚椎及び胸腰部に脊椎固定術(脊椎をボルト等で固定して安定させる術式)が行われており、②頚部または胸腰部が強直したもの
  • ①項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化があり、②頚部または胸腰部が強直したもの
第8級相当
  • ①背骨(頚椎を含む。)の骨折により、1個以上の椎体の前方の高さが減少し、②後彎が生じているもの
  • コブ法による側彎の程度が50度以上となっているもの
  • ①環椎または軸椎の変形・固定により、②60度以上の回旋位となっているもの
  • ①環椎または軸椎の変形・固定により、②50度以上の屈曲位または60度以上の伸展位となっているもの
  • ①環椎または軸椎の変形・固定により、②側屈位となっており、③矯正位の頭蓋底部の両端を結んだ線と軸椎の下の部分の平行線が交わる角度が30度以上となっているもの
第8級2号
  • ①レントゲン写真等で確認できるような②頚椎及び胸腰椎の骨折等があり、②頚部または胸腰部の可動域が参考可動域角度の2分の1以下に制限されたもの
  • ①頚椎及び胸腰部に脊椎固定術が行われており、②頚部または胸腰部の可動域が参考可動域角度の2分の1以下に制限されたもの
  • ①項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化があり、②頚部または胸腰部の可動域が参考可動域角度の2分の1以下に制限されたもの
  • 頭蓋と上位頚椎との間に著しい異常可動性が生じたもの
第11級7号
  • 背骨の骨折等をMRI、CT、レントゲン写真(X線検査)等で確認できるもの
  • 脊椎固定術が行われたもの
  • 3個以上の脊椎について、椎弓形成術(ついきゅうけいせいじゅつ。)が行われたもの



※「2個以上の椎体の前方の高さが著しく減少」したとは、次のような関係にある場合をいいます。
(減少したすべての椎体の後方の高さの合計)ー(減少後の椎体の前方の高さの合計)≧(減少した椎体の1個あたりの後方の高さ)

※「1個以上の椎体の前方の高さが減少」したとは、次のような関係にある場合をいいます。
(減少したすべての椎体の後方の高さの合計)ー(減少後の椎体の前方の高さの合計)≧(減少した椎体の1個あたりの後方の高さ)÷ 2

頚椎骨折により脊柱が変形してしまった場合に、具体的にどの後遺障害等級に認定されるかは、以下のような事情を考慮して判断することになります。

  1. ① 後彎(こうわん。背骨が後ろに曲がっている状態)の程度
  2. ② MRI、CT、レントゲン検査(X線検査)等により骨折等を確認できるか否か
  3. ③ コブ法による側彎(そくわん。背骨が左右に曲がっている状態)の程度 など

そのため、交通事故で頚椎骨折になってしまった場合、MRI、CT、レントゲン検査が重要になってきます。

なお、MRI検査だけでは「椎体骨折」と「椎体終板変性(加齢とともに椎間板の高さが減少していくこと)」が間違われることがあります。

医師でも「椎体骨折」ではないのに「椎体終板変性」と誤診することがあります。

「椎体骨折」と「椎体終板変性」の区別は、MRI検査だけではできない場合があるため、CTやレントゲン検査もあわせて受けられることをおすすめします。

後遺障害等級によって慰謝料の金額が変わることや後遺障害認定までの流れについて、詳しく確認されたい場合は以下の記事をご覧ください。

 

 

頚椎骨折の慰謝料などの賠償金

交通事故で頚椎骨折になった場合、以下の項目を請求できる可能性があります。

  1. ① 入通院慰謝料
  2. ② 後遺障害慰謝料
  3. ③ 後遺障害逸失利益

①入通院慰謝料とは、入通院期間に応じた慰謝料のことをいいます。

②後遺障害慰謝料とは、自賠責保険会社で後遺障害が認定された場合に認められる慰謝料のことをいいます。

ここでは、①入通院慰謝料と②後遺障害慰謝料の相場を記載しておりますので、ご参照ください。

慰謝料の種類 慰謝料の決め方 相場
①入通院慰謝料 怪我の程度と入通院期間の長さ 通院1日2,711円〜9,333円
入院1日7,555円〜17,666円
②後遺障害慰謝料 後遺障害が残ったときの障害の程度(等級の程度) 420万円〜1180万円

※相場の欄に記載している金額は、すべて弁護士基準(弁護士が入った場合の基準)を前提としています。
※①入通院慰謝料の最低金額は、通院あるいは入院の期間が15ヶ月であった場合の1日単価です。15ヶ月を超える場合は、上記金額よりもさらに下がります。

③後遺障害逸失利益とは、交通事故で頚椎骨折にならなければ本来得ることができたであろう利益のことをいいます。

後遺障害逸失利益を算定するための計算式は次のようになります。

後遺障害逸失利益
= 1年あたりの基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

具体的には、次のようになります。

具体例
被害者の事故前年度の年収額が500万円で、交通事故が原因で頚椎骨折になったことにより後遺障害11級7号に認定された場合には、相場としては約97万円〜2400万円ほどになります。※相場の金額は、弁護士基準(弁護士が入った場合の基準)及び労働能力喪失率20%、労働能力喪失期間1年〜45年を前提にしています。
※頚椎骨折の後遺障害等級は骨の変形に着目して認定されるため、保険会社から争われる可能性があります。

慰謝料の大まかな金額や損害賠償金の種類・項目について、詳しく確認されたい場合は以下の記事をご覧ください。

 

 

頚椎骨折で適切な賠償金を得る5つのポイント

頚椎骨折で適切な賠償金を得る5つのポイント

適切な治療を受ける

交通事故により頚椎骨折になってしまった場合、後遺障害等級の認定をしてもらうためには、頚椎骨折が視覚的に分かる資料として、MRI、CT、レントゲン写真等の画像資料が必須となります

MRI、CT、レントゲン等の画像検査によって損傷部位や損傷の程度を把握し、頚椎骨折の原因が特定できた場合には、その原因に応じた適切な治療を受ける必要があります。

また、適切な治療を継続することで首の痛みが少しでも良くなるだけでなく、示談の際に受け取ることができる慰謝料の金額が増える可能性があります。

なぜなら、適切な治療を継続しなければならないということは、交通事故によって受けた被害者の痛みが強いことやその痛みが継続していたことが症状の経過として分かるからです。

そのため、適切な治療を断続的に受けるのではなく、継続して受けるようにしましょう

通院回数・頻度と慰謝料との関係について、詳しく確認されたい場合は以下の記事をご覧ください。

 

後遺障害を適切に認定してもらう

交通事故により被害者が頚椎を骨折してしまった場合に、認定される可能性がある後遺障害等級は以下のようなものとなります。

等級 後遺障害の内容 慰謝料の金額
(弁護士を入れた場合)
第6級5号 脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの 1180万円
第8級2号 脊柱に運動障害を残すもの 830万円
第8級相当 脊柱に中程度の変形を残すもの
第11級7号 脊柱に変形を残すもの 420万円

※「弁護士を入れた場合」とは、弁護士基準(裁判基準)のことをいいます。

この表からも明らかなとおり、認定される後遺障害等級によって相手方保険会社または相手方本人から支払われる慰謝料の金額が大きく異なります。

そのため、後遺障害申請によって後遺障害を適切に認定してもらうことが重要になってきます。

そして、後遺障害を適切に認定してもらうためには、等級認定のために有効な証拠を提出し、説得的な主張をする必要があります

何が有効な証拠で、どのような主張が説得的な主張かは、専門的な弁護士でないと判断が難しいところになりますので、少しでもお困りの場合は弁護士に相談するようにしましょう。

後遺障害認定による慰謝料の増額幅や後遺障害に認定された場合に行うべきこと等について、詳しく確認されたい場合は以下の記事をご覧ください。

 

適切な賠償金の金額を算定する

後遺障害に認定された場合、相手方保険会社または加害者本人との示談交渉に弁護士が入るかどうかで慰謝料の金額に違いが生じます。

具体的には次のように慰謝料の金額に差額が生じます。

等級 後遺障害の内容 慰謝料の金額
(弁護士を入れなかった場合)
慰謝料の金額
(弁護士を入れた場合)
第6級5号 脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの 512万円 1180万円
第8級2号 脊柱に運動障害を残すもの 331万円 830万円
第8級相当 脊柱に中程度の変形を残すもの
第11級7号 脊柱に変形を残すもの 136万円 420万円

※「弁護士を入れなかった場合」とは、自賠責基準のことをいい、「弁護士を入れた場合」とは、弁護士基準(裁判基準)のことをいいます。

例えば、被害者が交通事故で頚椎骨折になり、「脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの」ことになった場合、弁護士を入れた場合と弁護士を入れなかった場合とでは、668万円もの差が生じることになります。

そのため、頚椎骨折になってしまったことに対する適切な慰謝料を支払ってもらうためにも経験豊富な弁護士に依頼し、交渉を任せることをおすすめいたします。

慰謝料の大まかな金額や損害賠償金の種類・項目について、詳しく確認されたい場合は以下の記事をご覧ください。

 

加害者側が提示する示談内容は専門家に確認してもらう

示談とは、お互いの賠償義務がどの程度あるのかを話し合い、お互いの合意によって事件を解決する方法のことをいいます。

示談をする場合、原則として「示談書」(「免責証書」、「承諾書」などのような名前の場合もあります。)に署名、押印をすることになります。

「示談書」には、本件の過失割合や最終的に支払われる賠償額のほかに、様々な法律的に意味のある文章が記載されている場合もあります。

こちらに不利な文章が記載された「示談書」に一度サインしてしまうと、そのサインを撤回することは極めて困難です。

そのため、「示談書」の記載内容については弁護士に確認してもらうことをおすすめいたします。

示談交渉の中で請求する項目や示談の流れについて、詳しく確認されたい場合は以下の記事をご覧ください。

 

後遺障害に詳しい弁護士に早い段階で相談する

交通事故にあった被害者が行うこととしては、次のようなものが考えられます。

  • 適切な治療を継続して受ける。
  • 交通事故で負傷した怪我に関する交渉を行う。
  • 適切な後遺障害等級を獲得する。

頚椎骨折になってしまった被害者が、上記のようなことをすべて1人で行うことは大変なものです。

しかし、相手方保険会社や加害者本人(加害者に代理人がついた場合には代理人弁護士)との交渉や後遺障害申請に必要な手続き等を弁護士に任せると、被害者は治療に専念することができます

そのため、早い段階で弁護士に相談・依頼することで、被害者は治療やリハビリ等に専念していただくことができるうえ、適切な賠償金を獲得できたり、適切な後遺障害等級を獲得できたりします

弁護士選びのポイントやタイミング等について、詳しく確認されたい場合は以下の記事をご覧ください。

 

 

まとめ

以上、頚椎骨折になった場合に認定される可能性がある後遺障害や賠償金、頚椎骨折で適切な賠償金を得るためのポイントについて詳しく解説しました。

交通事故や労災事故で頚椎骨折となってしまった場合、ギプス等で固定した頚部は安静にする必要があるため、これまで当たり前のようにしていた立ち座りや日常生活に多大な影響が生じることになります。

また、頚椎骨折のような骨の変形に着目した後遺障害の場合、後遺障害逸失利益の項目も争われる可能性があります。

そのため、適切な後遺障害等級に認定してもらうためには、経験のある専門の弁護士にサポートしてもらうことをおすすめいたします。

当法律事務所の人身傷害部は、弁護士が相談から事件処理の全てを行うだけでなく、後遺障害認定相当の案件を数多く取り扱う弁護士で構成されています。

弊所では、初回無料のオンライン相談(Zoom、LINEなど)や電話相談も行っておりますので、お気軽にご相談ください。

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