交通事故で依頼した弁護士を変更できる?変更方法や注意点を解説

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)


弁護士に依頼した後、弁護士を変更することは可能です。

ただし、きちんと手順を踏まなければトラブルになることもあるので注意が必要です。

この記事でわかること

  • 依頼後も弁護士の変更は可能であること
  • 弁護士を変更する手順
  • 弁護士を変更する場合の注意点

弁護士に依頼後も弁護士の変更は可能

弁護士に依頼するにあたっては、委任契約書を取り交わし、事件の交渉等を依頼することになります。

契約書を取り交わしてお願いしているので、契約を解除して弁護士を変更するのには抵抗がある方もいるかもしれません。

しかし、依頼後に弁護士に対して、不安が生じ信頼関係が構築できそうにないような場合に依頼を継続することは、被害者・弁護士双方にとって好ましくありません。

依頼している弁護士に不安があり信頼できないような場合には、弁護士の変更を検討すべきでしょう。

弁護士の変更にあたってはいくつか注意点はありますが、きちんと手続きを踏めば弁護士の変更は可能です。

 

 

弁護士の変更を検討すべきケース

連絡をしても折り返しがなく、対応が遅すぎる

弁護士が介入した場合には、保険会社とのやり取りは全て弁護士が行うこととなり、直接、被害者と保険会社がやり取りをすることはなくなります。

つまり、被害者が、保険会社に何か伝えたい場合には、弁護士を通じて伝えてもらわなければならなくなります。

したがって、弁護士と連絡が取れないということは保険会社ともやり取りが滞ることになってしまいます。

確かに、弁護士も裁判などで外出していることも多く、常に電話やメールに対応できるわけではありません。

しかし、日をおいて何度も連絡しているのに折り返しがないというのは、よほど特別な事情がない限り、問題であると思います。

 

弁護士と相性が合わない

弁護士も人間なので様々な性格の人がいます。

中にはどうしても相性が悪く徐々に信頼できなくなることもあるかもしれません。

交通事故事件は、人の人生を左右する可能性のある重大な事件であり、信頼できない弁護士に任せておくのは不安でしかありません。

依頼後、自分と弁護士の相性が悪いなと思われる場合には、弁護士の変更を検討された方が良いでしょう。

 

交通事故賠償実務の知識が少ない

交通事故の賠償交渉にあたっては、広く正確な知識が必要となります。

交通事故の賠償実務に精通している弁護士であれば、被害者からのほとんどの質問にすぐに回答することができるでしょう。

交通事故賠償実務について、正確な知識がないと請求漏れや相場よりも少ない金額で示談してしまうこともありえます。

何を聞いても明確な答えが返ってこず、結局よく分からないままにされるような場合には、交通事故賠償実務の経験が少ない可能性がありますので、弁護士の変更を検討された方がいいかもしれません。

 

弁護士が業務停止になった

弁護士が事件処理等において、大きなミスをした場合、弁護士会から業務停止の決定がなされることがあります。

弁護士が業務停止となった場合には、一旦、契約を解除することとなります。

業務停止の期間が終了した後で、再度、同じ弁護士に依頼することも可能ですが、長期間にわたり業務停止となる場合には、事件の進行自体が止まってしまうため、状況に応じて、弁護士の変更を検討すべきでしょう。

 

 

弁護士を変更する手順

弁護士を変更するにあたっては、以下の手順を踏むことになります。

①新たに依頼する弁護士を探す

弁護士を変更するにあたっては、まず、新たに依頼する弁護士を探す必要があります。

依頼する弁護士は、交通事故を数多く扱っている交通事故案件に強い弁護士を選ぶべきです。

交通事故案件に強いかどうかは、実際に弁護士に相談に行かれて、どれだけ具体的に説明することができるかで見極めることができます。

抽象的な説明に終始する場合には、交通事故案件の知識が乏しい可能性があります。

いくつか事務所を回って、弁護士の説明を比べても見るのも有効でしょう。

 

②新たに依頼したい弁護士に相談する

上記したとおり、交通事故案件に強い弁護士であるか見極めるために弁護士に相談されることは必須です。

相談の中で費用面などについても確認するとともに、受任してもらえるか確認します。

 

③依頼している弁護士に弁護士の変更を伝える

弁護士の変更を決められた場合には、依頼している弁護士にきちんと伝えることが大切です。

明確に伝えないまま、別の弁護士に依頼してしまうと、後々トラブルになる可能性があります。

きちんと連絡をすれば、ほとんどの弁護士が特に問題なく了承してくれるはずです。

 

④加入している保険会社に連絡する(弁護士費用特約がある場合)

弁護士を変更するにあたっては、自分が加入している保険会社に連絡することが必要です。

保険会社に連絡していないと適切に弁護士費用が支払われなかったりする等、トラブルになる可能性があるため注意しなければなりません。

相手保険会社への連絡は、弁護士が連絡してくれることがほとんどでしょう。

 

⑤変更後の弁護士に依頼する

変更後の弁護士に正式に依頼して、事件処理を進めてもらいます。

 

⑥弁護士間で案件を引き継いでもらう

変更前の弁護士が持っている資料などを新しい弁護士に引き継いでもらいます。

変更後の弁護士が、相手保険会社に受任通知を送付することで、対保険会社との関係において正式に変更後の弁護士が窓口となります。

 

 

弁護士を変更する際の注意点

変更前の弁護士の費用清算

弁護士を変更する時点で、すでに弁護士が一定の業務を行っている場合には、一定の報酬や実費の清算が必要になることがあります。

また、着手金をすでに支払っているような場合には、着手金は返還してもらうことはできないでしょう。

もっとも、弁護士費用特約がついている場合には、弁護士費用特約で清算できることもあります。

 

弁護士費用特約の残額に注意する

多くの保険会社では、弁護士費用特約で支払われる弁護士費用の上限は300万円となっています。

弁護士を変更した場合でもこの総額がリセットされることはありません。

したがって、重傷案件で弁護士費用特約の300万円を超える可能性がある場合には、変更する段階で、一度、残額を保険会社に確認して見たほうがいいでしょう。

また、保険会社の中には、着手金を二重払いしないという保険会社もあります。

例えば、着手金が合計30万円で、すでに10万円の着手金を最初の弁護士に払っている場合には、変更後の弁護士には20万円しか支払われないということです。

後のトラブル防止のためにも、変更前に保険会社に確認してみることをお勧めします。

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デイライト法律事務所の解決実績

当事務所にも弁護士を変更したいという内容でご相談に来られることがあります。

例えば、治療終了後、3ヶ月以上経過しても示談交渉が進まないため、当事務所にご相談に来られ、当事務所の弁護士に変更された方もいらっしゃいます。

 

まとめ

以上のとおり、弁護士に不満がある場合には、弁護士を変更することができます。

変更にあたっては、弁護士及び保険会社への連絡を忘れずに行わなければなりません。

 

 

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