死亡事故の逸失利益の相場早見表|計算ツール付き
死亡逸失利益(しぼういっしつりえき)とは、被害者の方が交通事故で亡くならなければ、将来得られたはずの収入(利益)に対するご遺族への補償のことです。
実は、保険会社が最初に提示してくる金額は、本来受け取るべき適正額(弁護士基準)よりも大幅に低く抑えられているケースが少なくありません。
そこでこの記事では、ご遺族が損をしないために、死亡逸失利益の相場が一目でわかる「職業別・年齢別の早見表」や、簡単に概算がわかる「自動計算ツール」を交えて交通事故問題に注力している弁護士が分かりやすく解説します。
大切なご家族の「正当な価値」を守るためのガイドとして、ぜひ最後までお役立てください。
目次
そもそも「死亡逸失利益」とは?

死亡逸失利益とは、亡くなってしまったことで、将来、得ることができたはずの収入を補償するものです。
死亡逸失利益は、当時の年収、年齢によって金額が決まります。
死亡逸失利益は、事案によって数千万円になることから、計算方法を間違わないよう十分に注意が必要です。
なぜ保険会社の提示額は低いの?知っておくべき「3つの基準」
賠償の水準には以下の3つの基準があります。
| 基準 | 自賠責基準 | 任意保険基準 | 弁護士基準 |
|---|---|---|---|
| 特徴 | 自賠責保険が賠償金を計算する場合の基準 | 任意保険会社が内部的に定めている賠償の水準 | 弁護士が示談交渉で用いる基準で裁判所が用いる賠償の水準と同じ |
保険会社としては、賠償額はできる限り、抑えたいというのが本音です。
したがって、相手保険会社は、自賠責保険基準、あるいは、任意保険基準で賠償額の提示をしてきます。
死亡逸失利益についても、保険会社の提示を鵜呑みにするのではなく、弁護士に金額の妥当性を確認するなどして、慎重に判断する必要があります。
死亡逸失利益の計算ルール
以下では、死亡逸失利益の計算方法について説明します。
死亡逸失利益の計算式
死亡逸失利益は、以下の計算式で計算します。
基礎収入
基礎収入は、原則として事故前年の年収額となります。
もっとも、主婦の方は平均賃金(賃金センサス)、高齢者の方は年金の金額を踏まえて計算することになります。
| 立場 | 基礎収入 |
|---|---|
| 会社員(給与所得者) | 事故前年の年収額 |
| 自営業者・個人事業主 | 事故前年の確定申告書の所得額 |
| 家事従事者(主婦・主夫) | 女性の平均賃金額 |
| 会社役員 | 報酬の労務対価部分 |
| 高齢者 | 就労の蓋然性があれば賃金センサスの金額、年金がある場合には年金額 |
| 学生・子ども | 平均賃金 |
| 失業者 | 就労の蓋然性がある場合 |
会社員(給与所得者)の基礎収入
給与所得者とは、雇用契約等に基づき、会社から給料をもらっている方々です。
会社員や契約社員、アルバイト、パートなどの方々が給与所得者となります。
給与所得者の場合、原則として、事故前の収入を基礎として基礎収入を定めることになります。
ここでいう収入は、税金等の控除がされていない総支給額を指します。
つまり、源泉徴収票に記載のある「支払金額」が基礎収入の金額となります。
収入の証明は、給与所得者の場合、源泉徴収票を用いることが多いですが、役所が発行する所得証明でも構いません。
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若年の給与所得者について
概ね30歳未満の若年者については、賃金センサスを利用して基礎収入を決めることが多いです。
もっとも、賃金センサスの平均賃金の100%を基礎収入にできるとは限りません。
逸失利益は、将来の収入を補償するものなので、将来において賃金センサスの年収額を得ることができる蓋然性(がいぜんせい)がなければ、100%を基礎収入とすることはできないのです。
その当時の年齢や年収、職種、資格の有無などを勘案して、場合によっては賃金センサスの金額から一定の割合を控除した金額を基礎収入とされることもあります。
なお、当然のことながら、賃金センサスよりも高額な収入を得ている場合には、実収入を基礎収入とすることになります。
裁判例の中には、将来の昇給について、定年までの毎年の昇給を会社の賃金規定に基づいて認めた事例もあります(大阪地判平3.1.29、広島高判平5.8.31)。
また、昇給規定がなくても、将来の昇給が証拠に基づいて相当の確かさをもって推定できる場合には、昇給も考慮することができるとの判例もあります(最判昭43.8.27)。
自営業者・個人事業主の基礎収入
自営業者、自由業者、農林水産業などについては、事故前年の確定申告の所得額を基礎収入とします。
ただし、青色申告控除や専従者控除など、税金上の優遇措置を利用している部分については、所得額に加算して基礎収入とすることができます。
また、所得金額に波がある場合には、過去数年分を平均して計算することもあります。
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確定申告の所得を超える基礎収入の主張
確定申告の所得を超える金額を基礎収入としたい場合には、確定申告の所得を超える所得金額を証明しなければなりません。
もっとも、この証明は容易ではありません。
本来、適切な所得を確定申告で申告しなければならないところ、それと異なる所得を主張することになるからです。
裁判所も、確定申告の所得よりも高額の所得を認める場合には、厳格な立証を求める傾向にあります。
確定申告と異なる所得を主張する場合には、客観的な証拠によって主張立証しなければ認められないでしょう。
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家族で事業を営んでいる場合
所得が家族の労働などの総体のうえで形成されている場合、所得に対する本人の寄与部分の割合によって算定することになります。
本人の寄与分は、事故前後の収入状況、事業の業種・業態、本人の技能・能力、家族の関与の程度などを考慮して算定されます。
この場合、被害者本人の労働状況や役割などを明確に主張立証しなければなりません。
例えば、1000万円の所得の内、本人の寄与分が70%と認定された場合には、700万円が休業損害の基礎収入となります。
判例 本人の寄与の割合に関する裁判例
郵便局長兼農業従事者の男性(56歳)が事故により死亡した事例
農業収入について、135万2550円であったところ、被害者は、妻とともに農業に従事していたことから、被害者の寄与度は概ね50%だとして、基礎収入を上記金額の50%と認定しました。
【神戸地判H10.11.5】
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確定申告をしていない場合
確定申告をしていない場合には、帳簿や、通帳の取引履歴などから、実際の収入を算出する必要があります。
通帳に取引先からの入金の記録があるのであれば、それを売上とし、業務関係に関する請求書や領収書の合計金額を経費として考えて所得を出すことが考えられます。
もっとも、通常、お金の流れは、このように単純ではない場合が多いかと思いますので、実収入額の証明は容易ではないでしょう。
家事従事者(主婦・主夫)について
家事従事者の家事労働も金銭的に評価されるべきと考えられているため、家事従事者も逸失利益の請求が可能です。
家事従事者については、賃金センサス(第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、女性労働者の全年齢平均の賃金額)を基礎として、収入が認められます。
令和7年の賃金センサスでは、女性平均が437万0700円とされており、同金額を基礎収入として考えます。
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兼業主婦・主夫の場合
パートタイマーや内職等の兼業主婦・主夫については、現実の収入額と女性労働者の平均賃金額のいずれか高い方を基礎として算出することになります。
なお、主夫の場合であっても、使用する賃金センサスは、女性の平均賃金を使用します。
会社役員の基礎収入
会社役員は、役員報酬につき、労務提供の対価部分は認められますが、利益配当の実質を持つ部分は、基礎収入とは認められません(大阪地判H4.9.21)。
労務提供の対価といえるかどうかは、当該役員の地位、職務内容、役員の報酬の額、会社の利益状況等を総合考慮して判断されます。
高齢者の基礎収入
事故当時に就労していなかった場合でも、就労の蓋然性が認められれば、賃金センサスの年齢別平均賃金を基礎収入として逸失利益が認められる場合があります。
また、年金を受給している場合には、年金額も考慮されます。
老齢年金、障害年金などは、逸失利益性が認められますが、遺族年金については、逸失利益性は否定されています。
判例や裁判例で認められたものとしては、国民年金(最判平5.9.21)、老齢厚生年金(東京地判平13.12.20)、地方公務員の退職年金給付(最判平5.3.24)、国家公務員の退職年金給付(最判昭50.10.24)などがあります。
学生・こどもの基礎収入
学生については、賃金センサス(第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、男女別全年齢平均の賃金額)をもとに基礎収入が算定されます。
小学生、中学生、高校生について、その家庭環境や本人の成績などから大学に進学することがほぼ確実と認められる場合に新大卒の平均賃金によることが認められる場合もあります。
女子年少者について、保険会社は女性労働者の平均賃金を主張してくることもありますが、男女格差をできるだけ小さくするために、男女を含む全労働者の全年齢平均賃金で算定すべきです。
失業者
失業者は、事故当時においては、収入はありません。
しかし、将来において全く収入を得ないということは考えづらく、就職して収入を得る可能性もあります。
したがって、失業者については、労働能力及び労働意欲があり、就労の蓋然性があるものについては、基礎収入が認められます。
具体的には、再就職によって得られたであろう収入が基本となりますが、特段の事情のないかぎり失業前の収入が参考となります。
失業前の収入が平均賃金以下の場合には、平均賃金が得られる蓋然性があれば、賃金センサスを基礎収入とすることができます。
病気等により長期間就労していなかった場合や、定年退職後全く求職していなかった場合には、就労可能性が認められず、逸失利益が認められない場合もあります。
生活費控除率について
生活費控除率は、被害者の立場によって変わってきます。
家族関係、性別、年齢に照らして下表の割合が目安とされています。
| 被害者の立場 | 生活費控除率 | |
|---|---|---|
| 一家の支柱 | 被扶養者が1名 | 40% |
| 被扶養者が2名以上 | 30% | |
| 女性(主婦、独身、幼児等含む) | 30% | |
| 男性(独身、幼児等含む) | 50% | |
| 年金受給者 | 通常よりも高い割合(50~70%) | |
上記は目安であり、個別事情によって変動します。
就労可能年数(何歳まで認められる?)
就労可能年数は原則として67歳です。
つまり、就労可能年数は、67歳から死亡した時点の年齢を差引いた年齢になります。
例えば、43歳で亡くなった場合には、24年が就労可能年数になります。
ただし、例外があります。67歳までの年数が平均余命の2分の1よりも短くなる方は、平均余命の2分の1が就労可能年数となります。
具体例 被害者が58歳の場合
67歳までは9年です。
平均余命は、男性と女性で異なってきますが、賃金センサスと同様に毎年統計(「簡易生命表」という資料)が出されています。
平均余命が26年の場合
2分の1にすると、26 ÷ 2 = 13年
9年よりも長くなるので、13年を就労可能年数として考えることになります。
最新の簡易生命表は以下のページをご覧ください。
未成年者の就労の始期については、18歳が基本ですが、大学卒業を前提とする場合、大学卒業予定時が始期となります。
ライプニッツ係数(中間利息控除の仕組み)
逸失利益は、事故に遭わなければ被害者が将来にわたって得られたはずの利益です。
つまり、未来に得ることができたお金をすぐにまとめて受領することになるので、その金額をそのまま受け取ると、本来受け取ることができる時点(未来)までに発生する利息分を被害者が取得することになります。
こうした利息(中間利息)を控除するための係数としてライプニッツ係数が用いられています。
ライプニッツ係数については、以下のページをご覧ください
すぐに賠償額が分かる!自動計算ツール
死亡逸失利益は、生活費控除率の控除やライプニッツ係数を使用しなければ算出できず、計算方法が複雑です。
以下のページでは、必要事項を入力することで死亡逸失利益の概算を算出することができます。
すぐに概算を確認したい場合には、以下のサイトをご活用下さい。
【職業・立場別】基礎収入の基準と計算シミュレーション
給与所得者(会社員)のケース
被害者が、男性(会社員、35歳)で年収は450万円、独身のケースでの死亡逸失利益は、以下の金額になります。(2020年4月1日以降の事故として算定)
基礎収入:450万円
生活費控除率:50%(独身男性)
就労可能年数:32年
就労可能年数に対応するライプニッツ係数:20.3888(法定利率3%)
死亡逸失利益の計算式
450万円 ×(100% – 50%)× 20.3888 = 4587万4800円
このケースでは、4587万4800円が死亡逸失利益となります。
家事従事者のケース
被害者が、女性(専業主婦、28歳)で、夫と二人暮らしのケースでの死亡逸失利益は、以下の金額になります。(2020年3月31日以前の事故として算定)
基礎収入:377万8200円
生活費控除率:30%
就労可能年数:39年
就労可能年数に対応するライプニッツ係数:17.0170(法定利率5%)
死亡逸失利益の計算式
377万8200円 ×(100% – 30%)× 17.0170 = 4500万5540円
このケースでは、4500万5540円が死亡逸失利益となります。
学生のケース
就労可能年数に対応するライプニッツ係数
就労の始期は、特段の事情がない限りは18歳として考えます。
したがって、単純に67歳までの年数を就労可能年数とするのではなく、18歳になるまでの年数分のライプニッツ係数を差引かなければなりません。
計算方法の具体例
被害者が、女性(学生、15歳)のケースでの死亡逸失利益は、以下の金額になります。(2020年4月1日以降の事故として算定)
具体例
基礎収入:497万2000円(平成30年賃金センサス男女平均)
生活費控除率:30%
就労開始年齢:18歳(高卒で就労する前提)
ライプニッツ係数:23.3376
この場合のライプニッツ係数は、事故時の年齢15歳から67歳までの52年間のライプニッツ係数(26.1662)から、15歳から就労可能年数の18歳までの3年間分のライプニッツ係数(2.8286)を差し引いて計算します。
したがって、このケースで使用するライプニッツ係数は、26.1662 – 2.8286 = 23.3376となります。
死亡逸失利益の計算式
497万2000円 ×(100% – 30%)× 23.3376 = 8122万4183円
このケースでは、8122万4183円が死亡逸失利益となります。
なぜ弁護士への依頼で賠償額の増額が期待できるのか
保険会社としては、できる限り、賠償金の金額を抑えたいため、保険会社としての基準で賠償額を提示します。
弁護士が交渉する場合には、最も高い賠償水準である弁護士基準で賠償金を算出するため、弁護士に依頼することで、賠償額が増額することが期待できるのです。
弁護士に依頼することで死亡逸失利益が増額した事例
自動車に同乗中に車が電柱に衝突し車内の前方に投げ出され頭部を強く打ち、脳挫傷、多発性外傷と診断され、2週間後に死亡しました。
被害者は、男性で専門学校生で20代前半でした。
そのため、保険会社は、20代前半の平均賃金で死亡逸失利益を計算し2167万円の提示をしていました。
弁護士は、男性の平均賃金で算出し、保険会社と交渉したところ、死亡逸失利益を4260万円増額することができました。
事案の詳しい内容は、以下をご覧ください。
死亡逸失利益に関するよくあるQ&A

逸失利益はどこまで(誰に)認められる?
死亡逸失利益は、相続権のある遺族が請求することができます。子どもや配偶者には相続権があります。
子どもがいない場合は、配偶者と親に相続権があります。
子どもと親がいない場合は、配偶者と兄弟姉妹に相続権があります。

死亡逸失利益は税金の対象になりますか?
死亡逸失利益に税金はかかりません。損害賠償金は、事故によって失われた利益を補填するものであり、所得とは評価されず所得税はかかりません。
また、遺族固有の損害として支払われるため相続税の対象にもなりません。
まとめ
死亡逸失利益は、非常に高額になります。
保険会社の提示では不十分な内容であることが多いため、鵜呑みにすることなく、弁護士に確認してもらうことが重要です。
家族が亡くなった後に、保険会社と交渉することはとても大変です。
弁護士に依頼した場合には、交渉窓口になり対応してくれますので、弁護士への依頼も検討されることをお勧めします。
当事務所では、日常的に交通事故案件を取り扱っている弁護士が、相談から受任後の事件処理まで対応しています。
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