シートベルト不着用の場合の過失相殺

執筆者:弁護士 西村裕一 (弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士)

シートベルトをしていない状況で、交通事故に遭った場合、シートベルトをきちんとつけていれば、けがは防げていたのではないかといった形で問題になることがあります。

この問題は、いわゆる過失相殺の問題として具体的な争点となります。この点が争われた裁判例として、静岡地裁平成27年9月25日判決があります。

この事案では、知人の車の助手席に乗っていた被害者が、その知人の自損事故により、脊柱変形の後遺障害が残存するほどの重傷を負いました。事故の際に被害者の方はシートベルトをしていなかったことが認定されています。

静岡地方裁判所は、以下のように判決文の中で言及し、シートベルトをしていなかった点を10%の過失と評価しています。

「原告は、本件事故当時シートベルトを着用しておらず、他の同乗者である被告らが、本件事故により、原告のような深刻な症状を訴えることはなかったこと等に照らせば、原告がシートベルトを着用しなかったことにより、被告らよりも重大な損害が生じたものといえるから、被告乙山には、本件自動車の運転者として、原告に対して、シートベルトを着用させる義務があることを勘案してもなお、10%の過失相殺を認めるのが相当である。」

今回の判断のポイントは、シートベルトをしていた人としていなかった被害者の症状の違いが出ていたという点でしょう。

シートベルトをしていないからといって、一律に過失相殺の対象になるわけではありませんが、座席の位置は違えど、同乗者という同じ立場にある人がいる以上、比較の対象になるのはある意味当然のことです。

シートベルトのイメージ画像

また、例えば、シートベルトをしていないことで、車外に飛び出してしまい、道路に頭を打ち付けてしまったというようなケースの場合には、今回の裁判例のような10%の過失ではすまないと考えられます。

シートベルトをしていれば、少なくとも車外に飛び出すことは防げたのではないかと考えられるからです。

他にも、犬を車に乗せている状態で、追突事故に遭って、犬がけがをしてしまったケースについて、動物用シートベルトなど体を固定するための装置を装着されるといった措置をとる義務があったとして10%の過失相殺を認めた裁判例もあります(大阪地裁平成27年8月25日判決)。

 

過失割合


 
賠償金の計算方法



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