解決事例
更新日2020年8月14日

外貌醜状により後遺障害9級。約1600万円を増額できた女性の事例

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

ご相談者Mさん

受傷部位頭蓋底骨折、右脛骨遠位端骨折、前額部挫創など
等級併合9級
ご依頼後取得した金額
約1645万円

内訳
損害項目 保険会社提示額 弁護士によるサポート結果
傷害慰謝料 50万円 90万円
後遺障害逸失利益 0円 1150万円(喪失率29%)
後遺障害慰謝料 0円 690万円(裁判基準)
過失相殺 20% 15%(△約300万円)
結果 約36万円 約1645万円

※損害費目の内訳の中で雑費や看護料などの一部の費目は省略しています。

 

状況

Mさんは、自宅近くの横断歩道のない道路を横断しようとしたところ、右方から来た自動車に衝突され緊急搬送されました。

解説図

この事故により、Mさんは頭蓋底骨折、右脛骨遠位端骨折、前額部挫創の重傷を負いました。

Mさんは、緊急搬送後、縫合処置などを受けそのまま3週間程度入院しました。

退院後は、整形外科でリハビリを2か月程度行い、それ以降は数カ月に1回受診するといったペースで通院されていました。

通院の目途がついたところで、保険会社からの示談案が届いたことから、今後の交渉について、Mさんのご両親が相談に来られました。

 

 

弁護士の対応

解説図弁護士は、Mさんの両親の話を聞いて、Mさんに外貌醜状及び右足の骨折について遺障害に該当する可能性が高いと判断し、後遺障害の申請についてMさんの両親に説明た上で、後遺障害申請の準備に入りました。

後遺障害診断書には、Mさんの前額部に挫創痕が残存していることを明記してもらい後遺障害の申請をしました。

外貌醜状の後遺障害等級の審査にあたっては、自賠責の調査事務所にて面談の調査が行われます。

面談にあたっては、弁護士も同行し、調査員の測定を確認しました。

後遺障害申請の結果としては、外貌醜状に関しては9級16号が認定され、右下腿内側の疼痛について14級9号が認定されました。

外貌醜状の後遺障害について、詳しくはこちらをご覧ください。

こうした等級を前提に、弁護士はMさんの損害額を算定し、保険会社との示談交渉を開始しました。

主な争点は、後遺障害逸失利益でした。

当初、保険会社は、Mさんがまだ若いことや、傷自体も薄くなっていることなどを理由に労働能力喪失率を14%までしか認めませんでした。

確かに、外貌醜状においては、労働能力喪失率は制限的に認められることが多いですが、現に、傷跡は残存しており、その部位が前額部で人目に付きやすく、Mさんが女性であることなどから、到底の了承することはできませんでした。

その後、弁護士は保険会社と粘り強く交渉し、結果として、喪失率を29%として合意することができました。

 

弁護士のアドバイス

外貌醜状の逸失利益

逸失利益は、以下のように計算されます。

逸失利益の計算方法

基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間(ライプニッツ係数)

外貌醜状による逸失利益の場合、労働能力喪失率の点で問題になります。

つまり、顔に傷があるといっても、身体的には特段問題がないので、そもそも労働能力を一部喪失したと言えないのではないかが問題になるのです。

裁判例においても、外貌醜状の後遺障害の場合、労働能力喪失率は限定的に考えられています。

したがって、外貌醜状の逸失利益を交渉するにあたっては、傷跡が残ることによって、どのような仕事上の支障があるか、あるいは、就職活動への支障、将来の昇進などへの影響の可能性などについて、具体的に主張立証する必要があります。

外貌醜状の逸失利益について詳しく確認されたい方はこちらをご覧ください。

 

弁護士に相談することの重要性

Mさんは、相談に来られた当初は、保険会社の約36万円提示で合意しようか迷われていました。

相手保険会社から後遺障害の申請ができることすら説明を受けていなかったのです。

しかし、本件は、すぐに合意すべきでないことは明らかな事案であり、後遺障害の申請をして適切な等級を得た上で、示談交渉をすべき事案であることが明らかでした。

実際に、後遺障害申請することで、併合9号の後遺障害認定を受けることができ、賠償金額についても、1600万円以上増額をすることができました。

 

 


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