解決事例
更新日2020年4月21日

自転車事故で高次脳機能障害認定。依頼後1000万以上増額した事例

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

ご相談者Rさん

受傷部位頭部(脳挫傷、頭蓋骨骨折)、顔(顔面神経麻痺)
等級併合8級(高次脳機能障害(9級10号)、醜状障害(12級15号))
ご依頼後取得した金額
5200万円(1000万円以上の増額)

内訳
損害項目 保険会社提示額 弁護士介入後
付添看護料 13万5300円(1日4100円) 21万4500円(1日6500円)
近親者交通費 なし 約30万円
傷害慰謝料 約210万円 約210万円
休業損害 約710万円 960万円
後遺障害逸失利益 約2870万円(年収 × 35% × 35年) 約3700万円(年収 × 45% × 35年 裁判基準)
後遺障害慰謝料 830万円 830万円(8級 裁判基準)
過失相殺 15% 15%
結果 4200万円 5200万円(1000万円増額)

 

状況

Rさんは、当時のご主人と二人で自転車に乗って横断歩道のない交差点を横断しようとしたところに、高速度で進行してきた相手方のバイクに衝突する交通事故にあいました。

この交通事故で、Rさんは、衝突したはずみでコンクリートに頭を打ち付け、脳挫傷と頭蓋骨骨折の重傷を負いました。

交通事故直後からわずかですが、意識障害が生じ(JCSは1桁)、2〜3日間そうした状態が続きました。

1か月ほど病院での入院生活を続け、退院後も定期的に病院に通院を継続していました。

退院後、職場復帰することができず、それまで勤めていた仕事を退職することになりました。

Rさんは、交通事故の後から感情のコントロールができないといった弊害が生じ、ご主人とも離婚をして、実家に帰省しました。

Rさんのお母さんによれば、Rさんは、その日の出来事を覚えていないことがあり、それを指摘すると口論になってしまうといった出来事も起こっていました。

その後、治療が終了し、症状固定となったため、Rさんは事前認定の方法(相手保険会社が後遺障害申請する方法)により、後遺障害の申請を行いました。

後遺障害申請の結果は、高次脳機能障害を理由に、9級10号の認定を受けました。

また、顔面神経麻痺による醜状障害について、当時の12級15号(女子の外貌に醜状を残すもの)が認められたので、併合8級の認定を受けることができました。

この後遺障害の認定を踏まえてRさんは、自分で相手方保険会社と交渉をしようとしましたが、上手くいかず、当事務所に相談に来られました。

 

 

弁護士の対応

弁護士は、Rさんの相談を受ける中で、高次脳機能障害が認定されたという事実を聞いたため、まずRさんの高次脳機能障害の9級10号の認定が妥当であるか検討することにしました。

そこで、弁護士は、受任後すぐに保険会社から交通事故に関する書類を集めました。

そして、交通事故時の意識障害の程度や長さ、通院状況、後遺障害の申請時に作成される書類(意識障害についての所見、医学的意見書、日常生活状況報告書)を丁寧にチェックしました。

各資料を精査した結果、9級10号の等級認定は妥当であると考えられましたので、弁護士は、認定された等級を前提に、保険会社の賠償額についての検討を進めました。

すると、休業損害について、1年以上の休職(離職)となっているにも関わらず、過去3か月の給与をベースとした提案しか受けていないことがわかりました。

そこで、この点については、賞与も含めて年間収入をベースに症状固定までの全日を補償すべきだと交渉し、 250万円の増額に成功しました。

また、逸失利益について、相手方保険会社は、顔面神経障害は就労に影響しないと主張して、9級の喪失率である35%をもとに賠償額を算出していました。

そこで、弁護士は、顔面醜状障害という性質上、人目につくものであること、Rさんがこれまでの仕事で人と接する仕事に従事していたことを指摘して、認定された等級どおり45%の喪失率で補償すべきだと主張しました。

その結果、最終的には 1000万円以上の増額に成功しました。

交通事故の際に遠方で生活していた両親の飛行機代もきちんと補償してもらいました。

Rさんもこれほど増額するとは思っていなかったようで、とても満足していただけました。

 

 

弁護士のアドバイス

診断書高次脳機能障害の後遺障害認定は、通常の認定と異なり、後遺障害診断書以外にも、交通事故直後の意識障害についての初見や医学的な意見書、被害者の親族等が作成する日常生活状況報告書といった書類を作成し、ほとんどのケースで当事務所では通院期間中のカルテも資料としてつけた上で、申請を行います

損害保険料率算出機構での調査も専門部という特別な部門により行われます。

高次脳機能障害は、身体に麻痺を残す場合もありますが、身体的には回復しているものの、記憶障害や認知障害、人格変化などの症状を残す場合もあります。

身体的に回復している場合には、一見すると障害が残っていることは分かりづらいこともあり、被害者本人やご家族が大変な思いをされることもあるかと思います。

そうした中で、後遺障害の申請や示談交渉をされるのは本当に大変なことだと思います。

高次脳機能障害については、こちらも御覧ください。


なぜ交通事故は弁護士選びが重要なのか

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