新型コロナウイルスの影響が連日取りざたされています。企業の業績が悪化すれば、そこで働く従業員の契約や給与にも影響が及びます。

そうすると、これまで支払えていた借金が返済できない、ローンの支払いでギリギリといったことも起こりえます。

借金の返済に不安を感じる場合、早めに専門家である弁護士に相談すべきでしょう。

 

新型コロナウイルスが日本でも本格的に猛威を奮っており、学校の休校、イベントの自粛、会社の休業など、多方面に影響がでています。

また、インバウンド(訪日外国人)消費の減少などによって、外国人観光客をメインターゲットとしている観光業や飲食業などの売上げの減少は顕著となっており、企業や経済に与える影響は計り知れず、実際に「コロナ破産」という造語もメディアで取り上げられるなど、今後、新型コロナウイルスに関連する倒産は増加することが懸念されます。

3月9日からは、中国と韓国の航空機が成田空港と関西国際空港に限定されたため、アジアの玄関口である福岡にとっては影響がこれからさらに大きくなる可能性もあります。

さらに、企業の業績が悪化することで、勤務する従業員への影響も避けられません。

今後、新型コロナウイルスの影響が拡大し続けた場合に、従業員レベルで起こりうる様々な事態を以下で解説いたします。

 

 

新型コロナウイルスの影響で想定されうる事態

勤務先の倒産

新型コロナウイルスの流行に関連して、令和2年3月2日、神戸港クルーズ船「ルミナス神戸2」を運航するルミナスクルーズ株式会社が神戸地方裁判所に民事再生手続の申立てをしました。

また、新型コロナウイルスが流行する以前から、人手不足問題や消費増税による景気の悪化などの影響で倒産件数は増加傾向にあり、このような問題と新型コロナウイルスの流行が相まって、今後は中小企業を中心に倒産ラッシュが起こるとの報道もあります。

企業の倒産は、そこで働く従業員の生活にも影響を与えることを意味します。

仮に、企業が破産した場合、従業員は当然に失職することになりますし、民事再生手続の場合であっても大幅なリストラが行われることが通常ですので、職を失わない保証はありません。

そうなれば、従業員の方は、新しい職場を探す必要がありますし、失業保険も要件や支給される期限が決まっており、生活に影響が出てくるのは必至です。

 

勤務先の休業

新型コロナウイルスの影響によって、会社が休業を余儀なくされるケースも少なくありません。

政府の要請による休業(スポーツジムやカラオケ店など)のみならず、集客が思うようにできずに休業に追いやられるケース(外国人向け観光業など)も多くあります。

もっとも、勤務先が休業中も法律の要件を満たせば休業手当(労働基準法26条)の支給を受けることができます。

しかしながら、本来であれば雇用形態を問わず保証されるはずの休業手当も、非正規雇用の場合には支払われないケースも散見されます。

また、法律上は、「百分の六十以上」の手当を支払わなければならないとの規定にすぎないため、賃金の6割の支給のみであったとしても法的に違法とはなりません。

つまり、勤務先が休業した場合には、通常よりも40%程度の収入の減少、さらに、最悪のケースでは収入の0円になることも想定されるのです。

これでは、当然今まで支払えていたものが支払えないといったことも起こってしまいます。

 

勤務先が整理解雇を実施

会社の経営上の理由(業績不振など)により、人員削減が必要な場合に整理解雇が行われる場合があります。

この整理解雇を実施する場合、一般には次の4要件を満たすことが必要と考えられています。

人員削減の必要性
企業が客観的に高度の経営危機にあり、解雇による人員削減が必要やむを得ないこと
解雇回避努力
解雇を回避するために具体的な措置を講ずる努力が十分になされたこと
人選の合理性
解雇の基準及びその適用(被解雇者の選定)が合理的であること
労働者に対する説明協議
人員整理の必要性と内容について労働者に対し誠実に説明を行い、かつ十分に協議して納得を得るよう努力を尽くしたこと

ただし、最近の判例では、整理解雇をする場合、必ずしも整理解雇の4要件全てを満たさなくとも整理解雇が有効と判断するものもあります。

整理解雇の対象になった場合には、当然に職を失うことになりますので、生活にも大きな影響が生じます。

 

給与の未払い・遅配

新型コロナウイルス関連で多くの企業に影響が生じており、実際に多くの企業は業績の悪化に直面しています。

このような業績悪化に直面した中小企業において生じる事態として給与の未払い、遅配があります。

黒字の会社であったとしても突発的な業績悪化によって、一時的に資金不足に陥ることも多々あります。

会社の経営者であれば避けなければならない事態ですが、新型コロナウイルスの流行のように想定外の要因によって、不本意ながら給与の未払い、遅配が起こってしまうケースもあります。

 

 

政府の対策〜雇用調整助成金〜

経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者に対して一時的に休業、教育訓練又は出向を行い、労働者の雇用の維持を図った場合に、休業手当、賃金等の一部を助成する雇用調整助成金があります。

もっとも、雇用調整助成金の受給の対象はあくまでも事業主であり、従業員が直接支給を受けることができるわけではないので、実際に困っている人の手元に直ぐにお金が届くわけではなく、タイムラグが生じることも考えられます。

また、雇用保険の適用事業所であることなどの支給要件がありますので、助成の対象か否かなど、詳細については最寄りの労働局助成金相談窓口に問い合せください。

 

 

借金返済が滞った場合には早めにご相談を!

新型コロナウイルスによって企業そして従業員に多大な影響が生じており、また、今後の影響拡大も未知数です。

現時点でも多額の借金を負っている方にとっては、勤務先の休業などが追い打ちとなって、借金返済が現実に滞ってしまうことも考えられます。

また、通常であれば返済可能な額であったとしても、勤務先からの給与が入ってこない、給与が減ったなどの事情によって、一時的に返済ができない状況に陥ることも想定されます。

債務整理の方法としては、大きく分けて、「任意整理」「個人再生」「破産」の3つがあります。

一時的に返済ができなくなったというケースでは返済可能額の範囲内で「任意整理」を行うことが考えられます。

また、住宅を所有している場合には、「個人再生」を行い(再生計画が認可されることで)、借金を大幅に減額した上で住宅を残すこともできます。

仮に、返済ができない状況になってしまった場合、また、現状として借金返済が遅れていない方であっても勤務先の業績悪化によって従業員レベルでも影響が生じうる可能性がある場合には、一度、債務整理を専門とする弁護士に借金問題を相談することをオススメします。

 

 

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