自営業者の休業損害の算定方法は?

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

交通事故の治療のために仕事を休んだ場合には、売上が落ちて利益も下がります。

自営業者の休業損害は、利益が減少した部分を対象とすることになりますが、実際にどの程度利益が落ちたかを算出するのは簡単ではなく、保険会社と争いになることも多いです。

ここでは、自営業者の休業損害について、よく問題になる論点を中心に解説します。

 

自営業者の休業損害の算定方法

休業損害の算定方法については、自賠責保険基準、任意保険会社基準、裁判基準の3つの基準があります。

弁護士が、介入している場合には、裁判基準を前提に計算することになりますが、弁護士が介入していないケースでは、保険会社は自賠責基準あるいは任意保険会社基準で提示してくることが多いです。

 

自賠責保険基準

自賠責保険基準での計算式は、以下のとおりです。

6100(日額)× 休業日数 = 休業損害額

※2020年3月31日以前の交通事故は、1日単価は5700円です。

休業日数は、入通院日数の合計日数です。

 

任意保険基準

任意保険基準は、各任意保険会社の内部的な基準であり明確な計算式は明らかではありません。

金額の水準としては、自賠責保険基準よりは高く、裁判基準よりは低いというイメージになります。

 

裁判基準

裁判基準の計算式は、以下のとおりです。

1日あたりの基礎収入 × 休業日数 = 休業損害

計算式自体はシンプルですが、「基礎収入」の算出方法や「休業日数」をどのようにカウントするかなど複雑な問題があります。

 

基礎収入の考え方自営業者の基礎収入額は、事故前年の確定申告所得額によることになります。

年度間において所得金額に相当の変動があり、前年度額で算定することが不適切である場合には、数年分の平均額を採用する場合もあります。

自営業者においては、家賃や光熱費、損害保険料などの固定費の支出を休業損害として含めることができるかという点もよく問題となります。

この点は、事案により様々な判断がされていますが、休業中も事業の維持・存続のために支出することがやむを得ない固定経費については、基礎収入に加算して考えるのが一般的です。

例えば、喫茶店経営者においては、店舗家賃、駐車場、光熱費、自動車保険料、火災保険料、自動車税、個人事業税の支払いについて認めた裁判例(大阪地判平11.11.9)がありあます。

したがって、原則として、1日あたりの基礎収入額は、事故前年の確定申告の所得額に、固定経費を加算した金額を365日で割った金額ということになります。

休業日数の考え方自営業者の場合は、実際に休業している日数を中心に考えることになります。入院している場合には、原則、休業日数として認められます。

通院期間については、当然に認められるわけではなく、傷病の程度や事業の内容などを踏まえて、休業の必要性がある場合には、休業日数としてカウントされることになります。

 

赤字の場合の計算方法は?

確定申告上、赤字であっても休業損害は認められる可能性があります。

考え方としては、固定経費の支出を損害と捉える考え方、交通事故によって赤字が拡大した場合にその拡大部分を損害として捉える考え方などがあります。

 

 

過少申告あるいは確定申告をしていない場合

自営業者の場合、確定申告の所得金額よりも、実際はもっと収入があるという主張がなされることがあります。

こうした場合、帳簿などの客観的な記録から、実際の所得金額が証明できる場合には、その金額に基づき、休業損害を計算することになります。

しかし、確定申告は正確に申告することが求められていることから、こうした証明に関しては、裁判所は厳しい目で見る傾向にあります。

確定申告をしていない場合でも、事業の帳簿などによって、所得が実際にどの程度あったのかを証明することができれば、休業損害を請求できる可能性はあります。

しかし、過少申告の場合と同様に、裁判所からは厳しい目で見られることになるでしょう。

 

 

開業して間もなく確定申告をしていない場合

事業を始めたばかりで、まだ1回目の確定申告をする前に交通事故に遭うこともあるでしょう。

こうした場合でも、実際に休業損害が生じているのであれば、賠償されるべきです。

休業損害の算出の考え方としては、事故前後の利益の状況や、前職の所得などを踏まえて検討することになります。

 

 

夫婦で自営業をしている場合

夫婦で自営業を営んでいる場合、確定申告上の所得金額は、夫婦二人で稼ぎ出した金額になります。

したがって、配偶者の寄与分を差し引いた金額を基礎収入とすることになります。

配偶者の寄与分の割合は、夫婦の役割分担の内容や、具体的な稼働状況、業種など個別事情を勘案して検討することになります。

 

 

まとめ

上記のとおり、自営業者の休業損害は、会社員の場合と比べて論点も多く、算定方法も複雑になることが多いです。

そのため、保険会社とも交渉が難航することが多く、スムーズに交渉が進まない場合もあります。

自営業者の方で休業損害が問題になりそうな場合には、できるだけ早く弁護士に相談されることをお勧めします。

 

 


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