子供が事故でケガをし学校を休みました。損害賠償請求は認められる?

執筆者:弁護士 木曽賢也 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

弁護士の回答

大学生・高校生等の場合、以下の費用が認められています。

  • ケガで通えず無駄になった学費
  • 留年・進級遅れのために余分にかかった学費
  • 通学付添費
  • 教材費
  • 資格取得のための学校、教習所へ支払った学費

裁判例では、被害者の被害の程度、内容、子供の年齢、家庭の状況などを具体的に検討し、学習、通学付添の必要性が認められれば、妥当な範囲で認められます。

裁判例を紹介しましょう。

 

交通事故による進級遅れの学費

判例① 岡山地判H9.5.29

事故のための1年留年した大学生の学費97万円、1年分のアパート賃借料55万円

→被害者は19歳の大学生(男子)。左腎断裂、右第三指中節骨骨折等の傷害を負い、後遺障害等級8級が認定されていました。入院日数は50日、通院実日数は7日でした。


判例② 名古屋地判H15.5.30

事故のための卒業を見送った音大生の授業料、実験実習費、諸会費などの合計120万円、名古屋・京都間の通学費35万円余

→被害者は音大生の女子(年齢不明)。頸椎捻挫、左肩・上腕・背部打撲、頸部挫傷の傷害を負い、後遺障害等級は非該当でした。実通院日数は19日でした。本件では、事故の影響により、ピアノ演奏ができなくなっていたという特殊事情があります。


判例③ 東京地判H16.12.21

入通院のために2年留年した美大生の授業料208万円

→被害者は美大生の女子(症状固定時25歳)。胸郭出口症候群を発症し、後遺障害等級12級が認定されていました。入院日数は73日、通院期間は約2年2ヶ月でした。

進級遅れの学費を請求するための前提として、事故によって進級遅れが生じたといえなければなりません。

そのため、事故前から、成績不良や出席日数が足りないなどの事情があれば、事故との因果関係が認められず、進級遅れの学費を請求できない可能性もあります。

 

 

学費・通学費・賃貸料

判例 受傷によって無駄になった学費・通学費・賃貸料が認められた裁判例

  1. ① 授業料および教材費49万円、通学定期代3万円余【東京地判H6.9.29】
  2. ② 事故のために修了できなかった自動車教習所代32万円【東京高判H14.6.18】
  3. ③ 大学生に司法書士資格を得るための専門学校学費47万円【東京高判H14.7.30】
  4. ④ 傷害により欠席した学期の大学授業料183万円【東京地判H22.10.13】

上記の裁判例を検討すると、被害者の通学が困難という負傷の程度が重視されているように思われます。

 

 

通学付添費

判例① 横浜地判H11.2.24

高校生の1年留年した分の学費約13万円と1年分の通学付添費54万9000円

→被害者は高校生の男子(17歳)。脳挫傷により、後遺障害等級5級が認定されていました。


判例② 神戸地判H22.7.13

受傷のため母親の自家用車による送迎を認め1日3000円、15日分を認めた

→被害者は専門学生の女子(18歳)。頭部打撲、頚椎捻挫、第三腰椎横突起骨骨折等の傷害を負い、少なくとも1ヶ月間は公共交通機関用いて1人で通学するのは困難であると認定されています。

 

 

通学困難になったため賃借したマンション代

事故のより通学困難になったため大学近くに借りた2年分のマンション賃料、保証金など140万円(神戸地判H7.2.22)

また、小学生の例ですが、受傷、入院、後遺障害のため授業についていけなくなったため補習のための家庭教師への謝礼、教材代272万円が認められた裁判例があります(大阪高判H19.4.26)

 

 

後遺障害の逸失利益

1年留年した上で内定した企業に入社し、同期と同じ扱いを受けているが就職の遅れの損害と労働能力喪失を認め、逸失利益を認められました(大阪地判H14.8.22)裁判例があります。

このように、学校を休んだことによって発生した損害が補償される場合があります。

 

 

賠償金


 
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なぜ交通事故は弁護士選びが重要なのか

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