高次脳機能障害の給付金いくら?年金や慰謝料の相場

高次脳機能障害は、記憶力の低下や感情抑制の困難など、外見からは症状が分かりにくいため、周囲の理解を得られず経済的な負担が大きくなりがちです。
ご本人やご家族が受け取れるお金の種類は、以下のように高次脳機能障害を発症した原因によって異なります。
- 病気や日常生活が原因の場合:障害基礎年金や障害厚生年金
- 交通事故が原因の場合:後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益などの賠償金
- 労働災害が原因の場合:障害年金や障害一時金
この記事では、それぞれの原因別でもらえる給付金の相場や、適正な金額を受け取るための重要なポイントについて、弁護士がわかりやすく解説していきます。
高次脳機能障害と「もらえるお金」の種類について
高次脳機能障害は、記憶障害や注意障害、感情のコントロールが難しくなるなど、外見からは分かりにくいうえに、社会復帰や日常生活に多大な支障をきたすケースが少なくありません。
高次脳機能障害によって従前のような生活や就労が難しくなった場合、病気・交通事故・労災など、その原因に応じて公的な給付金や年金、あるいは損害賠償金を受け取ることが可能です。
高次脳機能障害を負った場合、原因別に受け取ることができるお金として、特に問題となる費目とその目安については以下のとおりです。
| 原因 | 給付金や賠償金の種類 | 金額の目安 |
|---|---|---|
| 病気・その他 | 障害基礎年金 | 約84万円〜105万円/年(昭和31年4月2日以後生まれの場合)
※別途「子の加算」が上乗せされます。 |
| 特別障害者手当 | 月額 30,450円(令和8年4月以降、所得制限があります。) | |
| 交通事故 |
|
後遺障害等級1級〜9級の認定の場合:総額数千万円〜2億円超 |
| 労災 | 障害年金 | 障害の程度に応じて、給付基礎日額の313日分から131日分の年金を給付
【上記に加えて以下の給付】
|
| 障害一時金 | 障害の程度に応じて、給付基礎日額の503日分から56日分の一時金を給付
【上記に加えて以下の給付】
|
まずは、どのような原因のときに、一体いくらくらいのお金がもらえるのか、目安となる金額感の全体像を把握しましょう。
なお、交通事故や労災事故の場合も条件を満たせば、障害基礎年金や特別障害者手当の支給を受けることができます。
病気や日常生活が原因の場合|公的な年金・手当(障害年金など)

障害基礎年金・障害厚生年金の受給額
脳梗塞や脳出血、くも膜下出血といった病気が原因で高次脳機能障害を発症した場合(交通事故や労災事故を原因とする場合も含む)、「障害年金」や「特別障害者手当」などが受け取れる可能性があります。
まず障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金)は、病気やケガで生活や仕事に制限が生じた場合に、現役世代も含めて受給できる公的年金です。
高次脳機能障害の原因となった病気で初めて医師の診療を受けた日(初診日)に、どの年金制度に加入していたかによって制度が分かれます。
初診日に自営業や主婦、学生などで国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金(障害等級1級・2級のみ)」、会社員や公務員などで厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」が請求できます。
障害厚生年金は障害基礎年金に上乗せして支給され、より軽度な3級や、一時金としての「障害手当金」の制度も用意されています。
令和8(2026)年4月分以降の障害基礎年金の年金額は、以下のとおりです。
| 昭和31年4月2日以後生まれの方 | 1,059,125円 + 子の加算額(※) |
|---|---|
| 昭和31年4月1日以前生まれの方 | 1,056,125円 + 子の加算額(※) |
| 昭和31年4月2日以後生まれの方 | 847,300円 + 子の加算額(※) |
|---|---|
| 昭和31年4月1日以前生まれの方 | 844,900円 + 子の加算額(※) |
(※)子の加算額
- 2人目まで:1人につき243,800円
- 3人目以降:1人につき81,300円
令和8年4月時点の年金額の目安(昭和31年4月2日以後生まれ)は、1級が年額1,059,125円、2級が年額847,300円です。
さらに、受給者によって生計を維持している18歳到達年度末までの子ども(または20歳未満で障害1・2級の子ども)がいる場合は、第1子・第2子に各243,800円、第3子以降に各81,300円の「子の加算」がプラスされます。
なお、障害年金を受け取るには「初診日の前日において、一定以上の年金保険料を納付または免除されていること(保険料納付要件)」を満たす必要があります。
また、受給が認められると、国民年金保険料が法律上免除されるという追加の経済的メリット(法定免除制度)もあります。
次に特別障害者手当ですが、これは精神または身体に著しく重度の障害があり、日常生活において常時特別な介護を必要とする方に対して支給される公的な手当金です。
令和8年4月以降の適用支給月額は30,450円となっています。
原則として2月、5月、8月、11月に、それぞれの前月分までが支給されます。
ただし、受給者本人や配偶者、生計を維持する扶養義務者の前年所得が一定額以上である場合は、支給制限(所得制限)がかかる点に注意が必要です。
申請手続きは、お住まいの市区町村の窓口で行うことができます。
障害者手帳の取得による経済的メリット
高次脳機能障害は、脳の損傷によって引き起こされる認知障害や行動障害であるため、手続きを行うことで「精神障害者保健福祉手帳」を取得できる可能性があります。
障害者手帳の交付を受けるだけで、毎月、お金の支給を受けることができるわけではありません。
しかし、障害者手帳の取得は、以下のような経済的メリット(給付・免除効果)があります。
| メリット | 具体的な内容 |
|---|---|
| 税金面の控除・減免 | 所得税や住民税、相続税の障害者控除が受けられるほか、等級によっては自動車税の軽減などが適用されます。 |
| 公共料金・交通機関の割引 | NHK受信料の減免のほか、鉄道、バス、タクシーなどの運賃割引、携帯電話料金や上下水道料金の割引が受けられます(割引内容や対象等級は自治体や運行会社により異なります)。 |
| 公共・文化施設の優待 | 国公立の博物館や美術館、テーマパークなどの入場料割引が受けられます。 |
交通事故が原因の場合|後遺障害慰謝料・賠償金の相場
後遺障害等級(1級~9級)ごとの慰謝料相場
交通事故によって脳に外傷(頭部外傷)を負い、高次脳機能障害が残ってしまった場合は、加害者や加害者側の保険会社に対して損害賠償請求(慰謝料や賠償金の請求)を行うことができます。
交通事故における賠償金は、公的年金などと比較して非常に高額になるケースが多く、被害者のその後の人生や家族の介護生活を支える極めて重要な資金となります。
交通事故で高次脳機能障害として後遺障害が残った場合、後遺障害慰謝料を請求することができます。
| 後遺障害等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
|---|---|---|
| 1級1号 | 1150万円 (1650万円) | 2,800万円 |
| 2級1号 | 998万円 (1203万円) | 2,370万円 |
| 3級3号 | 861万円 | 1,990万円 |
| 5級2号 | 618万円 | 1,400万円 |
| 7級4号 | 419万円 | 1,000万円 |
| 9級10号 | 249万円 | 690万円 |
※( )内は「介護を要する後遺障害」の場合の金額です。
まず「後遺障害慰謝料」とは、後遺症が残ったことに対する精神的苦痛への補償です。
後遺障害慰謝料の金額は、適用される基準によって金額が大きく異なります。
裁判所で用いられる正当な基準(弁護士基準)における後遺障害慰謝料の目安は、最も重い1級(常に介護を要する状態)で2,800万円、最も軽い9級でも690万円です。
さらに、1級や2級といった極めて重篤な高次脳機能障害が残った場合、介護負担や精神的苦痛を強いられるご両親、配偶者、お子さまといったご家族固有の慰謝料(近親者慰謝料)が別途認められるケースもあります。
慰謝料以外に請求できる賠償金|逸失利益・将来介護費など
また、交通事故で後遺障害を負った場合には、「後遺障害逸失利益」を請求できます。
後遺障害逸失利益とは、高次脳機能障害によって労働能力が低下・あるいは完全に喪失し、将来得られるはずだったのに失われてしまった収入(生涯賃金)に対する補償です。
賠償総額の大部分を占める性質を持ち、以下の計算式で算出します。
基礎収入は事故前の実収入をベースにしますが、将来のある学生や主婦の方でも、厚生労働省の「賃金センサス(統計データ)」を用いて算出されます。
労働能力喪失率は1級〜3級で100%、就労可能年数(原則67歳まで)に応じた中間利息控除(ライプニッツ係数)を掛け合わせて計算します。
例えば、年収500万円の40歳男性が交通事故により最も軽度な「9級」に認定された場合、後遺障害逸失利益の額は約3,207万円となります。
さらに、1級や2級の重度障害に認定され、今後の人生において介護が必要不可欠となった場合に請求できる「将来介護費」も重要です。
近親者(家族)が自宅で介護を行う場合は1日あたり8,000円、介護施設等を利用する職業介護の場合は施設利用料の実績(実額)をベースに、平均余命までの年数に対応するライプニッツ係数を掛けて算出します。
これらに加え、自宅をバリアフリー化するための「自宅改装費」や車椅子対応の「車両購入費」などの実費も請求を検討することになります。
労災(業務中の事故)が原因の場合|労災保険からの給付金
障害補償年金と障害補償一時金はいくらもらえる?
業務中の事故や、毎日の通勤途中の事故によって頭部に重傷を負い、高次脳機能障害が残ってしまった場合には、「労災保険(労働者災害補償保険)」から給付金を受け取ることができます。
労災保険は、労働者を一人でも雇用している事業所に加入が義務付けられているため、正社員だけでなくアルバイトやパートタイムであっても給付の対象となります。
治療費(療養補償給付)や休業中の給料の約80%を補償する給付(休業補償給付)とは別に、後遺症が残った場合には、認定された等級に応じて「障害補償給付(障害補償年金または障害補償一時金)」と「特別支給金」が支給されます。
高次脳機能障害の症状が重く、後遺障害等級が1級〜7級の範囲に認定された場合は、一時金ではなく一生涯にわたって定期的に支給される「年金」の形式で給付が行われます。
給付額は、事故前3ヶ月間の1日あたりの平均賃金である「給付基礎日額」をベースに算出されます。
これに加えて、ボーナス等の実績に応じた特別支給金(一時金)が加算されます。
第1級〜7級の給付内容は以下のとおりです。
| 後遺障害等級 | 年金として支給される内容 | 特別支給金 |
|---|---|---|
| 第1級 | 給付基礎日額の313日分 | 342万円 |
| 第2級 | 給付基礎日額の277日分 | 320万円 |
| 第3級 | 給付基礎日額の245日分 | 300万円 |
| 第4級 | 給付基礎日額の213日分 | 264万円 |
| 第5級 | 給付基礎日額の184日分 | 225万円 |
| 第6級 | 給付基礎日額の156日分 | 192万円 |
| 第7級 | 給付基礎日額の131日分 | 159万円 |
一方、比較的軽度な高次脳機能障害で、8級〜14級の範囲に認定された場合は、年金ではなく「一時金(一回限りの支給)」となります。
8級〜14級の給付内容は以下のとおりです。
| 後遺障害等級 | 給付される内容 | 特別支給金 |
|---|---|---|
| 第8級 | 給付基礎日額の503日分 | 65万円 |
| 第9級 | 給付基礎日額の391日分 | 50万円 |
| 第10級 | 給付基礎日額の302日分 | 39万円 |
| 第11級 | 給付基礎日額の223日分 | 29万円 |
| 第12級 | 給付基礎日額の156日分 | 20万円 |
| 第13級 | 給付基礎日額の101日分 | 14万円 |
| 第14級 | 給付基礎日額の56日分 | 8万円 |
また、労災保険には、障害補償給付のほかにも被害者と家族を支える重要な独自給付が存在します。
療養開始から1年6ヶ月が経過しても病気やケガが治っておらず、障害の程度が重い場合に休業補償給付に代わって労基署長の職権により支給される「傷病補償給付」や、障害等級第1級または第2級(精神神経に障害を有する方)で現に親族や民間サービスから介護を受けている場合に支給される「介護補償給付」(※病院や施設に入所している期間は対象外)などがあります。
会社に対する損害賠償請求(安全配慮義務違反)の可能性
労働災害の場合、労災保険から各種給付金を受け取ることができます。
しかし、労災保険の給付だけで被害者やご家族の受けたすべての損害がカバーされるわけではありません。
例えば、精神的苦痛に対する慰謝料などは、労災保険の給付対象に含まれていません。
そこで重要となるのが、勤務先企業に対する民事上の損害賠償請求(安全配慮義務違反の追及)という選択肢です。
会社には、従業員が生命や身体の安全を確保しつつ労働できるよう、必要な配慮を行う法律上の義務があります。
この義務には、適切な職場環境を整える「職場環境配慮義務」や、過度な負担を避ける「健康配慮義務」が含まれます。
そのため、会社側の安全配慮義務違反によって従業員が事故を起こし、高次脳機能障害を負ってしまった場合、会社に対して損害賠償請求ができるのです。
会社側に安全配慮義務違反が認められた場合、債務不履行責任(民法第415条)や使用者責任(民法第715条)に基づき、労災給付では支給されない慰謝料や労災給付の枠を超えた高額な逸失利益、将来介護費、家屋・自動車の改装費用などを、別途民事上の賠償金として会社に直接請求できる可能性があります。
適正な金額を受け取るための最重要ポイント
適正な「後遺障害等級」の認定を受けることが鍵
高次脳機能障害で適正な金額を受け取るためには、適正な「後遺障害等級」の認定を受ける必要があります。
なぜなら、認定される等級によって、本人や家族が受け取れる最終的な賠償金額や給付額に大きな差が生まれるからです。
たとえば、交通事故で高次脳機能障害を負った男性(年収500万円の40歳)のケースを考えてみましょう。
この場合、認知障害や社会的行動障害の程度が比較的軽度であると判断され、最も低い「9級」に認定された場合、裁判基準での後遺障害慰謝料(690万円)と後遺障害逸失利益(約3,207万円)を合算した金額の目安は、約3,897万円となります。
しかし、もしこれが「終身労務に服することができない」とされる重度な「3級」に認定された場合、労働能力喪失率が100%として計算されるため、賠償額は一気に1億円を超える規模へと跳ね上がります。
さらに、日常生活において常に介護を必要とする「1級」や「2級」に認定されれば、ここに「将来介護費用」という極めて大きな補償項目が加算されます。
自宅で親族が介護を行う場合であっても、1日あたり8,000円前後を基準として被害者の平均余命までの期間で一括計算されるため、将来介護費だけで5,000万円以上が認められる事例も少なくありません。
このように、等級が1つ異なるだけで数千万円単位の差が生じるからこそ、適切な等級を勝ち取ることが重要となるのです。
高次脳機能障害特有の「見逃し」を防ぐための医師との連携
高次脳機能障害は外見からは症状が分かりにくく、本人に自覚がないことも多いため、審査で見逃されてしまうリスクがあります。
この見逃しを防ぎ、適正な給付金や賠償金を獲得するためには、主治医と緊密に連携し、適切な「後遺障害診断書」を作成してもらう必要があります。
まず重要となるのが画像所見です。
頭部CTや受傷直後からほぼ3ヶ月以内に行う経時的なMRI検査によって、脳室拡大やびまん性脳萎縮などの「脳の器質的病変」を客観的に証明しなければなりません。
これに加えて、高次脳機能障害の等級認定では、記憶障害や注意障害、遂行機能障害といった目に見えない認知機能の低下を「神経心理学的検査」によって客観的な数値に落とし込むことが必要とされています。
そのため知能や記憶力、注意力を測るための多角的な専門検査を受け、その結果を主治医に「神経系統の障害に関する医学的意見」などの書面に反映してもらうことが重要です。
ただし、医師は治療のプロであっても、自賠責保険や労災における「後遺障害認定のプロ」とは限りません。
多忙な医療現場では、日常生活の細かな支障や人格変化が診断書に反映されず、内容が薄くなってしまうケースが散見されます。
そのため、ご家族が被害者の「事故前後の変化」をまとめた「日常生活状況報告書」などの客観的資料を医師に手渡し、症状ごとに具体例を盛り込んだ充実した診断書を書いてもらうよう働きかけることが、正しい等級認定と適正な給付金受け取りへの絶対条件となります。
交通事故や労災の高次脳機能障害を弁護士に依頼するメリット

交通事故や労災事故によって生じる高次脳機能障害の手続きは、専門的な医学知識と複雑な法律知識が交錯するため、ご家族だけで進めるには負担が大きくなりがちです。
複雑な手続きを経て、適正な給付金や賠償金を確保するためには、交通事故や労災に強い弁護士に相談・依頼されることが有効です。
弁護士に依頼することで、以下のような絶大なメリットを享受できます。
まず、「被害者請求」による後遺障害の申請手続きを、書類の収集から精査まで一任できます。
加害者側の保険会社に任せる「事前認定」とは異なり、弁護士主導の被害者請求であれば、認定の確率を高めるための追加検査の提案や医師へのアプローチ、有利な証拠の選定を徹底した上で自賠責保険へ申請できます。
万が一、納得のいかない不当な等級認定が出された場合でも、専門的視点から妥当性をチェックし、異議申し立てを行ってもらえます。
さらに、後遺障害認定後の示談交渉や企業への損害賠償請求(安全配慮義務違反の追及)においても、弁護士の存在は不可欠です。
保険会社は、弁護士が介入することで最も高額な「裁判基準(弁護士基準)」での交渉に応じるため、最終的に受け取れる賠償金額が数百万円から数千万円単位で跳ね上がるケースが多々あります。
また、会社側が労災申請に非協力的な場合や、不当な圧力をかけてくるような場合でも、弁護士が代理人として対等に話し合い、正当な権利を守ります。
すべての手続きを弁護士に任せることで、不安を抱えるご本人やご家族の精神的負担を軽減し、治療と介護に専念できる環境を確保します。
高次脳機能障害と給付金についてのQ&A

本人は症状の自覚がないのですが、家族が代理で給付金の請求手続きを行えますか?

本人に自覚がなくても、配偶者や親などのご家族が代理人として各種給付金の請求手続きを行える可能性があります。
高次脳機能障害の大きな特徴として、本人に障害の自覚(病識)がなかったり、記憶や注意の障害から複雑な申請手続きを理解することが難しかったりするケースが多々あります。
本人に意思能力がある場合には、ご家族が代理人として、申請書類に代理人の氏名や本人との続柄を記入することで、手続きを進められる可能性があります。
ただし、給付金や年金の受取口座は必ず「本人名義」の口座である必要がありますのでご注意ください。
他方、本人の意思能力が完全に喪失しているような重篤な状態である場合には、家庭裁判所に申し立てを行って「成年後見制度」を利用し、選任された成年後見人が財産管理の代理人として請求手続きを行う方法へと移行します。
どのようなケースであっても、ご家族が先頭に立って収入源を確保できる道は開かれていますので、まずは諦めずに弁護士など専門家にご相談ください。

軽い物忘れや怒りっぽくなった程度の症状でも給付金(賠償金)はもらえますか?
「軽い物忘れが増えた」「以前より少し怒りっぽくなった」という一見すると些細な変化であっても、それが脳外傷や脳血管疾患による高次脳機能障害の症状であれば、給付金や賠償金を受け取れる可能性はあります。高次脳機能障害の審査では、目に見える重症度だけでなく、その症状が「日常生活や労働にどれだけ支障をきたしているか」が客観的な基準に照らし合わされて判断されるためです。
公的な障害年金においては、労働が著しい制限を受ける、あるいは日常生活に援助が必要なレベルであると判断されれば、障害等級の対象となります。
また、交通事故の損害賠償や労災保険における「後遺障害等級」の審査では、最も軽度とされる「9級」の基準であっても、「服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」と定義されています。
つまり、軽い物忘れのせいで仕事にミスが増えたり、感情のコントロールができず人間関係を損ねて配置転換を余儀なくされたりしている場合は、正当な後遺障害として認められ、相応の給付金や賠償金が支払われます。
ご家族が「この程度では無理だろう」と自己判断せず、専門的な神経心理学的検査を受けて客観的な証拠を残すことが重要です。

給付金や賠償金の請求には、いつまでに手続きが必要(時効)ですか?
各種給付金や賠償金の請求権には、それぞれ法律で定められた「時効(期限)」が存在します。高次脳機能障害に関連する主な請求権の時効は、その原因や制度ごとに異なっており、期限を過ぎてしまうと権利が消滅して受け取れなくなるため、スケジュールを正確に把握しておく必要があります。
まず、病気などが原因となる公的な障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金)の時効は「5年」です。
初診日から1年6ヶ月が経過した障害認定日から請求が遅れた場合でも、過去5年分までは遡って一括受給が可能ですが、5年を超えた古い分は毎月順次消滅していきます。
次に、労災保険の障害補償給付についても、症状がこれ以上改善しないと医師が判断した「症状固定日」から「5年」が時効の期限となります。
そして、交通事故による加害者側への損害賠償請求(示談交渉や裁判)の時効は、原則として「3年」です。
交通事故の場合は後遺障害等級が確定した時点から具体的な請求権を行使できるようになるため、時効のカウントの仕方が非常に複雑です。
いずれの制度も、時効が迫ると取り返しがつかないため、お早めの手続きや弁護士に相談されることをおすすめします。
まとめ
高次脳機能障害で将来にわたる経済的安定を確保するためには、その原因に応じた公的給付や損害賠償の手続きを正しく進めることが必要です。
病気であれば障害年金、交通事故や労災であれば後遺障害等級の認定が、もらえる金額を大きく左右することとなります。
しかし、これらの審査は非常に厳格であり、医学的な証拠や詳細な日常生活の報告書が不足していると、実際の症状よりも低い評価をされてしまうリスクがあります。
正当な補償を受けられるように、まずは専門知識を持つ弁護士へ相談し、適切なサポートを受けることを強くおすすめします。
弁護士法人デイライト法律事務所では、交通事故や労災を原因とする後遺障害問題に注力する弁護士が、ご相談から申立て、制度利用後のサポートまで一貫して対応しています。
LINE、Zoom、Google Meetなどを用いたオンライン相談にも力を入れており、全国どこからでもご相談が可能です。
どうぞお気軽にご相談ください。


