解決事例
更新日2020年8月4日

交通事故の影響により中絶手術を行い、慰謝料の増額に成功した事例

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)


※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

ご相談者Yさん

受傷部位頚椎捻挫、腰椎捻挫、左胸部打撲
等級なし
ご依頼後取得した金額
約80万円

内訳
損害項目 弁護士によるサポート結果
傷害慰謝料 110万円(通院7か月強、裁判基準から増額)
休業損害 6万円
過失相殺 15%
結果 約80万円

 

状況

Yさんは、住宅街の交差点を直進していたところ、一旦停止のある道路から相手方の自動車が交差点内に進入してきたため、避けきることができず出会い頭で衝突する交通事故に遭いました。

互いの車が衝突のはずみで交差点脇のフェンスにぶつかって、フェンスや掲示板が破損するほどの事故でした。

Yさんは、事故後近くの病院に救急搬送され、全身のレントゲン検査を受けました。

幸い骨には異常はなく、頚椎捻挫、腰椎捻挫と診断されました。

その後、事故から間もなく、胸部の痛みを感じたYさんは再度病院でレントゲン検査を受けました。

そして、整形外科と整骨院での治療を行っていました。

治療を行っている最中に、Yさんは妊娠していることがわかりました。

しかも、妊娠日は交通事故より前であり、その時点でレントゲン検査により放射線を受けている状態でした。

妊娠の事実がわかっていたらレントゲン検査を受けていなかった、生まれてくる子どもに万が一影響があったらどうしようという気持ちからYさんは悩みに悩んで、やむなく中絶することにしました。

こうした状況の中、治療の目処がついたところで、弁護士費用特約に加入していたYさんは、賠償について弁護士に相談することにしました。

 

弁護士の対応

Yさんから、交通事故の状況と治療経過、中絶の理由を確認しました。

その上で、産婦人科の領収証を準備するように指示しました。

弁護士は、領収証を添付して、保険会社に対し、中絶は事故による影響が否定できないことを示して、慰謝料を増額すべきであると主張しました。

保険会社は、中絶に医師の明確な指示はないとして、当初は慰謝料の増額に否定的でした。

しかしながら、妊娠が判明した時期と妊娠日の経緯を細かく説明し、経過として不自然な点はないこと、医師の明確な指示はなくても、一般的に妊娠時に放射線を受けることは避けるべきとされていることを主張して、増額事由があることを改めて主張しました。

最終的に、Yさんの通院7か月強で認められる裁判基準の慰謝料 100万円から10%ほど増額した 110万円の慰謝料を認めてもらうことができ、裁判をせずに示談で解決することができました。

 

弁護士のアドバイス

傷害慰謝料(入通院慰謝料)について

交通事故における慰謝料とは、事故によって被った精神的苦痛に対して支払われる金銭です。

同じ事故であっても人によって受け止め方が異なるため、事故によって生じる精神的苦痛は、事案それぞれについて個別事情を加味しながら算出されるべきとも思われます。

しかし、個別の事情を一つ一つ検討していては、多大な時間を要することとなり、賠償されるまでに時間を要し、逆に被害者救済を損ねることになります。

また、同種事故で、賠償額が全く異なるような場合には、公平性を欠いてしまいます。

赤い本こうした事情から、交通事故賠償実務では、慰謝料の算定について、定型化されています。

傷害慰藉料(入通院慰謝料)については、入院した期間、通院した期間により算出されます。

例えば、通院を半年した場合には89万円が傷害慰謝料となります(裁判基準)。

慰藉料の計算方法など、詳しくはこちらをご覧ください。

ポイントこのように、慰謝料の金額は、ある程度定型化されていますが、負傷した部位・程度、入院期間など、個別事情も加味して、定型化された金額から増額される場合もあります。

また、加害者が、飲酒運転であったり、ひき逃げや、証拠隠滅を図るような行為をした場合にも慰謝料が増額されることがあります。

本件の慰謝料増額について

慰謝料は、上記のとおり定型化して決められていますが、本件のように特殊な事情がある場合には、増額されることもあります。

本件のように、中絶手術を受けたということは、慰謝料の増額事由に該当しうる事情となりますが、交通事故と中絶したことの因果関係をしっかりと主張立証しなければなりませんでした。

本件では、弁護士が妊娠が判明した時期と妊娠日の経緯を細かく説明するなど、具体的な主張を重ねた結果、慰謝料の増額が認めさせることができました。

 

 


なぜ交通事故は弁護士選びが重要なのか

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