
公正証書とは、公証人がその権限に基づいて作成する公文書のことをいいます。
公証人とは、国の公証事務(ある事実の存在等について証明・認証する国の業務)を担当する公務員のことです。
公正証書は、証拠としての信用性が非常に高いです。
また、お金の支払いに関する公正証書があれば、約束どおりにお金が支払われない場合、裁判を経ることなく、直ちに強制執行(強制的にお金を回収する手続き)をすることができます。
そのため、公正証書は、権利の保全やトラブルの防止に役立ちます。
一方、公正証書には、作成に費用や手間がかかるなどのデメリットもあります。
公正証書の作成をスムーズに行うためには、公正証書の意味やメリット・デメリットを理解しておくことが大切です。
そこで、この記事では、公正証書の意味、メリット・デメリット、作り方などについて解説していきます。
ぜひ参考になさってください。
公正証書とは?

公正証書とは、私人(個人や会社などの法人)の嘱託(依頼)により、公証人がその権限に基づいて作成する文書のことをいいます。
公正証書は、公文書(公務員が権限に基づいて作成する文書)であるため、証拠としての信用性が非常に高いです。
また、お金の支払いに関する公正証書は、一定の条件を満たす場合は執行力を持ちます。
すなわち、一定の条件を満たす公正証書を作成しておけば、約束どおりにお金が支払われない場合、裁判を経ることなく、直ちに強制執行(強制的にお金を回収する手続き)をすることができます。
公証人とは?
公証人とは、国の公証事務を担当する公務員のことをいいます。
国家公務員法上の公務員ではありませんが、国の公証事務を担う実質的な公務員とされています。
公証事務とは、ある事実の存在等について証明・認証する国の業務です。
具体的には、公正証書の作成、私署証書の認証、定款の認証、確定日付の付与などの業務をいいます。
公証人は、裁判官・検察官・弁護士などを長年務めた法律の専門家の中から、法務大臣によって任命されます。
全国に約500人います。
公正証書はどこで作る?公証役場とは?
公証役場とは、公証人が執務をする事務所のことをいいます。
公正証書は、公証役場において作成します。
公証役場は、法務省の管轄下にあり、全国に約300か所設置されています。
公正証書の種類
公正証書には様々な種類があります。
ここでは、公正証書の中でもよく利用されるもの・重要なものをピックアップして簡単にご紹介します。
公正証書遺言
公正証書遺言(こうせいしょうしょいごん)とは、公証人に作成してもらう遺言のことです。
遺言をする人が公証役場で公証人と2人の証人の面前で遺言の内容を告げ、公証人がそれを文書にするという方法で作成されます。
遺言にはいくつか種類があり、公正証書によらずとも作成することができます(自筆証書遺言など)。
しかし、公正証書遺言には、紛失や改ざんの心配がない、要式違反で無効になるリスクがないなど、多くのメリットがあります。
そのため、公正証書遺言は広く利用されています。
参考:日本公証人連合会ホームページ|令和6年の遺言公正証書の作成件数について
離婚条件に関する公正証書
離婚条件に関する公正証書とは、離婚の合意、子どもの親権、養育費、面会交流、財産分与、慰謝料、年金分割など、離婚に関する取り決めを内容とした公正証書のことをいいます。
夫婦間の話し合い(協議)で離婚をする場合、通常、離婚条件をまとめた「離婚協議書」という書面を作成します。
離婚条件に関する公正証書は、この離婚協議書の公正証書版です。
離婚条件に関する公正証書は、特に養育費の取り決めがある場合に作成が検討されることが多いです。
養育費は、離婚後も、子どもが自立するまでの期間、基本的には毎月、継続的に支払われます。
そのため、途中で支払いが途切れるリスクが内在します。
そこで、公正証書を作成しておき、万一支払いが途切れた場合に素早く対処できるようにしておくケースが多いです。
お金の貸し借りに関する公正証書
金銭消費貸借公正証書
金銭消費貸借公正証書とは、お金の貸し借りについての契約を内容とした公正証書のことです。
お金の貸し借りは法律用語では「金銭消費貸借」といいます。
金銭消費貸借契約とは、わかりやすく言うと、お金を貸して、後で同じ額(利息が加わることもある)を返してもらう(借主側から言うと、お金を借りて、後で同じ額(+利息)を返す)という契約をいいます。
金銭消費貸借契約を結ぶ際には、その契約内容を記載した金銭消費貸借契約書という書類を作成することがあります。
金銭消費貸借公正証書は、この金銭消費貸借契約書の公正証書版です。
金銭消費貸借公正証書を作成しておけば、借主が契約のとおりにお金を返さない場合、貸主は、裁判をせずに直ちに強制執行の手続きを行うことができます。
そのため、金銭消費貸借公正証書は古くから利用されています。
保証意思宣明公正証書
保証意思宣明(ほしょういしせんめい)公正証書とは、事業用融資(会社や個人事業主が事業のためにする借入)の保証契約を結ぶ際に、保証人となろうとする人の意思を公証人が確認して作成する公正証書のことです。
保証契約とは、簡単に言うと、他人の借金の保証人になることを、お金の貸主と約束する契約です。
保証人とは、お金を借りた人がその借金を返せなくなった場合に、代わりに借金を返す義務を負う人のことをいいます。
保証意思宣明公正証書は、事業用融資の保証契約を結ぶための必須書類です。
具体的には、事業用融資の保証契約を結ぶ前1か月以内に、公証人が保証人となろうとする人と面談し、保証人となることの意味やリスクを理解していることを確認して公正証書を作成しなければならないとされています。
保証意思宣明公正証書がない場合は、保証契約を結ぶことはできません(無効となります)。
なお、この保証意思宣明公正証書の制度は、保証人となる人を保護することを目的に、法律改正によって2020年4月1日に新設された制度です。(民法465条の6)。
不動産に関する公正証書
不動産に関する公正証書とは、不動産の取引(売買や賃貸など)の契約を内容とした公正証書です。
不動産に関する契約には様々な類型がありますが、そのうち、以下の契約を結ぶ際には公正証書が必要(必須又は望ましい)となります。
| 契約の種類 | 内容 | 公正証書の要否 |
|---|---|---|
| 事業用定期借地権設定契約 | 事業用建物の所有を目的として土地を借り、期間満了時には必ず土地を更地にして返す(更新なし)という内容の契約 | 公正証書による契約が必須(借地借家法23条3項) |
| 定期借地権設定契約 | 一定の期間土地を借り、期間満了後は必ず土地を返す(更新なし)という内容の契約 | 公正証書による等書面による契約が必要(借地借家法22条1項) |
| 定期建物賃貸借契約 | 一定の期間建物を借り、期間満了時には必ず建物を返す(更新なし)という内容の契約 | 公正証書による等書面による契約が必要(借地借家法38条1項) |
以上のように、事業用定期借地権設定契約のみ、公正証書による締結が必須(=公正証書によらない場合、契約は無効)となります。
それ以外の場合は、公正証書は必須ではありません。
公正証書でなくても、書面であれば契約を結ぶことはできます。
しかし、公正証書を作成することで、法的に不備のある契約書を作成してしまうリスクを防ぐことができます。
また、賃料の滞納などのトラブルが生じた場合は、公正証書があれば素早く対処をすることも可能です。
このように、公正証書の作成にはメリットがあります。
そのため、公正証書が必須でないケースであっても、公正証書を作成するのが望ましいといえるでしょう。
証拠を残すための公正証書
公証人は、視覚や聴覚などの五感の作用により直接確認した事実に基づき、公正証書を作成することができます。
これを「事実実験公正証書」といいます。
事実実験公正証書は、ある客観的な事実があったこと(又はなかったこと)を証拠として残すために活用されています。
| 事実実験公正証書の内容 | 主な利用目的 |
|---|---|
| 特許権や商標権が侵害されている状況を確認・記録したもの | 権利侵害の事実を立証するための証拠保全(裁判の際などに利用) |
| 土地の境界がどうなっているかを確認・記録したもの | 土地の境界に関するトラブルの防止、境界裁判の際に提出する証拠の保全 |
| 亡くなった方(被相続人)の貸金庫を開披し内容物を点検・記録したもの | 相続財産の把握、相続人間におけるトラブル防止 |
公正証書のメリットとデメリット
公正証書のメリットとデメリットをまとめると、下表にようになります。
| メリット | デメリット |
|---|---|
|
|
以下、くわしく解説いたします。
公正証書のメリット
公正証書があると強制執行ができる
公正証書があれば、相手が約束どおりにお金の支払いをしない場合、裁判を経ることなく、直ちに強制執行をすることができます。
強制執行とは、相手の給与口座などの財産を差し押さえ、そこから強制的にお金を回収する手段のことです。
強制執行の手続きをするためには、「債務名義(さいむめいぎ)」という書類が必要です。
「債務名義」の代表格は、裁判所によって出された命令(確定判決)です。
裁判所が出した命令(例えば、「100万円を払え」との命令)に基づき、強制的に命令内容を実現する(例えば、相手の給与口座を差し押さえて100万円を回収する)というのは、比較的イメージしやすいものかと思います。
この債務名義になる書類には、裁判所による命令以外にもいくつかあります。
そのうちの一つが公正証書です。
もっとも、公正証書といっても、債務名義となるのは、次のような条件を満たす公正証書に限られます。
- ① 一定額の金銭の支払いを目的とする請求権が特定・表示されていること
→例えば、公正証書に「AはBに対し、慰謝料として100万円を支払う」というような、支払う金額が具体的にわかる記載がされている必要があります。
これが例えば「AはBに対し、慰謝料として相当額を支払う」という記載の場合は、金額が特定されていないため、この条件を満たさないことになります。 - ② 強制執行受諾文言が記載されていること
→「強制執行受諾文言」とは、債務者(お金の支払義務を負う人)が「約束どおりにお金を支払わない場合は直ちに強制執行を受け入れる」旨を述べたことを示す文章のことをいいます。
【 強制執行受諾文言の具体例 】
「債務者は、本契約による金銭債務の履行をしないときは、直ちに強制執行に服する旨陳述した。」
上記の①②の条件を満たす公正証書を作成しておけば、約束どおりにお金が支払われない場合、裁判を経ずに、直ちに強制執行をすることができます。
なお、①②の条件を満たしている公正証書のことを専門用語では「執行証書」といいます。
公正証書を作成していない場合(口約束や当事者間で作成した契約書しかない場合)は、直ちに強制執行をすることはできません。
このような場合にお金を回収したいと思ったら、裁判を提起し、改めてお金を請求し、裁判所に「お金を支払え」との判決(命令)を出してもらわなければなりません。
しかし、裁判の手続きには、通常、多くの時間・労力・費用を要します。
また、裁判で相手が「お金を支払う約束はしていない」と言いだした場合は、こちら側でお金を支払ってもらう約束をしたことを立証する必要があります。
しかし、きちんとした契約書がない場合(口約束や簡単なメモしかない場合)は、立証ができずに裁判で負けてしまう(請求が認められず、「お金を支払え」との命令を出してもらえない)可能性もあります。
そうすると、強制執行の手続きをすることもできなくなります。
一方、公正証書を作成していれば、裁判の手続きをカットすることができ、約束をなかったことにされてしまうリスクも回避することができます。
公正証書には、このような点で大きなメリットがあります。
公正証書には高い証明力がある
公正証書には高い証明力があります。
公正証書は、公証人がその権限に基づき、厳格な手続きにしたがって作成する公文書です。
そのため、偽造や改ざんの恐れが非常に低く、証拠としての信用度は高いものとなります。
仮に裁判で公正証書を証拠として提出した場合は、証明力の高い強力な証拠として扱われることになります。
将来の紛争・トラブルを防止できる
公正証書を作成しておけば、意思表示や合意の内容が明確になるため、後で「言った・言わない」のトラブルが生じることを防ぐことができます。
また、公正証書は偽造や改ざんのリスクが非常に低いため、利害関係人の間で偽造や改ざんの疑いを巡り争いになることも防ぐことができます。
さらに、公正証書を作成しておくことで、相手に「合意内容を守らないといけない」という心理的なプレッシャーを与えることもできます。
特に、お金の支払いに関する公正証書の場合は、債務者(支払い義務を負う人)に「約束どおりに支払わなければ直ちに強制執行されてしまう」という圧力をかけることができます。
そのため、公正証書を作成することで、約束どおりに支払ってもらえる可能性が高まります。
例えば、離婚に際して養育費の取り決めをした場合に、その取り決めを盛り込んだ公正証書を作成しておけば、養育費の不払い(及びそれを巡るトラブル)を未然に防ぐ効果を期待することができます。
特に公正証書遺言には、相続人間の紛争・トラブルを防ぐという点で大きなメリットがあります。
まず、遺言の要式不備によって無効になるリスクは基本的にはありません。
また、公正証書遺言の原本は公証役場に保管されるため、遺言の紛失や破棄隠匿の心配はありません。
遺言作成後に改ざんされるという恐れもありません。
さらに、公証人が遺言者本人の意思を確認して作成するため、相続人の誰かが自分に有利な内容に遺言を「書かせる」ということもできません。
そのため、相続人の間で遺言の存在・有効性などを巡って争いになることを防ぐことができます。
その結果、遺産分割で揉めることも防ぐことができます。
公正証書作成のデメリット
作成に費用がかかる
公正証書を作成するには費用(公証人手数料)がかかります。
公証人手数料は、公正証書に記載する法律行為の目的の価額ごとに定められています。
そのため、作成する公正証書の内容によっては手数料が高額になることもあります。
公証人手数料について詳しくは後に解説いたします。
作成に手間や時間がかかる
公正証書を作成するには、公証役場に申込み、必要書類をそろえ、公証人と打ち合わせを行い、公証役場で署名押印をするという手順を踏む必要があります。
そのため、公正証書の作成には手間や一定の時間がかかります。
内容面のサポートは受けられない
公証役場では、内容面のサポートを受けることはできません。
例えば、離婚条件に関する公正証書を作成する場合、「養育費はいくらにするべきですか」と相談することはできません。
公証人は、当事者間で合意した内容をもとに公正証書を作成するのであり、どういう合意内容が適切かというアドバイスや、合意に向けたサポート(相手方との交渉など)を行うことはできません。
また、公正証書遺言を作成する場合も、「誰にどの遺産を受け継がせればよいですか」といった遺言の内容についての相談をすることはできません。
公証人は、遺言をする人の意思をもとに公正証書を作成するのであり、意思決定にかかわる助言をすることはできません。
また、財産調査や相続税対策についても、公証役場ではサポートを受けることはできません。
このような内容面についてのサポートが必要な場合は、それぞれの分野に精通した弁護士に相談するようにされるとよいでしょう。
相手が応じないと作成できない
公正証書遺言や保証意思宣明公正証書は、自分一人の意思表示を公正証書にするものであるため、自分だけで作成することができます。
一方、離婚条件や金銭消費貸借契約など、相手との合意内容を公正証書にする場合は、相手の協力が不可欠となります。
合意内容を公正証書にする場合は、合意の当事者全員の意思確認・署名押印をしなければ、公正証書を完成させることはできないからです。
そのため、離婚条件や金銭消費貸借の合意自体ができていても、相手が公正証書の作成を拒否する場合、公正証書を作成することはできません。
公正証書の作成を強制する法的手段もありません。
公正証書の作り方
公正証書作成の流れ

① 公正証書の内容の整理・必要書類の準備
まずは、どのような内容の公正証書を作成するかについて、考えをまとめます。
例えば、公正証書遺言を作成する場合は、遺言の内容(どのような財産があり、それを誰にどのように相続させたいかなど)について考えをまとめてメモを作成しておきます。
離婚条件に関する公正証書を作成する場合は、相手と合意した内容を箇条書きにまとめておきます。
離婚協議書を作成している場合は、その原本を持参できるように準備しておきます。
これらと並行して、公正証書の作成に必要な書類の準備も進めておきましょう。
必要書類の詳細については、公証役場への申込時や公証人との打ち合わせの際に指示をもらうことができます。
しかし、取得に時間を要するものもあるため、できる限り早めに準備を始めることをおすすめします。
なお、公証役場では公正証書の内容面のサポートを受けることはできません。
そのため、遺言の内容面に関する助言が必要な場合や、合意成立に向けたサポートが必要な場合(まだ離婚条件等についての合意がまとまっていない場合)は、まずは専門の弁護士にご相談ください。
② 公証役場への申込み・相談予約
公証役場には電話・メール等で連絡を入れ、申込みと相談予約を行います。
通常は最寄りの公証役場を利用することが多いですが、全国どこの公証役場に頼んでも問題はありません。
ただし、公証人は、所属する法務局・地方法務局の管轄外に出張することはできません。
そのため、公正証書遺言を病院等で作成したい場合、事実実験公正証書を作成する場合など、公証人の出張が必要になるケースでは注意が必要です。
相談予約は、公証役場が混みあっている場合は希望の日時に取れないこともあるため、早めに日程を押さえておくことをおすすめします。
③ 公証人との打ち合わせ・書類の提出
どのような公正証書にするかについて、公証人と打ち合わせを行います。
必要書類もこの段階で提出します(事前に書類を送付するよう指示される場合もあります。)。
打ち合わせの方法等は、状況により異なります。
公証役場で公証人と対面で話をするケースもあれば、電話やメールなどでやり取りするだけのケースもあります。
また、公証役場によっても対応が異なります。
そのため、詳細については申込みの際に公証役場に確認するようにされてください。
現場での事実実験
事実実験公正証書を作成する場合は、まずは事実実験の内容・方法、日程などについて打ち合わせを行います。
その後、公証人が現場に出向き、事実実験を実施します。
④ 公証人による公正証書の作成
打ち合わせ等が済んだら、公証人が公正証書を作成します。
完成前に、公証人から電話やメール等で文案(下書き)の確認をお願いされることもあります。
その場合は内容を確認し、必要があれば公証人に修正等をお願いします。
修正等がなければ、署名押印の日程を決める流れとなります。
⑤ 公正証書の読み聞かせ・署名押印
公正証書が作成されたら、公証役場において、公証人が公正証書の読み聞かせを行います。
公正証書遺言を作成する場合は、このときに証人2人に立ち会ってもらいます。
内容に誤りがないことを確認したら、署名押印を行います。
最後に公証人が職印を押し、これによって公正証書は完成となります。
⑥ 手数料の支払い・公正証書の交付
署名押印が済んだら、受付で手数料を現金又はクレジットカードで支払います。
支払いが済んだら、公正証書が正式に発行されます。
公正証書の原本は公証役場に保管され、当事者には正本と謄本が交付されます。
公正証書の作成を弁護士に依頼する場合は、基本的には上記の①〜⑥の手続き全てを弁護士に任せることができます。
そのため、例えば離婚条件に関する公正証書を作成するケースで、公証役場で相手と顔を合わせたくないという場合、弁護士に依頼すれば、相手と顔を合わせることなく公正証書を作成することができます。
もっとも、公正証書遺言や保証意思宣明公正証書を作成する場合は、⑤の手続きは弁護士が代理で行うことはできないため、必ずご本人自身に行なっていただくことになります。
ご本人が病気等で公証役場に出向くことができない場合は、公証人に自宅や病院まで出張してもらうことになります。
なお、弁護士以外の人(行政書士、司法書士、知人・親族など)を代理人に立てることも可能です。
しかし、弁護士であれば公正証書の内容面のサポートも可能です。
また、公正証書の案文を適切に作成することができるため、作成手続きもスムーズに進めることができます。
そのため、公正証書の作成サポートは弁護士への依頼をおすすめいたします。
公正証書の作成費用
公証人手数料
公正証書の作成費用(公証人手数料)は政令で次のように定められています(公証人手数料令9条別表)。
全国どこの公証役場でも同じです。
| 目的の価額 | 手数料 |
|---|---|
| 100万円以下 | 5000円 |
| 100万円を超え200万円以下 | 7000円 |
| 200万円を超え500万円以下 | 11000円 |
| 500万円を超え1000万円以下 | 17000円 |
| 1000万円を超え3000万円以下 | 23000円 |
| 3000万円を超え5000万円以下 | 29000円 |
| 5000万円を超え1億円以下 | 43000円 |
| 1億円を超え3億円以下 | 4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額 |
| 3億円を超え10億円以下 | 9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額 |
| 10億円を超える場合 | 24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額 |
「目的の価額」とは、契約や法律行為によって得られる利益や負担する義務を金銭で評価したものをいいます。
例えば、「AがBに500万円を支払う」という合意内容について公正証書を作成する場合、目的の価額は500万円となります。
そのため、このときの公証人手数料は1万1000円となります。
事実実験公正証書の作成費用
事実実験公正証書の作成費用は、事実実験に要した時間と公正証書作成に要した時間の合計時間について、1時間までごとに11000円です(公証人手数料令26条)。
公証人の出張費用
公証人に出張をしてもらう場合は、日当や旅費も支払う必要があります(公証人手数料令43条)。
日当は、1日につき2万円、4時間以内の場合は1万円です。
旅費は、公証人が現場に来るまでに使用した公共交通機関やタクシー等の実費となります。
弁護士費用
公正証書の作成を弁護士に依頼する場合は、上記の費用に加え、弁護士費用が必要となります。
弁護士費用は、依頼する弁護士や作成する公正証書の種類により異なります。
また、通常、①公正証書の作成のみを依頼するのか、それとも②相手方との交渉(離婚協議など)の段階から依頼するのかなどによっても金額は異なります。
詳しくは、各法律事務所のホームページや法律相談でご確認ください。
公正証書作成の必要書類
公正証書作成の必要書類は次のとおりです。
-
- ① 印鑑登録証明書と実印
- ② 運転免許証と認印
- ③ マイナンバーカードと認印
- ③ 顔写真付きの住民基本台帳カードと認印
- ③ パスポート、身体障害手帳又は在留カードと認印
【 代理人に委任する場合 】
※印鑑登録証明書、戸籍謄本、住民票などの公的書類は「発行後3か月以内のもの」が必要です。
公正証書作成のポイント
トラブルの内容に詳しい弁護士に相談する
公正証書を作成する際は、各トラブルの内容に詳しい弁護士に相談されることをおすすめします。
例えば、公正証書遺言の作成を考えている場合は、相続問題に詳しい弁護士に、離婚条件に関する公正証書の作成を考えている場合は、離婚問題に詳しい弁護士に相談されるとよいでしょう。
相続、離婚、お金や不動産のトラブルなど、弁護士が扱う分野はどれも専門性が高いものとなります。
そのため、直面しているトラブル内容に詳しい(=その専門分野に注力している)弁護士を選ぶことが重要です。
公正証書作成を専門の弁護士に相談するメリットとしては、次のようなものが挙げられます。
- ① 公正証書の内容面についてサポートを受けることができる
- ② 相手との交渉を任せることができる
- ③ 公正証書の作成も任せることができる
① 公正証書の内容面についてサポートを受けることができる
先に述べたとおり、公証役場では公正証書の内容面のサポートを受けることができません。
しかし、公正証書の内容面は、自分の意思に沿った公正証書ができるかどうかという点で非常に重要な問題です。
この点、弁護士であれば公正証書の内容面について、しっかりとサポートすることができます。
例えば、相続人間でのトラブルを防止できるような遺言の内容、適切な(有利な)離婚条件などについて、具体的にアドバイスをすることが可能です。
② 相手との交渉を任せることができる
弁護士に依頼した場合は、離婚条件の合意に向けた調整(離婚協議)や、契約の締結などを弁護士に代理で行ってもらうことができます。
自分で直接相手とやり取りせずに済むため、負担を軽減できるうえ、合意内容も適切なものにすることができます。
また、弁護士が相手と交渉することで、相手に公正証書作成に協力してもらいやすくなります。
先に述べたとおり、相手との合意内容を公正証書にする場合は、公正証書作成について相手方の協力が必要となります。
この点、弁護士が間に入っている場合は、弁護士から公正証書作成のメリットや流れなどを直接相手に説明することができるので、相手の公正証書作成に対する不安感や抵抗感を解消しやすくなります。
そのため、「相手の協力が得られず公正証書が作れない」という事態になることも、ある程度防止することができます。
③ 公正証書の作成も任せることができる
公正証書の作成を弁護士に依頼した場合は、必要書類の収集、公正証書の案文の作成、公証人との打ち合わせなどを弁護士が代理で行ってくれます。
そのため、公正証書作成にかかる時間や労力を大幅に軽減することができます。
公正証書についてのQ&A
公正証書は自分で作成できますか?
公正証書は公証人が作成するものであるため、自分だけで作成することはできません。
ただ、弁護士などの専門家に依頼せず、自分で公証人とやり取りをして作成することはできます。
もっとも、公証人は公正証書の内容面についてのアドバイスはしてくれません。
そのため、自分で公証人とやり取りをして作成したいと考えていらっしゃる方も、弁護士に一度ご相談なさることをおすすめします。
まとめ
以上、公正証書の意味やメリット・デメリット、作り方などを解説しましたが、いかがだったでしょうか。
公正証書は高い証拠力と執行力を持つため、権利の保全やトラブル防止に役立ちます。
一方、公正証書の作成には、手間や費用がかかるなどのデメリットもあります。
また、公証役場では、公正証書の内容面についてのサポートは受けることができません。
そのため、公正証書の作成をお考えの場合は、まずは各分野に精通した弁護士に相談されることをおすすめします。
当事務所の弁護士は、各々の注力分野を限定し、専門性を高めています。
また、多くの弁護士が所属しているため、事務所全体としては幅広い分野に対応することが可能です。
LINE等によるオンライン相談も実施しております。
公正証書の作成についてお困りの方は、当事務所までお気軽にご相談ください。




