
先日、母が亡くなり、私と弟のA及びBが相続人となりました。
母の遺産は1500万円の預貯金ですが、Bは生命保険の受取人にもなっており、1000万円を受け取っています。
Bは1000万円の生命保険金をもらったうえに、1500万円の3分の1は自分の相続分だと言っていますが、納得できません。
私は生命保険も加えて、2500万円の3分の1がBの相続分だと思うのですが、そうではないのでしょうか。
生命保険金の受取人は、保険金全額を受け取ることができます。
また、生命保険金は遺産には含まれないため、原則として、遺産を分けるときの計算で考慮されません。
ただし、遺産の総額に対して生命保険金の額の比率が大きい場合には、例外的に考慮されることになっています。
本件では、Bの主張が通る可能性が高いといえます。
このページでは、生命保険の受取人は、保険金だけでなく相続分の預金ももらえるのか解説していきます。
目次
生命保険と特別受益
生命保険金は遺産か
生命保険金は、亡くなった方以外の人が受取人として指定されている場合には、その受取人が保険金全額を受け取ることができます。
つまり、遺産には含まれないため、相続人で保険金を分けることはできないということです。
生命保険金は相続分の計算で考慮されないのか
原則:遺産を分けるときの計算で考慮されない
すでに 1000万円を保険金として受け取っているBが残りの遺産の 1500万円の3分の1までもらえるのは公平ではないと思う人も多いかと思います。
学説では、この点を考慮して、生命保険金は生前贈与ないし遺贈であるとして、「特別受益」として相続分の計算時に遺産に持ち戻されるとする立場があります。
しかし、判例では、生命保険金は原則特別受益ではないという判断がなされています。
つまり、原則として、生命保険金は遺産を分けるときの計算で考慮されないということです。
特別受益について詳しくはこちらをご覧ください。
例外:特段の事情があれば特別受益として持ち戻しが認められる
ただし、生命保険金も「特段の事情」がある場合には特別受益に準じるというのが判例です。
そのため、本件でも持ち戻しが認められる可能性はあります。
どのような場合に「特段の事情」があるといえるかですが、判例は以下のように述べています。
「保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合」
要は、財産のほとんどを生命保険に注ぎ込み、複数いる相続人のうち1人の相続人がその保険金を受け取ったような場合などが典型で、遺産の総額に対する比率は大きな指標となるものです。
相続財産と同額の生命保険金を受け取っているような場合には、特段の事情ありとされる可能性が非常に高いです。
また、相続財産の6割の額に相当する生命保険金を受け取った事案について、「特段の事情」ありとした裁判例があり、参考になるでしょう。
ただし、判例は
「同居の有無、被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきである」
としており、遺産の総額に対する比率以外にも総合考慮して判断することになります。
本件で、Bが受け取った生命保険金は遺産の総額の6割程度ですから、特別受益と判断される可能性はありえます。
しかし、その判断にあたっては、Bが介護などをしていたかなどの事情を子細に検討する必要があり、その判断は容易ではありません。
特別受益は相続時に問題となることが多いですが、特別受益に該当するのかの判断は専門家でも困難なところですし、特別受益であることを証明するための証拠の収集も必要となってきます。
そのため、弁護士でも相続に専門特化した弁護士に相談することをおすすめします。
当事務所では、それぞれの弁護士が特化分野を持ち、相続専門の弁護士が相談を受けますので、まず一度ご相談にお越しください。
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