遺産分割とは?手続の流れ・必要書類・費用やポイント

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

遺産分割とは、被相続人(亡くなった方のことです。)の遺産を相続人の間で分ける手続きのことです。

この記事では、遺産分割の手続きの流れや手続きに必要な書類、遺産分割にかかる費用や遺産分割手続きのポイントなどについて、相続問題に詳しい弁護士がわかりやすく解説します。

遺産分割とは?

遺産分割とは、被相続人の遺産を相続人の間で分ける手続きのことです。

後ほど詳しく説明しますが、被相続人の残した遺言書がある場合には、基本的に遺言書に従って遺産を分けます。

遺言書がない場合には、相続人間で遺産を分け合うための話し合い等(協議や調停、審判)を通じて遺産を分けます。

 

 

遺産分割には4つの方法がある

遺産分割には、次の4つの方法があります。

  • 現物分割
    相続人の間で遺産(土地、建物、現金、美術品など)をそのままの形で分け合う
  • 代償分割
    一部の相続人が遺産をそのままの形で取得し、他の相続人に金銭を支払う
  • 換価分割
    遺産を売却して金銭に換え、その金銭を相続人の間で分け合う
  • 共有分割
    複数の相続人が遺産を共有する

これらの分割方法には優先順位があり、現物分割→代償分割→換価分割→共有分割の順で検討します。

現物分割

現物分割とは、相続人の間で遺産をそのままの形で分け合う方法です。

例えば、被相続人の遺産(土地・建物、時計、現金)を妻・長男・長女の3人で相続する場合に、妻が土地・建物を、長男が時計を、長女が現金をそれぞれ取得するという方法です。

現物分割のメリット・デメリット

現物分割のメリットは、他の方法に比べて時間や費用がかからないことです。

また、遺産の形を変えずに相続人に引き継ぐことができるため、できる限り現物分割によるのが望ましいとされています。

現物分割のデメリットとしては、被相続人の遺産が1つしかない場合や、遺産の価値に大きな開きがある場合(例えば1億円相当の土地と100万円の預金など)に、遺産を公平に分けるのが難しいことがあげられます。

 

代償分割

代償分割とは、一部の相続人が遺産をそのままの形で取得(現物を取得)し、他の相続人に金銭(代償金)を支払う方法です。

例えば、被相続人の遺産(土地・建物)を妻・長男・長女の3人で相続する場合に、妻が土地・建物をそのまま相続し、長男と長女に対して、遺産の取り分に見合った金銭を支払うという方法です。

現物分割ができない場合や、現物分割をすると遺産を公平に分けられない場合、ある相続人に特定の遺産を引き継がせる必要がある場合(例えば、被相続人の経営していた商店を引き継いだ長男に対して、商店の土地と建物を取得させる場合など)には、代償分割の方法を検討します。

代償分割をする場合には、遺産分割協議書に代償分割であることを明記することが大切です。

その主な理由には、①代償金の支払いが「贈与」とみなされて贈与税を課されるリスクを避けるため、②遺産の現物を取得した相続人が代償金を支払ってくれない場合の請求の証拠とするため、の2つがあります。

代償分割のメリット・デメリット

代償分割のメリットは、遺産の形を変えることなく相続人に引き継がせることができ、かつ、代償金の支払いによって相続人間の公平を実現できる点です。

代償分割のデメリットとしては、遺産の現物を取得した相続人が他の相続人に代償金を支払うための資金がない場合には利用できないことがあげられます。

 

換価分割

換価分割とは、遺産を売却(任意の売却や競売など)して金銭に換え、相続人の間でその金銭を分け合う方法です。

例えば、被相続人の遺産(土地・建物)を妻・長男・長女の3人で相続する場合に、土地・建物を売却して、その売却代金を3人で分け合う方法です。

現物分割をすると遺産を公平に分けられない場合で、かつ、相続人に代償金を支払う資金がないときや、相続人が誰も遺産の現物を引き継ぎたがらない場合などには、換価分割の方法を検討します。

換価分割のメリット・デメリット

換価分割のメリットは、遺産を売却して金銭に換えることで公平に分配しやすくなる点です。

換価分割のデメリットとしては、遺産をそのままの形で残すことができないことや、遺産の売却手続きに時間と費用(売却費用や譲渡所得税など)がかかることがあげられます。

 

共有分割

共有分割とは、遺産の全部または一部を複数の相続人で共有する方法で、主に土地などの不動産に用いられます。

例えば、被相続人の遺産(土地・建物)を妻と長男2人で相続する場合に、妻と長男がそれぞれ2分の1ずつの持分で土地・建物を共有するという方法です。

現物分割、代償分割、換価分割をいずれも行うことができない場合や、相続人が遺産を共有することを希望する場合などには、共有分割を検討します。

共有分割のメリット・デメリット

共有分割のメリットとしては、遺産をそのままの形で残すことができることや、相続割合に応じた持分で共有できるため相続人間の公平を実現できることなどがあげられます。

共有分割のデメリットとしては、権利関係が複雑になるためその後の相続手続きが大変になること、共有者の間で財産の処分について意見が対立しトラブルにつながりやすいこと、などがあげられます。

共有分割についてはデメリットが大きいことから、他の方法では遺産を分割することができない場合の最終手段とするのがよいでしょう。

 

 

遺産分割の手続の流れ

下の図は、相続手続き全体の流れを図に表したものです。

遺産分割の手続き赤枠で囲った部分となりますが、遺産分割を行うためには相続人の調査や遺産の調査といった下準備が必要となります。

また、遺産分割の完了後に、相続した遺産の名義変更などの手続きをする必要があります。

この図からわかるように、遺産分割の手続きは遺言書があるかどうかで大きく異なります。

 

遺言書がある場合

基本的には、被相続人が遺言書で指定した内容に従って遺産を分けます。

遺言の内容を実現する人(これを「遺言執行者(いごんしっこうしゃ)」といいます。)が選任されている場合には、遺言執行者が遺産分割の手続きを行います。

なお、遺言書は法律で定められたルールを守って作る必要があり、ルールを守らない場合には遺言書が無効となる場合があります。

また、相続人全員が同意した場合には遺言書の内容に従わないことができます。

これらの場合には、下の【遺言書がない場合】と同様の流れで遺産分割の手続きを行います。

 

遺言書がない場合

遺言書がない場合には、相続人全員で「遺産分割協議」を行います。

遺産分割協議がまとまらない場合には、裁判所を利用して「遺産分割調停」や「遺産分割の審判」を行います。

以下では、遺産分割協議、遺産分割調停、遺産分割の審判についてより詳しく説明します。

遺産分割協議について

遺産分割協議とは、相続人全員で誰がどの遺産を相続するのかについて話し合うことをいいます。

遺産分割協議は相続人全員が合意した場合に成立します。

相続人が1人でも欠けている場合や合意していない場合には、遺産分割協議は無効です(成立しません)。

遺産分割協議が成立したら、「遺産分割協議書」を作成します(遺産分割協議書については後ほど別途説明します)。

【遺産分割協議のポイント】〜遺産分割協議の代理交渉を弁護士に依頼する 〜

遺産分割協議については、弁護士に代理交渉(ご自身に代わって弁護士に遺産分割協議の話し合いをしてもらうことをいいます。)を依頼するのがおすすめです。

遺産分割を実現する方法には、次の項目で説明する「遺産分割調停」もありますが、遺産分割調停は解決までに長期間がかかる傾向にあります(最短でも半年程度、長い場合には数年程度)。

そのため、当事務所では、できるかぎり弁護士による遺産分割協議の代理交渉の方法で解決することをおすすめしています。

弁護士に代理交渉を依頼すべき理由は大きく3つあります。

遺産分割協議をスムーズに進められる

相続人同士の関係性があまり良くない場合には、感情的な対立から遺産分割協議が難航し、泥沼化することが少なくありません。

弁護士は法律の専門家としての立場で客観的な根拠をもとに遺産分割協議を行うため、当事者だけで遺産分割協議を行う場合よりも感情的な対立が起こりにくく、話し合いをスムーズに進めることが期待できます。

遺産相続の知識がないために損をすることを防げる

相続人の中には、一方的に自分に有利な主張をして強引に手続きを進める人もいます。

このような場合に法的知識がないと、うまく反論できずに押し切られてしまったり、本来主張できる権利を主張できなかったりすることがあります。

相続問題に強い弁護士に代理交渉を依頼する場合、法的根拠にもとづく適切な主張や反論を行うことができるため、遺産相続の知識がないために損をするという事態を防ぐことができます。

時間と労力を節約できる

遺産分割の手続きにおいては、様々な書類を取得したり、書類を作成したりする必要があります。

相続人や遺産の数が多い場合には、書類の取得だけでも膨大な時間と労力がかかります。

また、書類の作成にミスがあると、手続きのやり直しが発生したり手続きがストップしたりするリスクもあります。

弁護士に代理交渉を依頼する場合には、こうした手続きを弁護士が代理で行うため、ご自身の時間と労力を節約することができるだけでなく、ミスなくスムーズに手続きを進めることができます。

期限内に法的手続きをとれる

相続手続きには期限が定められているものがあり、期限を過ぎるとペナルティや不利益を受ける場合があります。

また、相続手続きをするためには前提として遺産分割が終わっていることが必要な場合もあります。

相続問題に詳しい弁護士であれば、相続手続きの期限を意識して遺産分割協議を進めることができるほか、期限に間に合わない場合の対処法についても熟知しています。

このように、弁護士に代理交渉を依頼する場合には、期限に間に合わないことによるペナルティや不利益を避けることが期待できます。

遺産分割調停について

遺産分割協議がまとまらない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停の申立てをします。

遺産分割調停とは、家庭裁判所が間に入って当事者同士の話し合いによる合意で解決する手続きのことです。

遺産分割調停では、調停委員と裁判官からなる「調停委員会」が当事者の間に入って双方の話を聞き、解決のための落としどころを探します。

遺産分割調停は、基本的に1〜2ヶ月に1回のペースで行われ、解決までに数回を要するのが一般的です。

裁判所の休廷期間もあるため、解決までには最短でも半年程度、長い場合には数年程度かかります。

当事者の間で話し合いがまとまり調停が成立した場合には、裁判所が「調停調書」を作成します。

調停調書には裁判の場合の「判決書」と同じ効力があり、当事者が調停で合意したにもかかわらず遺産を引き渡さない場合などには、調停調書をもとに強制執行をすることができます。

なお、遺産分割調停はあくまで当事者同士の話し合いを通じた合意で解決する手続きであるため、話し合いを重ねても当事者が合意にいたらなかった場合、調停は不成立に終わります。

遺産分割の審判について

遺産分割調停が不成立になった場合、自動的に遺産分割の審判へ移行します。

裁判所は、当事者から提出された資料をもとに判断を行い、審判の内容を記載した「審判書」を作成します。

審判では裁判所が結論を出すため、調停の場合とは異なり当事者間の合意は不要です。

審判書は調停調書と同様に「判決書」と同じ効力をもち、当事者が調停で合意したにもかかわらず遺産を引き渡さない場合などには、審判書をもとに強制執行をすることができます。

 

 

遺産分割に必要な書類

遺産分割協議書とは

「遺産分割協議書」とは、遺産分割協議が成立した場合に、協議によって合意された内容を記載した書面のことをいいます。

遺産分割協議が成立したら、できるだけすみやかに遺産分割協議書を作成します。

遺産分割協議書の作成は法律上の義務ではありませんが、次の2つの理由からできるだけすみやかに作成すべきです。

  1. ① 相続人同士のトラブルを防ぐため
    遺産分割協議がまとまったとしても、後から相続人同士で「言った」「言わない」のトラブルが発生するケースは少なくありません。
    合意した内容を遺産分割協議書の形でまとめ、相続人全員の署名と実印の捺印をもらっておくことで、こうしたトラブルを防ぐことができます。
  2. ② さまざまな相続手続きで提出を求められるため
    相続した遺産について名義変更の手続きを行う場合や相続税の申告を行う場合などには、遺産分割協議書を外部に提出しなければならないことがあります。
    遺産分割協議書を提出できない場合には手続きを進めることができない可能性がありますので、余裕をもって遺産分割協議書を準備しておくことが大切です。
    遺産分割協議書の作成には専門的な知識が必要となることや、内容に抜け漏れや間違いがあった場合には、やり直しが発生する可能性もあることなどから、相続に詳しい弁護士等の専門家に依頼するのがおすすめです。

遺産分割協議書の書き方とダウンロード

遺産分割協議書の書き方については以下のページで解説しています。

遺産分割協議書のひな形も掲載していますので、ぜひご活用ください。

遺産分割協議書の書き方・ひな型のダウンロードはこちら

遺産分割協議書を簡単に自分で作成!

当事務所では、相続問題に詳しい弁護士が監修した遺産分割協議書の自動作成シミュレーターを提供しています。

ご自身で遺産分割協議書を作成したい方は、ぜひシミュレーターをご利用ください。

 

 

遺産分割の相談先は相続に強い弁護士が一番

弁護士以外にも、行政書士、司法書士、税理士、相続コンサルタントなど、さまざまな専門家が相続問題のサポートサービスを提供していることから、遺産分割を誰に相談すればよいのか迷われる方もいらっしゃるかもしれません。

遺産分割について相談したい場合には、相続に強い弁護士に相談するのが一番です。

下の表は、それぞれの専門家が取り扱うことができる業務の範囲をまとめたものです。

この表からわかるように、弁護士以外の専門家は法律で取り扱うことができる業務の範囲が限られています。

弁護士 行政書士 司法書士 税理士 各種団体等
法律相談 × × × ×
遺産分割協議書 ×※1 ※3 × ×
遺言書 ×※2 ×※4 × ×
相続放棄 × ※5 × ×
交渉代理 × ×※6 × ×
調停代理 × × × ×
訴訟代理 × × × ×
登記 × × ×
相続税 × × ×
※1:遺産分割協議書は、①相続全般に関する一般的な説明は行政書士も可能ですが、②どのような内容の遺産分割協議書にするか等の個別具体的な相談については、法律相談となるので弁護士しかできません。
※2:遺言書の内容をどのようにすれば良いかについての相談は法律相談となるので、行政書士の業務範囲ではありません。
※3:司法書士はすべての遺産分割協議書の作成はできませんが、遺産の中に不動産があり、相続登記を行う場合は許されます。
※4:遺言書の内容をどのようにすれば良いかについての相談は法律相談となるので、司法書士の業務範囲ではありません。
※5:司法書士が相続放棄の手続については、書類作成の代理権しかないため、家裁から相続放棄照会書・回答書などが送られてきた場合、本人が対応しなければなりません。
※6:司法書士は140万円以下の請求の民事事件の代理人にはなれますが、遺産分割協議など家事事件の代理人にはなれません。

この表に記載された範囲外の業務を行うことは法律違反(違法)となります。

例えば、具体的な事案に即した法律相談を行うことができるのは弁護士だけです。

「相続トラブルについて法律的な観点から解決法を教えてほしい」、「どのような遺産分割協議書を作成すべきかを教えてほしい」といった場合に、具体的な場面に即してアドバイスをすることができるのは弁護士だけで、それ以外の専門家は一般的な説明をすることしかできません。

最近では相続のサポート・コンサルティングをうたう無資格の団体等も見受けられますが、そのほとんどが法律違反です。

法律の専門家でもない無資格の団体に相談した結果、やり直しが発生したというケースや不利益を受けたというケースも報告されているため、注意が必要です。

 

 

遺産分割にかかる費用

遺産分割の手続きを行うための費用がどのくらいかかるのか不安な方もいらっしゃることでしょう。

ここでは、遺産分割の手続き(遺産分割協議、遺産分割調停・遺産分割の審判)にかかる実費や弁護士に依頼した場合の費用について解説します。

 

遺産分割の実費

遺産分割協議

遺産分割協議を行う際には、相続人の調査や遺産の調査を行う必要があるほか、遺産協議が成立した場合には遺産分割協議書を作成する必要があります。

これらの手続きにかかる主な実費としては、次のようなものがあります。

必要な手続き 取得する書類等 実費
相続人の調査 被相続人の戸籍謄本等(戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍)
※相続人によっては追加の書類が必要
戸籍謄本:450円/通
除籍謄本:750円/通
改正原戸籍:750円/通
※郵送の場合には別途切手代
遺産の調査 遺産に不動産が含まれる場合
・登記事項全部証明書
・固定資産評価証明書など
登記事項全部証明書:600円/通
固定資産評価証明書:300円/通
※土地と建物はそれぞれ別に必要
遺産に預貯金や株式が含まれる場合
・残高証明書
1000円前後 / 通
※銀行により異なる
※口座ごとに取得
遺産分割協議書 印鑑登録証明書 300円/通
※相続人全員の人数分必要

遺産分割協議にかかる実費は、相続人の人数や遺産の内容によっても異なりますが、概ね5,000円〜1万円程度が相場といわれています。

遺産分割調停・審判の実費

遺産分割調停・審判にかかる主な実費としては、次のようなものがあります。

取得する書類等 実費
相続関係を証明する書類(※) 被相続人の生まれてから亡くなるまでの連続したすべての戸籍謄本類(戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本) ・戸籍謄本:450円/通
・除籍謄本:750円/通
・改正原戸籍:750円/通
※郵送の場合には別途切手代
相続人全員の住民票または戸籍附票 ・住民票:300円/通
・戸籍附票:300円/通
相続人全員の戸籍謄本 ・戸籍謄本:450円/通
遺産に関する証明書類 遺産に不動産が含まれる場合
・登記事項全部証明書
・固定資産評価証明書
・公図の写しなど
・登記事項全部証明書:600円/通
・固定資産評価証明書:300円/通
・公図の写し
※土地と建物はそれぞれ別に必要
遺産に預貯金や株式が含まれる場合
・残高証明書
1000円前後/通
遺産に自動車が含まれる場合
・現在登録事項等証明書
300円/通
手数料 収入印紙 1200円分
その他 連絡用の郵便切手 5000円前後

※被相続人と相続人と続柄によっては追加の戸籍謄本等が必要となる場合があります。

遺産分割調停・審判にかかる実費は、相続人の人数や遺産の内容によっても異なりますが、概ね1万円〜数万円程度が相場といわれています。

 

遺産分割の弁護士費用

遺産分割の弁護士費用は一律に決まっているものではなく、ケースバイケースです。

それぞれの弁護士は自由に弁護士費用を決めることができ、また、どの範囲の手続きを弁護士に依頼するかによっても費用が異なるためです。

そのため、ここでご紹介する弁護士費用の相場はあくまで参考程度とし、具体的な費用については各弁護士にお問い合わせいただければと思います。

無料の法律相談などを活用して、その場で見積もりをもらうのがよいでしょう。

弁護士費用の種類

そもそも、弁護士費用には次の4つの種類(※)があります。

  1. ① 法律相談料
    弁護士に正式に案件を依頼する前などに行う法律相談にかかる費用
  2. ② 着手金
    弁護士に正式に案件を依頼する際に支払う弁護士費用(報酬の前金のようなもの)
  3. ③ 報酬金
    案件が終了した後で、結果(出来高)に応じて支払う弁護士費用
  4. ④ 日当
    弁護士の出張が必要となる場合にかかる出張手当

※相続問題については弁護士費用について「成功報酬型」の費用体系をとる弁護士(事務所)が多いことから、この記事では成功報酬型を前提に説明します。

遺産分割の弁護士費用の相場

遺産分割の手続きにかかる弁護士費用の相場は、概ね次のとおりです。

もっとも、遺産の内容や相続人の人数、事案の難易度などに応じて金額が大きく変わる場合もあります。

繰り返しにはなりますが、弁護士によって費用の設定は異なりますので、具体的な金額については各弁護士にお問い合わせください。

依頼する事項 弁護士費用の種類 弁護士費用の目安
法律相談 法律相談料 30分あたり5000〜1万円程度
※初回の相談を無料とする弁護士も多い
遺産分割協議 着手金 20万円〜30万円程度
報酬金 金額によって変動(得られた金額の◯%)
遺産分割調停・遺産分割の審判 着手金 20万円〜50万円程度
報酬金 金額によって変動(得られた金額の◯%)
日当 1日あたり5万円前後
※近くの裁判所等に行く場合は日当を定めない弁護士も多い
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遺産分割の5つのポイント

遺産をもれなく調査する

遺産分割を行う場合には、遺産をもれなく調査することが大切です。

遺産にはプラスの財産(例えば、土地や建物などの不動産、預貯金や株式、自動車・美術品・骨董品・時計などの動産)のほかにマイナスの財産(借金、住宅ローン、カードローン、未払いの税金など)が含まれます。

遺産分割協議が成立した後に新たな遺産が見つかった場合には、その遺産について遺産分割協議のやり直しが発生する可能性があります。

 

遺産を適切に評価する

洗い出した遺産は、その価値を適切に評価することが大切です。

遺産の価値が正確に評価されていないと、遺産を公平に分けることができなくなります。

また、相続税は遺産の価値をふまえて計算されるため、「思った以上に相続税がかかってしまった」といった状況を招く可能性もあります。

遺産の中に不動産や非上場株式などが含まれる場合、その評価は専門家でも難しいとされていることから、一般の方が独力で行うことはあまり現実的でありません。

遺産の中に不動産や非上場株式などが含まれる場合には、早めに弁護士や税理士に相談することをおすすめします。

 

相続人を確定する

遺産分割を行う前に、相続人をもれなく洗い出して確定する必要があります。

すでに説明したように、遺産分割協議は相続人全員で行う必要があり、1人でも欠けると無効(不成立)となってしまいます。

後から隠し子の存在が判明するケースや、知られていない兄弟姉妹の存在が判明するケースなどもあることから、相続人の確定は、被相続人が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本類(戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍)を取得して、慎重に行います(※)
※相続人によっては追加の書類取得が必要となる場合があります。

相続人の範囲について詳しくはこちらをご覧ください。

 

適切な遺産分割協議書を作成する

遺産分割協議が成立した場合には、できるだけすみやかに適切な遺産分割協議書を作成します。

遺産分割協議書は、相続した遺産に関する各種の手続き(名義変更や相続税の申告など)の際に提出を求められる場合があります。

提出した遺産分割協議書の内容や形式に不備があると修正や作り直しを求められ、手続きがストップする可能性があります。

例えば、遺産分割協議書は、客観的に見て誰がどの遺産を相続するのかが明確になるように作成する必要があります。

また、遺産分割協議書には相続人全員が署名して実印を押すことや、作成に使用した印鑑登録証明書を添付しておくことなども重要です。

遺産分割協議書の作成には遺産相続に関する専門知識が必要となることから、弁護士などの専門家に相談されることを強くおすすめします。

 

相続に強い弁護士に相談する

遺産分割でもめる可能性がある場合や、遺産分割の手続きがわからない場合には、相続に強い弁護士に相談することをおすすめします。

なお、相続は高度の専門知識が必要となる分野であることから、相続問題に注力している弁護士に相談することが大切です。

相続に強く、数多くの相続問題を扱ってきた弁護士であれば、遺産分割に関する手続きにも慣れているため、イレギュラーなケースについても適切なアドバイスをもらえる可能性があります。

相続問題を扱った経験の少ない弁護士に依頼した結果、かえって時間がかかってしまったというケースもあるため、注意が必要です。

相続に強い弁護士であるかどうかは、事務所のホームページに相続専門のページが作られているかどうか、ホームページに案件の実績が掲載されているか、などの観点で判断することができます。

 

 

遺産分割についてのQ&A

遺産分割の割合は自由ですか?


遺産分割の割合は、原則として自由に決めることができますが、一定の制限があります。

まず、遺産分割の割合には、①指定相続割合と②法定相続割合の2つがあります。

①指定相続割合は、被相続人が遺言書で指定した遺産分割の割合のことで、②法定相続割合は、被相続人が遺言書を残していない場合の目安として用いられる割合のことです。

以下では、遺言書がある場合とない場合に分けて説明します。

指定相続割合(遺言書がある場合)

指定相続割合とは、被相続人が遺言書で「相続人Aに遺産の◯割を相続させる」といった形で指定する割合のことをいいます。

被相続人は、誰にどの割合で遺産を相続させるかを原則として自由に決めることができます。

ただし、「遺留分(いりゅうぶん)」による制限には注意が必要です。

遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人(配偶者(妻・夫)、子ども、両親・祖父母)に法律上保障されている遺産の最低限の取り分のことで、遺言書によってもこれを奪うことはできません。

遺留分の侵害を受けた相続人は、侵害原因となる贈与等を受けた人に対して、侵害された金額を請求することができます。

法定相続割合(遺言書がない場合)

法定相続割合とは、法律(民法)が定めている遺産分割の割合の目安となる数字です。

被相続人が遺言書を残していない場合には、遺産分割協議や遺産分割調停を行うこととなりますが、その際には、法定相続割合を目安として遺産分割の割合を決めます。

もっとも、法定相続割合はあくまでも目安となる数字であり、必ずそのとおりに分けなくてはいけないという強制的なルールではありません。

そのため、相続人全員が合意している場合には原則として自由に遺産相続の割合を決めることができます。

また、遺留分は放棄することができるため、相続人が遺産分割協議の中で遺留分よりも少ない遺産を相続することに合意している限り、遺留分の侵害が問題となることはありません。

当事者間の話し合いがまとまらず、遺産分割の審判で裁判所が割合を決める場合、裁判所は原則として法定相続割合に従って遺産分割の割合を指定します。

 

遺産分割にデメリットはありますか?


遺産分割をするデメリットは一定ありますが、遺産分割をしないデメリットの方がより大きいことから、相続が開始したらできるだけすみやかに遺産分割の手続きをすることを強くおすすめします。

遺産分割をするデメリット

遺産分割をするデメリットとしては、遺産分割をきっかけに相続人同士の仲が悪くなる可能性があることや、遺産分割協議のための時間と労力がかかること、などがあります。

遺産分割をしないデメリット

遺産分割をしないことによる主なデメリットには、次のようなものがあります。

  • 遺産を自由に処分できない
    被相続人が遺言書を残していない場合、遺産は遺産分割協議をするまで相続人の共有状態となるため、一部の相続人だけで自由に遺産の名義変更や遺産の売却などをすることはできません。
    その結果、遺産を売却するタイミングを逃し、価値が下がってしまうリスクがあります。
  • 相続関係が複雑になる
    遺産分割をしないまま一部の相続人が亡くなってしまった場合、その相続人についてさらに相続が発生します。
    その結果、相続関係が複雑になることで話し合いがまとまりにくくなったり、手続きに必要な書類が増えたりする可能性があります。
  • 相続税について不利益を受ける可能性がある
    相続税の申告には、相続の発生を知った日から10ヶ月以内に行わなければならないという期限があります。
    遺産分割を行わずにこの期限を過ぎてしまった場合、相続税を軽減することができる特例を利用することができなくなるなどの不利益を受ける可能性があります。

 

 

まとめ

遺産分割とは、相続人の間で遺産を分けるための手続きをいいます。

遺産分割の手続きは、被相続人が遺言書を残しているかどうかで大きく異なり、遺言書を残している場合には、遺言書で指定された内容・方法に従って遺産を分けます。

被相続人が遺言書を残していない場合には、遺産分割協議や遺産分割調停・遺産分割の審判によって遺産を分けることになります。

遺産分割調停や審判には多くの時間と労力がかかることから、弁護士の代理交渉を活用し、遺産分割協議を通じて遺産を分けることがポイントです。

遺産分割には相続に関する高度の専門知識が必要となることから、手続きに不安がある場合や相続トラブルをかかえている場合には、相続に強い弁護士に相談することを強くおすすめします。

当事務所では、相続問題に注力する弁護士からなる相続対策専門チームがご相談に対応させていただきます。

相続人の調査や遺産の調査、遺産分割協議の代理交渉、遺産分割協議書の作成といった遺産分割に関連する手続きはもちろんのこと、遺言書の作成や遺産の放棄、相続税の申告や節税対策など、幅広いご相談に対応可能です。

遠方の方についてはオンラインでのご相談も承っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

 

 

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