
自己破産をすると、就職できる職業が制限されます。
また、自己破産をすると、資格を失う可能性があります。
これから資格の登録をしようとしている場合も、自己破産により資格の登録ができなくなります。
もっとも、このような資格制限は生涯続くというものではありません。
破産手続が終了し、復権すれば、資格制限は当然に消滅します。
以下では、自己破産により制限される職業・資格には何があるのか、職業・資格が制限される理由、制限の期間などについて、弁護士が解説していきます。
自己破産をお考えの方は、是非ご覧ください。
目次
自己破産すると職業や資格は制限される?
自己破産をすると、就職できる職業が制限されます。
また、自己破産をすると、資格を失う可能性があります。
制限される仕事については、その職業や資格に関して定める各種の法令に、自己破産によって職業や資格が制限される旨の規定が置かれています。
そのため、自己破産をし職業や資格が制限されることで、今の仕事を辞めなければいけない可能性があります。
自己破産をお考えの方は、自分の仕事が制限される職業や資格に当たるのかしっかりと確認しましょう。
そして、制限される職業・資格に当たる場合には、債務整理の方法として自己破産を選択するかは慎重に検討することが必要です。
自己破産で制限される職業・資格一覧
自己破産により制限される職業・資格は、こちらの一覧表をご覧ください。
職種 | 根拠法令 |
---|---|
弁護士 | 弁護士法7条5号 |
弁理士 | 弁理士法8条10号 |
公認会計士 | 公認会計士法4条4号 |
税理士 | 税理士法4条3号 |
司法書士 | 司法書士法5条3号 |
行政書士 | 行政書士法2条の2第3号 |
土地家屋調査士 | 土地家屋調査士法5条3号 |
社会保険労務士 | 社会保険労務士法5条3号 |
警備員 | 警備業法14条1項 |
通関士 | 通関業法31条2項1号 |
建築士 | 建築士法7条5号 |
宅地建物取引士 | 宅地建物取引業法18条1項4号 |
マンション管理士 | マンションの管理の適正化の推進に関する法律4条3号 |
不動産鑑定士 | 不動産の鑑定評価に関する法律9条3号 |
測量士 | 測量法50条の10第2項第3号 |
測量士補 | 測量法50条の10第3項第3号 |
海事代理士 | 海事代理士法3条2号 |
船舶操縦士 | 小型船舶操縦士法18条2項 |
電気主任技術者 | 電気事業法44条1項 |
電気工事士 | 電気工事士法3条2号 |
ボイラー技士 | 労働安全衛生法施行令20条2号 |
危険物取扱者 | 消防法13条の2第1項 |
消防設備士 | 消防法17条の6第2項 |
毒物劇物取扱者 | 毒物及び劇物取締法8条1項 |
衛生管理者 | 労働安全衛生法12条 |
放射線取扱主任者 | 放射線障害防止法7条1項 |
作業環境測定士 | 作業環境測定法4条 |
毒物劇物製造業責任技術者 | 毒物及び劇物取締法11条 |
薬剤師 | 薬剤師法15条 |
医師 | 医師法4条 |
歯科医師 | 歯科医師法3条 |
看護師 | 保健師助産師看護師法5条 |
准看護師 | 保健師助産師看護師法6条 |
保健師 | 保健師助産師看護師法2条 |
助産師 | 保健師助産師看護師法3条 |
臨床検査技師 | 臨床検査技師等に関する法律3条 |
診療放射線技師 | 診療放射線技師法3条 |
臨床工学技士 | 臨床工学技士法3条 |
義肢装具士 | 義肢装具士法3条 |
理学療法士 | 理学療法士及び作業療法士法2条 |
作業療法士 | 理学療法士及び作業療法士法2条 |
視能訓練士 | 視能訓練士法3条 |
歯科技工士 | 歯科技工士法3条 |
歯科衛生士 | 歯科衛生士法3条 |
臨床心理士 | 臨床心理士資格認定協会規程 |
公認心理師 | 公認心理師法4条 |
管理栄養士 | 栄養士法4条の2 |
栄養士 | 栄養士法3条 |
介護福祉士 | 社会福祉士及び介護福祉士法30条 |
社会福祉士 | 社会福祉士及び介護福祉士法3条 |
なぜ自己破産すると職業・資格が制限されるの?
自己破産をすると職業や資格が制限される理由は、制限される職業や資格が持つ社会的信用を保持する必要があるからです。
自己破産することは、必ずしもその人個人の責任によるものとは限りません。
しかし、自己破産には、それ自体にどうしてもマイナスなイメージがあります。
他方で、一覧表にある職業や資格は、いずれも社会的な信用の下に成り立っている職業や資格です。
マイナスなイメージのある自己破産をした人が、社会的信用の下に成り立っている職業に就いたり資格に基づく業務を行ってしまうと、自己破産がその人自身の責任かどうかに関わりなく、その職業や資格に対する社会的信用が低下してしまうおそれがあります。
また、一覧表にある職業や資格の中には、他人の財産を管理することが業務に含まれているものがあります。
弁護士や後見人、警備員がその例です。
財産を預ける側からすると、自己破産の経験がある人に財産の管理を任せてしまうと、横領されてしまうのではないかなどという不安を抱く人もいるでしょう。
そうすると、やはり財産管理を業務の一つとする職業や資格についても制限を設けないと、それらの職業や資格に対する社会的信用が低下してしまうおそれがあるといえます。
このような理由から、一覧表にある職業や資格は自己破産により制限されてしまうのです。
制限される期間はどれくらい?
自己破産による職業・資格の制限は、早くて3ヶ月程度で消滅します。
もう少し踏み込んで解説していきます。
自己破産による職業・資格の制限は、破産手続が終了し「復権」をすると、当然に消滅します。
復権とは、その言葉のとおり、制限されていた職業や資格に就ける権利が復活することをいいます。
復権には、いくつかのパターンがあります。
まず、大きく分けると、復権には「当然復権」と「申立てによる復権」があります。
当然復権とは、自己破産の手続とは別の特別な手続をすることなく、一定の条件を満たせば当然に復権することができるというものです。
申立てによる復権とは、一定の条件の下に自己破産をした人によって復権を求める申立てがなされれば復権できるというものです。
このうち、当然復権についてもいくつかのパターンがあります。
その中で実務上最も多いのが、「免責許可決定の確定による復権」です。
免責許可決定とは、自己破産をした人が、その時点で持っている財産で借金を返済できない場合については、それ以上借金を返済しなくて良いということを裁判所が認めることをいいます。
裁判所から免責許可決定を受けるためには、一定の条件が必要です。
破産手続における免責について、詳しくはこちらをご覧ください。
一定の条件を満たし、免責許可決定が裁判所によりなされた後に一定期間が経過すると、この免責許可決定が確定します。
免責許可決定が確定すると、当然に復権することができます。
この免責許可決定は、自己破産の手続が開始されるのと同時にその手続が終了する場合(これを同時廃止といいます。)には、自己破産の手続が開始されてから通常3ヶ月程度で行われます。
そうすると、自己破産による職業・資格の制限は、早くて3ヶ月程度で消滅することになります。
もっとも、申し立てられた自己破産が同時廃止になるかは裁判所が判断をします。
また、同時廃止になるかは、自己破産をしようとする人の借金の状況や持っている財産の状況に応じて、個別的に判断されます。
そのため、同時廃止になるかどうかの見通しを持つためには、借金や財産の状況について丁寧に調査をし、その上で裁判所が同時廃止の決定をするかどうか見極める必要があります。
他方、同時廃止にならない場合は、自己破産の手続が開始されてから終了するまで、ある程度の時間がかかります。
手続きの開始から終了までの時間についても、自己破産をした人の借金の状況や持っている財産の状況によって左右されるため、一律に決まっているわけではありません。
そのため、自己破産をした場合に同時廃止になるのか、また、復権できるまでにはどれくらいの時間がかかるのかについて知りたい方は、自己破産することについて弁護士に依頼し、それぞれについての見通しを確認すると良いでしょう。
自己破産にかかる期間について、詳しくはこちらをご覧ください。
自己破産したら会社にバレる?自己申告しなければならない?
基本的にバレることはないが、バレる可能性はある
自己破産をしても、そのことだけで破産の事実が会社に知られるということは基本的にありません。
自己破産をしただけでは、裁判所などから会社に対し、破産の事実が直接通知されるということはないからです。
もっとも、自己破産の事実を会社に知られてしまう可能性はあります。
自己破産をするとその事実が周知されたり、異なる理由で会社に通知が行ったりすることがあるからです。
例えば、自己破産をすると、官報にその旨が掲載されます。
官報を普段から読んでいるという人は少ないかもしれませんが、会社の人が官報を見ることによって、自己破産の事実が会社に知られてしまう可能性はあります。
そのほかにも、会社に借金をしているなど、会社が債権者にいる場合は、破産の事実を会社に知られてしまう可能性があります。
自己破産をすると、債権者の情報を正確に把握するために、債権者名簿というものが作成されます。
自己破産をしようとする人は、この債権者名簿に、自らが把握している債権者を記載しなければいけません。
会社にバレたくないからと債権者名簿への記載を怠ると、免責許可決定が得られないなど、ペナルティを受けるおそれがあります。
そのため、会社が債権者である場合には、必ず債権者名簿へ記載をしなければいけません。
そして、債権者には、この債権者名簿に従って、自己破産の手続きが開始したことの通知がなされます。
この通知によって、自己破産の事実が会社に知られてしまう可能性があります。
このように、様々な経路で自己破産の事実が会社に知られてしまう可能性があります。
自己破産をする方は、破産の事実を会社に知られてしまう可能性があることを覚悟しておく必要があるでしょう。
会社への自己申告は必須ではないが、必要になる場合もある
自己破産をしても、会社への申告は必須ではありません。
自己破産の事実を会社に申告することを義務付ける法律はなく、法律上の申告義務はないからです。
もっとも、会社の就業規則に、自己破産をしたらその旨を申告しなければならないという規定が定められている場合があります。
この場合には、就業規則上の申告義務を負うため、申告が必要になる可能性があります。
また、自身の職業や持っている資格が自己破産により制限される場合にも、会社に自己破産したことを申告する必要があります。
自己破産をしたにもかかわらずその職業や資格をもって働き続けることは、違法になってしまうからです。
会社に申告をしたことにより、最悪の場合、会社を辞めなければいけなくなってしまうこともあると思います。
ですが、申告をしないと、自己破産をした後に行った業務に問題が生じてしまう可能性があり、その場合には会社に多大な迷惑をかけてしまうことになります。
そのため、自己破産により制限される職業・資格で働かれている方は、自己破産をしたら必ず会社に申告するようにしましょう。
自己破産により制限される職業・資格については、先ほどの一覧表でご確認ください。
なお、職業や資格が自己破産で制限されるものである場合を除き、自己破産をしたこと自体によって会社を解雇されるということは基本的にありません。
自己破産を会社に申告することに不安がある方は、弁護士に相談してみると良いでしょう。
自己破産で職業や資格の制限を回避するには?
自己破産を選択すると職業・資格制限を回避できない
債務整理の方法として自己破産を選択した場合、これまで説明をした職業や資格の制限を回避することはできません。
制限を脱するためには、復権を待つしかありません。
自己破産以外の債務整理の方法を考える
自己破産では、職業や資格の制限を回避できません。
もっとも、自己破産以外の債務整理の方法である個人再生や任意整理であれば制限を回避することができます。
個人再生とは、自己破産と同じく裁判所の手続を使用しますが、借金を減額したうえで、残りを分割弁済で返済していくという債務整理の方法です。
個人再生について、詳しくはこちらをご覧ください。
任意整理とは、裁判所の手続を使用せず、債権者との個別の交渉によって将来の利息をカットしてもらうなどして債務整理を行う方法です。
任意整理について、詳しくはこちらをご覧ください。
個人再生や任意整理であれば、職業や資格の制限を受けることなく、債務整理を行うことができます。
もっとも、債務整理の方法にはそれぞれ特徴があり、メリット・デメリットもそれぞれ異なります。
自己破産には、個人再生や任意整理にはないメリットがあります。
そのため、職業や資格が制限されることを甘んじて受け入れてでも自己破産を選択すべき場合もあります。
それぞれの債務整理のメリット・デメリットをしっかりと確認した上で、最も適切な債務整理の方法は何かを検討されると良いでしょう。
債務整理の方法についてどの方法を選択すべきか迷ったときは、弁護士に相談することをおすすめします。
自己破産のポイント
自己破産のデメリットをしっかりと確認すること
自己破産には、借金が免除されるといった大きなメリットがあります。
そのため、このメリットだけを見て自己破産に飛びついてしまう人がいます。
しかし、自己破産にはデメリットもいくつかあります。
例えば、職業・資格が制限される、生活に最低限必要なもの以外の財産は処分しなければいけないといったものです。
このようなデメリットがあることから、自己破産という方法を選択することには慎重さが必要です。
デメリットをしっかりと確認した上で、自己破産という方法が適切かどうか判断しましょう。
自己破産を選択すべきか迷ったときは、弁護士への相談をお考えください。
自己破産のメリット・デメリットについて、詳しくはこちらをご覧ください。
自己破産に関する誤った情報には注意!
自己破産に関する情報には、時に誤ったものが混じっていることがあります。
例えば、自己破産をすると会社をクビになるといった情報です。
確かに、自己破産により制限される職業や資格で働いている場合には、会社を辞めなければいけないこともあるでしょう。
しかし、自己破産をしたこと自体で会社をクビになることはありません。
自己破産をしたことのみで会社を解雇された場合には、その解雇は法律上無効とされる可能性が高いです。
ほかにも、自己破産をすると家財道具を含めて財産をすべて失うことになる、自己破産をすると結婚できなくなるといった情報があります。
しかし、これらの情報についても誤りといえます。
このような誤った情報に惑わされ、自己破産をすべきなのにその機会を逃してしまうことは避けなければいけません。
自己破産に関する情報については、それが本当かどうか慎重に判断しましょう。
情報の真偽が分からずお困りの方は、弁護士に相談して確認をすることをおすすめします。
債務整理についてのよくある誤解について、詳しくはこちらをご覧ください。
債務整理に強い弁護士に相談する
自己破産により制限される職業や資格は多岐にわたります。
また、職業・資格の制限以外にも、自己破産のデメリットは存在します。
これらをすべて把握するためには、複雑な法律の知識が必要です。
また、職業や資格の制限が消滅する(復権する)ためにどれくらいの期間がかかるかは、自己破産をする人の借金の状況や持っている財産の状況などによって左右され、一律に決まっているわけではありません。
復権までの期間についての見通しを持つためには、自己破産の案件を多く取り扱い、経験を積む必要があります。
債務整理を多く取り扱う弁護士は、経験に基づくノウハウを持っており、復権までの期間についての見通しを立てることができます。
復権までの見通しを立てることができれば、安心して債務整理を進めることができるでしょう。
自己破産について弁護士に相談をしたいと考えている方は、債務整理に強い弁護士に相談することを強くおすすめします。
債務整理に強い弁護士が自己破産について丁寧にご説明します。
自己破産の職業制限のよくあるQ&A
ここからは、自己破産による職業制限に関してよくある質問について解説していきます。
自己破産中に就職はできますか?

自己破産は、これをすることにより生活を再建しやすくすることに意味があります。
自己破産中であっても就職をすることは、生活を再建することにつながります。
そのため、自己破産をしていても、一定の場合を除けば就職することは可能です。
むしろ、就職できていないと生活再建ができていないと判断され、借金の免除にあたってマイナスになることもあります。
では、就職ができない一定の場合とはどのような場合かというと、就職しようとしている職業や資格が自己破産により制限されるものである場合です。
この場合には、その職業や資格には就職することはできないでしょう。
特に、警備員という職業は身近なものですが、自己破産をすると就くことができない職業ですので、注意が必要です。
自己破産をした方で新たに就職をお考えの方は、就職しようとしている職業や資格が自己破産により制限されるものであるかどうか、しっかりと確認しましょう。
その際は、上記の一覧表をご活用ください。
自己破産中に資格を取れますか?

また、その資格が自己破産により制限されるものであっても、一定の場合には自己破産中に資格を取ることは可能です。
この一定の場合とは、その資格が登録制度を採用している場合です。
資格の中には、資格を取得した上で、さらにその資格で働くということを登録することでやっとその資格に基づく業務をすることができるという制度を採用しているものがあります。
弁護士や公認会計士がその例です。
登録制度を採用している資格は、自己破産をすると資格の登録をすることができなくなります。
ですが、資格を取ること自体は引き続き可能です。
そして、復権を経て制限が消滅すれば、登録をすることによりその資格で働くことも可能になります。
自己破産中に資格の取得をお考えの方は、その資格が自己破産により制限されるかどうか、制限されるものでも登録制度を採用しているものかどうかをしっかりと確認しましょう。
まとめ
自己破産による職業・資格の制限については理解していただけたでしょうか。
どのような職業や資格が自己破産により制限されるかは、ネットで調べれば一応わかるかもしれません。
自分が働いている職業や資格がこれに該当すれば、自己破産をためらうのも無理はありません。
しかし、人によっては、借金や財産の状況から自己破産を選択せざるを得ない場合があります。
そして、自己破産により自分の職業や資格が制限されるとわかっていても、様々な要因から転職が難しい場合もあります。
そのような場合は、どれくらいの期間で復権をすることができるのかがより重要になってくると思います。
復権するまでの期間の見通しを持つには、先ほど述べたとおり、債務整理の豊富な経験に基づくノウハウが必要です。
デイライトでは、「破産再生部」という専門チームに所属する弁護士が、債務整理に関する豊富な経験に基づくノウハウを活かして、多くの方の債務整理をサポートしています。
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