任意整理で和解後に借り入れはできるの?弁護士が解説

任意整理後の借り入れはいつからできるの?

過去に任意整理を終えられた方、現在任意整理の最中の方、またこれから任意整理をしようと検討している方にとって、任意整理を終えた後どれくらい経てば新たに借入れできるのかという点は非常に関心があることかと思います。

結論を述べると、任意整理後、一定期間は新たな借入れをしたり、クレジットカードを利用したり、ローンを組んだりすることはできません

この記事では、任意整理後どれくらいの期間が経てばクレジットカードの利用ができるようになるのか、新たな借入れを受けられやすくするための方法など、任意整理を検討する上で重要な点をわかりやすく解説していきます。

 

任意整理とは

そもそも任意整理とは何かということですが、任意整理とは債務整理の種類の1つで、お金を借りている貸金業者、カード会社をはじめとする債権者との間で将来利息をカットしてもらった上で、現時点の借金を3〜5年での分割払いに変更してもらう和解のことをいいます。

ごくシンプルにすれば、将来に生じる利息分を減額してもらったうえで更に返済を先延ばしにしてもらう手続だとイメージしてもらえば良いかと思います。

任意整理という手続自体について詳しく知りたいという方は過去にご紹介した記事がありますのでそちらをご覧ください。

 

任意整理によって借り入れが制限される理由

信用情報機関に登録される

冒頭で述べたように、任意整理をすると一定期間は新たな借入れをすることがほぼ出来なくなってしまいます

そもそも、なぜ任意整理をすると一定期間新たな借入れができなくなるのかについて説明します。

それは、あなたが任意整理をするとあなたの名前で「信用情報機関」に事故情報が登録されてしまうからです。

信用情報機関とは、いわゆるブラックリストのことです。

銀行や消費者金融から提供された信用情報を管理し、別の銀行や消費者金融から求められればこれを開示・提供している機関のことです。

日本には、CIC、JICC、KSCという3つの信用情報機関があり、それぞれ加盟している業種が異なります。

詳しくは以下の表をご覧ください。

信用情報機関名 主な加盟機関
株式会社シー・アイ・シー(CIC) クレジットカード会社、銀行、消費者金融、リース会社、保証会社、携帯電話会社など870社(2023年4月時点)
株式会社日本信用情報機構(JICC) クレジットカード会社、消費者金融、信販会社、保証会社など1293社(2023年3月時点)
全国銀行個人信用情報センター(KSC) メガバンク、地方銀行、ネット銀行、信用金庫、信用協会、農業協同組合、信託銀行

融資の申込みを受けた消費者金融や銀行などは、申込みをした人がきちんと貸したお金を返してくれそうかを審査します。

その審査の際に、信用情報機関にあなたの名前で事故情報が登録されていないかを確認します

このときにあなたが任意整理したという情報(「事故情報」と呼ばれています。)があれば、「この人にお金を貸しても返してくれないかもしれない。」と大半の金融機関は考えます。

そのため、事故情報が登録されていると審査が通らず、新たな借入れがほぼ受けられなくなります。

 

和解後でも任意整理を行ったことがバレる?

この信用情報機関への事故情報は、任意整理を行ってから5年ほどは消えません

したがって、たとえ和解が成立して任意整理の手続自体が終了した後であっても、完済してから少なくとも5年間経過するまではあなたが任意整理を行ったことはバレてしまいます。

 

和解後いつから借り入れができるの?

既に述べたとおり、信用情報機関への事故情報は、任意整理を行って、完済してから5年ほどは消えません。

5年経過すれば基本的には事故情報は削除されますので、それ以降であれば、内部ブラックが社内で共有されているなどの事情がない限りは、新たな借入れができるようになります。

この内部ブラックについては後で詳しく説明します。

 

消費者金融からの借入れの場合

消費者金融からの借入れについてですが、信用情報機関から事故情報が削除されるまでは新たな借入れはかなり難しくなります

もっとも、絶対に借入審査を通過できなくなるというわけではありませんから、場合によっては新たな借入れを受けられることもあるでしょう。

また、過去に任意整理をしたという事故情報があったとしても、その人の今の勤務先や収入次第では審査に通りやすくなるでしょう。

金融機関にとって興味があるのは、「この人がお金をきちんと返してくれるか。」という点です。

仮に過去に任意整理したという事故情報があったとしても、現在の勤務先や収入から安定した返済を見込めそうだと判断されれば、新たな借入れを受けられる可能性は高まるでしょう。

 

内部ブラックとは

先ほど少し内部ブラックの話をしました。

内部ブラックは、信用情報機関の情報とは別にその金融機関や消費者金融が独自に社内で共有している事故情報のことです。

要は、社内独自のブラックリストということです。

内部ブラックが作成されていて、ここに事故情報として掲載されている場合、信用情報機関での事故情報の掲載年数とは異なり、半永久的にその情報は残ります。

もちろん内部ブラックはあくまで社内で独自に作成されているものですので、これが外部に流出することはほぼないでしょう。

しかし、その一方で、5年が経過しても消えることはありませんから、一度内部ブラックに登録されてしまうと、その金融機関からの新たな借入れは基本的にはできないこととなるでしょう。

もっとも、内部ブラックが作成されているのは、過去にあなたと取引があり、かつあなたが返済を延滞してしまった金融機関です。

したがって、過去に取引のなかった金融機関に借入れの申込みをすれば、新たな借入れを受けられないという状況は回避できる可能性が高いでしょう。

 

クレジットカードの場合

クレジットカードの利用や作成についても、信用情報機関への事故情報の登録され、完済後5年間はできません

では、5年たてば、また問題なく利用できるようになるのかといわれれば、必ずしもそういうわけではありません。

その理由は、クレジットカード会社においても、既に紹介した内部ブラックの存在が考えられるからです。

特に、あなたが現在作成・利用しようと考えているクレジットカードの会社に対して過去に延滞を繰り返し、結果として強制解約をされてしまったという事情がある場合には要注意です。

たとえ、5年たって信用情報機関から事故情報が削除されたとしても、内部ブラックにあなたの事故情報が掲載されている可能性は高いでしょう。

ですので、任意整理後にどうしてもクレジットカードを作成・利用したい場合には、これまで利用したことがないクレジットカード会社で作成することをおすすめいたします。

 

住宅ローンの場合

まず、住宅ローンは、任意整理を終えて完済をした後5~10年間は組めなくなります

完済後5年経てばすでに事故情報は消えますので、それ以降であれば住宅ローンを組める可能性は出てきます。

しかし、これは、事故情報掲載時と比較して通りやすくなるという意味でしかありません。

住宅ローンは借りる金額も高くなるので、数あるローンの中でもひときわ審査が通りにくくなります。

ここで、住宅ローンの審査でどういった要素が重要視されているか、審査に通りやすくするためにはどういう方法があるのかをご紹介します。

  1. ① 住宅ローン完済時の年齢
  2. ② 年収や勤続年数
  3. ③ 雇用形態
  4. ④ 借入時の年齢
  5. ⑤ 健康状態
  6. ⑥ 他の債務の状況

 

①住宅ローン完済時の年齢

完済時の年齢は、金融機関が一番重視している要素の一つです。

ほとんどの金融機関では、80歳未満で完済できるかが基準となっています。

あとで紹介する借入時の年齢よりも、完済時の年齢の方が重視されているようです。

この基準に引っかからないようにするためには、頭金を多めに支払ったり、ボーナスで多めに支払ったりして完済時期を早めるということが良いでしょう。

 

②年収や勤続年数

住宅ローンは、年収の4〜6倍くらいが相当といわれています。

そのため、あなたのローン申込時の年収の4〜6倍を超える額のローンを申し込んだ場合、審査に通りにくくなります

また、勤続年数も審査においては重視されています。

短期間で転職を繰り返している人だと、収入が安定せず、返済が滞るかもしれないと思われて審査が通りにくくなってしまいます。

対策としては、任意整理をして、ローンの審査が通りにくくなる5年の間に同一の職場に勤めて実績づくりをするということが考えられるでしょう。

 

③雇用形態

金融機関は、ローン審査の際、あなたが将来安定した収入を継続的に得られるのかという点を重要視しています。

雇用形態は、この点を考慮する上で重要な要素となります。

一般的にいえば、契約社員よりも正社員という順に望ましいといえるでしょう。

 

④借入時の年齢

借入時の年齢は、若すぎると審査に通りにくくなるといわれています。

一般的には、住宅ローンを組み始める年齢として適切なのは30代といわれています

20代だと、まだ比較的多くの方の収入が安定していないと評価されますし、年収が低いためそもそも希望の借入額に届かないという可能性もあり、審査において不利に働くおそれがあります。

 

⑤健康状態

健康状態も重視されます。

先ほど雇用形態の説明のところで、将来安定した収入を継続して得られるのかという点を金融機関は重要視しているという話をしました。

健康状態もまさにこの点を考慮する上で重要な点となります。

例えば、いくら正社員として安定した高収入を将来にわたって得られる高い見込みがあったとしても健康状態に不安があれば、金融機関としてはその人が近い将来働けなくなり収入が途絶えてしまうおそれを考えざるを得ません。

その結果、健康状態が良好ではない人は、雇用形態や収入状況が良くても審査に通りにくくなる傾向があります

 

⑥他の債務の状況

住宅ローン審査の際には、申込者の他の債務(借り入れ)状況もチェックされます

というのも、他の債務の状況次第では、住宅ローンの返済が安定・継続して見込めないおそれがあるからです。

例えば、いくらその人が正社員として継続して収入が得ており、かつローン額が年収の4〜6倍の範囲であったとしても、すでに高級車の自動車ローンの組んでいる場合だったり、他で多額の借入れをしていたりすれば、その分だけ住宅ローンの返済に充てるお金は減りますから、審査する金融機関としては、あなたが安定して返済し続けてくれるかを不安を覚えるでしょう。

そのため、他の債務の状況というのも、審査においては重要視されています。

こういった点についても信用情報機関の情報を通じて、銀行は取得しています。

 

自動車ローンの場合

自動車ローンについては、その種類として銀行系ローンやディーラーローン、さらに自社ローンがありますが、そのうちどのローンを利用するかによって審査の通りにくさは異なってきます。

①銀行系ローンの場合

銀行などの金融機関のローンを利用する場合、比較的低金利でローンを組むことができる一方で審査が厳しくなるという難点があります

銀行などの金融機関は、審査の際に信用情報機関で事故情報の登録がないかを調べます。

そのため、事故情報が登録されている間は審査には通らず自動車ローンを組むことはできません。

そうすると、任意整理をして借金を完済して5年程度は組むことができないでしょう

 

②ディーラーローンの場合

ディーラーローンとは、ディーラーの提携先の信販会社や保証会社を利用したローンのことです。

ディーラーローンの場合、一般的に、銀行系ローンと比較すればローン審査には通りやすくなる傾向にはありますが、その代わりに金利が高くなります

このディーラーローンの審査でも、信用情報機関に事故情報の登録がないかを調査されます。

しかし、ディーラーローンの場合には、たとえ事故情報の登録があったとしても、頭金や保証人を用意することで審査が通る可能性があります

 

③自社ローンの場合

自社ローンとは、信販会社や保証会社などの第三者を挟む形ではなく、自動車の販売会社自身が貸主となるローンのことをいいます。

主に中古車販売会社がこの方法をとっています。

この自社ローンの場合、通常のローン審査とは異なり、販売会社が独自の審査基準で審査を行います。

そのため、信用情報機関に事故情報があったとしても審査に通る可能性が比較的高いです。

このように、自動車ローンについては、どこでローンを組むかによって、ローンが利用できるかどうかが変わってきます。

 

 

任意整理の和解後に借入れを行うときのポイント

任意整理の対象となっていない金融機関から借り入れる

任意整理後に銀行などの金融機関から新たな借入れをしたい場合、信用情報機関に事故情報が掲載されている間はできません

任意整理をして支払いを終えて5年が経って信用情報機関から事故情報が削除されたとしても、先ほど紹介した内部ブラックがある関係で、過去に任意整理の対象となった金融機関からの新たな借入れはかなり難しいでしょう。

ですから、どうしても銀行から借入れをしたい場合は、信用情報機関から事故情報が削除された後に、過去の任意整理の対象となっていない業者を選んで借入れをするということが一番現実的なやり方でしょう。

 

安定した収入を得られるようにする

再三申し上げているように、借入れやローンの審査の際に重要視されているのは、申込者が将来にわたって継続的に安定した収入を得られるかどうかという点です。

そのため、正社員として同じ勤務先に長期間勤務し続けているような実績を積むことで、安定した収入を継続的に得られるということをアピールする材料にすることができます。

 

 

借入れが制限されても任意整理をすべき理由

ここまで、任意整理をした後少なくとも5年ほどは新たな借入れをしたりローンを組んだり、クレジットカードを使ったりすることができなくなるという話をしてきました。

たしかに、任意整理後一定期間はクレジットカードの利用ができなくなるなどの不都合が生じる点については、任意整理をすることのデメリットといえるでしょう。

一方で、そういったデメリットをおそれて任意整理をしないままでよいのかというとそれは違います。

現在、既に返済が苦しいと感じている方は、将来借入れが制限されることを踏まえても、任意整理を検討すべきです。

理由はいくつかありますが、

まず、現在既に返済状況が苦しい場合、任意整理を避けたとしても、その状況の改善はほぼ見込めないからです。

むしろ、近い将来さらに返済状況が苦しくなり、もはや任意整理をすることができない状態となり、その結果、自己破産や個人再生を検討せざるを得なくなるというおそれもあるでしょう。

もし、現時点で返済が3か月以上遅れていれば、すでにブラックリストにのっていると思った方がよいでしょう。

切羽詰まって闇金に手を出してしまえば、状況はさらに悪化するだけです。

また、自己破産や個人再生をした場合でも、信用情報機関に事故情報は登録されますから、将来借入れなどが一定期間できなくなるという結果は変わらないという点も早めに任意整理をすべき理由です。

さらに、任意整理であれば、弁護士に依頼したとしても、自己破産や個人再生をする場合と比較して費用も安く済むケースが多いという点も理由として挙げられるでしょう。

以上の理由から、借金の返済で苦しんでいる方は、借入れが制限されるというデメリットを考慮したとしても、なお任意整理を検討すべきといえるでしょう。

もっとも、任意整理は、借金の額が比較的小さい段階でとることができる手続です。

借金の額が大きくなってくると、任意整理をすることが出来なくなってしまいますので、早い段階で検討することが重要です。

任意整理について詳しく知りたい方は、過去に紹介した記事がありますのでそちらもご覧ください。

 

 

まとめ

以上、ここまで任意整理後どれくらいの期間、新たな借入れを制限されるのかという点について解説してきました。

この記事が、みなさまのお役に少しでも立てれば幸いです。

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