盗撮で自首をする4つのメリット【刑事弁護士が解説】

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  保有資格 / 弁護士・3級ファイナンシャルプランナー

盗撮で自首した場合のメリット

自首とは、捜査機関に発覚する前に、犯人が自ら進んで自己の犯罪事実を述べ、訴追を求める意思表示と定義されます。

逮捕や勾留を回避できる可能性がある

自首することで、逮捕や勾留を回避できる可能性が高くなります。すなわち、逮捕するには、「逮捕の必要性」が要件です(刑事訴訟法199条2項)。

逮捕の必要性とは、「被疑者が逃亡するおそれ」「被疑者が罪証を隠滅するおそれ」(刑事訴訟規則143条の3)のことをいいます。

自首は、盗撮をした被疑者自身が罪を認めて反省していることを示します。

したがって、逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれはないと判断される可能性が高くなります。

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精神的に安心できる

いつ逮捕されるのか、怯えながら生活するのはつらいものです。そのような生活を続けるよりも、自らの過ちを正直に告白し、罪を償った方がはるかに気持ちが楽になります。

したがって、自首は精神的な面でもプラスに働きます。また、法律のプロである弁護士が同行しますので、「心強い」と感じていただけるはずです。

 

家族や職場への突発的な連絡を防ぐ

盗撮の場合、後日、発覚する可能性があります。その場合、警察が自宅や会社に突然やってくるかもしれません。

他方で、自首すると、捜査機関が自宅や会社に突然やってくる可能性は低くなります。

また、弁護士に依頼し、自首に弁護士が同行した場合は、弁護士が警察の担当者に名刺を渡すなどして担当弁護士の連絡先を伝えておき、何かあったときの窓口の役割を果たします。

ですので、家族や職場の同僚・上司等に盗撮の事実を知られるリスクを低減できます。

 

刑の減軽や不起訴の可能性が上がる

自首の場合、刑法上、刑が減軽される可能性があります(刑法42条)。

また、自首は当該犯人が反省していることを示す事情になります。そのため、被害の程度にもよりますが、不起訴を獲得できる可能性もあります。

 

 

盗撮で自首した場合のデメリット

ここまで、盗撮で自首した場合のメリットについて見てきましたが、自首には以下のようなデメリットもあります。

自分で捜査機関に事件のことを知らせてしまうことになる

当然ながら、自分から捜査機関に事件のことについて話をしなければなりませんので、まだ発覚していなかった事件についても捜査機関に知られるところとなってしまいます。

その場合、盗撮に使用したスマートフォンやカメラなどを提出することになります。

盗撮画像の点数、内容にもよりますが、捜査機関に逃亡や罪証隠滅のおそれがあると判断されてしまうと、逮捕・勾留のリスクが生まれてしまいます。

また、被害者が示談を望まなかった場合などには、刑事処罰が科されてしまい、前科がついてしまいます。

盗撮行為の公訴時効(処罰を受けなくて良くなるまでの期間)は、盗撮行為が終わった日から起算して3年間となりますので(刑事訴訟法250条2項6号、253条)、盗撮行為を行ってから3年間発覚しなければ処罰を受けることはなくなりますが、自首をすることでその可能性は失われます。

 

身元引受人を立てることを要求される

また、捜査機関としては、今後も被疑者を呼び出すなどして捜査を継続しなければなりません。

しかし、自首して一通りの聞き取りを終えたのちに逃亡されてしまうと、捜査を継続することができなくなってしまいます。

そうした事態を防ぐため、捜査機関は自首をしてきた被疑者に対し、身元引受人を立てるよう要求してくる可能性があります。

身元引受人とは、被疑者が逃亡したり、証拠隠滅にあたる行為をしたりしないように監督する人を指します。

身元引受人といっても、関係性の薄い人間では、きちんと監督ができるのかどうか疑問を持たれてしまいかねません。

そのため、身元引受人に適していると考えられるのは、家族や職場の上司など、被疑者と近い関係性の方になります。

言い換えれば、自分と近しい人間に、盗撮を行ってしまったことを伝えなければならないということです。

盗撮で自首するメリットとデメリットをまとめると、以下のようになります。

メリット デメリット
  • 逮捕や勾留を回避できる可能性がある
  • 精神的に安心できる
  • 家族や職場への突発的な連絡を防ぐ
  • 刑の減軽や不起訴の可能性が上がる
  • 自分で捜査機関に事件のことを知らせてしまうことになる
  • 身元引受人を立てることを要求される可能性がある

 

 

盗撮はどんなときに発覚する?

盗撮は、現行犯での逮捕をイメージされる方が多いかと思います。しかし、現行犯以外でも、後日、逮捕されるケースも見受けられます。

現行犯以外でも、盗撮が発覚して逮捕される典型例は以下の場合です。

目撃情報がある

盗撮した本人が被害者と面識があったり、被害者の周囲にいた人物と面識があったりする場合、後から警察に通報されて逮捕されることがあります。

 

物的証拠がある場合

盗撮した本人が事件現場に何らかの証拠(カメラ、スマホ、カバン)などを残していた場合、当該物的証拠から盗撮犯人であることが発覚することがあります。

 

防犯カメラの画像識別

近年は、駅やショッピングモールなど、大勢の人が集まる場所に防犯カメラがあることが多くなりました。

また、AIなどの画像認識技術は、容疑者の画像と通行人の画像を一瞬で照合することが可能となっています。

そのため、防犯カメラの画像を通して、後日、盗撮が発覚することがあります。

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捜査機関から連絡があった場合どうしたらいい

後日、盗撮が発覚すると、いきなり警察が自宅に来ることがあります。

また、実際には盗撮などしていないのに、盗撮の容疑者と断定されて、取り調べを受けることもあります。

このような場合、大切なことは、すぐに刑事専門の弁護士に相談するということです。

 

適切な弁護が必要

なぜならば、捜査機関は、盗撮を立件するための証拠集めに必死です。そのため、本来、応ずる必要がない任意の捜査に強制に近い状態で、長時間にわたって過酷な取り調べが行われることがあります。

過酷な取り調べによって、心身ともに疲れ果て、本当な盗撮などしていないのに自供させられる危険があります。

また、盗撮を行っていたとしても、実際よりも、悪質な犯行であるかのような供述調書が作成される危険もあります。例えば、出来心で盗撮した場合に、計画的な犯行であったかのような調書が作成されるなどです。

このような捜査をさせないためには、刑事弁護士による適切な弁護活動を受ける必要があります。

そのため、まずは刑事専門の弁護士に相談し、警察への対応方法等について、助言をもらうことが大切です。

 

示談交渉によって刑事裁判を回避する

盗撮は、被害者がいるため、被害者の方と示談交渉を成功させることが刑事裁判を回避する上で最重要となってきます。なぜなら、被害者の方と示談が成功すれば、被害届を取り下げてもらうなどして捜査を中止できる可能性が高いからです。

そのために、早い段階で刑事弁護士に相談し、弁護士を通じて示談交渉されることをお勧めしています。

 

盗撮で自首する際の流れ

自首をするまでの流れは、概ね以下のとおりです。

 

自首のための準備を行う

自首をする際、警察署に持っていく必要があるのは、事件の証拠品です。

盗撮事案の場合、撮影に使用したスマートフォンや小型カメラはもちろん、撮影したデータが保存されたパソコンや記録媒体(USBメモリ、DVDなど)を持っていくことが想定されます。

もし可能なのであれば、家宅捜索の必要性がないことをアピールするため、自宅にあるスマートフォンやタブレット、パソコンなどの類を、自主的に全て捜査機関に提出することも考えられます。

また、万一逮捕された場合、警察署内の留置場で過ごすことになります。

その際、留置場内で必要なものを購入する場合に備え、現金を持っておくと良いでしょう。

切手や便箋を持参しておけば、手紙を通じて外部の人間とやりとりすることもできます。

さらに、着替えが足りなくなった場合、留置場に備え付けの衣服を借りることになりますが、これは過去に留置されていた人々が使用していたものになります。

そのため、誰が着たかも分からない服を着用することに抵抗がある方は、着替えも何着か持っておくと良いでしょう。

そして、後に述べますが、自首をして取調べを受ける場合、印鑑を使用する可能性があります。

そのため、お使いの印鑑を持っておくと良いでしょう。

なお、実印である必要はなく、認印で構いません。

自首すべきかどうかを悩んでいる場合は、この段階でなるべく早期に刑事事件に強い弁護士に相談されることをお勧めします。

自首すべき事案であると判断した場合、弁護士を自首に同席させることで、逮捕される可能性を下げることができます。

 

警察署に連絡して日程を調整する

用意が整ったら、自首をする予定の警察署に連絡を入れ、警察署に行く日程を調整します。

事前の連絡なしに突然警察署に行ったとしても、担当者が不在であれば十分に話を聞いてもらえず、時間を無駄にしてしまう可能性があります。

そうした事態を避けるため、事前に予定を合わせておくことをお勧めします。

 

当日に警察署に行く

あとは、当日に警察署に向かい、事件のことについて知っていることを全て話し、反省の気持ちを伝えることになります。

このとき、捜査機関は、被疑者の言い分をまとめた「自首調書」というものを作成します。

この自首調書は、のちに証拠として取り扱われる可能性があるので、自身の認識と異なる書かれ方をしていないかどうか、慎重に確認する必要があります。

書かれている内容に誤りがあったり、違和感を覚えたりした場合は、ためらわずに訂正を申し出なければなりません。

内容に問題がなければ、自首調書の内容に誤りがないことを認める趣旨で、署名・押印をすることになります。

弁護士を自首に同行させている場合、取調べへの同席まではできないケースがほとんどです。

しかし、弁護士は警察署内で待機しておりますので、取調べを受けている最中でも弁護士と話をしたいと申し出れば、取調べを中断して弁護士と打ち合わせることが認められます。

捜査機関からの質問に対し、どう答えるべきか分からないような場合でも、弁護士のアドバイスをその場で受けて回答することで、必要以上に不利な内容の自首調書が作成されることを防ぐことができます。

 

 

まとめ

以上、盗撮の自首のメリットについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。

確かに、処罰される可能性がある中、自ら進んで犯行を告白するのは勇気がいることかと思います。

しかし、自首をすることで、①逮捕や勾留を回避できる可能性があること、②精神的な負担の軽減、③家族や職場への突発的な連絡を防ぐ、④不起訴や刑罰の軽減の可能性がある、という4つのメリットが考えられます。

他方で、自首をすると①犯罪が発覚してしまう、②身元引受人を要求される可能性がある、などのデメリットも考えられます。

基本的には自首をおすすめいたしますが、とても重要なご判断になるかと思われます。

また、自首をする場合、その具体的な方法について、専門的な知識や経験をもつ専門家からの助言にしたがったほうが安心できるでしょう。

したがって、自首については刑事事件に強い弁護士へ一度ご相談されることをお勧めいたします。

この記事が刑事事件でお悩みの方の参考になれば幸いです。

 

 


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