盗撮で逮捕される?|現行犯と後日逮捕の可能性について弁護士が解説
目次
盗撮とは
盗撮とは、人を著しく羞恥させ、または人に不安を覚えさせるような方法で、以下の行為を行うことをいいます。
- ① 通常衣服で隠されている他人の身体または他人が着用している下着を写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下「写真機等」といいます。)を用いて撮影すること
- ② 公衆便所、公衆浴場、公衆が利用することができる更衣室その他の公衆が通常衣服の全部または一部を着けない状態でいるような場所で当該状態にある人の姿態を写真機等を用いて撮影すること
なお、上記①②の行為(盗撮)をする目的で、写真機等を設置し、または他人の身体に向けることだけでも、同様の犯罪とされています。
逮捕されるケースとは
盗撮に関して、どのようなケースが犯罪として立件されるのでしょうか。
以下、問題となりやすい事例をあげて、具体的に解説します。
服の上から撮影した場合
着衣の上から撮影しただけでも、犯罪となるのでしょうか。
福岡県迷惑防止条例第6条2項1号は、盗撮の対象を、「通常衣服で隠されている他人の身体又は他人が着用している下着」と特定されていますから、通常衣服で隠されている他人の身体や下着を撮影することなく(するつもりもなく)、着衣の上を撮影しただけでは、盗撮の罪は成立しません。
ただし、通常衣服で隠されている他人の身体や下着を撮影しようとしたものの、撮影に失敗し、着衣を撮影したにとどまったという場合であれば、条例第6条2項2号違反となります。
また、着衣の上から撮影しただけであり、下着等を撮るつもりが全くなかった場合であっても、条例第6条1項2号の「卑わいな言動」に当たると判断される可能性がありますから注意が必要です。
カメラを差し向けただけの場合
盗撮を成功させた場合のみ犯罪が成立すると誤って理解している方もいますが、実際は、カメラを差し向けただけでも成立します。
条例第6条2項2号に「前号に掲げる行為(盗撮)をする目的で写真機等を設置し、又は他人の身体に向けること。」と規定があるからです。
法定刑は盗撮に成功した場合と同じです。
更衣室の盗撮の場合
更衣室での盗撮は、会社の従業員や当該施設の関係者が更衣室のロッカーや天井、壁などに小型のカメラを隠して撮影することが典型です。
このような状況での盗撮は、被害者の処罰感情が高まることが予想されます。
更衣室は、一部の者しか出入りすることができない密室です。
そのような閉ざされた空間で、盗撮の被害にあった方は、恐怖心や不安感が大きくなる傾向にあります。
また、加害者が会社の従業員や施設の関係者の場合が多く、見ず知らずの第三者ではないため、加害者に対しても腹立たしさや憎悪感が大きくなる傾向です。
そのため、警察や検察官に対して、厳罰を求めることがあり、逮捕される可能性も高まります。
被害者の処罰感情が高まれば、示談が難しくなるため、不起訴の可能性が高くなる場合があります。
また、住居侵入や建造物侵入罪が成立する場合、罪が重くなる可能性があります。
さらに、会社内での盗撮については、会社に発覚することが多く、その場合は、会社から懲戒解雇や損害賠償請求等の民事上の問題も懸念されます。
トイレの盗撮の場合
トイレ内での盗撮は、公衆トイレや会社のトイレ、その他施設内のトイレ内での犯行が典型です。
公衆トイレについては面識がない第三者、会社や施設内のトイレについては、従業員や施設の関係者が加害者となることが多いです。
トイレの盗撮は、被害者の排泄の状況が撮影されることが多いため、被害者の羞恥心が著しく傷つけられることが予想されます。
そのため、関係者の場合はもちろん、第三者であっても、厳罰を望むことがあるため、逮捕される可能性も高まります。
脱衣所・浴室・温泉の盗撮の場合
知人の自宅浴室(脱衣所)に小型のカメラを設置したり、温泉施設の関係者(従業員など)が小型のカメラを設置して、盗撮を行うことが典型です。
公衆浴場については、数が減少していますが、温泉施設は数が増加しているので、浴室等の盗撮に関するご相談は多く寄せられています。
浴室等の盗撮については、被害者が全裸となっている状況が撮影されていることが多い傾向です。
そのため、被害者の被害感情が高く、厳罰を望む可能性があります。
また、盗撮目的で被害者の自宅や温泉施設等に侵入した場合、住居侵入や建造物侵入の罪に問われる可能性があります。
そのため、他の盗撮と比較して、罪が重くなる可能性があります。
当然、逮捕される可能性も高まります。
後日、逮捕されることがあるのか
盗撮は、現行犯で逮捕されるケースが多いとは言われていますが、被害者供述等の証拠を収集した後に、重大事案であると判断し、逮捕に踏み切るケースもあります。
スマートフォンやパソコンに残っている過去の盗撮画像がある場合
盗撮が警察に発覚した場合、警察は被疑者の携帯やパソコンを押収する可能性が高いです。
余罪がどの程度あるのかをチェックし、盗撮をどの程度常習的に行っているのかを判断するのです。
独立して起訴されることは多くはありませんが、それでも量刑には一定程度影響することになります。
警察から厳しく追及されることになりますが、実際以上の余罪があるかのような自白調書を取られてしまわぬよう、弁護人と入念に打ち合わせをして、アドバイスを受け、取調べに臨む必要があります。
逮捕されないために
逮捕されないためには、弁護人を選任するなどして早期に示談交渉を開始し、示談を成立させることが重要です。
また、自首をすることによっても、逮捕の可能性を下げることができます。
再犯防止のための活動
いくら被害者と示談ができたからといって、同じことを繰り返してしまっては意味がありません。
犯罪白書によると、性犯罪の中でも盗撮犯の再犯率は高いというデータがあり、再犯防止のための措置を講じることが必須といえます。
検察官も再犯を防止するためにどのような処分がもっとも適切なのか、という点を考慮して処分を決定します。
検察官が示談の重要性を理解していても、加害者本人に反省の色が薄く、不起訴にしてしまうと再犯のおそれが高いと判断されれば、不起訴にならないこともあります。
仮に、警察に発覚してしまった盗撮については不起訴処分を得ることができても、その後も犯行を繰り返してしまえば、いずれ厳しい処罰が下されることになるでしょう。
当事務所では、不起訴処分を得ることだけでなく、同じことを繰り返してほしくないとの思いから、性犯罪を行ってしまった依頼者に対しては、専門的な治療施設に通ってカウンセリング等の治療を受けることを勧めています。
痴漢や盗撮を行ってしまう人は性的興奮を得るためというよりも、むしろスリル感を楽しんでいるということも多いのですが、本人や周囲の人もその本質的な問題に気付いていないことが往々にしてあります。
専門的な治療を受けることで、盗撮をしてしまう原因に気付いて改善することが期待できるからです。
また、示談が成立した後も、加害者が再犯防止に向けて活動していくことで、「この人に刑罰を与える必要はない。」と検察官に説得的に訴えかけていくこともできます。
同じ過ちを繰り返さないようにするためには、ご本人の決意と周囲のサポートが必要になってきます。
まとめ
以上、盗撮について、具体的なケースを挙げて、逮捕される可能性を解説しましたがいかがだったでしょうか。
盗撮は、被害者がいる犯罪です。
逮捕されないために重要なことは、真摯に反省し、被害者との示談交渉を成功させることです。
また、現在、捜査対象となっていない場合、自首をすることも検討しましょう。
この記事が刑事事件でお困りの方にとってお役に立てれば幸いです。
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