前科とは|前歴との違いやどんな不利益があるかを弁護士が解説

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  保有資格 / 弁護士・3級ファイナンシャルプランナー

 

 

前科とは

前科とは、過去に懲役・禁錮・罰金の刑罰(または執行猶予)を受けたことがある経歴をいいます。

懲役や禁固刑だけではなく、罰金も前科となるため、スピード違反や器物損壊罪などの軽い犯罪でも、厳密には前科となります。

 

前科と前歴の違いは?逮捕歴とも違う?

なお、似た言葉として「前歴」という物があります。

これは、過去に捜査機関によって一定の捜査の対象となった事実・経歴を意味します。

したがって、不起訴処分を受けた場合も含まれます。

逮捕された事実・経歴のことを特に「逮捕歴」という場合もありますが、逮捕・勾留などされずに在宅で取調べを受けることになった場合も、捜査機関による捜査の対象となっていることには変わりありません。

そのため、逮捕されてもされなくても、捜査の対象になった時点で「前歴」はつきます。

「前科・前歴なし」というときは、過去に刑罰を受けておらず、かつ、捜査の対象となった経歴もないことを指します。

なお、前科は一犯、二犯と数え、前歴は一件、二件と数えます。

前歴がつくことによる法的なデメリットは特にありませんが、将来的に罪を犯してしまった場合、前歴があることが判明すれば、前科・前歴なしの場合に比べ、重い処分が選択される可能性が高まります。

 

 

一度ついた前科は消えることはある?

当然ですが、「前科がついた」という事実は決して消えることはありません。

しかしながら、前科の法的な効力は、一定の期間が経過することで消滅します。

刑法上、前科の法的効力が消滅することを、「刑の言渡しが効力を失う」と表現します。

刑の言渡しが効力を失うことについては、以下のような定めがあります。

 

刑の全部の執行猶予の猶予期間経過の効果

第二十七条

刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消されることなくその猶予の期間を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。

(刑の消滅)

第三十四条の二

禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで十年を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失う。罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで五年を経過したときも、同様とする。

引用元:刑法 | e-Gov法令検索

例えば、執行猶予がついた懲役刑が言い渡された場合において、その後罪を犯すことなく執行猶予期間が経過すれば、刑務所に行かなくて良くなります。

これは、再び罪を犯して執行猶予が取り消されたりせずに執行猶予期間が経過したことにより、懲役刑の言渡しが効力を失い、刑務所に行く理由がなくなったからであるといえます。

この場合には、その後別の罪を犯してしまった場合などにおいても、法律上、前科はないものとして取り扱われることになります。

同様に、懲役刑や禁錮刑などの刑期を終えて出所してきてから、再び罰金刑以上の刑に処せられるような罪を犯すことなく10年が経過した場合や、罰金刑の支払いを終えてから再び罰金刑以上の刑に処せられるような罪を犯すことなく5年が経過した場合にも、前科の法的効力は消滅し、法律上は前科がないものとして扱われることになります。

 

判決の内容 前科の法的効力が消滅するタイミング
執行猶予付判決 罪を犯さずに執行猶予期間が経過したとき
禁錮以上の刑 出所後、再び罰金以上の刑に処せられないで10年が経過したとき
罰金以下の刑 罰金などの支払い後、再び罰金以上の刑に処せられないで5年が経過したとき

 

 

前科がバレることはある?

戸籍に残る?

前科情報は戸籍に残るのではないか、そこから前科があることが発覚してしまうのではないか、などと心配されている方がしばしばいらっしゃいますが、そのようなことはありません。

前科情報は、検察庁などの捜査機関において保管されるほか、本籍地の市区町村の犯罪人名簿に掲載されることになります。

当然ながら、これらは戸籍とは全く別のものであり、前科情報が戸籍に記載されるなどといったことはありません。

そのため、戸籍謄本を取得した際に前科があることが発覚する、などといったことは起こりません。

基本的に、前科に関する情報は他人に最も知られたくない情報の一つであり、うっかり漏らしてしまうと、当事者のプライバシーを回復できないほどに侵害してしまうことになります。

そのため、前科情報は最重要の機密事項として扱われますので、一般の方は容易にアクセスすることができないようになっています。

どのような場合に発覚する?

それでは、前科があることが発覚するのはどのような場合なのでしょうか。

上述したとおり、捜査機関の記録や犯罪者名簿に関しては、一般人から請求を受けたとしても、開示されることはありません。

そのため、基本的には、前科があることについて自分から他者に話さない限り、発覚する可能性は高いとはいえません。

しかし、仮に起こしてしまった事件について実名報道がなされた場合、ご自身のお名前がインターネット上に半永久的に残ることになってしまいます。

逮捕されたときに実名報道された場合、事件によっては、その後起訴されたこと、さらには裁判が終わり、有罪判決が言い渡されたことまで、実名付きで報道されるケースもあります。

そのような場合は、自身が有罪判決を受け、前科がついてしまったという事実を広く知られてしまうことになるでしょう。

現在はインターネットが広く普及しており、名前を検索するだけで過去の記事まで全て明らかになってしまいますので、実名報道がされている場合の発覚のリスクは相当程度高まっているといえます。

実名報道を回避したいとお考えの方は、こちらをご覧ください。


 

 

前科がつくことによる不利益

前科があるとつけない職業

以下の資格・職業は「禁固」以上の前科がつくと、一定期間制限されます。

資格・職業

制限される期間

国家公務員、地方公務員、自衛隊員、人権擁護委員、商工会議所の役員 執行猶予中・実刑期間の満了まで
保育士、旅客自動車運送事業者、社会福祉士・介護福祉士 執行猶予中・実刑期間の満了から2年間
質屋、公認会計士・公認会計士補、行政書士、司法書士、不動産鑑定士・不動産鑑定士補 執行猶予中・実刑期間の満了から3年間
警備業者・警備員、宅地建物取引主任者、貸金業者、建設業者、建築士(一級,二級,木造建築士)、古物商、商工会の役員 執行猶予中・実刑期間の満了から5年間
学校の校長・教員、裁判官、検察官、弁護士、保護司、調停委員、教育委員会の委員、中央競馬の調教師・騎手、検察審査員 執行猶予中・実刑期間の満了から10年間

また、以下の資格・職業は、「罰金」でも下記の期間、制限される可能性があります。

資格・職業

制限される期間(刑法34条の2)

医師(医師法4条3号)、歯科医師(歯科医師法4条3号)、薬剤師(薬剤師法第5条3号)、 保健師、助産師、看護師、准看護師(保健師助産師看護師法9条1号)

 

【罰金の場合】
刑の執行または執行免除までとその後5年間
【執行猶予の場合】
執行猶予中
【実刑の場合】
実刑期間の満了から10年間

これらの資格・職業は、「免許を与えないことがある。」と裁量により資格を認めないことができると定められています。

就職活動への影響

前記の職業以外でも、採用への影響が懸念されます。

すなわち、就職の際、履歴書の賞罰欄に、前科があるにもかかわらず「前科なし」と書くことは虚偽記載に該当します。

履歴書に虚偽記載をして、それが後日発覚した場合、後に会社から懲戒処分を受ける可能性が高く、場合によっては懲戒解雇されます。

例えば、運送業を例に取ると、飲酒運転で前科がついた方が運送会社にドライバーとして入社した場合、採用する側は飲酒運転の前科の有無は採否についての重要な判断材料です。

万が一、入社後に、飲酒運転の前科が発覚した場合、解雇される可能性が高いでしょう。

親族の就職等への影響

可能性としてはそれほど高くはありませんが、企業や官公庁が応募者の身辺調査の一環として親族を調査することがあります。

例えば、防衛省では、一定の階級や立場に応じて、親族の調査を行うことがあります。

そのため、犯罪の内容にもよりますが、親族の前科が発覚した場合、採否のマイナス評価になる可能性があります。前科がつくことで、親族にまで悪影響をおよぼしかねないということは気をつけておきましょう。

海外渡航への影響

前科がつくと、ビジネスで就労ビザを取得する場合が問題となります。

就労ビザは、無犯罪証明書の提出を求められることがあります。

この無犯罪証明書は、罰金であれば5年間、執行猶予であれば、執行猶予の期間満了まで発行してもらえません。

この場合、無犯罪証明の代わりに、判決謄本をもらい、訳文添付の上、大使館に提出すれば、ビザが下りる可能性があります。

観光など短期の場合は、日本人はほとんどの国にノービザで行けるので、実際に問題になることはほとんどありません。

結婚への影響

結婚前から前科がある場合

既に見たとおり、戸籍に前科情報が載ることはありませんので、結婚前に結婚相手の前科を調べる方法は乏しいといえます。

そのため、結婚前の前科については、自分から結婚相手に話をしない限り、発覚する可能性は高いとはいえません。

前科がついていることを知られてしまうと、社会的なイメージの悪化は避けられず、相手方が結婚を躊躇してしまったり、周囲から強い反対を受け、結婚が難しくなったりする可能性があります。

他方、前科があることを隠して結婚し、その後に発覚した場合、前科の内容によっては夫婦関係の悪化を招く可能性も否定はできません。

既に見たとおり、前科の内容によっては海外渡航が難しくなることもありますので、家族で海外旅行に行こうとしたときなどに発覚する可能性があります。

これらを踏まえると、前科についてどこまで伝えるべきかについては、発覚する可能性などを十分に考慮した上で、慎重に検討する必要があるでしょう。

 

結婚後に前科がついた場合

結婚後に罪を犯し、前科がついてしまった場合、家族に発覚するかどうかは、逮捕・勾留の有無によっても左右されます。

家族への発覚を避けられなかった場合、前科の内容次第では、離婚を切り出されてしまうケースも想定されます。

この場合、民法770条1項5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するとして、法律で定められた離婚事由を充足するという判断がなされる可能性もあります。

 

 

前科をつけないためには起訴されないこと

前科をつけないポイントは、「起訴されない」ということにつきます。

日本の刑事裁判は、起訴されると、99.9%の確率で有罪となってしまいます。

したがって、起訴、イコール、前科と考えてよいでしょう。

 

 

起訴されないためには?

被害者がいる事件の場合

わいせつ事案、暴力事案などのような被害者がいる事件の場合、弁護士を通じて被害者に謝罪することがスタートです。

そして、弁護士を通じて被害弁償を申し出て、可能であれば示談に応じてもらいます。

被害者がいる類型の事案では、示談が成立することで、不起訴となる可能性が高くなります。

このような活動は、起訴される前に行うことが重要です。

そのために、一刻も早い段階で弁護活動を行う必要があります。

刑事事件でお悩みの方は、とにかく早く弁護士にご相談ください。

無実の場合

捜査の初期の段階から弁護士のサポートを受けるべきです。

日本の取り調べは厳しい傾向があります。

無実であっても、捜査機関は、可能な限り、自白調書を取るために、捜査機関に有利な事実とは異なる供述調書を作成する恐れがあります。

特に、否認事件の場合、取り調べは容赦ないものとなる可能性があります。

そのような過酷な取り調べが長期間続くと、精神的に強い人でも、心身ともに疲れ果て、犯行を認める供述を行ってしまいます。

冤罪は、このようにして起こるのです。

一度、犯行を認めた供述調書が作成されてしまうと、後で「無理やり自白させられた」と言っても、信用してもらえず、有罪となる可能性が高いです。

このような取り返しのつかない事態を回避するために、刑事事件にくわしい弁護士のサポートを早い段階から受けておくべきです。

当事務所では、起訴前の弁護活動を重視しています。

当事務所の刑事専門の弁護士は、被疑者が犯人ではないことを裏付ける証拠を集めたり、被疑者が身柄を拘束されている場合は面会に行き、今後の手続の流れをわかりやすく説明します。

また、ご家族の状況や伝言を伝えたり、外部(職場等)とのパイプ役となり、精神面のサポートも行います。

 

まとめ

以上、前科について解説いたしましたが、いかがでしたでしょうか。

発覚する可能性が必ずしも高くないとはいえ、前科がつくことによるデメリットを軽視しすぎることは危険です。

後になって思わぬ形で不利益を被った、ということも、全くないとは言い切れません。

無実である場合はもちろんのこと、実際に罪を犯してしまった場合においても、被害者への謝罪・示談など、果たすべきことをしっかりと果たすことで、前科をつけずに済むのであれば、それに越したことはありません。

このままでは前科がついてしまうのではないかとご不安な方は、刑事事件に強い弁護士に早期にご相談されることをお勧めいたします。

この記事が皆さんのお役に立てれば幸いです。

 

 

 

 

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