飲酒した友人の車で事故に遭いケガ。治療費は減らされるの?
損害額が減額される可能性があります。
同乗者も事故に遭えば被害者ですから、事故による損害の補償は受けられます。
ただ、同乗者に過失が認められる場合、慰謝料から減額、全損害額から減額されることがあります。
そこで、どのような場合に減額されるのか紹介します。
同乗者も賠償が受けられる根拠
自動車の運転手の同意のもとに自動車に同乗した人を、好意同乗者といいます。
好意同乗者は、自賠責法3条本文の「自分のために自動車を運行する者は、その運行により他の人を死亡させ、又は負傷させたときは、その損害を賠償する責任を負う。」の「他の人」に含まれます(最判S42.9.29)。
あくまで好意同乗者も、事故との関係では「他人」であるため、賠償が受けられるのです。
同乗者が認識していた危険事情と事故発生との因果関係
同乗者が運転手の飲酒、睡眠不足その他の危険事情を認識していたとしても、当該事情が事故の発生に影響を与えていない場合。

運転者と同乗者の関係
同乗者が運転者の過失ある運転を抑止できる立場になかったといえる場合。

客観的事情が存在することを知っていた場合
同乗していただけの理由では、損害額が減額されることはありません。
しかし、同乗者自身において事故の発生の危険を増大する状況を現出したり、事故発生の危険が極めて高いような客観的事情が存在することを知りながらあえて同乗したような場合、同乗者の賠償金が減額されることになります。
同乗者の損害が減額される事例
飲酒運転
- 運転手が飲酒していることを知りながら同乗すること。
- 運転手と被害者が一緒に飲酒をしたこと。
※ホステスなどが客と一緒に飲酒をし、客の車に同乗した場合など、同乗者の帰責性が大きい時は減額が大きくなります。
無免許運転
運転手の免許のないことを知って同乗する場合です。

少年Aが少年Bの無免許であることを認識しながら、バイクを運転するよう積極的に誘い同乗したことを理由に、賠償額の減額を認めました。

同乗者は、運転者がマニュアル車の運転免許を有していないことを知っていたことに加え、運転を制止せず、車両から降りようとした形跡がないことから、賠償額の減額を認めました。
運転者の反規範的な運転態度
- 暴走族の集団暴走行為。
- 単にスリルを楽しんだり、パトカーの追跡から逃れるため信号無視やスピード違反を繰り返したりすることを承知で同乗した場合。
- 事故前の同乗の機会に運転者の乱暴な運転を経験していたにもかかわらず、当該運転者の運転する車両に同乗した場合。

疲労運転
長距離運転、深夜運転などで休息などを助言せず、漫然と同乗した場合。

前夜友人らを迎え、当日は往路運転、スキー後も帰路を運転していた運転者の立場に対する周囲の配慮が不足していたとして、賠償額の減額を認めました。
未熟運転
免許を取得したばかりの初心者であると知りながら、無理な運転をさせた場合。

シートベルト不着用・ヘルメット不着用
シートベルトを着用せず同乗、単車でヘルメット着用せず同乗した場合。
箱乗り
同乗者が車両の窓から上半身を乗り出したり、窓枠に腰掛けたりする行為。
減額される割合
裁判例で認められる減額の程度は、事案によって異なりますが、概ね10%〜25%程度です。


このように同乗者でも治療費などの賠償金が減額されることがあります。