交通事故の示談期間は?目安と早く解決する方法

執筆者:弁護士 西村裕一 (弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士)

交通事故の示談交渉にかかる期間の目安は、事故の種類やケガの状況によって異なります。

後遺障害等級 逸失利益
後遺障害等級12級の場合 130万円
後遺障害等級14級の場合 43万円

なお、上記はあくまで示談交渉が始まってから成立するまでのおおよその目安です。

実際の期間は、事故の内容や争点の有無などによって前後します。

突然の事故に遭い、けがの治療や生活費の工面に追われるなか、このような焦りや不安を抱えている被害者の方は非常に多くいらっしゃいます。

注意すべきなのは、早く終わらせることだけを優先して焦って示談書にサインしてしまうと、本来もらえるはずの正当な賠償金を得られず、損をしてしまうリスクがあるということです。

この記事では、示談期間の目安や示談交渉開始のタイミングを解説したうえで、損を防ぎながら早く解決するための対処法を、弁護士が分かりやすく解説します。

交通事故の示談期間はどのくらい?解決までの全体的な目安

以下は、交渉開始時期と解決までの期間です(裁判期間は考慮していません)。

事案に応じて解決までの期間は全く変わりますので、あくまで目安として参考にして下さい。

事故の内容 交渉開始時期 解決までの期間の目安
物損事故 事故直後 1〜3ヶ月
人身事故(後遺障害なし) 治療終了した後 1〜3ヶ月
人身事故(後遺障害あり) 後遺障害等級が確定した後 3〜10ヶ月
死亡事故 四九日経過後 3〜10ヶ月

 

物損事故:事故直後から「1ヶ月〜3ヶ月程度」

物損事故は、過失割合と車の修理額あるいは時価額を確定する必要があります。

過失割合の交渉は、事故開始直後から可能です。

修理額は、修理業者と相手の保険会社が協議して妥当な修理費用を確定させます。

被害者として確定した修理内容に不服がある場合には、保険会社と交渉する必要があります。

もっとも、筆者の経験上、修理内容、費用について争いになることは、それほど多くありません。

したがって、過失割合に争いがない場合には、1ヶ月程度あれば解決できます。

他方で、過失割合が争点になった場合には、裁判をする必要が生じることもあり、解決まで数年を要することもあります。

 

人身事故(後遺障害なし):通院終了(完治)から「1ヶ月〜3ヶ月程度」

後遺障害がない場合、治療が終了すると、全ての損害額が確定するため、理屈上は、この時点から交渉が開始できます。

もっとも、保険会社は、病院の治療費の金額を確定的に確認した後でないと示談できないので、実際の交渉の開始時期は治療終了後、一定期間あくことが多いです。

後遺障害がない場合の人身事故では、入通院慰謝料や休業損害が交渉のメインになります。

争点がなければ、治療終了から1〜2ヶ月程度で解決できることが多いです。

他方で、複雑な争点がある場合には、交渉は長引きます。

例えば、休業損害について、自営業者・個人事業主の場合には争点化して話し合いが長引くこともあります。

 

人身事故(後遺障害あり):後遺障害等級確定から「3ヶ月〜10ヶ月程度」

後遺障害がある場合には、後遺障害慰謝料、逸失利益が損害項目として出てきます。

後遺障害慰謝料は相場が決まっているため、争点になりづらいですが、逸失利益は計算方法が争いになることはよくあります。

また、重い後遺障害が残った場合には、将来介護費用などの問題となり、賠償額も数千万円、数億円に達することもあるため、示談交渉は長くなります。

 

死亡事故:四十九日の法要から「3ヶ月〜10ヶ月程度」

死亡事故の場合、死亡逸失利益が最も高額で大きな争点になります。

後遺障害がある人身事故と同じように逸失利益の計算方法で話し合いが長引くことが多いです。

また、死亡事故では、被害者の証言がないため、過失割合が争点になることも多いです。

 

 

そもそも交通事故の示談交渉はいつから始まる?ケース別・交渉の開始時期

示談交渉の開始の時期は、死亡事故、後遺障害が残存する傷害事故、後遺障害が残存しない傷害事故、物損事故のそれぞれで異なります。

以下では、それぞれの示談交渉開始時期等について説明します。

 

物損事故

物損事故の場合、事故発生後、修理見積もり等が出た時点で示談交渉を開始することができます。

修理見積もりは、修理工場と保険会社の担当者(アジャスター)が協議した上で、作成されるため、作成されるのに事故発生から2週間〜1ヶ月程度は要することが多いです。

 

 

後遺障害がない傷害事故

示談交渉開始時期

後遺障害がない傷害事故の場合、傷害が治癒した時点か、あるいは、症状固定した時点以降に示談交渉を開始することになります。

傷害が治癒、あるいは、症状固定した時点で、治療費の金額が定まり、傷害慰謝料の金額も確定することから、これらの時点以降に示談交渉を開始することになるのです。

 

後遺障害が残存する傷害事故

示談交渉開始時期

後遺症が残っている場合には、その後遺症の後遺障害等級が確定してから、示談交渉を開始することになります。

後遺障害等級は、症状固定後に損害保険料率算出機構に対して、後遺障害の申請を行うことで審査してもらうことができます。

その結果に納得できない場合には、再度、審査してもらうために異議申立をすることもできます。

こうした手続きを踏んだ上で、認定された等級を前提に示談交渉を開始することになります。

なお、損害保険料率算出機構が認定した等級よりも上位等級を前提として、示談交渉を開始することもできますが、相手保険会社は、まず応じないと考えられますので、その場合には、裁判をする必要があるでしょう。

なお、保険会社が了承すれば、後遺障害部分を確定させないまま、傷害部分(後遺障害以外の部分)を先に交渉して賠償金を受け取ることも可能です。

 

死亡事故の場合

示談交渉開始時期

被害者が亡くなった場合には、その相続人が相手保険会社と示談交渉することになります。

49日の法要までの葬儀関係費用を請求することができるため、亡くなって49日以降に損害を確定し、加害者側と示談交渉を開始することになります。

もっとも、示談交渉にあたっては、ご遺族に様々な資料を準備してもらう必要があります。

家族を失った中で、そうした資料を集める負担の大きさは計り知れません。

したがって、ご遺族の可能なペースで資料を集めていただき、資料が揃った時点で交渉を開始することが多いです。

 

 

合意が成立してから「示談金が振り込まれるまでの期間」は?

保険会社との間で賠償金について、合意が成立してから示談金が振り込まれるまでの期間は、約2週間程度です。

ここでいう合意の成立とは、電話やLINE、メールなどで、保険会社に対して提示された賠償額を了承する旨を伝えた時点を指しています。

 

示談成立から振込完了までの5つのステップ

示談成立から振込完了までの5つのステップ

 

STEP 1:示談内容の合意

過失割合や賠償金額などについて、保険会社に了承する旨を伝え、合意成立となります。

 

STEP 2:示談書(免責証書・承諾書)の送付

合意成立を踏まえて、保険会社にて示談書(免責証書・承諾書)を作成して、被害者に郵送します。

早い担当者であれば、すぐに作成して発送してくれますので、早ければ数日以内には被害者の手元に示談書(免責証書・承諾書)が届きます。

 

STEP 3:署名・捺印と返送

被害者は、手元に届いた示談書(免責証書・承諾書)に署名押印、振込口座の記載をして、保険会社に返送します。

 

STEP 4:保険会社での決済処理

示談書(免責証書・承諾書)が保険会社に届き次第、保険会社にて入金の手続きを進めます。

 

STEP 5:口座への入金

保険会社担当者が、早く入金処理をしてくれれば、保険会社担当者の手元に示談書(免責証書・承諾書)が届いてから2〜3営業日程度で指定の口座に着金します。

 

 

なぜ遅くなる?交通事故の示談交渉が長引いてしまう5つの原因

交通事故の示談交渉が長引いてしまう5つの原因

① 事故の「過失割合」をめぐってお互いの主張が対立している

過失割合は、最も争点になる可能性が高い交渉項目です。

特に客観的な証拠(ドライブレコーダー、防犯カメラなど)がない場合には、当事者双方の言い分が食い違い、事故態様が確定せず、交渉が全く進まなくなることもあります。

こうしたケースでは、裁判を検討する必要が出てきます。

 

② 事故とケガの因果関係が疑われている(通院開始が遅いなど)

事故直後に受診しておらず、一定期間経過してから通院を開始していたり、通院期間が途中で空いていたりすると、保険会社から事故と治療の因果関係を争われることがあります。

こうした場合には、事故とケガの関係性を証明するためにカルテなどの医療記録を収集するなどして時間がかかり、交渉がスムーズに進まないことがあります。

 

③ 損害額(治療費の打ち切りや休業損害)の金額に折り合いがつかない

被害者が考えている金額と保険会社が妥当と考えている金額に大きな差異がある場合には、交渉は平行線をたどり交渉は長期化します。

いずれの金額が妥当であるのか弁護士に確認してもらい、訴訟提起をするのか、あるいは、保険会社の提示で合意するのかを検討する必要があります。

 

④ 保険会社の担当者が多忙で事務処理や返答が遅れている

保険会社の担当者は、一人で多くの事件を抱えているため、賠償の提示や回答が遅くなることがあります。

こうしたケースでは、適宜、督促を入れることが重要です。

督促を入れないままにしておくと、担当者によって数ヶ月待たされてしまうこともあります。

 

⑤ 専門家(弁護士等)が介入しておらず交渉が堂々巡りになっている

弁護士が介入していないために、交渉の整理ができておらず、お互いにお互いの主張のみをぶつけ合っているようなケースでは交渉が長期化します。

適宜、弁護士に相談する、あるいは、依頼して、交渉のポイントを抑えて進めていくことが重要です。

 

 

示談を急ぐ前に知っておきたい!早さよりも示談内容が重要な理由

示談交渉を速やかに完結させ、交通事故によるストレスを無くすことはとても大切です。

もっとも、示談を急ぐあまりに、適切な補償を下回る金額で合意してしまうと、後で後悔することになりかねません。

例えば、過失割合の交渉において、早期解決のために妥協して適切な割合よりも10%不利に合意してしまったら、賠償額全体が10%安くなってしまうのです。

早期解決も重要ですが、早期に示談してしまう前に、現に提示されている賠償額や過失割合が適正なものなのか見極めることも重要です。

賠償額や過失割合が適正であるかは、専門の弁護士でないと判断が難しいので、示談してしまう前に、一度、保険会社からの提示内容を弁護士に確認してもらうことが重要です。

 

 

交通事故の示談を損せず早く解決する方法|弁護士依頼で期間や金額はどう変わる?

弁護士に依頼すると示談期間はどう変わる?

弁護士に示談交渉を依頼した場合、示談が成立するまでの期間は「早期解決につながるケース」と「適正な補償を得るために長引くケース」の大きく2つに分かれます。

 

①弁護士が代理交渉することで早期解決が期待できるケース

保険会社が処理を滞留している場合や、被害者と保険会社でうまく意思疎通できていないようなケースでは、弁護士が介入することで解決が早まる可能性があります。

弁護士による適宜の督促や、法的観点から争点を整理し主張することでスムーズに解決することが期待できます。

 

②適正な賠償金を獲得するため、あえて交渉が長引くケース

保険会社の提示する過失割合に疑問があったり、後遺障害等級が適切でないと考えられるようなケースでは、再度、資料を集め直す、異議申し立てをするなどの手続きを行った方が良い場合があります。

こうしたケースでは、解決までの時間が延びてしまいますが、適切な補償を得るためにじっくり時間をかけて進めた方がよいでしょう。

 

示談期間が多少長引いても、「弁護士基準」により賠償金の増額が期待できる

弁護士に依頼した場合には、きっちりと準備をして保険会社と交渉するため、事案によって交渉が長引くこともあります。

しかし、弁護士は、最も高い基準である弁護士基準で賠償額を計算して保険会社と交渉します。

したがって、交渉期間は延びたとしても、受け取れる金額が数十万円、重症案件では数千万円単位で増額する可能性があります。

 

弁護士費用特約があれば費用負担を気にせず依頼できる

弁護士費用特約とは、被害者自身が加入することができる保険特約です。

加入していれば、一般に上限300万円までの弁護士費用を保険会社が負担してくれます。

したがって、弁護士特約を利用することで、自己負担はなく弁護士に依頼することができるのです。

 

 

追突事故の治療打ち切り打診から一転!弁護士に依頼してスムーズに解決

Aさんは信号待ちで追突事故に遭い、首や腰を負傷しました。

事故から3ヶ月経った頃、加害者側の保険会社から治療終了を打診され、今後の補償や後遺症への不安から大きなストレスを抱えました。

そこで、ご自身の自動車保険の「弁護士費用特約」を利用し、当事務所の弁護士へ相談・依頼いただくことになりました。

弁護士が介入したことで保険会社の態度が変わり、わずか1ヶ月でスムーズに示談が成立しました。

結果として、治療費や慰謝料など法的に納得のいく適正な補償を獲得できました。

事例について、詳しくは下記ページをご覧ください。

 

 

まとめ

示談交渉を開始してから解決までの期間は、事案によって異なりますが、解決が最も早いのは保険会社からの賠償提示をそのまま承諾することです。

しかし、上記したように、保険会社に最初の提示が妥当な内容であることは、ほとんどありませんので、保険会社の提示を鵜呑みにせず、弁護士に相談されることをおすすめします。

当事務所では、交通事故を日常的に取り扱う弁護士が、交通事故相談について全国対応しています。

示談交渉についてお困りのことがあれば、お気軽にお問い合わせ下さい。

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