解決事例
更新日2020年8月21日

頸椎捻挫で交渉から2週間で裁判基準での解決に成功した事例

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

ご相談者Aさん

受傷部位首(頸椎捻挫)
等級なし
ご依頼後取得した金額
100万円

内訳
損害項目 解決内容
治療費 自己負担なし
慰謝料 約100万円(裁判基準)

状況

解説図Aさんは、自動車を運転し、交差点で信号待ちで停車中に、脇見をしていた後続の車両から追突される事故に遭いました。

Aさんは、事故翌日に福岡市内の整形外科を受診し、頸椎捻挫と診断されました。

事故後は、首から左肩、左の背中部分の痛みが続き、2~3日に1回のペースで通院していました。

Aさんは事故から7か月半ほど経過した段階で、症状の改善が見られなかったことや仕事で多忙を極めていたことを理由に通院が1か月に1度になり、そのまま相手方保険会社の勧めで主治医に後遺障害診断書を作成してもらい、後遺障害の申請を行いました。

ところが、後遺障害診断書には、頸部の可動域制限の記載はあるものの、「知覚や反射、筋力に異常なし」という記載がなされており、申請の結果は非該当でした。

 

弁護士の対応

解説図弁護士は、Aさんの診断書や診療報酬明細、診療録などから治療経過を確認し、異議申立てをすべきかどうかの検討を行いました。

また、Aさんの治療経過や症状について最も把握している主治医の先生に医師面談も行いました。

しかし、事故の規模や治療内容、治療期間、主治医の見解などを総合的に考えると、異議申し立てをしても認定を覆すことは困難であると思われました。

但し、認定が覆る可能性はゼロではないため、Aさんに見通しや、異議申立てに要する時間などを説明した上で、異議申立てを行うかどうか相談検討を行いました。

そうしたところ、Aさんとしては、早期解決を望まれるとのことであったため、異議申立ては行わず、傷害慰謝料(通院したことに対する慰謝料)などについて保険会社と示談交渉を開始することになりました。

相手方保険会社は、交渉の当初から弁護士がつけていたため、弁護士同士の交渉となりました。

弁護士は、裁判基準(裁判をした場合の賠償水準で最も高い水準)で損害を計算し賠償提示を行いました。

しかし、相手方弁護士は、裁判基準には若干満たない回答をしてきました。

そこで、弁護士は、Aさんが後遺障害には認定されていないものの、痛みがまだ残っていること等を丁寧に説明し、裁判基準での解決が図れるように交渉を行いました。

その結果、交渉に入ってから実質2週間という短期間で100万円の慰謝料を受け取るという内容で合意が成立しました。

 

弁護士のアドバイス

後遺障害の申請をして、その認定結果に不服があるときは、異議申し立てを行い、再度、審査してもらうことができます。

異議申立ては、何度でも行うことができますが、同じ書類を出し続けても認定が覆ることはありません。

どうして、そのような認定結果になったのかを十分に検討して、不足があった場合には、その不足を補う証拠と主張を追加して異議申し立てをしなければなりません。

本事例のAさんは、頸椎捻挫の診断であったため、認定の可能性があるとすれば14級9号「局部に神経症状を残すもの」でした。

14級9号に認定されるには、事故を原因としてその痛みや痺れが生じていることを医学的に説明できる必要があります。

医学的に説明できるかどうかは、事故規模や態様、治療の内容、治療期間・密度、症状の連続性・一貫性、画像所見の有無、神経学的検査の異常の有無などの事情を総合的に考慮して判断されます。

今回のケースでは、治療期間として7カ月程度通院していましたが、事故規模は比較的軽微で治療回数はやや少なく、画像所見や神経学的検査も正常でした。

もちろん、異議申し立てをして覆る可能性がないとはいえませんでしたが、本件では、Aさんが早期解決を望んでいたこともあり、異議申し立てをせずに、示談交渉を開始しましたのです。

 

 


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