解決事例
更新日2020年10月23日

治療打ち切りの後も治療を続け、後遺障害が認定された事例

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。

ご相談者Gさん

受傷部位首(頚椎捻挫)、左肩(左肩関節打撲)、腰(腰椎捻挫)、両膝(両膝関節捻挫)
等級併合14級(首痛14級9号 腰痛14級9号 両膝痛 14級9号 肩痛 14級9号)
ご依頼後取得した金額
325万円

内訳
損害項目 サポート前の提示額 弁護士によるサポート結果
治療費 5か月弱 9か月
休業損害 18万円
傷害慰謝料 100万円
後遺障害慰謝料 100万円
逸失利益 140万円(事故前年収×5%×5年)
過失相殺 15% 10%
結果 325万円

 

状況

Gさんは、原付バイクを運転していました。

赤信号で交差点で止まっていたところ、信号が青に変わったので進み始めたところ、対向車の右折車が信号のかわりばなに右折してしまおうとして、進入してきたため、Gさんは避けきれずに衝突してしまいました。

この交通事故でGさんはバイクから転倒してしまい、左側に倒れてしまいました。

そして、事故当日に救急車で搬送されて、全身打撲と診断されました。

その後、Gさんは自宅近くの整形外科に通院を開始し、電気治療などを受けていました。

そうしたところ、当初は治療費の支払をしてくれていた相手方の保険会社から、一方的に事故から5か月経過しないくらいのところで、治療費の支払を終了させてもらうと連絡が入りました。

症状が完全に治っているわけではなかったGさんは、今後どのように対応すればよいか不安になり、デイライト法律事務所の弁護士に相談されました。

 

 

弁護士の対応

弁護士は、Gさんから事故の状況と通院状況を確認しました。

そして、事故から5か月経過していない段階で保険会社が治療の打ち切りを伝えてきていることについて、何か根拠があるのかどうかも検討しました。

しかしながら、Gさんは医師から治療は継続したほうがよいと言われており、症状固定といったことは何も言われていないとのことでした。

事故の状況を踏まえると、バイクから転倒しているGさんには後遺障害が認定される可能性も十分にあり、保険会社の打ち切りのタイミングで治療を終了してしまえば、後遺障害として認定を受けることも困難になってしまうと考えられました。

そこで、弁護士はGさんからご依頼をいただき、保険会社と治療の打ち切りをしないよう示談交渉を行いました。

これに対し、保険会社は期限を区切らなければ治療費の支払を延長することはできないと回答してきました。

Gさんの症状を考慮すると、この段階で期限を区切って交渉を行うことは控えたほうがよいと考え、弁護士はこれに応じず、Gさんには健康保険を使用して、継続して通院を続けてもらうことにしました。

このとき、通院していた医師にも通院継続の意思を伝えてもらい、最終的に自賠責保険に被害者請求をする方針であることを伝えました。

Gさんの症状はなかなか改善せず、最終的に9か月ほど治療を継続しましたが、完全に痛みが取れたというところまでは至りませんでした。

そこで、弁護士はこのタイミングで後遺障害診断書をGさんに持参してもらい、医師に症状を説明して診断書を作成してもらいました。

あわせて、健康保険で通院していた期間についての診断書などの必要書類も作成してもらいました。

こうした書類の作成や整理を弁護士がサポートしながら進め、自賠責保険に被害者請求を行いました。

その結果、痛みの残った5か所に14級9号の後遺障害が認定されるという結果になりました。

この結果を踏まえ、保険会社との示談交渉を行いました。

保険会社としては、当初5か月弱の治療期間を主張しており、慰謝料などについても当然5か月弱の金額を考えていました。

しかしながら、主治医が後遺障害診断書に症状固定と記載した日は、あくまで事故から9か月経過した時点であること、自賠責保険もその診断を前提に後遺障害を認定していることから、保険会社の主張には理由がないと反論し、健康保険で治療していた期間も含めて、慰謝料などを補償すべきであると主張しました。

弁護士の主張に対し、保険会社としても後遺障害が認定されていることなどから、当初は否定していた健康保険での治療についても補償すると回答し、慰謝料についても健康保険の期間を含めた9か月を前提とした補償に応じました。

加えて、後遺障害の補償についても、逸失利益については当初3年と主張していましたが、5か所の後遺障害が認定されていることなども踏まえると5年間は最低でも補償されるべきとして、弁護士が主張したことで、5年間の補償を得ることができ、示談が成立しました。

なお、過失相殺についても当初保険会社は基本の過失割合を主張し、Gさんに15%の過失があるとしていましたが、信号のかわりばなに右折してきた事故であり、一定程度危険な右折方法であったことを警察の実況見分調書も交えて主張することで、一定の修正に応じることになり、5%の過失修正を行ってくれ、物損については、相手方の修理代も請求しないという内容に至りました。

その結果、Gさんは325万円の補償を保険会社から受け取ることができました。

 

弁護士のアドバイス

打ち切り後の治療について

Gさんのように、治療の途中で保険会社から治療費の支払を中断されることがあります。

このとき、保険会社はGさんが以後自費で治療を継続することについて、それを止めることはできません。

保険会社ができるのはあくまで治療費の支払を止めることなのです。

そのため、打ち切り交渉で折り合いがつかなかった場合でも主治医の意見も踏まえ、通院を継続した上で、後遺障害の手続を取ることは可能です。

今回のGさんの事案では、おそらく5か月弱の通院のまま、保険会社の案内するとおり後遺障害の手続をしていても、該当なしで終わっていた可能性が高いといえます。

そうすると、5か月弱の通院に対する慰謝料しかGさんは受け取ることができなかったことになります。

Gさんは打ち切りに対して、弁護士に相談されたことで、引き続き通院をする形を選択し、後遺障害が認定されるという結果になりました。

 

 


なぜ交通事故は弁護士選びが重要なのか

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