掲載日:2020年4月16日|最終更新日:2020年4月16日

Q:農産物のネット販売の会社を経営。大雨被害などで今年の売上げが減少し資金繰りがうまくいっていない状況。

倒産にあたって社長の責任は問われることがありますか?また、社長としていつまで経営に携わることができますか?

 

A:倒産状態にある企業の経営者は、通常時よりも慎重に経営判断すべきと考えられています。

もし、行きすぎた経営判断をしたり、財産散逸に当たるような行為をすると、役員の責任追及を受ける可能性があります。

そのため、倒産状態にある企業においては、原則として、事業活動を停止してもらうことが多いです。

 

  • ・資金繰りが悪化しており、今後は破産も考えていますがどうすれば良いですか?
  • ・傷口を広げないためにもう会社を破産させた方が良いですか?
  • ・債権者から債務の一括支払いを求められていますが払えそうにありません、どうすれば良いですか?
  • ・破産をすると経営者も責任を追求されますか?

デイライト法律事務所の破産再生チームにおいては、このようなご相談を多く受けています。

資金繰りが悪化している企業やまさに破産を検討している企業など、企業の置かれた状況はそれぞれ異なります。

そのため、それぞれの企業が置かれた局面を理解し、適切な方針を塾考する必要があります。

また、経営者の方は、破産手続に対して大きな不安を感じている方が多く、未知の手続ゆえ、経営者個人や家族への影響をとても心配される方も多いです。

そこで、以下では、破産にあたって経営者が注意すべき点や破産手続の概略をまとめましたので、破産を検討されいる経営者におかれましては是非ご参考にしていただければ幸いです。

 

 

役員の法的責任の概説

はじめに、会社の経営者がどのようなケースで責任追及を受けるかを説明します。

会社の役員(取締役など)は、会社及び会社債権者に対し損害を与えないよう注意する義務(善管注意義務・忠実義務)を負っており、法令違反や過度な経営判断などにより、会社に甚大な損害を与えた場合には、当該役員は、会社・会社債権者に対し損害賠償責任を負うこともあります(会社法423条、同法429条参照)。

また、破産手続においては、役員に対する損害賠償請求権の有無およびその内容を判断するため、役員の責任の査定手続があります(破産法178条、同法179条参照)

なお、役員の経営判断の萎縮効果を防止する観点から、経営判断には広範な裁量が認められており、損害賠償責任を負うケースは限定的に解釈されています。

破産手続において、役員が損害賠償責任を負うケースは次の場合などです。

 

  • ・過度な役員報酬を支給している場合
  • ・違法な配当を行なっている場合
  • ・会社財産を極端に安価で売却している場合
  • ・合理的な根拠を欠く投資をしている場合

 

 

 

会社はどのように破産していくか?

企業が破産することで、金融機関のみならず従業員や取引先など、多くの関係者に影響を与えますので、それぞれの場面において、各方面の関係者に十分な配慮をしながら、手続を進める必要があります。

そこで、企業が破産する流れの中で経営者がどのような点に気をつけるべきかをご説明します。

はじめに、企業が破産する場合、以下のような流れで進んでいきます。

 

 

 

資金繰りの悪化

資金繰りの悪化は、その程度の大小にもよりますが、中小企業においては常に隣り合わせのリスクと言えます。

例えば、金融機関に対する返済ができない状況、取引先に対する債務が支払えない状況、従業員の給与が遅配している状況など、資金繰りの悪化の程度の差はありますが、いずれの場合であっても、企業にとっては直ちに対策を講じる必要があることは言うまでもありません。

その対策を講じるために事業を継続することが当然の前提となり、むしろ、キャッシュフローを確保するために通常よりも積極的な営業活動をしなければならないと言えます。

また、このような状況に陥った場合には、もはや自助努力のみでは再建が困難なケースがほとんどですので、専門家などのサポートを受けながら、今後の会社経営を慎重に再考することが必要でしょう。

 

 

 

支払不能(倒産状態)

支払不能とは、法的には、弁済能力の欠乏のために債務者が弁済期の到来した債務を一般的、かつ、継続的に弁済することができないと判断される客観的状態と定義されています。

言い換えると、会社の財務状況に照らし、支払期限の債務の返済が困難な場合です。

例えば、2回目の不渡手形を生じさせる場合や、多数の債権者への支払いができない場合が支払不能と考えられます。

このような状況に陥った会社においては、法的にも種々の特別規制がされます。

例えば、支払不能の状況にある会社が特定の債権者に対してのみ債務の返済をした場合には破産手続において否認権の対象になる可能性があります。

また、相殺禁止に関する規制や、会社債権者による破産申立てもできるようになります。

 

 

 

破産申立準備

破産申立準備は、通常、弁護士に破産申立てを依頼することでスタートします。

そして、破産申立ての依頼を受けた弁護士は、原則として、各債権者に対し受任通知書を発送します。

これによって、会社が近日中に破産をすることが会社債権者に知れ渡ることになります。

なお、会社債権者に事前に通知することで、現場が混乱することが予見される場合などにおいては、破産申立て準備をしていることを秘して(債権者に受任通知書を送付せずに)、準備を進めることもあります。

破産申立準備を着手すると、会社の財産は弁護士が管理するようになり、また、原則として、従業員は解雇し、会社債権者への返済はストップします。腐れやすい在庫品などは、弁護士の指示・監督の下、売却することもあります。

その際の留意点は、会社の経営者の権限は、弁護士の指示・監督下に置かれているということです。この段階では、会社の経営者は、会社の事業活動につき、自由な意思決定することは許されていません。

 

 

破産申立て・破産手続開始決定

裁判所に破産申立てをし、その後、破産手続開始決定がなされます。破産手続が開始すると、裁判所の決定で破産管財人が選任されます。

破産手続開始決定によって役員の地位は終了します。

そして、破産管財人に破産会社に関する全ての権限が移転することになります。

破産管財人は、会社の財産を処分・換価し、また、会社債権者の調査をし、会社に残余財産がある場合には債権者に配当する業務を行います。

 

 

 

破産手続の過程で役員の責任追求を受けることもある?

それぞれの場面において、経営者の権限・責任は異なりますので、以下では、各場面における会社経営者の権限・責任について詳述します。

 

資金繰りが悪化している状態

資金繰りが悪化している状況(会社再建が可能な程度)であれば、通常どおり、事業活動を行なっても差し支えないと考えられます。

しかしながら、上述のとおり、資金繰りが悪化している状況に陥った場合、もはや自助努力での再建は困難な場合がほとんどです。

各種の専門家のサポートを適切に受けながら、慎重に経営判断を下すことが必要でしょう。

もっとも、通常通りの経営判断が可能だとしても、一般的な経営責任が消滅するわけではありません。

例えば、一発逆転を考えて、投機性の高い事業に投資したり、無理な営業拡大を行なった場合などには、経営責任を問われる可能性があります

 

支払不能の状態(倒産状態)

支払不能状態に陥った場合には、平時よりも高度な経営判断が求められます。

なぜならば、倒産状態にある会社においては、会社債権者としては、会社が保有する財産は破産手続における配当の引き当てとなる財産ですので、会社財産をなるべく保有し続けることに大きな利害関係があるからです。

そのため、支払不能状態(倒産状態)では、経営者は、会社が破産するのか、再建を図るのかを十分な資料・根拠に照らし、適切に判断することが求められます。

また、会社の損害が拡大しないように防止する義務(損害軽減義務)や財産の無意味に流失しないように注意する義務(財産散逸防止義務)なども負っていると解されています。

このような状況では、なるべく早期に会社倒産を専門とする弁護士に相談し、今後の方針を直ちに判断することをおすすめします。

 

破産申立準備の段階

弁護士に破産申立てを依頼し、破産申立準備の段階にある会社においては、経営者は、もはや通常の意思決定を行うことはできません。

原則として、弁護士の指示・監督の下、破産申立てに向けて適切に準備の協力をすることが求められます。

そのため、会社経営者としては弁護士の指示に従って行動をすれば良いのですが、参考として、委任を受けた弁護士(破産申立代理人)がどのような業務を行うかをご説明します。

 

申立人代理人の職務

会社債権者への受任通知書(介入通知書)の発送

破産申立てに関する依頼を受任した後、早期に会社債権者に対し、受任通知書を発送し、会社債権者に対し、当該会社が破産申立ての準備に入ったことをお知らせします。
受任通知書を発送することで、今後は弁護士が連絡窓口になるという効果があり、これによって、会社債権者は、経営者に対しては連絡することができなくなり、弁護士事務所に連絡をしなければなりません。
また、金融機関に対しては相殺禁止の規制を及ぼす効果もあり(金融機関は受任通知書を受領した後に入金された預金について、債権との相殺ができなくなります。)、会社の預金管理をします。

 

  1. 会社の資料の収集、調査
    弁護士は、破産申立ての準備として会社の決算書や総勘定元帳などの計算書類や契約書などの収集を行います。
    また、計算資料などに不備や問題点がある場合には、税理士や会計士と連携し、会社財産の調査や資料の作成を行います。

 

  1. 財産の保全、回収
    会社に財産がある場合には、弁護士は、会社財産を適切に管理する責任を負います。
    また、未払いの売掛金がある場合には、可能な限り、回収業務を行うこともあります。
    さらに、現有する財産を散逸しないよう注意する義務も負っており、なるべく、破産管財人に引き継ぎができるように業務を行います。

 

  1. 契約関係の整理
    破産申立て前までに契約関係を整理し、必要があれば解約手続などをし、すっきりとした形で破産管財人に引き継ぐことがあります。
    たとえば、賃借不動産がある場合には、引き渡しが完了するまで家賃の支払い義務が生じますので、賃貸人に解約申し入れを行い、早期に引き渡し手続を行います。
    また、従業員との関係においては、解雇通知書を発送し、未払賃金の額を調査し、未払賃金立替払制度を利用する場合には、破産手続開始決定後、早期に立替請求ができるように資料の準備をしておきます。

 

破産申立て・破産手続開始決定の段階

破産手続開始決定がでると、会社役員の地位は消滅し、その後は、破産管財人が、会社の財産を処分・換価し、また、会社債権者の調査をし、会社に残余財産がある場合には債権者に配当する業務を行います。

破産管財人の業務についてはこちらのページをご覧ください。

もっとも、これによって、役員としての役割が終了するわけではございません。破産手続が適切に行われるよう様々な義務を負います。

例えば、破産法上の説明義務を負います。

破産会社につき、最も詳しい人物は会社経営者ですので、破産管財人が業務を行う上で、必要な場合には経営者に対し、事実関係の聴取をすることもあります。

その場合には、会社経営者は、破産管財人に対し、事実を適切に説明する義務があります(破産法第40条参照)。

また、やむを得ない事情がない限り、債権者集会へ出席もしなければなりません。

債権者集会においては、破産管財人が債権者に対し、業務を報告することメインとなりますが、会社経営者も債権者集会に出席し、必要があれば、事実関係を説明することも求められる場合があります。

これまで必死に会社を守り続けた経営者にとっては、会社を破産させることは大変辛いことだと思います。

しかし、多数の関係者へ最大限の誠意を示すためには、時には非難されながらも、最後までしっかりと対応する必要があります。

会社が破産する際のそれぞれの場面において、会社経営者に求められる行為規範は異なりますので、破産を検討される経営者におかれましては一度、会社破産を専門とする弁護士に相談することをオススメします。

 

 

弁護士が解説!倒産・再生についてよくある相談Q&A





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