
遺言書の作成を弁護士に依頼するメリットには、遺言書が無効になるリスクを抑えられること、相続トラブルの発生を回避できること、希望する内容を実現しやすくなることなど、さまざまなものがあげられます。
本記事では、相続に強い弁護士が、弁護士に依頼するメリット・デメリットや費用相場、司法書士との違い、弁護士の選び方まで網羅的にわかりやすく解説します。
弁護士に遺言書作成を依頼するメリットとは?
弁護士に遺言書作成を依頼するメリットとして、以下の5つをあげることができます。

以下では、それぞれのメリットについて解説します。
①遺言書の無効リスクを減らせる
民法は遺言書について厳格な要式を定めており、その要式を満たさないと無効になるリスクがあります。
例えば自筆証書遺言であれば、全文と日付・氏名を自筆して押印しなければならない、などの要件が定められており、これを満たさない場合には無効になります。
弁護士に依頼することによって、これらの形式面の不備による無効リスクをほぼなくすことができます。
また、遺言書をめぐっては、相続開始後に相続人の一部から「本人の意思で作成されていない」「本人は遺言の作成時に認知症だったので内容を正しく認識していない」などの主張がなされ、有効性を争われることがあります。
弁護士が遺言書の作成に関与することで、作成過程の信頼性が高まります。
これによって、万一遺言書の有効性をめぐる紛争が発生した場合の証拠力が強化されます。
②相続トラブルの発生を回避できる
遺言書の内容によっては、相続人間で紛争に発展するケースも少なくありません。
例えば、一部の相続人に有利または不利な内容の遺言書、あいまいな内容の遺言書、相続人以外への遺贈を内容とする遺言書などは、トラブルにつながりやすい傾向にあります。
特に、一部の相続人に多くの遺産を与える内容の遺言書は、他の相続人の不満につながりやすいだけでなく、遺留分(一部の相続人に法律上保障されている遺産の最低限の取り分のことです。)をめぐるトラブルに発展する可能性があります。
相続に強い弁護士であれば、トラブルになりやすい遺言書の特徴を熟知しているため、将来的なトラブルを回避するための内容(例えば、遺留分に配慮した内容の遺言書)を提案することが可能です。
遺言書と遺留分の関係についてくわしくは下記ページをご覧ください。
③法的に整理された有効な遺言書を作成できる
遺言書には、できること(遺言書に記載することで法的に有効な効果が発生する事項)・できないこと(記載しても法的に意味がないもの)があり、それらは民法で定められています。
したがって、遺言書を作成する際には事前に実現したいことを法的に整理し、法的に確実に効力が生じる内容にすることが重要です。
特に、事業承継を行うケース、相続関係が複雑なケース(再婚したケース、認知した子がいるケースなど)、遺言書で認知をするケース、未成年者の後見人を指定するケースなどでは、高度の専門知識が必要となります。
弁護士に依頼すれば、実現したい事項を法的に整理した最適な記載内容を提案してもらうことができます。
④適切な種類の遺言書を選択できる
遺言書には(1)自筆証書遺言、(2)秘密証書遺言、(3)公正証書遺言、の3種類があります(民法第967条)。
それぞれにメリット・デメリットがあるため、一般の方がどれを選択すべきかを判断するのはなかなか難しい面があります。
弁護士に依頼することで、具体的な状況に応じて最適な遺言書を提案してもらうことができます。
遺言書の作成についてくわしくは下記ページをご覧ください。
⑤遺言執行やトラブル対応まで一貫したサポートを依頼できる
遺言書の作成に加えて、弁護士を遺言執行者に指定することで、相続開始後の手続き(預貯金の解約、不動産の名義変更など)を円滑に進めることができます(ただし、別途料金はかかります)。
また、遺言書作成を弁護士に依頼しておけば、相続の開始後に万一トラブルが発生した場合にもスムーズに対応してもらうことが可能です。
遺言執行者についてくわしくは下記ページをご覧ください。
弁護士に遺言書作成を依頼することにデメリットはある?
費用がかかる
弁護士に遺言作成を依頼するデメリットは、費用(弁護士報酬)がかかることです(弁護士費用の相場については次の項目で解説します)。
ただし、遺言書の有効性をめぐるトラブルや、遺言書の内容を原因とする相続トラブルに発展した場合には、それを解決するための時間と労力、精神的な負担、経済的な負担が発生します。
トラブルに発展した段階で弁護士に依頼する場合には、かえって費用が高くなるケースもあるため、遺言書の作成を弁護士に依頼する費用は、将来のリスク回避のための投資ととらえることもできます。
弁護士選びによって質に差がある
弁護士にも様々な専門分野があり、相続(遺言書作成を含みます。)に関する経験や知識には差があります。
遺言書作成に不慣れな弁護士に依頼してしまうと、かえって時間がかかってしまったり、実務上の配慮に欠けた遺言書になってしまう可能性があります。
そのため、遺言書作成に強い弁護士を選ぶことが重要です。
遺言書作成に強い弁護士の選び方については、「遺言書作成に強い弁護士の探し方・選び方」の項目で解説します。
遺言書作成の弁護士費用の相場とは?

遺言書の作成にかかる弁護士費用は一律に決まっているものではなく、それぞれの弁護士が自由に決めることができます。
また、遺言の作成にかかる費用は大きく、①法律相談料、②遺言書作成の報酬、③実費・日当の3つに分けられ、さらに④遺言書の保管や⑤遺言書の執行を依頼する場合には、それぞれについて別途追加費用がかかります。
ここでは、それぞれの費用の相場について解説します。
法律相談料
法律相談料は、遺言書作成を正式に依頼する前の相談(法律相談)の際にかかる費用です。
1時間あたり5千円〜1万円程度が相場です。
ただし、遺言書の作成を含む相続の相談については初回の相談料を無料としている弁護士も多いです。
遺言書作成の報酬
遺言書作成を弁護士に依頼する場合の報酬相場は、遺産の金額や内容の複雑さによっても異なります。
定型的な内容の遺言書であれば、20万円〜30万円程度が相場です。
遺産の数が多い場合や評価が難しい場合、相続関係が複雑な場合などには高額になる場合があります。
この基準はあくまで目安となるものであり、この基準とは全く異なる報酬体系をとっている弁護士もいます。
必ず事前に見積もりをもらって金額を確認するようにしましょう。
実費・日当
実費は、遺言書を作成する際にかかる必要経費のことです。
戸籍謄本等の取得費用、裁判所等に支払う手数料、印紙代、コピー代、切手代、交通費などが含まれます。
特に、遺言書を「公正証書遺言」にする場合には、公証役場に支払う手数料が発生します。
公正証書遺言の手数料は遺産総額によって異なりますが、1000万円〜1億円程度の場合で5万円〜10万円程度です。
日当とは、弁護士の出張が必要となる場合にかかる出張手当のことです。
弁護士日当の相場は1日あたり3万円〜5万円程度です。
公正証書遺言の費用についてくわしくは下記ページをご覧ください。
遺言書の保管費用
遺言書の保管を弁護士に依頼する場合の費用(報酬)は、1年につき1万円前後が相場です。
遺言執行者の報酬
弁護士を遺言執行者に指定する場合の報酬相場は、おおむね30万円〜100万円程度です。
遺言執行者の報酬についてくわしくは下記ページをご覧ください。
遺言書作成は弁護士?それとも司法書士?両者の違いは?
遺言書の作成を専門家に依頼する場合、弁護士のほかに「司法書士」も候補にあがります。
ここでは、両者の違いを整理しつつ、遺言書作成をどちらに依頼すべきかの判断のポイントを解説します。
弁護士と司法書士の違い
弁護士と司法書士は、対応できる業務範囲に大きな違いがあります。
以下の比較表をご覧ください。
| 比較ポイント | 弁護士 | 司法書士 |
|---|---|---|
| 主な対応範囲 | 相続全般に関する法律相談 | 不動産の相続登記が中心 |
| トラブル・紛争対応 | 対応可能(代理交渉、審判・訴訟) | 原則として対応不可 |
| 費用の傾向 | 司法書士よりやや高い傾向 | 弁護士よりやや安い傾向 |
弁護士は、相続全般に関する法律問題に対応することができ、相続人同士の争いや交渉の代理、審判や訴訟の対応が可能です。
これに対して、司法書士は登記の専門家であり、対応できる相続手続きは不動産の相続登記に関するものが中心です。
司法書士は原則として相続人同士の争いや交渉の代理、審判・訴訟などのトラブル対応をすることができません。
※法務大臣の認定を受けた「認定司法書士」であれば140万円以下の民事事件に限って訴訟や交渉の代理をすることができますが、140万円超の場合や家庭裁判所での審判については対応できません。
費用面では、一般的に、弁護士の方が司法書士よりも費用がやや高い傾向にあります。
ただし、その差は数万円程度であることが多く、将来のトラブル発生リスクがある場合には費用面よりも対応範囲を重視するのがおすすめです。
弁護士に依頼すべきケース
以下のような場合には、遺言書の作成を弁護士に依頼することをおすすめします。
- 相続人同士の関係があまり良くない
- 特定の相続人により多くの遺産を残したい
- 相続関係が複雑(認知した子がいる場合など)
- 遺産の分け方が難しい(めぼしい遺産が不動産しかない場合など)
- 将来の相続トラブルを防止したい
弁護士は、法的に有効な遺言書を作成するだけでなく、将来のトラブル回避をみすえた内容の遺言書を作成することができます。
また、万一トラブルが発生した場合にもワンストップで対応してもらうことができます。
司法書士に依頼してもよいケース
以下の条件をすべて満たすケースでは、費用を抑えて司法書士に依頼するのも良いでしょう。
- 相続人が少なく、関係も良好
- 遺産の内容がシンプル(預貯金と不動産のみ)
- 紛争になる可能性がほとんどない
司法書士は登記の専門家であり、不動産の名義変更を見すえたサポートを受けられる点がメリットです。
ただし、基本的に紛争に対応することはできないため、遺言書をめぐる紛争が発生した場合には別途弁護士に依頼する必要があります。
遺言書作成に強い弁護士の探し方・選び方

遺言の作成を含む相続分野は専門性が高く、経験の差が結果に直結しやすいため、弁護士選びはとても重要です。
ここでは、遺言書作成に強い弁護士の探し方・選び方のポイントを解説します。
相続分野の実績が豊富か
最も重要なのは、相続分野の取扱実績です。
弁護士にもそれぞれの得意分野があります。
相続は高度の専門性と経験が求められるため、相続分野の実績が豊富な弁護士を選ぶことが大切です。
具体的には、以下のような点をチェックするとよいでしょう。
- ホームページに取扱件数が具体的に掲載されているか
- 相続・遺言に関する解決事例が詳細に記載されているか
- 相続に関するコラムや記事を継続的に発信しているか
「相続に強い」ことを明確に打ち出している弁護士を選ぶことが大切です。
費用体系は明確か
弁護士費用は事務所によって異なるため、事前に料金・費用について明瞭な説明をしてくれる弁護士を選ぶことも重要です。
遺言書作成費用はいくらか、追加費用がかかる場合はあるか、遺言執行者に指定した場合の報酬はいくらか、などの点を確認するとよいでしょう。
これらが不明確なまま依頼すると、後から想定外の費用が発生し、トラブルにつながる可能性があります。
説明はわかりやすく、提案力があるか
相続分野は法律用語や専門用語が多くなりがちで、一般の方には理解しにくい場合があります。
説明がわかりにくく正確に理解しないまま遺言書の作成を進めてしまうと、思っていたのとはまったく違う内容の遺言書ができあがってしまうリスクがあります。
そのため、
- 法律用語や専門用語をかみ砕いて説明してくれるか
- メリットだけでなくデメリットも説明してくれるか
- 複数の選択肢を提示してくれるか
といった点も重要な判断要素になります。
これらの点を踏まえ、依頼者の意図を汲んで最適な遺言書を作成してくれる弁護士かどうかを判断するのがおすすめです。
他の士業と連携しているか
相続手続きは、相続登記(司法書士)や相続税の申告(税理士)など、他の士業の専門分野も複雑に絡み合っています。
他の士業とスムーズに連携している弁護士であれば、遺言書の作成においても、相続開始後の手続きを見すえた提案をしてくれる可能性が高いといえます。
大規模な法律事務所の中には、税理士が所属し、相続税の申告までワンストップでサポートしているダブルライセンスの事務所もあります。
また、相続登記にも対応している弁護士もおります。
様々な事務所を回りたくない方は、このような事務所に相談されるとよいでしょう。
法律相談を活用して相性を確認する
遺言書の作成にあたっては、家族関係や財産状況などのプライベートな情報を共有する必要があるため、弁護士との相性も非常に重要です。
そこで、正式に作成を依頼する前に法律相談を活用して、以下のような点を確認することをおすすめします。
- 話しやすいか
- しっかり話を聞いてくれるか
- 信頼して任せられると感じるか
- 説明はわかりやすいか
相続分野については初回の法律相談を無料としている弁護士も多いため、法律相談を積極的に活用してみましょう。
弁護士に遺言書作成を相談・依頼するときの注意点

希望や意向は遠慮せずに伝える
弁護士に遺言書の作成を相談・依頼する場合には、自分の希望や意向を遠慮せずに伝えることが大切です。
「こんな遺産の分け方をすると問題があるのではないか」などと遠慮してしまい、本来の希望を伝えられないケースも見受けられます。
しかし、遺言書は最期の意思をできるだけ実現するための制度であり、弁護士はこれをサポートするための専門家です。
もちろん法的に問題がある場合やリスクが高い場合には、100%の希望を叶えられない可能性があります。
しかし、希望を伝えておくことで、できるだけ希望に沿った形の代替案を提案してもらえる可能性が高まります。
また、説明を受けた上でリスクを受け入れ、万一トラブルになった場合には迅速に対応してもらう、という選択肢もあります。
このような理由から、希望や意向は遠慮なく伝えることが大切です。
遺言執行者の指定を検討する
遺言書の内容を確実に実現するためには、弁護士を遺言執行者に指定することも検討しましょう。
弁護士を遺言執行者に指定することで、以下のようなメリットがあります。
- 中立的な立場で相続手続きを行うため相続人間の対立を回避しやすい
- 相続手続きを迅速かつ正確に進められる
- 万一トラブルが発生した場合もスムーズに対応できる
特に、相続人間の関係が良好でない場合には、弁護士の活用を検討するのがおすすめです。
費用の見積もりをもらう
遺言書の作成に関する費用(報酬)は一律に決まっているものではなく、各弁護士が自由に決めることができます。
費用の見積もりがあいまいなまま依頼し、後から想定外の請求を受けてトラブルに発展するケースも少なくありません。
こうしたトラブルを避けるためには、必ず事前に費用の見積もりをもらって金額感を確認するようにしましょう。
弁護士に作成を丸投げしない
形式的に有効なだけでなく、よりよく希望を実現する遺言書を作成するためには、弁護士に「作ってもらう」という姿勢で丸投げするのではなく、自分の意思や状況を正確に伝え、共同で作り上げるという意識を持つことが重要です。
弁護士はあくまでも法律の専門家であり、本人から伝えられない限り、希望や家族の事情などを正確に把握することはできないためです。
遺言書と弁護士についてのQ&A
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作成してもらった遺言書を弁護士に預けることはできますか?
ただし、保管費用がかかります。
弁護士に遺言書の保管を依頼する場合のメリットとして、以下のようなものがあります。
- 紛失や偽造・改ざんのリスクを防止できる
- 相続開始時にすみやかに遺言書を開示してもらえる
- 遺言執行までワンストップで任せられる
もっとも、自筆証書遺言については法務局の保管制度を利用するといった保管方法もあります。
また、公正証書遺言を作成すれば原本が公証役場に保管されることになります。
どのような遺言書を作成し、どのように保管すべきかは具体的な状況によって異なるため、弁護士と相談して決めるのが良いでしょう。
自筆証書の保管制度についてくわしくは下記ページをご覧ください。
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弁護士と司法書士ではどちらが安いですか?
定型的な遺言書を作成する場合の報酬相場は、以下のとおりです。
- 弁護士:20万円〜30万円程度
- 司法書士:7万円〜15万円程度
ただし、これはあくまで相場であり、実際には遺言書の複雑さや事務所ごとの料金体系によって変動します。
また、弁護士と司法書士とでは対応できる業務範囲が異なります。
単に価格を比較するだけでなく、それぞれの状況(相続関係・遺産の内容等)や目的に応じて、どちらに依頼すべきかを判断することが大切です。
弁護士は紛争対応や交渉に強みを持つのに対して、司法書士は主に書類作成や登記手続きに強みを持っています。
司法書士は基本的に紛争対応をすることができないため、少しでもトラブルが発生するリスクがある場合には、多少費用が高くても弁護士に依頼するのが安心といえます。
まとめ
- 遺言書は、自分の意思を確実に実現し、相続トラブルを防ぐための重要な手段です。
しかし、形式や内容に不備があると無効となったり、かえって紛争の原因となったりするリスクもあります。 - 弁護士に依頼することで、①遺言書の無効リスクを減らせる、②相続トラブルの発生を回避できる、③法的に整理された有効な遺言書を作成できる、④適切な種類の遺言書を選択できる、⑤遺言執行やトラブル対応まで一貫したサポートを依頼できる、といった大きなメリットがあります。
- 遺言書の作成を弁護士に依頼する場合の相場は、定型的な内容のもので10万円〜20万円程度です。
ただし、遺言書の複雑さや事務所ごとの料金体系によって変動するため、必ず事前に見積もりをもらって費用感を確認するようにしましょう。 - 弁護士を選ぶ際には、相続分野の実績や提案力、費用体系の明確さなどを十分に確認し、自分に合った弁護士を選ぶことが大切です。
- 当事務所では、相続に強い弁護士やその他の専門家で組織する相続対策専門チームを設置しており、遺言書の作成をはじめとする相続全般のご相談をうけたまわっています。
遠方の方はオンラインでご相談いただくこともできますので、ぜひお気軽にご利用ください。







