結婚相手の連れ子と養子縁組をしたもののその後に結婚相手と離婚した場合や、養親と養子の関係性が悪くなった場合などには、養子縁組を解消することが考えられます。
この記事では、養子縁組の解消(離縁)をするための手続きや、養子縁組を解消するとどうなるのか、養子縁組を解消するためにかかる費用やリスクなどについて、相続にくわしい弁護士がわかりやすく解説します。
目次
養子縁組の解消(離縁)とは?
養子縁組の解消とは、養子縁組によってつくられた法律上の親子関係を終了させる手続きのことをいい、「離縁(りえん)」ともいいます。
養子縁組を解消すると、養子縁組によって発生したさまざまな効果が消滅します。
養子縁組とその効果
そもそも養子縁組とは、直接的な血のつながりのない者同士の間に法律上の親子関係をつくる制度のことをいいます。
養子縁組で親になる人を「養親」、子になる人を「養子」といいます。
養子縁組には、養子縁組後も実の親(実親)との親子関係が続く「普通養子縁組」と実親との親子関係が終了する「特別養子縁組」の2つがあります。
いずれにあたるかによって養子縁組の成立・終了の要件や手続きが異なります。
この記事では、一般に行われることの多い「普通養子縁組」の解消を中心に解説します。
養子縁組が成立して親子関係が発生すると、養親と養子の間にはお互いに遺産の相続権や扶養義務などの権利・義務が発生します。
また、養親の親族(養親の父母や子ども、兄弟姉妹など)と養子の間にも親族関係が発生します。
養子縁組についてくわしくは以下のページをご覧ください。
養子縁組の解消を検討する状況
養子縁組の解消を検討する状況として、次のような場合があります。
- 配偶者の連れ子と養子縁組をしたものの、その配偶者と離婚した場合
- 養親が亡くなった後、養子から養親の親族との関係解消を望む場合(死後離縁)
- 養親子間の関係性が著しく悪化した場合
配偶者の連れ子と養子縁組をした後、その配偶者と離婚した場合
配偶者との離婚にともなって連れ子との親子関係を解消したい場合には、養子縁組解消(離縁)を検討することになります。
前配偶者との子ども(いわゆる「連れ子」)がいる方と結婚した場合には、その連れ子との間で養子縁組をすることがあります。
この場合、その後に配偶者と離婚をしても、連れ子との親子関係(養親子関係)はなくならずに継続し、お互いの親子関係にもとづく権利義務(遺産の相続権や扶養義務など)もそのまま存続します。
養親子関係やそれにもとづく権利義務を終了させるためには、離婚手続きのほかに養子縁組解消(離縁)の手続きをする必要があります。
養親・養子間の関係性が悪化した場合
養親・養子の関係性が著しく悪化して養子縁組を続けることが難しくなった場合には、養子縁組の解消を検討することになります。
例えば、養子が養親から虐待を受けている場合、反対に養親が養子から虐待を受けている場合、養子が養親の家を出て行方不明になっている場合、などがあげられます。
養親が亡くなった後、養子から養親の親族との関係を解消したい場合(死後離縁)
養子が養親の死後に養親の親族との関係を解消したい場合には、養子縁組の解消を検討する必要があります。
例えば、養親との関係性は良好であったものの養親の親族との関係性が良好でない場合などです。
養親が亡くなったことによって養子縁組が終了することはなく、養親の実子(養子から見た兄弟姉妹)や養親の父母(養子から見た祖父母)などとの親族関係はそのまま続き、親族としての権利義務も続きます。
親族関係を終了させるためには、養子縁組解消(離縁)の手続きをする必要があります(この手続きを「死後離縁」といいます)。
養子縁組の解消が認められるケース
普通養子縁組で解消が認められるケース
当事者(養親と養子)が養子縁組の解消に合意しているケースでは、普通養子縁組を解消することができます。
当事者(養親と養子)のどちらか一方が養子縁組の解消に合意していないケースでも、家庭裁判所が解消を認める判断(審判・判決)をした場合には、普通養子縁組を解消することができます。
ただし、裁判(判決)で養子縁組の解消が認められるためには、①相手から悪意で遺棄されたこと、②相手が3年以上の生死不明なこと、③養子縁組を継続しがたい重大な事由があること、のいずれかの要件を満たす必要があります。
なお、死後離縁の場合には、基本的には養子縁組の解消が認められるようです。
特別養子縁組で解消が認められるケース
特別養子縁組は、実の父母が子どもを育てることが難しい場合に、子どもの利益・福祉のために行われるものです。
したがって、原則として特別養子縁組の解消(離縁)は認められません。
解消(離縁)が認められるのは、以下の3つの要件をいずれも満たす場合に限られます。
- ① 養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があること
- ② 実父母が相当の監護をできること
- ③ 養子の利益のために特に必要があると認められること
また、特別養子縁組は当事者の合意(協議や調停)で解消することができず、家庭裁判所の審判によってのみ解消することができます。
養子縁組の解消が認められないケース
当事者(養親と養子)のどちらか一方が養子縁組の解消について合意しておらず、かつ、裁判所が養子縁組の解消を認めないケースでは、普通養子縁組を解消することができません。
①相手から悪意で遺棄されたこと、②相手が3年以上の生死不明なこと、③養子縁組を継続しがたい重大な事由があること、のどの要件にもあてはまらない場合には、裁判(訴訟)による養子縁組の解消は認められません。
死後離縁の場合、権利の濫用にあたると判断されるようなケースでは解消が認められない可能性があります。
養子縁組を解消するとどうなる?
養子縁組を解消したら戸籍はどうなる?
養子縁組を解消した場合、養子は養親の戸籍から抜けます(これを「除籍(じょせき)」といいます)。
養親側の戸籍謄本の「身分事項」欄には「養子離縁」に関する内容が記載されます。
養親の戸籍を抜けた養子は、①元の戸籍に戻る、または②新しい養子のみの戸籍を作る、のいずれかを選択することになります。
戸籍謄本についてくわしくは以下のページをご覧ください。
養子縁組を解消したら名字はどうなる?
養子縁組を解消した場合、養子は基本的に養子縁組前の名字に戻ります。
ただし、養親夫婦の両方と普通養子縁組をした場合で、どちらか一方との養子縁組のみを解消したときは、養親の名字のまま変わりません。
また、普通養子縁組については、養子縁組の日から7年を経過している場合、養子縁組の解消から3ヶ月以内に届出をすることによってそのまま養子縁組中の名字を名乗ることができます。
養子縁組を解消したら親族関係はどうなる?
養子縁組を解消すると、養子と養親の親子関係は終了します。
これに加えて、養子側(養子、養子の配偶者、養子の子・孫・ひ孫とその配偶者)と養親側(養親、養親の血族(父母、実子、実子の子(孫)、兄弟姉妹等))との間の親族関係も終了します。
したがって、養子縁組の解消後は、養子側と養親側の間の親族としての権利義務(相続権や扶養義務など)もなくなります。
養子縁組解消の4つのリスク
遺産を相続できなくなるリスク
養子縁組を解消することによって、養親・養子はお互いに遺産を相続することができなくなります。
養子縁組の解消(離縁)は原則として撤回することができないため、慎重に検討することが大切です。
養子縁組と相続についてくわしくは以下のページをご覧ください。
経済的な援助を受けられなくなるリスク
養子縁組を解消して親族関係がなくなると、養親・養子はお互いに経済的な援助を受けられなくなります。
養子縁組を解消する場合には、相手から経済的な援助を受けられなくなっても困らない状況にあるかを事前に検討することが大切です。
相続税の負担が増えるリスク
養子縁組を解消することによって相続人の数が減る場合(特に養親が亡くなって子どもが遺産を相続する場合)、相続税の負担が増える可能性があります。
遺産を相続した場合には、相続した遺産の金額に応じて相続税を負担する可能性がありますが、相続税には相続税のかからない一定の上限金額(非課税枠)が設定されています。
この非課税枠は相続人の人数に応じて計算されるため、養子縁組の解消によって相続人の人数が減ることによって非課税となる金額が減り、相続税の負担が増える可能性があります。
相続税についてくわしくは以下のページをご覧ください。
トラブルに発展するリスク
養親・養子のどちらか一方が養子縁組の解消に合意しない場合にはトラブルに発展し、最終的には裁判(訴訟)で解決しなければならないリスクがあります。
裁判になった場合、解決までには多くの時間と労力がかかるのが通常です。
また、養子縁組の解消にともなって慰謝料等の金銭の支払いを求められる可能性もあります。
養子縁組解消の手続き
養子縁組解消の流れ
普通養子縁組解消の流れ
普通養子縁組を解消するための手続きの流れは、次のとおりです。
まずは当事者(養親・養子)間での話し合いをして、合意による養子縁組の解消を目指します(協議離縁)。
当事者が離縁することについて合意し、役所に養子縁組解消(離縁)の届出をした場合には、養子縁組が解消されます(離縁が成立します)。
当事者だけでは話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所に離縁の調停を申し立てます(調停離縁)。
調停の結果、離縁をすることについて当事者が合意できた場合には調停が成立し、その段階で離縁が成立します。
調停による離縁の成立後、当事者は役所に養子縁組解消(離縁)の届出を行います。
調停がまとまらない場合でも、家庭裁判所の判断で離縁を認めることがあります(調停に代わる審判・審判離縁)。
当事者から審判に対する異議申し立てが行われず、審判が確定した場合には、離縁が成立します。
審判による離縁の成立後、当事者は役所に養子縁組解消(離縁)の届出を行います。
調停が成立せず、かつ、調停に代わる審判も行われなかった場合または審判に対する異議申し立てが行われた場合には、裁判(訴訟)で解決することになります(裁判離縁)。
裁判所が離縁を認める判断(判決)をし、その判決が確定した場合には、離縁が成立します。
当事者は裁判(訴訟)による離縁の成立後、役所に養子縁組解消(離縁)の届出を行います。
死後離縁の流れ
死後離縁の手続きの流れは、次のとおりです。
養子縁組解消の種類
普通養子縁組を解消するための手続きには大きく、①協議離縁、②調停離縁、③審判離縁、④裁判離縁、⑤死後離縁、の5種類があります。
以下ではそれぞれについて解説します。
協議離縁
協議離縁とは、養親と養子との話し合い(協議)による離縁をめざす手続きをいいます。
協議離縁が成立するためには、以下の2つの要件を満たす必要があります。
- ① 養親と養子が養子縁組の解消について合意していること
- ② 役所に離縁の届出をすること
養子が15歳未満の場合には、①の合意は養親と離縁後に養子の法定代理人となる人(通常は実父母)との間で行う必要があります。
協議離縁の場合、①の合意だけで養子縁組を解消することはできず、②の届出をしてはじめて離縁(養子縁組の解消)が成立します。
調停離縁
調停離縁とは、家庭裁判所の調停(離縁の調停)を利用して離縁をめざす手続きをいいます。
調停は、家庭裁判所の調停委員会が当事者(養親・養子)の間に入って調整を行い、当事者の合意による解決をめざす手続きです。
調停の中で養親・養子の両方が養子縁組の解消に合意できたときは調停が成立し、調停調書が作られます。
養子縁組は調停の成立によって解消されます(離縁の成立)。
調停の申立てをした人は、調停が成立した日から10日以内に届出をします。
審判離縁(調停に代わる審判)
審判離縁(調停に代わる審判)とは、調停が成立しない場合に裁判所の判断(職権)で養子縁組の解消(離縁)を認めることをいいます。
離縁を認める審判が行われたときは、「審判書」が作成されます。
調停に代わる審判は、もう少しで調停が成立しそうな場合に裁判所の判断で行われ(調停から自動的に移行)、当事者から申立てを行う必要はありません。
例えば、養子または養子が「自分から養子縁組の解消には合意したくないが、裁判所が養子縁組を解消すべきと判断すればそれに従う」という意向を示している場合などには審判が行われます。
また、養子縁組を解消することについては合意しているものの、解決金の支払をめぐってわずかな金額を争っている場合などにも審判が行われることがあります。
審判が行われてから2週間以内に異議の申立てがないときには審判が確定し、離縁が成立します。
調停の申立てをした人は、審判が確定した日から10日以内に届出をします。
裁判離縁
裁判離縁とは、裁判所の判断(判決)で養子縁組を解消する手続きのことをいいます。
調停が成立しなかった場合、または調停に代わる審判が行われたものの異議申立てがされた場合には、家庭裁判所に離縁の訴え(離縁訴訟)を提起することになります。
いきなり裁判離縁の手続きを行うことはできず、まずは調停をする必要があります。
裁判(訴訟)で離縁が認められるためには、以下の3つのうちいずれかにあたることが必要です。
- ① 相手から悪意で遺棄(いき)されたとき(例えば、養親による育児放棄(ネグレクト)の場合、養子による介護放棄の場合など)
- ② 相手の生死が3年以上不明なとき
- ③ 養子縁組を継続しがたい重大な事由があるとき
なお、裁判所は①または②にあたる場合でも、一切の事情を考慮して養子縁組を継続すべきと判断するときは、養子縁組の解消(離縁)を認めないことができます。
相手に対する虐待・重大な侮辱がある場合、相手の金銭を勝手に浪費した場合、重大な犯罪を犯した場合などには、「養子縁組を継続しがたい重大な事由」にあたるとされる可能性が高いといえます。
単に「相手が気に入らない」、「相手に遺産を相続させたくない」といった理由では「養子縁組を継続しがたい重大な事由」にあたらず、裁判離縁は認められません。
裁判所が養子縁組を解消すべきという判断(判決)を下したときには、「判決書」が作成されます。
判決が下された後、2週間以内に控訴がされないときは判決が確定し、離縁が成立します。
離縁の訴え(離縁訴訟)を提起した人は、判決の確定した日から10日以内に届出をします。
なお、訴え(訴訟)が提起された後、判決が出されるより前に、相手が裁判手続きの中で養子縁組の解消を認めた場合(これを「認諾(にんだく)離縁」といいます。)や、当事者が裁判手続きの中で和解して離縁することになった場合(これを「和解離縁」といいます。)にも、離縁が成立します。
死後離縁
死後離縁とは、養親または養子のどちらか一方が亡くなった場合に、家庭裁判所の許可を受けて養子縁組(亡くなった養親または養子との親族関係)を解消することをいいます。
養親または養子のどちらかが亡くなった場合でも、これによって自動的に養子縁組が解消される(終了する)ことはなく、養子縁組によって発生した他の親族との関係やこれに基づく権利義務(相続権や扶養義務)はそのまま残ります。
他の親族との関係を終了させて、お互いに相続や扶養義務が発生することを避けたい場合には、死後離縁を行う必要があります。
なお、死後離婚は養親または養子が亡くなった後で行うものであり、亡くなった養親または養子との間の遺産相続は発生します。
養親または養子が相手に遺産を相続させたくないという場合には、上で解説した協議離縁、調停離縁、審判離縁または裁判離縁のいずれかの方法によって、生前に養子縁組を解消(離縁)する必要があります。
死後離縁が成立するためには、以下の2つの要件を満たすことが必要です。
- ① 家庭裁判所の許可審判を受けること
- ② 役所に死後離縁の届出をすること
①の家庭裁判所の許可を受けただけでは養子縁組を解消することができず、②役所に死後離縁の届出をすることによってはじめて離縁(養子縁組の解消)が成立します。
養子縁組解消(離縁)の届出先
養子縁組解消(離縁)の届出先は、次のいずれかです。
- 届出人(養親、養子または養子の離縁後の法定代理人)の本籍地の市区町村役場
- 養親または養子の所在地(住所または居住地・一時的な滞在地)の市区町村役場
養子縁組解消のために必要な書類一覧
ここでは、養子縁組解消の種類に応じた必要書類の一覧を紹介します。
必要書類は各市区町村や各裁判所によって異なる場合がありますので、事前に各市区町村役場や各裁判所にご確認ください。
また、離縁後も養子縁組中の名字を引き続き使用する場合(ただし、養子縁組から7年を経過している場合に限ります。)には、別途届出(離縁の際に称していた氏を称する届)を提出する必要があります。
協議離縁
協議離縁の必要書類は次のとおりです。
届出時の必要書類 | 備考 |
---|---|
養子離縁届書(証人不要) | 成人2名による証人欄への記入・署名が必要 |
届出人の本人確認書類 | マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど |
※養子が15歳未満の場合、上記に加えて離縁後の法定代理人(届出人)に関する証明書(親権者指定届や後見開始届等)が必要です。
※市区町村によっては、養親・養子それぞれの戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)が必要とされることがあります。
調停離縁
協議離縁の必要書類は次のとおりです。
調停の申立時の必要書類 | 備考 |
---|---|
申立書 | |
養親・養子の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書) | 養子が未成年の場合、養子縁組解消後に親権者となる者の戸籍謄本を提出 |
届出時の必要書類 | 備考 |
---|---|
養子離縁届書 | 証人は不要 |
調停調書の謄本 | 裁判所に交付請求 |
※調停の申立時には上記の必要書類のほか、収入印紙や切手を納付する必要があります。
審判離縁
審判離縁の必要書類は次のとおりです。
届出時の必要書類 | 備考 |
---|---|
養子離縁届書 | 証人は不要 |
審判書の謄本 | 裁判所に交付請求 |
審判の確定証明書 | 裁判所に交付請求 |
裁判離縁
裁判離縁の必要書類は次のとおりです。
訴え提起時の必要書類等 | 備考 |
---|---|
訴状 | |
養親・養子の戸籍謄本 | 養子が未成年の場合、養子縁組解消後に親権者となる者の戸籍謄本を提出 |
届出時の必要書類 | 備考 |
---|---|
訴状 | 証人は不要 |
判決書の謄本 | 和解離縁の場合は和解調書の謄本、認諾離縁の場合は認諾調書の謄本を提出 |
判決の確定証明書 | 裁判所に交付請求 |
※訴え(訴訟)の提起時には上記の必要書類のほか、収入印紙や切手を納付する必要があります。
死後離縁
死後離縁の必要書類は次のとおりです。
審判の申立時の必要書類 | 備考 |
---|---|
申立書 | |
養親・養子の戸籍謄本 |
|
届出時の必要書類 | 備考 |
---|---|
養子離縁届書 | 証人は不要 |
審判書の謄本 | 裁判所に交付請求 |
審判の確定証明書 | 裁判所に交付請求 |
※審判の申立時には上記の必要書類のほか、収入印紙や切手を納付する必要があります。
戸籍謄本の取り方について詳しくは以下のページをご覧ください。
養子縁組解消の届出人
普通養子縁組の場合、原則として養親または養子が届出人となります。
養子が15歳未満のときは、離縁後の法定代理人が届出をする必要があります。
調停離縁・審判離縁・裁判離縁の場合、原則として調停や裁判を申し立てた(提起した)人が届出を行う必要があります。
期間内に届出が行われない場合、調停や審判、訴訟の相手方が届出を行うことができます。
養子縁組を解消するポイント
できるだけ話し合い(協議)での離縁を目指す
養子縁組を解消する場合には、できる限り当事者同士での話し合いによる離縁(協議離縁)を目指すことが大切です。
裁判所を介した手続きでは、段階を踏んだ手続きや裁判所と当事者間の日程調整が必要となることから、解決までに長時間を要するケースが少なくありません。
また、裁判(訴訟)で離縁することができる場合は限定されています。
そのため、まずは協議離縁の成立を目指すことがポイントです。
当事者だけでは話し合いにならない場合には、交渉を弁護士に依頼するのがおすすめです。
専門家に相談する
養子縁組を解消したい場合には、事前に弁護士等の専門家に相談することを強くおすすめします。
一度養子縁組を解消すると、原則としてその後の撤回や取消は認められません。
養子縁組は高度の専門知識と経験が必要となる分野であり、また、トラブルにつながりやすい分野でもあります。
事前に弁護士に相談することで、養子縁組を解消するメリット・デメリット、養子縁組を解消できる見込み、手続きのポイントなどについて、的確なアドバイスをもらえることが期待できます。
弁護士を選ぶ際のポイントとしては、相続に関連して養子縁組を解消したい場合には相続に強い弁護士に、離婚に関連して養子縁組を解消したい場合には離婚に強い弁護士に、それぞれ相談することが大切です。
多くの弁護士事務所では、初回の法律相談を5000円〜1万円前後で利用することができます(初回の法律相談を無料としている場合もあります。)ので、まずはこうした法律相談を活用してみるとよいでしょう。
相続問題を弁護士に相談すべき理由は以下のページをご覧ください。
養子縁組解消にかかる費用
協議離縁の場合の費用
自分で協議離縁の手続きをする場合、基本的に費用はかかりません。
市区町村によっては養親・養子の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)が必要となることがあり、その場合には取得費用として1通あたり450円がかかります。
調停離縁・審判離縁の場合の費用
調停離縁・審判離縁にかかる費用の相場(自分で手続きをする場合)は、4000円〜6000円前後です。
費用の内訳は以下のとおりです。
調停の申立てにかかる費用
- 裁判所の手数料(収入印紙代):1200円
- 切手代(裁判所や相手方との書類のやりとりにかかる郵送費用):1500円前後
- 戸籍謄本:1通あたり: 450円
届出にかかる費用
- 調停調書や審判書の謄本の取得費用(収入印紙代):1ページあたり150円
- 確定証明書の取得費用(審判離縁の場合):1通あたり150円
※調停調書・審判書の謄本、確定証明書を郵送で請求する場合、これらに加えて切手代等がかかります(郵送方法によって金額は異なります)。
裁判離縁の場合の費用
裁判離縁にかかる費用の相場(自分で手続きをする場合)は、2万円前後です。
費用の内訳は以下のとおりです。
訴訟の提起にかかる費用
- 裁判所の手数料(収入印紙代):1万3000円
- 切手代:5000円前後
- 戸籍謄本:1通あたり450円です。
※切手代は各裁判所によって異なります。
届出にかかる費用
- 判決書の謄本の取得費用(収入印紙代):1ページあたり60円
- 確定証明書の取得費用:1通あたり150円/li>
※判決書の謄本や確定証明書を郵送で請求する場合、これらに加えて切手代等がかかります(郵送方法によって金額は異なります)。
死後離縁の場合の費用
死後離縁にかかる費用の相場(自分で手続きをする場合)は、4000円〜6000円前後です。
費用の内訳は以下のとおりです。
審判の申立てにかかる費用
- 裁判所の手数料(収入印紙代):1人あたり800円
※養父、養母の2人と離縁する場合は1600円分の収入印紙が必要です。 - 切手代:2000円前後
※切手代は各裁判所によって異なります。 - 戸籍謄本:1通あたり450円です。
届出にかかる費用
- 審判書の謄本の取得費用(収入印紙代):1ページあたり150円
- 確定証明書の取得費用(審判離縁の場合):1通あたり150円
※審判書の謄本や確定証明書を郵送で請求する場合、これらに加えて切手代等がかかります(郵送方法によって金額は異なります)。
弁護士に依頼する場合の費用
養子縁組解消の手続きを弁護士に依頼する場合の費用は、各弁護士によって異なります。
どの手続きをどの範囲で依頼するかによっても異なりますが、一般的な相場は次のとおりです。
項目 | 着手金 | 報酬金 | 合計 |
---|---|---|---|
協議離縁 | 20万円〜40万円 | 20万円〜40万円 | 20万円〜80万円程度 |
調停離縁(審判離縁) | 30万円〜50万円 | 30万円〜70万円 | 30万円〜120万円 |
裁判離縁 | 40万円〜60万円 | 40万円〜80万円 | 40万円〜140万円 |
死後離縁 | 10万円前後 |
協議離縁・調停離縁(審判離縁)・裁判離縁については、「着手金」と「報酬金(成功報酬)」という2種類の弁護士費用がかかるケースが多いです。
「着手金」とは、離縁が成立するかどうかにかかわらず発生し、弁護士に手続きを依頼する時点で支払う費用です。
「報酬金(成功報酬)」とは、得られた成果に応じて支払う弁護士費用のことをいいます。
養子縁組解消のよくある質問(FAQ)
離婚して連れ子との養子縁組を離縁しないことができる?
配偶者との結婚・離婚と、連れ子との養子縁組・離縁はそれぞれ別の独立した手続きです。
したがって、配偶者との離婚は連れ子との養子縁組にまったく影響しません。
離婚によって配偶者とは親族でなくなりますが、養子である連れ子は養子縁組を解消(離縁)しない限り、親族(親子)のままです。
配偶者と離婚しても連れ子(養子)には遺産を相続させたいというような場合には、養子縁組を解消しないことができます。
養子縁組を解消しても苗字をそのまま使用できる?
ただし、次の要件をいずれも満たす場合には、苗字をそのまま使用することができます。
- ① 養子縁組をした日から離縁成立までに7年を経過していること
- ② 養子縁組の解消(離縁の成立)から3ヶ月以内に届出(離縁の際に称していた氏を称する届)をすること
なお、養親夫婦の両方と養子縁組をした場合で、どちらか一方との養子縁組のみを解消したときは、養親の苗字のまま変わりません(養子縁組前の苗字に戻ることはありません)。
まとめ
- 養子縁組の解消(離縁)とは、養子縁組によってつくられた法律上の親子関係を解消することをいいます。
- 養子縁組の解消(離縁)によって養親・養子間の親子関係がなくなると、①遺産の相続権がなくなる、②扶養義務・扶助義務がなくなる、③養子の名字が元に戻る、などの効果が発生します。
- 養親・養子が生きている間に養子縁組を解消する手続きとしては、(a)協議離縁、(b)調停離縁、(c)審判離縁、(d)裁判離縁、の4種類があります。
まずは当事者の話し合いによる協議離縁を目指し、それが難しい場合には調停離縁を行います。
調停が成立しない場合には、裁判離縁による必要があります。
- 養親または養子の一方が亡くなった後に、相手の親族との関係を終了させたい場合には、死後離縁をすることができます。
- 養子縁組の解消(離縁)の手続きにかかる費用は、手続きの種類や弁護士に依頼するかどうか等によって異なります。
- 養子縁組の解消(離縁)はトラブルになりやすく、一度トラブルになると長期化するというリスクなどがあることから、弁護士に相談されることを強くおすすめします。
相続に関連して養子縁組の解消を検討されている場合には相続に強い弁護士に、離婚に関連して養子縁組の解消を検討されている場合には離婚問題に強い弁護士に、それぞれ相談することが大切です。
- 当事務所では、相続に強い弁護士で構成する相続対策専門チーム、離婚問題に強い弁護士で構成する離婚事件チームを設置しており、養子縁組の解消に関する相談をはじめ、相続問題や離婚問題に関する幅広いご相談をうけたまわっています。
遠方の方にはオンラインでのご相談にも対応していますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。