滅失登記とは、登記されている建物が、取り壊しや焼失などの原因により存在しなくなった場合に行う登記のことです。
建物がなくなった後も、滅失登記をしないままでいると、本来は支払う必要のない固定資産税を課されたり、土地を売るときに支障が生じてしまう可能性があります。
この記事では、滅失登記に必要な書類やかかる費用について詳しく解説していますので、ぜひ参考になさってください。
目次
滅失登記とは?

滅失登記とは、登記されている建物が、取り壊しや焼失などの原因により存在しなくなった場合に行う登記のことです。
その建物の滅失の日から1か月以内に、建物の滅失の登記を申請しなければなりません(不動産登記法57条)。
建物の滅失登記をする義務があるのは、その建物の所有者です。
建物が複数人の共有になっている場合には、共有者のうち一人が単独で申請することもできます。
滅失登記を検討すべきケース
遺産相続で空き家を相続したケース
遺産相続で空き家を相続した場合で、その建物が古く、今後利用する予定がないときは、建物の取壊しを検討するとよいでしょう。
空き家が建っている土地が、誰かから借りているものである場合、その空き家を取り壊さない限り、土地の賃料を支払い続けなければなりません。
建物に加えて、土地もあわせて相続するという場合も考えられます。
例えば、実家(戸建て)の相続はこのパターンです。
しかし、一般的に、土地は更地(さらち・建物が建っていない土地のこと)のほうが評価額が高いといわれています。
そのため、土地を高く売るために空き家を取り壊して更地にするのが一般的です。
なお、古い空き家が何らかの理由で崩れるなどして他人がケガをしてしまった場合、空き家の所有者は損害賠償責任を負う可能性があります(民法717条1項、工作物責任)。
引用:民法|e-GOV法令検索
このようなリスクを負うことにもなりますので、遺産相続で空き家を相続した場合には、取壊しをするかどうかを検討しましょう。
そして、空き家を取り壊した場合には、忘れずに滅失登記の申請を行うようにしましょう。
建物が存在しないケース
実際には建物が存在しないにもかかわらず、登記だけが残っているというケースがあります。
このような場合には、現在の状況と登記とが合致していないということになってしまいます。
登記簿上、その建物の所有者となっている方は、すみやかに滅失登記を行うことを検討すべきです。
ワンポイント:所有不動産記録証明制度がスタート
相続登記の義務化に伴い、令和8年2月2日から所有不動産記録証明制度がスタートしました。
この制度は、亡くなった方(被相続人)が所有権の登記名義人として記録されている不動産について、登記官が一覧的にリスト化した証明書を交付してくれる制度のことです。
これにより、相続人が、被相続人名義の不動産を把握しやすくなることが期待されています。
そして、この制度によって、相続登記の申請に当たっての手続的負担を軽減するとともに、登記漏れを防止するという目的があります。
被相続人が所有していた不動産について、詳しいことが分からないという場合には、この制度を利用するとよいでしょう。
滅失登記は誰がする?
滅失登記をすることができるのは、建物の所有者です。
建物を数人で持っている場合(これを「共有(きょうゆう)」と言います。)、全員で滅失登記の申請を行うというのが原則です。
ただし、実務上は、共有者のうちの一人からでも申請することができるという取扱いがされています。
なお、建物がなくなった時点で所有者が死亡している場合は、相続人のうちの一人が単独で滅失登記の申請をすることができます。
滅失登記をしないとどうなる?
滅失登記をしないまま放置すると、10万円以下の過料(かりょう・行政上のペナルティとして支払うお金のこと)を課せられる可能性があります(不動産登記法164条)。
また、滅失登記をしていないと、実際には建物は存在しないにもかかわらず、固定資産税が課税される場合があります。
固定資産税は毎年1月1日時点における不動産の所有者に課される税です。
地方自治体が、建物が取り壊されたという事実を把握する機会がなかった場合には、引き続き、建物があるという前提で固定資産税が課されてしまうことがあります。
また、建物が建っていた土地を売却する場合や、新たに建物を再建築しようとする場合に、建物の登記が残っていると、土地の売却や建物の再建築に支障をきたす可能性があります。
滅失登記の手続きの流れ
滅失登記の手続きの流れは、次のとおりです。
なお、滅失登記の申請を行う場合には、建物の取り違えを防ぐためにも、必ず現地を確認するようにしましょう。

滅失登記の必要書類
建物の登記事項証明書
滅失登記の申請書には、その対象となる建物の情報を正確に記載する必要があります。
手元にあるのが古い資料である場合、現在、法務局で登記されている情報とは内容が違っていることがあります。
そうすると、滅失登記の申請をした後に補正をしなければなりません。
二度手間を防ぐためにも、最新の登記事項証明書を取得することをおすすめします。
滅失登記の申請書
滅失登記の申請には「申請書」を作成する必要があります。
滅失登記申請書のサンプル
申請書のサンプルは以下のとおりですので、参考になさってください。

滅失登記の申請書のダウンロード
滅失登記申請書のサンプルはこちらからダウンロードできます。
滅失登記申請書の書き方
建物の滅失登記の申請書には、次の事項を記載します。
登記の目的は、取り壊しによる建物の滅失の場合、「建物滅失」と記載します。
添付情報として「建物滅失証明書」と記載します。
建物の取り壊しによる滅失の場合は、建物の取り壊しをした工事請負人が作成する「建物滅失証明書」を提出する必要があります。
そして、この滅失証明書のほかに、工事人の「印鑑証明書」もあわせて提出する必要があります。
なお、建物滅失証明書を提出することができない場合には、別途、「上申書」を作成して提出することになりますので、添付情報欄には「上申書」と記載しましょう。
建物が火事などで焼失した場合には、消防署が発行する「り災証明書」を添付します。
また、滅失登記の申請を土地家屋調査士に依頼する場合には「委任状」と記載します。
登記申請書を法務局の窓口に提出する場合にはその提出日を、郵送で提出する場合には申請書を作成した日付を記載しましょう。
提出先となる管轄(かんかつ)の登記所の名称を記載します。
滅失登記の申請をどこの法務局にすればよいのかというと、建物の所在地によって決まります。
法務局は全国各地にありますが、それぞれの法務局が担当するエリアというのが決まっています。
これを「管轄(かんかつ)」といい、簡単にいうと、法務局のような公的機関がその権限に基づいて取り仕切っている区域や範囲をいいます。
例えば、不動産の所在地が「東京都千代田区」の場合には「東京法務局」が、「東京都渋谷区」の場合には「東京法務局渋谷出張所」が管轄の法務局となります。
あくまでも不動産がどこにあるのかで決まりますので、申請する人の住所などは考慮されません。
管轄法務局を調べるには、不動産の正確な所在地を確認する必要があります。
不動産の正確な所在地を知るためには「登記事項証明書」や「固定資産税納税通知書課税明細書」を確認すると良いでしょう。
法務局のホームページには「管轄のご案内」が掲載されており、どこが管轄の法務局になるのかを確認することができます。
法務局の管轄を知りたい方はこちらからご確認ください。
引用:管轄のご案内|法務局
滅失登記を申請する人の氏名または名称と住所を正確に記入します。
ちなみに、登記簿上の所有者の住所が、現在の住所と一致していない場合、登記簿上の住所から現在の住所まで、どう変わったかを証明する書類が必要になります。
例えば、住民票の写しや戸籍の附票の写しです。
その場合、申請書に記載する住所は、登記簿上の住所ではなく、現在の住所になります。
なお、相続人が申請人となる場合には、以下の例のとおり被相続人の氏名を記載し、相続人の住所と氏名を記載してください。
その場合、相続があったことを証明するための資料として、戸籍謄本等及び相続人の住民票の写しを添付する必要があります。

申請人本人ではなく、代理人に登記申請をしてもらう場合には、その代理人の氏名または名称と住所を正確に記入します。
法務局からの連絡がくるのは、だいたい平日の昼間の時間帯です。
自宅を留守にすることが多い場合は、携帯電話の番号を記入するようにしましょう。
滅失した建物について、所在地、家屋番号、種類、構造、床面積などを正確に記入します。
登記事項証明書を見ながら、記載されているとおりに記入してください。
建物が滅失した年月日と滅失の原因を記載します。
取り壊しの場合には「令和〇年〇月〇日取壊し」、火災により焼失した場合には「令和〇年〇月〇日焼失」と記載します。
なお、滅失の年月日が分からない場合には「昭和年月日不詳取壊し」、「平成2年5月日不詳取壊し」、「年月日不詳取壊し」のように記載します。
建物滅失証明書(取り壊し証明書)
建物滅失証明書とは、建物を取り壊した工事人が作成する「取り壊し証明書」のことです。
この証明書には、工事人の「印鑑証明書」を添付する必要があります。
また、工事人が会社の場合は、会社の代表者の資格を証する情報(通常は会社の登記事項証明書)と印鑑証明書を添付する必要があります。
ただし、工事人が会社の場合、その会社の「会社法人等番号」を申請書に記載していれば、登記事項証明書と印鑑証明書の添付を省略することができます。
なお、取り壊しではなく焼失の場合には、消防署が発行する「り災証明書」を添付します。
建物滅失証明書(取り壊し証明書)のサンプル
建物滅失証明書のサンプルは以下のとおりです。

状況に応じて必要となる書類
相続を証明するための書類
亡くなった方(被相続人)名義の建物が滅失した場合には、相続登記をすることなく、滅失登記の申請をすることができます。
また、相続人が複数名いる場合、そのうちの一人から登記申請をすることができます。
その場合には、相続が発生したこと、申請人が相続人であることを証明するために、次の書類を添付しなければなりません。
戸籍関係書類
- ① 被相続人の死亡の事実が記載されている戸籍事項証明書
- ② 被相続人の住民票の写し(本籍の記載があるもの)または戸籍の附票の写し(本籍・筆頭者の記載があるもの)
- ③ 申請人が被相続人の妻または夫、子どもである場合には、申請人の現在の戸籍事項証明書
(※ただし、上記①の戸籍事項証明書に申請人となる相続人が記載されている場合には、重ねて同じものを提出する必要はありません。) - ④申請人となる相続人の住民票の写し(本籍の記載があるもの)または戸籍の附票の写し(本籍・筆頭者の記載があるもの)
法定相続情報一覧図の写し
上記の戸籍関係書類に代えて、法定相続情報一覧図の写し(申請人となる相続人の住所が記載されているもの)を提出することもできます。
もし、法定相続情報一覧図に申請人となる相続人の住所が記載されていない場合には、上記戸籍関係書類のうち④の住民票もしくは戸籍の附票の写しが必要になります。
法定相続情報一覧図について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考になさってください。
滅失登記の委任状
滅失登記を代理人に依頼して申請する場合には、委任状を提出する必要があります。
なお、滅失登記の申請を、その業務として代理申請できるのは「土地家屋調査士」と「弁護士」のみです。
登記の専門家といえば司法書士のイメージですが、司法書士は建物の滅失登記の代理申請を業務として行うことはできません。
滅失登記の委任状のサンプル
委任状の書式として、特に決められたものはありませんが、サンプルは以下のとおりです。
記載が必要な事項については、サンプルを参考になさってください。

滅失登記の委任状のダウンロード
滅失登記の委任状のサンプルはこちらからダウンロードできます。
滅失登記の上申書
上申書を添付する必要があるのは、「建物滅失証明書」がない場合です。
建物を取り壊したのがだいぶ前で、取り壊しの工事をしたのが誰なのかが分からない、あるいは取り壊しをした会社が存在しないなどのケースが考えられます。
上申書には、建物滅失証明書を提出することができない事情を、できるだけ詳しく記載します。
滅失登記の上申書のサンプル
上申書のサンプルは以下のとおりですので、参考になさってください。
滅失登記の上申書のダウンロード
滅失登記の上申書のサンプルはこちらからダウンロードできます。
滅失登記にかかる費用
実費について
建物の登記事項証明書の取得手数料
建物の登記事項証明書は、1通331〜600円で取得することができます。
取得する書類の種類や取得方法によって金額が変動しますが、高くても1通600円です。
取得方法は、オンライン申請、窓口申請、郵送申請の3種類があります。
郵便料金もしくは交通費
滅失登記の申請書類を郵送で法務局に提出する場合には、郵便料金がかかります。
また、登記が完了したら発行される「登記完了証」の郵送を希望する場合には、その分の郵便料金が必要となります。
申請書類の提出や登記完了証の受け取りを、直接法務局に出向いて行う場合には、法務局までの交通費が必要となります。
専門家に依頼する場合の費用
滅失登記の代理申請を業務として行うことができる専門家は土地家屋調査士になります。
土地家屋調査士に滅失登記の代理申請を依頼した場合の報酬は、5万円前後となるのが一般的です。
ただし、具体的な事案の難易度や地域によって前後することがあります。
滅失登記は自分でできる?
建物の滅失登記を自分ですることは可能です。
滅失登記の申請は、一般的にはそこまで難しいものではありませんので、必要な書類の作成や収集さえできれば、ご自身で行うことも可能といえるでしょう。
もし、どうしても分からないことがある場合には、次の項目で紹介する窓口に、一度相談してみるとよいでしょう。
また、各地の法務局でも、登記に関する相談を受け付けています。
ただし、多くの法務局では、相談は完全予約制となっていますので、事前に電話で問い合わせることをおすすめします。
滅失登記の相談窓口
相続全般は相続に強い弁護士
建物を相続したけれど、その後の手続きをどうしたらよいか悩んでいる場合には、相続に強い弁護士に相談されることをおすすめします。
例えば、相続した建物の取り壊しを検討している場合や、誰が建物を相続するのかについて相続人どうしの話し合いが進まないような場合です。
このような場合には、まずは相続問題の全般について対応することのできる弁護士に相談するとよいでしょう。
土地家屋調査士
弁護士のほか、滅失登記の代理申請を業務として行えるのは、土地家屋調査士のみです。
土地家屋調査士に滅失登記の申請を依頼した場合には、家屋の事前調査や現地確認、登記申請及び登記完了証の受領まで、すべてを代わりに行ってもらうことができます。
その分、費用はかかりますが、できるだけ早く確実に滅失登記を行いたいという場合には、お住まいの地域の土地家屋調査士に相談するとよいでしょう。
また、弁護士も滅失登記を行うことは法律上可能です。
しかし、登記業務を扱う弁護士は少ないため、現実的には土地家屋調査士にお願いすることになるでしょう。
登記だけなら司法書士?
不動産の登記といえば司法書士をイメージしがちですが、実は、司法書士は滅失登記の代理申請を業務として行うことはできません。
仮に、滅失登記について司法書士に相談したとしても、依頼を受けてもらうことはできませんので注意が必要です。
なお、滅失登記以外にも、司法書士が代理できる登記申請を併せて行う場合には、まとめて司法書士に相談することがあるかもしれません。
そのような場合には、滅失登記の申請については、司法書士が、信頼できる土地家屋調査士を紹介してくれることも多いでしょう。
滅失登記についてのQ&A
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滅失登記は解体業者がやってくれないのですか?
あくまでも、滅失登記を行う義務を負っているのは建物の所有者あるいはその相続人ということになります。
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滅失登記はどのタイミングでやる?
したがって、建物が取り壊され、あるいは焼失した場合には、すみやかに滅失登記の申請を行う必要があります。
滅失登記の申請を怠った場合には、10万円以下の過料が課される可能性があるので注意が必要です(不動産登記法164条参照)。
まとめ
この記事では、建物の滅失登記についての必要書類や費用、注意点などについて解説しました。
建物がなくなったにもかかわらず、滅失登記をせずに放置すると、本来支払う必要のない固定資産税の支払いを求められる可能性や、過料を課せられるリスクがあります。
また、土地の売却や建物の再建築を行おうとする際に、建物の登記が残ったままになっていると、売却や再建築に支障をきたす可能性もあるといえます。
建物はずいぶん前になくなってしまったけれど、まだ滅失登記をしていないという方や、相続で空き家を引き継いだけれど、この先どうしたらよいかわからないという方は、早めに専門家に相談されることをおすすめします。
デイライト法律事務所には相続専門のチームがあり、相続問題全般についてご相談を受けることができます。
上記のようなケースでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。










