養子縁組の解消方法とは?拒否時の対処法を弁護士が解説

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

養子縁組の解消を完全ガイド

養子縁組は、養親・養子双方が合意すれば「協議離縁」の手続きにより解消できます。

合意が得られない場合も、調停・審判・裁判といった家庭裁判所の手続きを通じて解消できる可能性があります。

「離婚に伴い、元配偶者の連れ子との縁を切りたい」

「養親との関係が悪化し、これ以上親子関係を続けられない」

「亡くなった夫(妻)の親族との親族関係を終了させたい」

このようなお悩みをお持ちの方もいらっしゃるでしょう。

この記事では、養子縁組の解消(離縁)をするための具体的な方法や手続きの流れ、相手に拒否された場合の対処法、費用やリスクなどについて、相続にくわしい弁護士がわかりやすく解説します。

養子縁組の解消とは?離婚しても自動では切れないリスク

そもそも養子縁組とは?

養子縁組とは、直接的な血のつながりのない者同士の間に「法律上の親子関係」をつくる制度のことをいいます。

養子縁組で親になる人を「養親(ようしん)」、子になる人を「養子(ようし)」といいます。

養子縁組には、養子縁組後も実の親(実親)との親子関係が続く「普通養子縁組」と実親との親子関係が終了する「特別養子縁組」の2つがあります。

いずれにあたるかによって養子縁組の成立・終了の要件や手続きが異なります。

この記事では、一般に行われることの多い「普通養子縁組」の解消を中心に解説します。

 

養子縁組解消の法的な意味

養子縁組の解消(離縁)とは?

養子縁組の解消とは、養子縁組によってつくられた「法律上の親子関係」を終了させる手続きのことをいいます。

養子縁組の解消のことを「離縁(りえん)」ともいいます。

養子縁組を解消すると、養子縁組によって発生したさまざまな権利や義務が消滅します。

 

離縁しないと続く扶養義務と相続権

養子縁組が成立して親子関係が発生すると、養親と養子の間にはお互いに遺産の相続権や扶養義務などの権利・義務が発生します。

例えば、養親が亡くなった場合、養子には遺産を相続する権利があります。

また、結婚した相手に連れ子がいるケースでは、その連れ子と養子縁組をすることが多いです。

この場合、養親は養子に対して、扶養義務があります。

すなわち、仮に相手と離婚したとしても、養子縁組を解消しない限り、養子に対して養育費を支払い続ける義務があるのです。

 

 

養子縁組を解消するとどうなる?メリット・デメリット

養子縁組を解消(離縁)すると、法律上の親子関係が終了し、当事者の権利や義務に大きな変化が生じます。

ここでは、養子縁組を解消するメリットとデメリットを簡潔に解説します。

 

養子縁組を解消するメリット

養子縁組を解消することで、次のようなメリットがあります。

養子縁組を解消するメリット

 

①養親・養子間の扶養義務や経済的な負担がなくなる

法律上の親子関係が終了するため、互いの生活を保障する扶養義務が消滅します。

これにより、将来的な介護や生活費の援助といった経済的・精神的な負担から解放されます。

 

②将来、実子との間で相続トラブルが起きる可能性を未然に防げる

養親に実子がいる場合、養子が相続人から外れることで、遺産分割をめぐる実子と養子間のトラブル(争族)を回避しやすくなります。

 

③法律上の親子関係を整理し、気持ちの区切りをつけられる

戸籍上のつながりがなくなることで、お互いの関係性を明確にし、精神的なリセットを図ることができます。

 

養子縁組を解消するデメリット

一方で、養子縁組を解消すると次のようなデメリットもあります。

養子縁組を解消するデメリット

 

①離縁すると相続権を失う

養子は養親の法定相続人ではなくなるため、原則として養親の遺産を受け取る権利をすべて失います。

 

②経済的支援がなくなる

扶養義務が消滅することの裏返しとして、これまで受けていた生活費や学費など、養親からの金銭的な援助を求める法的根拠がなくなります。

 

③相続税負担が増える可能性がある

養親の相続が発生した際、法定相続人の数が減ることで「相続税の基礎控除額」が下がります。

結果として、他の相続人(実子など)の相続税負担が増加するケースがあります。

 

④合意できない場合はトラブル・裁判に発展するリスクがある

双方が離縁に合意(協議離縁)すれば手続きはスムーズですが、どちらかが拒否した場合は家庭裁判所での調停や裁判(裁判離縁)へ発展し、解決までに時間と費用、精神的労力がかかります。

 

 

養子縁組の解消が認められるケース

普通養子縁組で解消が認められるケース

当事者(養親と養子)が養子縁組の解消に合意しているケースでは、普通養子縁組を解消することができます。

当事者(養親と養子)のどちらか一方が養子縁組の解消に合意していないケースでも、家庭裁判所が解消を認める判断(審判・判決)をした場合には、普通養子縁組を解消することができます。

ただし、裁判(判決)で養子縁組の解消が認められるためには、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

  1. ① 相手から悪意で遺棄されたこと
  2. ② 相手が3年以上の生死不明なこと
  3. ③ 養子縁組を継続しがたい重大な事由があること

なお、死後離縁の場合には、基本的には養子縁組の解消が認められるようです。

 

特別養子縁組で解消が認められるケース

特別養子縁組は、実の父母が子どもを育てることが難しい場合に、子どもの利益・福祉のために行われるものです。

したがって、原則として特別養子縁組の解消(離縁)は認められません。

解消(離縁)が認められるのは、以下の3つの要件をいずれも満たす場合に限られます。

  1. ① 養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があること
  2. ② 実父母が相当の監護をできること
  3. ③ 養子の利益のために特に必要があると認められること

また、特別養子縁組は当事者の合意(協議や調停)で解消することができず、家庭裁判所の審判によってのみ解消することができます。

 

 

養子縁組の解消が認められないケース

当事者(養親と養子)のどちらか一方が養子縁組の解消について合意しておらず、かつ、裁判所が養子縁組の解消を認めないケースでは、普通養子縁組を解消することができません。

①相手から悪意で遺棄されたこと、②相手が3年以上の生死不明なこと、③養子縁組を継続しがたい重大な事由があること、のどの要件にもあてはまらない場合には、裁判(訴訟)による養子縁組の解消は認められません。

死後離縁の場合、権利の濫用にあたると判断されるようなケースでは解消が認められない可能性があります。

このように養子縁組の解消が認められにくいケースでも、事情によっては別の主張の仕方や交渉の余地が残っている場合があります。

まずは弁護士に相談し、ご自身の状況で解消の可能性があるかどうかを確認することをおすすめします。

 

 

養子縁組の解消を拒否されたら?年齢別の進め方と注意点

養子縁組の解消を拒否された場合、どのように対処すればよいのでしょうか。

ここでは、相手の年齢別の進め方について、解説いたします。

 

相手が15歳未満か15歳以上かで交渉相手が変わる

離縁は、相手が15歳未満か15歳以上かで協議する相手が変わります。

すなわち、養子が15歳以上の場合は、養子本人との協議で離縁できます。

しかし、養子が15歳未満の場合、離縁は、離縁後にその法定代理人となる人(実親)との協議が必要となるのです(民法811条)。

参考:民法|e-GOV法令検索

養子縁組の解消の交渉相手は年齢で変わる

 

話し合いがまとまらない場合は離縁調停の申し立て

養子縁組の解消を拒否された場合は、離縁調停という家庭裁判所での手続きが必要となります。

離縁調停とは、養子縁組の解消についての話し合いのことです。

あくまで話し合いでの解決を目指す手続きですので、相手が離縁に応じない場合、不成立となって終了します。

 

ワンポイント:離縁審判はあまり利用されない

法律上、離縁調停が不成立の場合、離縁の審判という手続きがあります(家事事件手続法284条)。

参考:家事事件手続法|e-GOV法令検索

審判というのは、話し合いではなく、裁判所が離縁を認めるか認めないかの決定を出す手続きです。

審判手続に移行するか否かは、裁判所の裁量となっています。

審判手続きに移行する場合、別に訴えを起こす必要はありません。

しかし、筆者の経験上、調停が不成立となった場合、審判手続きに移行することはほとんどありません。

したがって、調停が不成立となった場合、次の離縁訴訟を起こす必要があると考えられます。

 

離縁調停が不成立の場合は離縁訴訟を起こす

離縁訴訟とは、裁判所が当事者の言い分を聞き、最終的に離縁を認めるか認めないかの判断(判決)を示す手続きです。

裁判手続ですので、通常は弁護士に依頼されることが多いです。

なお、もし、離縁が認められなかった場合、高等裁判所に対して控訴することができます。

 

勝手な届出は犯罪?文書偽造罪の成立

養子縁組の解消においては、相手に拒否された場合、相手に無断で離縁届を出してしまいたい、と考える方もいらっしゃるでしょう。

しかし、離縁届を相手方に無断で提出した場合には、電磁的公正証書原本不実記録罪(刑法157条1項)、有印私文書偽造罪(刑法159条1項)、偽造有印私文書行使罪(刑法161条1項)等の罪に問われる可能性があります。

参考:刑法|e-GOV法令検索

したがって、勝手な届け出は絶対にやめましょう。

 

 

養子縁組を解消後の「戸籍」「名字」「親子関係」はどうなる?

養子の戸籍はどうなる?

養子縁組を解消した場合、養子は養親の戸籍から抜けます(これを「除籍(じょせき)」といいます)。

養親側の戸籍謄本の「身分事項」欄には「養子離縁」に関する内容が記載されます。

養親の戸籍を抜けた養子は、①元の戸籍に戻る、または②新しい養子のみの戸籍を作る、のいずれかを選択することになります。

戸籍謄本についてくわしくは以下のページをご覧ください。

 

基本は旧姓に戻るが7年以上の縁組でそのままも可能

養子縁組を解消した場合、養子は基本的に養子縁組前の名字に戻ります。

ただし、養親夫婦の両方と普通養子縁組をした場合で、どちらか一方との養子縁組のみを解消したときは、養親の名字のまま変わりません。

また、普通養子縁組については、養子縁組の日から7年を経過している場合、養子縁組の解消から3ヶ月以内に届出をすることによってそのまま養子縁組中の名字を名乗ることができます。

参考:民法816条|e-GOV法令検索

 

養子縁組を解消したら親族関係はどうなる?

養子縁組を解消すると、養子と養親の親子関係は終了します。

これに加えて、養子側(養子、養子の配偶者、養子の子・孫・ひ孫とその配偶者)と養親側(養親、養親の血族(父母、実子、実子の子(孫)、兄弟姉妹等))との間の親族関係も終了します。

したがって、養子縁組の解消後は、養子側と養親側の間の親族としての権利義務(相続権や扶養義務など)もなくなります。

 

 

養親の親族と縁を切りたい|死後離縁という選択

死後離縁とは?

死後離縁とは

死後離縁とは、養親(又は養子)が死亡した後に、離縁をするための手続きのことを言います。

養親と養子が生存しているのであれば、協議で離縁が可能です。

一方が死亡した場合、協議ができないため、家庭裁判所の許可が必要となります(民法811条6項)。

 

養親の死後、養親との親族の関係を断つメリット

例えば、養子が死後離縁を行うメリットとして、養親側の親族との扶養義務を無くせるという点が挙げられます。

また、養親の親族との折り合いが悪いケースでは、関係を断ち切ることで、不和やトラブルの発生を防止できるというメリットがあります。

 

死後離縁の注意点:既に発生した「相続権」は消えない

死後離縁をしても、既に発生している相続権はなくなりません。

養親の死亡によってすでに相続が開始されているため、その後に離縁の手続きをしても、過去の相続には影響がないのです。

「死後離縁をすると相続権がなくなるのでは」と心配される方もいますが、その心配は不要です。

 

 

養子縁組解消を決断する前に確認すべき4つのチェックポイント

養子縁組解消を決断する前に確認すべき4つのチェックポイント

①離縁すると相続権を失う影響を理解しているか

養子縁組を解消することによって、養親・養子はお互いに遺産を相続することができなくなります。

養子縁組の解消(離縁)は原則として撤回することができないため、慎重に検討することが大切です。

養子縁組と相続についてくわしくは以下のページをご覧ください。

 

②経済的支援がなくなっても問題ないか

養子縁組を解消して親族関係がなくなると、養親・養子はお互いに経済的な援助を受けられなくなります。

養子縁組を解消する場合には、相手から経済的な援助を受けられなくなっても困らない状況にあるかを事前に検討することが大切です。

 

③相続税負担の増加を把握しているか

養子縁組を解消することによって相続人の数が減る場合(特に養親が亡くなって子どもが遺産を相続する場合)、相続税の負担が増える可能性があります。

遺産を相続した場合には、相続した遺産の金額に応じて相続税を負担する可能性がありますが、相続税には相続税のかからない一定の上限金額(非課税枠)が設定されています。

この非課税枠は相続人の人数に応じて計算されるため、養子縁組の解消によって相続人の人数が減ることによって非課税となる金額が減り、相続税の負担が増える可能性があります。

相続税についてくわしくは以下のページをご覧ください。

 

④合意できない場合のトラブル・裁判リスクを想定しているか

養親・養子のどちらか一方が養子縁組の解消に合意しない場合にはトラブルに発展し、最終的には裁判(訴訟)で解決しなければならないリスクがあります。

裁判になった場合、解決までには多くの時間と労力がかかるのが通常です。

また、養子縁組の解消にともなって慰謝料等の金銭の支払いを求められる可能性もあります。

 

 

養子縁組の解消を失敗させないための2つの重要ポイント

できるだけ話し合い(協議)での離縁を目指す

養子縁組を解消する場合には、できる限り当事者同士での話し合いによる離縁(協議離縁)を目指すことが大切です。

裁判所を介した手続きでは、段階を踏んだ手続きや裁判所と当事者間の日程調整が必要となることから、解決までに長時間を要するケースが少なくありません。

また、裁判(訴訟)で離縁することができる場合は限定されています。

そのため、まずは協議離縁の成立を目指すことがポイントです。

当事者だけでは話し合いにならない場合には、交渉を弁護士に依頼するのがおすすめです。

 

専門家に相談する

養子縁組を解消したい場合には、事前に弁護士等の専門家に相談することを強くおすすめします。

一度養子縁組を解消すると、原則としてその後の撤回や取消は認められません。

養子縁組は高度の専門知識と経験が必要となる分野であり、また、トラブルにつながりやすい分野でもあります。

事前に弁護士に相談することで、養子縁組を解消するメリット・デメリット、養子縁組を解消できる見込み、手続きのポイントなどについて、的確なアドバイスをもらえることが期待できます。

弁護士を選ぶ際のポイントとしては、相続に関連して養子縁組を解消したい場合には相続に強い弁護士に、離婚に関連して養子縁組を解消したい場合には離婚に強い弁護士に、それぞれ相談することが大切です。

多くの弁護士事務所では、初回の法律相談を5000円〜1万円前後で利用することができます(初回の法律相談を無料としている場合もあります。)ので、まずはこうした法律相談を活用してみるとよいでしょう。

相続問題を弁護士に相談すべき理由は以下のページをご覧ください。

 

 

養子縁組解消の手続き

養子縁組解消の流れ

普通養子縁組解消の流れ

普通養子縁組を解消するための手続きの流れは、次のとおりです。

普通養子縁組解消の流れ図

まずは当事者(養親・養子)間での話し合いをして、合意による養子縁組の解消を目指します(協議離縁)。

当事者が離縁することについて合意し、役所に養子縁組解消(離縁)の届出をした場合には、養子縁組が解消されます(離縁が成立します)。

当事者だけでは話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所に離縁の調停を申し立てます(調停離縁)。

調停の結果、離縁をすることについて当事者が合意できた場合には調停が成立し、その段階で離縁が成立します。

調停による離縁の成立後、当事者は役所に養子縁組解消(離縁)の届出を行います。

調停がまとまらない場合でも、家庭裁判所の判断で離縁を認めることがあります(調停に代わる審判・審判離縁)。

当事者から審判に対する異議申し立てが行われず、審判が確定した場合には、離縁が成立します。

審判による離縁の成立後、当事者は役所に養子縁組解消(離縁)の届出を行います。

調停が成立せず、かつ、調停に代わる審判も行われなかった場合または審判に対する異議申し立てが行われた場合には、裁判(訴訟)で解決することになります(裁判離縁)。

裁判所が離縁を認める判断(判決)をし、その判決が確定した場合には、離縁が成立します。

当事者は裁判(訴訟)による離縁の成立後、役所に養子縁組解消(離縁)の届出を行います。

 

死後離縁の流れ

死後離縁の手続きの流れは、次のとおりです。

死後離縁の手続きの流れ

 

養子縁組解消の種類

普通養子縁組を解消するための手続きには大きく、①協議離縁、②調停離縁、③審判離縁、④裁判離縁、⑤死後離縁、の5種類があります。

以下ではそれぞれについて解説します。

 

協議離縁

協議離縁とは、養親と養子との話し合い(協議)による離縁をめざす手続きをいいます。

協議離縁が成立するためには、以下の2つの要件を満たす必要があります。

  1. ① 養親と養子が養子縁組の解消について合意していること
  2. ② 役所に離縁の届出をすること

養子が15歳未満の場合には、①の合意は養親と離縁後に養子の法定代理人となる人(通常は実父母)との間で行う必要があります。

協議離縁の場合、①の合意だけで養子縁組を解消することはできず、②の届出をしてはじめて離縁(養子縁組の解消)が成立します。

 

調停離縁

調停離縁とは、家庭裁判所の調停(離縁の調停)を利用して離縁をめざす手続きをいいます。

調停は、家庭裁判所の調停委員会が当事者(養親・養子)の間に入って調整を行い、当事者の合意による解決をめざす手続きです。

調停の中で養親・養子の両方が養子縁組の解消に合意できたときは調停が成立し、調停調書が作られます。

養子縁組は調停の成立によって解消されます(離縁の成立)。

調停の申立てをした人は、調停が成立した日から10日以内に届出をします。

 

審判離縁(調停に代わる審判)

審判離縁(調停に代わる審判)とは、調停が成立しない場合に裁判所の判断(職権)で養子縁組の解消(離縁)を認めることをいいます。

離縁を認める審判が行われたときは、「審判書」が作成されます。

調停に代わる審判は、もう少しで調停が成立しそうな場合に裁判所の判断で行われ(調停から自動的に移行)、当事者から申立てを行う必要はありません。

例えば、養親または養子が「自分から養子縁組の解消には合意したくないが、裁判所が養子縁組を解消すべきと判断すればそれに従う」という意向を示している場合などには審判が行われます。

また、養子縁組を解消することについては合意しているものの、解決金の支払をめぐってわずかな金額を争っている場合などにも審判が行われることがあります。

審判が行われてから2週間以内に異議の申立てがないときには審判が確定し、離縁が成立します。

調停の申立てをした人は、審判が確定した日から10日以内に届出をします。

 

裁判離縁

裁判離縁とは、裁判所の判断(判決)で養子縁組を解消する手続きのことをいいます。

調停が成立しなかった場合、または調停に代わる審判が行われたものの異議申立てがされた場合には、家庭裁判所に離縁の訴え(離縁訴訟)を提起することになります。

いきなり裁判離縁の手続きを行うことはできず、まずは調停をする必要があります。

裁判(訴訟)で離縁が認められるためには、以下の3つのうちいずれかにあたることが必要です。

  1. ① 相手から悪意で遺棄(いき)されたとき(例えば、養親による育児放棄(ネグレクト)の場合、養子による介護放棄の場合など)
  2. ② 相手の生死が3年以上不明なとき
  3. ③ 養子縁組を継続しがたい重大な事由があるとき

なお、裁判所は①または②にあたる場合でも、一切の事情を考慮して養子縁組を継続すべきと判断するときは、養子縁組の解消(離縁)を認めないことができます。

相手に対する虐待・重大な侮辱がある場合、相手の金銭を勝手に浪費した場合、重大な犯罪を犯した場合などには、「養子縁組を継続しがたい重大な事由」にあたるとされる可能性が高いといえます。

単に「相手が気に入らない」、「相手に遺産を相続させたくない」といった理由では「養子縁組を継続しがたい重大な事由」にあたらず、裁判離縁は認められません。

裁判所が養子縁組を解消すべきという判断(判決)を下したときには、「判決書」が作成されます。

判決が下された後、2週間以内に控訴がされないときは判決が確定し、離縁が成立します。

離縁の訴え(離縁訴訟)を提起した人は、判決の確定した日から10日以内に届出をします。

なお、訴え(訴訟)が提起された後、判決が出されるより前に、相手が裁判手続きの中で養子縁組の解消を認めた場合(これを「認諾(にんだく)離縁」といいます。)や、当事者が裁判手続きの中で和解して離縁することになった場合(これを「和解離縁」といいます。)にも、離縁が成立します。

 

死後離縁

死後離縁が成立するためには、以下の2つの要件を満たすことが必要です。

  1. ① 家庭裁判所の許可審判を受けること
  2. ② 役所に死後離縁の届出をすること

①の家庭裁判所の許可を受けただけでは養子縁組を解消することができず、②役所に死後離縁の届出をすることによってはじめて離縁(養子縁組の解消)が成立します。

 

養子縁組解消(離縁)の届出先

養子縁組解消(離縁)の届出先は、次のいずれかです。

  • 届出人(養親、養子または養子の離縁後の法定代理人)の本籍地の市区町村役場
  • 養親または養子の所在地(住所または居住地・一時的な滞在地)の市区町村役場

 

養子縁組解消のために必要な書類一覧

ここでは、養子縁組解消の種類に応じた必要書類の一覧を紹介します。

必要書類は各市区町村や各裁判所によって異なる場合がありますので、事前に各市区町村役場や各裁判所にご確認ください。

また、離縁後も養子縁組中の名字を引き続き使用する場合(ただし、養子縁組から7年を経過している場合に限ります。)には、別途届出(離縁の際に称していた氏を称する届)を提出する必要があります。

 

協議離縁

協議離縁の必要書類は次のとおりです。

届出時の必要書類 備考
養子離縁届書 成人2名による証人欄への記入・署名が必要
届出人の本人確認書類 マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど

※養子が15歳未満の場合、上記に加えて離縁後の法定代理人(届出人)に関する証明書(親権者指定届や後見開始届等)が必要です。

※市区町村によっては、養親・養子それぞれの戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)が必要とされることがあります。

 

調停離縁

調停離縁の必要書類は次のとおりです。

調停の申立時の必要書類 備考
申立書 −
養親・養子の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書) 養子が未成年の場合、養子縁組解消後に親権者となる者の戸籍謄本を提出

 

届出時の必要書類 備考
養子離縁届書 証人は不要
調停調書の謄本 裁判所に交付請求

※調停の申立時には上記の必要書類のほか、収入印紙や切手を納付する必要があります。

 

審判離縁

審判離縁の必要書類は次のとおりです。

届出時の必要書類 備考
養子離縁届書 証人は不要
審判書の謄本 裁判所に交付請求
 審判の確定証明書 裁判所に交付請求

 

裁判離縁

裁判離縁の必要書類は次のとおりです。

訴え提起時の必要書類等 備考
訴状 –
養親・養子の戸籍謄本 養子が未成年の場合、養子縁組解消後に親権者となる者の戸籍謄本を提出

 

届出時の必要書類 備考
養子離縁届書 証人は不要
判決書の謄本 和解離縁の場合は和解調書の謄本、認諾離縁の場合は認諾調書の謄本を提出
判決の確定証明書 裁判所に交付請求

※訴え(訴訟)の提起時には上記の必要書類のほか、収入印紙や切手を納付する必要があります。

 

死後離縁

死後離縁の必要書類は次のとおりです。

審判の申立時の必要書類 備考
申立書 –
養親・養子の戸籍謄本
  • 養子が未成年の場合は、養子縁組解消後に親権者となる者の戸籍謄本を提出
  • 死亡している養親または養子の戸籍は、死亡の記載のあるものが必要

 

届出時の必要書類 備考
養子離縁届書 証人は不要
審判書の謄本 裁判所に交付請求
審判の確定証明書 裁判所に交付請求

※審判の申立時には上記の必要書類のほか、収入印紙や切手を納付する必要があります。

戸籍謄本の取り方について詳しくは以下のページをご覧ください。

 

養子縁組解消の届出人

普通養子縁組の場合、原則として養親または養子が届出人となります。

養子が15歳未満のときは、離縁後の法定代理人が届出をする必要があります。

調停離縁・審判離縁・裁判離縁の場合、原則として調停や裁判を申し立てた(提起した)人が届出を行う必要があります。

期間内に届出が行われない場合、調停や審判、訴訟の相手方が届出を行うことができます。

 

 

養子縁組解消にかかる費用

養子縁組解消にかかる費用

 

協議離縁の場合の費用

自分で協議離縁の手続きをする場合、基本的に費用はかかりません。

市区町村によっては養親・養子の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)が必要となることがあり、その場合には取得費用として1通あたり450円がかかります。

 

調停離縁・審判離縁の場合の費用

調停離縁・審判離縁にかかる費用の相場(自分で手続きをする場合)は、4000円〜6000円前後です。

費用の内訳は以下のとおりです。

 

調停の申立てにかかる費用

  • 裁判所の手数料(収入印紙代):1200円
  • 切手代(裁判所や相手方との書類のやりとりにかかる郵送費用):1500円前後
  • 戸籍謄本:1通あたり450円

 

届出にかかる費用

  • 調停調書や審判書の謄本の取得費用(収入印紙代):1ページあたり150円
  • 確定証明書の取得費用(審判離縁の場合):1通あたり150円

※調停調書・審判書の謄本、確定証明書を郵送で請求する場合、これらに加えて切手代等がかかります(郵送方法によって金額は異なります)。

 

裁判離縁の場合の費用

裁判離縁にかかる費用の相場(自分で手続きをする場合)は、2万円前後です。

費用の内訳は以下のとおりです。

 

訴訟の提起にかかる費用

  • 裁判所の手数料(収入印紙代):1万3000円
  • 切手代:5000円前後
  • 戸籍謄本:1通あたり450円です。

※切手代は各裁判所によって異なります。

 

届出にかかる費用

  • 判決書の謄本の取得費用(収入印紙代):1ページあたり60円
  • 確定証明書の取得費用:1通あたり150円

※判決書の謄本や確定証明書を郵送で請求する場合、これらに加えて切手代等がかかります(郵送方法によって金額は異なります)。

 

死後離縁の場合の費用

死後離縁にかかる費用の相場(自分で手続きをする場合)は、4000円〜6000円前後です。

費用の内訳は以下のとおりです。

 

審判の申立てにかかる費用

  • 裁判所の手数料(収入印紙代):1人あたり800円
    ※養父、養母の2人と離縁する場合は1600円分の収入印紙が必要です。
  • 切手代:2000円前後
    ※切手代は各裁判所によって異なります。
  • 戸籍謄本:1通あたり450円です。

 

届出にかかる費用

  • 審判書の謄本の取得費用(収入印紙代):1ページあたり150円
  • 確定証明書の取得費用(審判離縁の場合):1通あたり150円

※審判書の謄本や確定証明書を郵送で請求する場合、これらに加えて切手代等がかかります(郵送方法によって金額は異なります)。

 

弁護士に依頼する場合の費用

養子縁組解消の手続きを弁護士に依頼する場合の費用は、各弁護士によって異なります。

どの手続きをどの範囲で依頼するかによっても異なりますが、一般的な相場は次のとおりです。

項目 着手金 報酬金 合計
協議離縁 20万円〜40万円 20万円〜40万円 20万円〜80万円程度
調停離縁(審判離縁) 30万円〜50万円 30万円〜70万円 30万円〜120万円
裁判離縁 40万円〜60万円 40万円〜80万円 40万円〜140万円
死後離縁 10万円前後

協議離縁・調停離縁(審判離縁)・裁判離縁については、「着手金」と「報酬金(成功報酬)」という2種類の弁護士費用がかかるケースが多いです。

「着手金」とは、離縁が成立するかどうかにかかわらず発生し、弁護士に手続きを依頼する時点で支払う費用です。

「報酬金(成功報酬)」とは、得られた成果に応じて支払う弁護士費用のことをいいます。

 

 

養子縁組解消のよくある質問(FAQ)

離婚して連れ子との養子縁組を離縁しないことができる?


離婚しても、元配偶者の連れ子との養子縁組を解消しないことはできます。

配偶者との結婚・離婚と、連れ子との養子縁組・離縁はそれぞれ別の独立した手続きです。

したがって、配偶者との離婚は連れ子との養子縁組にまったく影響しません。

離婚によって配偶者とは親族でなくなりますが、養子である連れ子は養子縁組を解消(離縁)しない限り、親族(親子)のままです。

配偶者と離婚しても連れ子(養子)には遺産を相続させたいというような場合には、養子縁組を解消しないことができます。

 

養子縁組を解消しても苗字をそのまま使用できる?


養子縁組を解消すると、養子は基本的に養子縁組前の苗字に戻ります。

ただし、次の要件をいずれも満たす場合には、苗字をそのまま使用することができます。

  1. ① 養子縁組をした日から離縁成立までに7年を経過していること
  2. ② 養子縁組の解消(離縁の成立)から3ヶ月以内に届出(離縁の際に称していた氏を称する届)をすること

なお、養親夫婦の両方と養子縁組をした場合で、どちらか一方との養子縁組のみを解消したときは、養親の苗字のまま変わりません(養子縁組前の苗字に戻ることはありません)。

 

成人した子供(養子)から一方的に解消できますか?


養親が応じてくれれば協議によって離縁できます。

養親から拒否された場合は、離縁調停や離縁訴訟を起こす必要があります。

 

養子縁組の解消(離縁)を取り消すことはできる?


養子縁組の解消(離縁)は、一度成立すると原則として取り消すことはできません。

ただし、養子縁組の届け出をした当時、一方に「養子縁組をする意思がなかった」場合には、養子縁組そのものが無効となります。

例えば、相手が勝手に養子縁組届を出したようなケースが該当します。

 

 

まとめ

  • 養子縁組の解消(離縁)とは、養子縁組によってつくられた法律上の親子関係を解消することをいいます。
  • 養子縁組の解消(離縁)によって養親・養子間の親子関係がなくなると、①遺産の相続権がなくなる、②扶養義務・扶助義務がなくなる、③養子の名字が元に戻る、などの効果が発生します。
  • 養親・養子が生きている間に養子縁組を解消する手続きとしては、(a)協議離縁、(b)調停離縁、(c)審判離縁、(d)裁判離縁、の4種類があります。

まずは当事者の話し合いによる協議離縁を目指し、それが難しい場合には調停離縁を行います。

調停が成立しない場合には、裁判離縁による必要があります。

  • 養親または養子の一方が亡くなった後に、相手の親族との関係を終了させたい場合には、死後離縁をすることができます。
  • 養子縁組の解消(離縁)の手続きにかかる費用は、手続きの種類や弁護士に依頼するかどうか等によって異なります。
  • 養子縁組の解消(離縁)はトラブルになりやすく、一度トラブルになると長期化するというリスクなどがあることから、弁護士に相談されることを強くおすすめします。

相続に関連して養子縁組の解消を検討されている場合には相続に強い弁護士に、離婚に関連して養子縁組の解消を検討されている場合には離婚問題に強い弁護士に、それぞれ相談することが大切です。

  • 当事務所では、相続に強い弁護士で構成する相続対策専門チーム、離婚問題に強い弁護士で構成する離婚事件チームを設置しており、養子縁組の解消に関する相談をはじめ、相続問題や離婚問題に関する幅広いご相談をうけたまわっています。

遠方の方にはオンラインでのご相談にも対応していますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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