遺産分割は、相続問題に強い弁護士に相談した方が良いです。
遺産分割では、対象となる遺産を調査したり、遺産を適切に評価する必要があります。
また、遺産分割においては、特別受益、寄与分などの問題も影響します。
これらを適切に判断するためには、遺産相続についての専門知識や豊富な経験が必要となります。
ここでは、遺産分割を弁護士に依頼するメリットやデメリット、弁護士に依頼した場合の費用、弁護士選びのポイントについて、相続に注力する弁護士が解説しています。
遺産相続でお困りの方はぜひ参考になさってください。
目次
遺産分割を弁護士に相談した方が良いケース
遺産分割を行う場合、その遺産の額に関わらず、ほとんどのケースを弁護士に相談すべきです。
遺産分割は、相続人の確定、遺産の調査、遺産の評価、相続に関する様々な法的問題点の検討、遺産分割案の策定、必要書類の入手、遺産分割協議書の作成など、複雑な事務処理が必要となります。
これらを適切に進めていくためには相続に関する専門知識やノウハウが重要となり、これらを備えているのは相続専門の弁護士に他なりません。
そのため、弁護士に相談しなくても良いケースとしては、以下のようなものに限定されるでしょう。
遺産がゼロのケース
遺産がないことが明らかである場合、遺産分割の対象が存在しないことから、弁護士に相談しなくても良いでしょう。
相続開始前のケース
相続が始まっていない場合、遺産分割ができないため、遺産分割の相談はしなくても良いでしょう。
ただし、相続開始前の場合で、御本人が遺言書の作成を検討されている場合、遺言書作成の相談はなさったほうが良いでしょう。
相続人間で遺産分割に争いがないケースでも、遺産分割は弁護士に相談なさることをお勧めします。
このようなケースでは、弁護士依頼を受けて他の相続人と交渉したり、調停を起こす必要はありません。
しかし、上で解説した、遺産の調査や評価、適切な分割方法などについては、専門家の助言を受けないと素人の方が自分だけで進めていくのは難しいと考えられます。
遺産分割を弁護士に依頼するメリットとデメリット
遺産分割を弁護士に依頼するメリットはとても大きいです。
これに対し、弁護士費用の支払いという点のデメリットが考えられますが、多くのケースではメリットの方がはるかに大きくなるでしょう。
下表はメリットとデメリットをまとめたものとなります。
遺産分割を弁護士に依頼する10のメリット
遺産分割を弁護士に依頼するメリットとしては、以下の10があげられます。
①相続人の範囲の調査を任せることができる
遺産分割協議の前提として、まず、「誰が遺産を相続できるのか」を確定しなければなりません。
そのため、被相続人(亡くなった方のこと)が生まれたときにまで遡って戸籍謄本を取り寄せて調査する必要があります。
戸籍謄本は素人の方が集めるのは面倒です。
また、集めた戸籍謄本を正確に読み解くのも容易ではありません。
例えば、隠し子の存在に気がつかず、相続人を全員確定しないままで遺産分割を行った場合、その遺産分割は無効となってしまうので注意が必要です。
弁護士に依頼していれば、この面倒な手続きをすべて任せることができるため、負担がありません。
また、相続人全員を確定することができるため無効となるリスクを回避できます。
②遺産の調査を任せることができる
適切な遺産分割を行うためには、「遺産を漏れなく調査する」ことがポイントとなります。
例えば、重要な遺産の存在に気づかないまま遺産分割を行うと、損をしてしまう可能性があります。
特に、預貯金、動産(高価な貴金属など)、株式等については遺産から漏れていることがあるため注意が必要です。
相続に強い弁護士に依頼すれば、遺産の調査も適切に行ってくれるため損をするリスクをある程度、回避できます。
③遺産の評価を任せることができる
適切な遺産分割のためには、対象となる遺産を適切に評価しなければなりません。
例えば、土地、株式(非上場会社)、自動車、貴金属などは時価を適正に評価することがポイントとなります。
土地については、路線価(相続税評価額)で評価する方がいらっしゃいますが、遺産分割においては時価(つまり「売ったらいくらで売れるか」)で評価すべきです。
相続問題に強い弁護士であれば、不動産業者などと連携しており、ワンストップでこれらの評価を行ってくれるでしょう。
④法的問題についての見解を示してくれる
相続においては、相続人が預貯金を使い込んでいた、特別受益や寄与分が問題となる、などのケースが多くあります。
これらの問題については放置せず、遺産分割に反映させるべきです。
しかし、そもそも問題となるのか、問題となったとしてどのように反映させればよいのか、などの専門的な判断は素人の方にはできません。
弁護士に依頼していれば、このような法的問題についての見通しを示してくれます。
⑤遺産の分け方について助言をもらえる
遺産分割は、「誰が」「どの遺産をどのように取得するか」ということを決めなければなりません。
例えば、被相続人に妻と子供2人がいるケースで、自宅は妻、残りの預貯金や株式は子供2人が2分の1ずつ取得する、などです。
このような遺産の分け方について、相続に強い弁護士であれば、様々な状況(トラブル防止、節税効果)を考慮した上で、最適な案を提案してくれるでしょう。
⑥遺産分割協議書の作成を任せることができる
遺産の分け方について相続人全員が納得すれば、その内容を書面にします。
この書面のことを遺産分割協議書といいます。
遺産分割協議書は法律文書であり、この書面により相続人の権利が確定します。
書面にミスやおかしな点があると、遺産分割が無効となる可能性があります。
また、無糖とまではないかないとしても、後々トラブルになる可能性があります。
弁護士に依頼していると、この遺産分割協議書の作成を任せることができるので安心できます。
⑦相手との交渉を任せることができる
相続人間で遺産分割の協議がまとまらないことがあります。
その理由として多いのは、相手が遺産の分け方に不満がある、というものです。
または、相手が交渉に応じない、無視される、なども見受けられます。
このような場合、弁護士であれば相手と交渉を行うことができます。
遺産分割調停などの裁判手続きもありますが、裁判所を通すため、解決まで長年月を要することが予想されます。
また、調停は平日の昼間行われるため、仕事などを休んで出廷しなければならなくなるなど、当事者の負担が大きくなる傾向です。
そのため、このようなケースでは、相続に強い弁護士に相手との交渉を任せて見られると良いでしょう。
⑧遺産分割調停を任せることができる
弁護士が交渉をしても、遺産分割協議がまとまらない場合、遺産分割調停を申し立てることとなります。
この場合、裁判所に提出する主張書面や証拠資料を準備していくこととなります。
しかし、素人の方はどのような書面や資料を提出すればよいのかわからないという状況です。
また、調停手続きでは、調停委員から法律問題についても見通しや意見を伝えられることとなります。
素人の方は、この調停委員の意見が正しいのか間違っているのかの判断もできないでしょう。
弁護士に依頼していれば、これらをすべて任せることができます。
また、調停手続きには弁護士が代理人として出廷してくれるので、負担も大きく減少します。
忙しい方は、調停には行かずに、弁護士から報告を受けるだけで済みます。
調停委員の意見にしたがった方が良いのか否かの判断も弁護士に任せることができます。
⑨安心感や納得感を得ることができる
弁護士に依頼していれば、遺産分割に関する様々な疑問に関して、電話やメールで問い合わせることが可能です。
また、相手の主張について、それが法的に正しいのか否かの助言をもらうことができます。
反対に弁護士がついていないと、これらの主張の妥当性について判断することができないでしょう。
もし、法律上仕方がないという意見が依頼している弁護士から助言されれば、納得感を持って遺産分割協議をまとめることが可能となります。
⑩後々のトラブルを防止できる
遺産分割協議に不備があると、まとまった後にトラブルになることがあります。
例えば、不動産の売却手続きで、精算に関する認識の違いから金銭問題に発展することがあります。
相続問題に強い弁護士は、遺産分割に関して、さまざまなトラブルを予想し、極力予防する措置をとることができます。
弁護士に手続きを依頼することで、当時予想できなかったようなトラブルを予防できる場合があります。
デメリットはある?
弁護士に依頼するデメリットとしては、その弁護士に支払う費用が考えられます。
しかし、弁護士費用は複雑な遺産分割の手続を任せることの対価であり、上で解説したメリットを踏まえると、むしろ安いと感じるのではないでしょうか。
また、弁護士費用が高額になるケースは、紛争性がある、遺産の額が大きいケースです。
弁護士に任せることで、取得できる遺産の額が多くなるのであれば、デメリットではなくむしろメリットといえるでしょう。
遺産分割の弁護士費用の相場
遺産分割の弁護士費用の内訳
遺産分割を弁護士に依頼する場合、その内訳として、大きく法律相談料、着手金、報酬金の3つがあります。
項目 | 内容 |
---|---|
法律相談料 | 弁護士に相談するための料金 |
着手金 | 遺産分割を依頼するときに支払う料金 |
報酬金 | 遺産分割が解決したときに支払う料金 |
また、弁護士が遠方に出張する場合、上記とは別に日当が発生することが多いです。
これらの金額については、各法律事務所によって異なります。
そのため、正確には依頼を考えている法律事務所の「弁護士報酬」を確認なさってください。
以下では、弊所が調査※した、遺産分割の弁護士費用の相場をご紹介します。
※2025年に調査した、相続に注力する複数の法律事務所の弁護士費用の平均値
・遺産分割の弁護士費用の相場一覧
下表は、遺産分割の弁護士費用の相場をまとめたものです。
法律相談料
法律相談料は有料の場合と無料の場合があります。
有料の場合、通常は30分5000円(税別)となる事務所が多いです。
相続問題に注力している法律事務所の場合、多くは無料と思われます。
着手金
遺産分割については、通常、まずは弁護士が代理人となって、相手と交渉(協議)を行います。
当事務所では代理交渉と呼んでいます。
そして、代理交渉でまとまらない場合は、調停等の裁判所の手続を利用することが多いです。
着手金については、通常の事案の場合、代理交渉で20万円〜30万円となることが多いです。
ただし、事案の複雑さによっては、より多くの着手金が必要となる場合があります。
代理交渉で解決できずに調停に移行する場合、追加で20万円〜30万円が必要となることが多いです。
報酬金
遺産分割の報酬金については、最終的に依頼者が取得する遺産の額に応じて決まります。
下表は、報酬金の決め方についての例です。
項目 | |
---|---|
300万円以下の部分 | 17.6%(最低33万円) |
300万円を超え3000万円以下の部分 | 11% |
3000万円を超え3億円以下の部分 | 6.6% |
3億円を超える部分 | 3.3% |
例えば、1000万円を取得する場合、129万8000円が報酬金となります。
300万円 × 17.6% = 52.8万円
700万円(300万円を超え3000万円以下の部分) × 11% = 77万円
52.8万円 + 77万円 = 129.8万円
なお、上記は遺産分割に争いがある場合のものです。
相続人間に争いがない場合の着手金および報酬金については、もっと安くなる傾向です。
着手金 | 16万5000円+遺産の0.55% |
報酬金 | 22万円+遺産の1.1% |
【具体例】遺産分割の弁護士費用はいくらになる?
以下、具体例を挙げて遺産分割の弁護士費用を計算します。
遺産分割協議で遺産1000万円を取得した場合
- 着手金:30万円
- 代理交渉の着手金として30万円
- 報酬金:129.8万円
300万円 × 17.6% = 52.8万円
700万円(300万円を超え3000万円以下の部分) × 11% = 77万円
52.8万円 + 77万円 = 129.8万円
- 弁護士報酬の合計:30万円+129.8万円=159.8万円
遺産分割調停で遺産1000万円を取得した場合
- 着手金:60万円
- 代理交渉の着手金として30万円
- 遺産分割調停移行時に追加着手金として30万円
- 報酬金:129.8万円
300万円 × 17.6% = 52.8万円
700万円(300万円を超え3000万円以下の部分) × 11% = 77万円
52.8万円 + 77万円 = 129.8万円
- 弁護士報酬の合計:30万円+30万円+129.8万円=189.8万円
遺産分割の弁護士費用が高くなるのはどんなとき?
遺産分割の弁護士費用が高くなる場合について、着手金、報酬金、日当別に解説します。
着手金について
着手金が高くなるのは、通常、事案が複雑な場合です。
具体的には、相続人が多数、遺産が多い、遺産に不動産や非上場株式が含まれているなどが考えられます。
報酬金について
報酬金が高くなるのは、経済的利益が多くなる場合、すなわち、取得する遺産の額が大きくなる場合です。
日当について
日当が発生するのは、弁護士が他県など、遠方の裁判所へ出張する場合です。
例えば、遠方の裁判所に出張する回数が多くなるほど、日当(通常5万円ほど)× 回数の費用が加算されます。
遺産分割調停に弁護士が参加する場合、電話会議やウェブ会議という方法を利用することができます。
これは、裁判所に行かずに、事務所から電話やオンラインにより参加するというものです。
このような方法をうまく活用することで、日当を発生させずに依頼者の負担を軽くすることができます。
遺産分割で弁護士費用が払えないときの対処法
ここでは、遺産分割で弁護士費用が支払えない場合の対処法について解説します。
なお、報酬金については、通常は取得した遺産の中から支払われますので、ここでは着手金が払えない場合を前提としています。
他の相続人と一緒に依頼する
遺産分割のケースでは、お一人よりも、複数で依頼したほうが弁護士費用は低くなる傾向です。
これは、同じ事件であるため、複数名からの依頼であれば弁護士の負担感が減るためです。
例えば、1人からの依頼の場合に着手金が30万円だったとします。
2人から同時に依頼を受ける場合、弁護士の負担は単純に2倍になるわけではありません。
遺産の内容や交渉の相手は同じとなるからです。
そのため、1人からいただく着手金をある程度減額することが可能となるのです。
親族等にスポンサーになってもらう
ご両親や御兄弟等の親族に相談し、弁護士費用を捻出される方もいらっしゃいます。
着手金を分割払いにしてもらう
着手金は、基本的に依頼時に全額を支払わなければなりません。
しかし、どうしても、弁護士費用を工面できない場合、分割払いができるかどうか、相談されてもよいでしょう。
法律事務所によっては、支払回数が少なければ、分割払いで依頼を受けてくれるところもあると思われます。
着手金を減額して報酬金を多く支払う
着手金の工面が難しい場合、法律事務所によっては着手金の減額を認める場合もあるかと思われます。
しかし、この場合、報酬金が相場よりも大幅に高くなることが予想されます。
遺産分割の弁護士費用は誰が支払う?
弁護士費用は、全額依頼者ご自身が負担することとなります。
相手に弁護士費用を負担させることは弁護士の倫理上できません。
弁護士費用を支払ってでも弁護士に依頼する理由
遺産分割の問題に直面している方にとって、弁護士費用の支払いはデメリットに感じるかと思います。
しかし、それでも遺産分割を弁護士に依頼するのは、そのデメリットを上回るメリットが多くあるためです。
上でご紹介したように、遺産分割を弁護士に任せることで、適切な遺産分割を実現できる可能性が高くなります。
また、仮にご希望の遺産分割が実現できなかったとしても、トラブルを防止したり、最終的に納得感を得ることもできる場合があります。
遺産分割に強い弁護士であれば、ご相談者様の状況をヒアリングし、弁護士に依頼すべきケースか否かについても助言をもらえます。
そして、弁護士に依頼した場合の弁護士費用について、見積もりをもらうこともできます。
したがって、遺産分割に直面されている方は、まずは専門の弁護士に相談されることをお勧めいたします。
遺産分割に強い弁護士の探し方のポイント
遺産分割を成功させるためには、遺産分割に強い弁護士を選ぶということがとても重要です。
弁護士選びのポイントを紹介しますので、ぜひ参考になさってください。
相続を専門としていること
弁護士と一口に言っても、その取扱業務は様々です。
遺産分割は通常の法律問題だけでなく、相続税や不動産評価などの専門知識も必要となります。
そのため、相続を専門的に取り扱っており、十分な知識やノウハウを持つ弁護士を選ぶようにしましょう。
口コミが良いこと
遺産分割は解決まである程度の期間を要する業務です。
最終的に「依頼してよかった」と感じるためには、口コミを参考になさると良いでしょう。
顧客満足度が高い法律事務所は、所属弁護士や事務員に対する教育を徹底しています。
例えば、クライアントに寄り添うこと、きめ細やかなサービスを提供すること、小まめに報告をすること、などです。
このような質の高いサービスは、実際に依頼した方々の口コミに表れます。
そのため、Googleビジネスプロフィールなどの評価やレビューは弁護士選びの重要な資料となります。
遺産分割と弁護士に関するQ&A
遺産分割と弁護士について、よくあるご相談とその回答をご紹介します。
遺産相続で弁護士はどこまで関わりますか?
弁護士は、遺産相続のあらゆる局面に関わることができます。
例えば、相続人の確定、遺産の調査や評価、遺産分割協議の助言、遺産分割の代理交渉、遺産分割協議書の作成、遺産分割調停などのほか、相続登記や相続税の申告なども助言可能です。
遺産分割調停に弁護士は必要ですか?

遺産分割調停は、法律上、弁護士は必ず必要というわけではありません。
しかし、遺産分割調停では、法的な見解の主張や証拠資料の提出などが重要となります。
そのため、弁護士にご依頼されていた方がより確実な成果が得られやすいといえます。
まとめ
以上、遺産分割を弁護士に依頼するメリット、弁護士選びのポイント等について、詳しく解説しましたがいかがだったでしょうか。
遺産分割を弁護士に依頼するメリットは、その複雑な手続きのすべてを任せることができるという点にあります。
反面、弁護士費用がかかるというデメリットもありますが、メリットの価値の方が上回ることが多いです。
弁護士選びのポイントとしては、①専門性が高い弁護士を選ぶこと、②口コミが良い法律事務所に相談することがあげられます。
当事務所には、相続問題に注力する弁護士・税理士のみで構成される相続対策チームがあり、遺産分割でお困りの方を強力にサポートしています。
LINEなどを活用した全国対応も行っております。
遺産分割については、当事務所までお気軽にご相談ください。