過払い金の時効はいつ?10年以上でも請求する方法を解説


過払い金の時効は基本的に完済してから10年とされていますが、2020年に施行された改正民法によって、時効制度にも変更がありましたので、本記事では、その変更点も踏まえて過払い金の時効に関して詳しく解説していきたいと思います。

また、完済から10年以上経っていても、過払い金請求を行える場合がありますので、その点についても詳細に解説していきます。

過払い金の時効はいつ成立する?

過払い金の時効は完済から10年が原則

過払い金とは、法律で定められている金利の上限を超えて払いすぎていたお金のことを指します。

消費者金融などの貸金業者の金利は、利息制限法という法律で上限が明確に定められていますが、この法律で定められている金利以上の利息を支払い続けていた場合、払いすぎていた分の利息について、返還を請求することができます。

しかし、過払い金の返還請求はいつまでも行えるというわけではなく、原則として、10年で時効が完成します。

時効とは

時効とは、一定の時間の経過によって権利を消滅させる制度のことをいいます。

時効という制度が存在している理由は、永続した事実状態の尊重、立証困難の救済、権利の上に眠る者は保護に値しないことにあるとされています。

この時効制度があることにより、過払い金を請求する権利を持っている場合でも、これを行使しないまま一定の時間が経過すると、請求することができなくなってしまうのです。

過払い金請求の場合、他の債権と同様に、基本的に、権利を行使できる時から10年経過すると、請求することができなくなってしまいます。

引用元:債権等の消滅時効|電子政府の窓口

ただし、厳密に言うと、時効による権利の消滅は、時効の完成によって利益を受ける者によって「時効の援用」がなされることにより、はじめて確定的な効果が生じることとなっています。

「時効の援用」とは、簡単にいえば、時効の完成を主張することです。

過払い金請求において、時効の完成によって利益を受ける者とは、貸金業者のことです。

そのため、法律上は、過払い金の時効期間が経過しても、貸金業者が時効の完成を主張してこなければ、過払い金の請求権が消滅することはないということになります。

しかしながら、消費者金融などの貸金業者は、データベースで情報管理を行っており、時効期間が経過しているか否かは当然把握していますので、時効期間が経過しているにもかかわらず時効の完成を主張しないということは事実上考えられません。

そのため、過払い金の時効期間が経過してしまった場合は、基本的に、貸金業者から時効の完成が主張されると考えていた方が無難です。

引用元:時効の援用|電子政府の窓口

 

過払い金請求の時効の起算点とは

過払い金請求は、基本的に10年が経過すると時効にかかってしまいますが、その起算点は法律上では「権利を行使することができる時」と規定されています。

それでは、過払い金請求における「権利を行使することができる時」とは、具体的にはいつの時点を指すのでしょうか。

これについては、最高裁の判例があり、過払い金請求における「権利を行使することができる時」は、原則として、取り引きが終了した時点であるという考え方が示されています。

これは、取り引きが継続している間は、新たな借入金債務の発生が見込まれる限り,過払い金は同債務に充当するとの合意があると考えられ、取り引きが終了するまでは過払い金の返還を請求することは通常想定されていないといえるためです。

判例

「したがって、過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては、同取引により発生した過払金返還請求権の消滅時効は、過払金返還請求権の行使について上記内容と異なる合意が存在するなど特段の事情がない限り、同取引が終了した時点から進行するものと解するのが相当である。」

参考判例:最判平成21年1月22日|最高裁ホームページ

取り引きが終了した時とは、具体的には、通常は完済日となりますが、まだ完済していない場合には最後に借入又は返済を行った時ということになります。

借金を始めた時点が過払い金の時効の起算点であると誤解されている方が時折いらっしゃいますが、これは誤りであり、原則として、取り引きを終了した時点が時効の起算点となりますので、十分ご留意ください。

なお、貸金業者の中には、取り引きが終了した時点ではなく、貸付停止措置がとられた時点が時効の起算点であるとの主張をしてくることがあります。

貸金業者が行う貸付停止措置とは、返済が遅滞しているときなどに行われる新たな貸付を停止する措置のことをいいますが、当該措置がとられたことにより新たな借入金債務の発生が見込まれなくなったとして、このような主張をしてくるのです。

貸し付けることがない以上、新たな債務が発生することはないというのがその主張の根拠とのようです。

しかし、貸付停止措置がとられた時点が時効の起算点であるとの貸金業者の主張は実際の裁判で容易に認められるものではありませんので、当該主張がなされても、過払い金を請求する側は、それをそのまま受け入れるのではなく、適切に反論して、取り引きが終了した時点が時効の起算点であると主張していく必要があります。

 

民法改正で過払い金の時効は5年となったの?

上で述べた「権利を行使することができる時から10年」というのは従来の時効の考え方でしたが、実は2020年4月1日施行の改正民法によって、時効制度に変更がありました。

すなわち、2020年4月1日施行の改正民法では、時効制度について、従来の「権利を行使することができる時から10年間」という基準は維持した上で、「権利を行使することができることを知った時から5年間」という基準が追加されることとなりました。

根拠条文

(債権等の消滅時効)

第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。

二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

引用元:債権等の消滅時効|電子政府の窓口

このため、民法改正後は、「権利を行使することができる時から10年」と「権利を行使することができることを知った時から5年」のどちらか早い方の経過によって、時効が完成することとなりました。

時効の起算点についていえば、民法改正前は「権利を行使することができる時」のみであったのが、民法改正後は「権利を行使することができる時」と「権利を行使することができることを知った時」と2つの起算点が存在することなりました。

この点、過払い金請求の場合は、この「権利を行使することができる時」と「権利を行使することができることを知った時」とが異なる時点となることが十分に考えられます。

すなわち、過払い金請求における「権利を行使することができる時」とは、前述したとおり、「取り引きが終了した時点」となります。

一方で、過払い金請求における「権利を行使することができることを知った時」とは、過払い金請求を行えることを知った時ですので、例えば、貸金業者から取引履歴を取り寄せ引き直し計算をして過払い金があることが分かった時などが考えられますが、これらは「取り引きが終了した時点」と必ずしも同一時点となるわけではありません。

その結果、民法改正後の時効制度の下では、過払い金は、取り引きが終了した時点から10年経過して時効が完成する場合と、権利を行使することができることを知った時から5年経過して時効が完成する場合の2つのパターンが考えられることになります。

すなわち、民法改正後の時効制度が適用されると、取り引きが終了した時点から10年経過していない場合であっても、権利を行使することができることを知った時から5年経過して時効が完成する場合も有り得ますので、注意しておく必要があります。

ここで、少し複雑な点なのですが、この民法改正にあたっては、急に時効期間が短くなるという不利益を極力避けるための経過規定が定められています。

具体的には、「施行日前に債権が生じた場合におけるその債権の消滅時効の期間については、なお従前の例による。」との経過措置の規定が定められています。

引用元:時効に関する経過措置|電子政府の窓口

これは、改正民法の施行日である2020年4月1日より前に生じた債権の時効期間については、改正前の民法が適用されるということです。

改正前の民法の時効制度は、「権利を行使することができることを知った時から5年」という基準はなく、「権利を行使することができる時から10年」という基準があるのみです。

そのため、過払い金請求においては、2020年4月1日より前に完済していて既に過払い金が発生している場合は、「施行日前に債権が生じた場合」に該当し、改正前の民法が適用されますので、時効が完成するのは取り引きが終了した時点から10年を経過したときのみとなります。

それでは、2020年4月1日以降に完済したという場合については、全て、改正後の民法の時効制度が適用されることになるのでしょうか。

これについては、2020年4月1日以降に完済した場合でも、同日より前に過払い金が発生していた場合には、「施行日前に債権が生じた場合」と解釈できる余地があるとも考えられており、改正前の民法が適用される可能性が有り得ます。

ただし、この点に関しては、まだ裁判所で確たる判断が示されていないので、改正後の民法が適用される可能性も残されています。

裁判になれば、貸金業者からこの点について争われることも考えられますので、2020年4月1日以降に完済したという場合は、改正後の民法の時効制度が適用される可能性があり得るという心づもりで、早めに過払い金請求を行った方が無難だと思われます。

2020年4月1日より前に完済して過払い金が生じていた場合 【改正前の民法が適用される】
時効:取り引きが終了した時点から10年
2020年4月1日以降に完済したが、同日より前に過払い金が生じていた場合 解釈上の争いがあり、どちらの適用も有り得る

【改正前の民法が適用される場合】
時効:取り引きが終了した時点から10年

【改正後の民法が適用される場合】
時効:取り引きが終了した時点から10年
権利を行使することができることを知った時から5年
のいずれか早い方

 

 

10年以上でも請求できるケースと

前述したとおり、過払い金は、基本的に、取り引きが終了した時点(通常は完済日)から10年で時効にかかってしまいます。

民法改正後の時効制度が適用される場合は、10年をたたず、権利を行使することができることを知った時から5年で時効にかかってしまう可能性があるものの、いずれにしろ、遅くとも10年が経過すれば時効は完成するということになります。

それでは、取引終了時から10年以上が経過してしまっていると、過払い金を請求できる可能性はゼロなのでしょうか。

これについては、一度完済してその後再び同じ貸金業者から借り入れを行っているような場合において、一つの(一連の)取引が継続していると判断されれば、最初の取引終了時(完済日)から10年以上経っていたとしても、過払い金を請求できる可能性があります。

すなわち、借金を一度完済した後に、同じ貸金業者から再び借り入れを行っているようなケースがあると思いますが、この場合、最初の取引①(完済した取引)とその後の取引②を仮に一連の取引であるとみることができれば、時効の起算点は取引①が終了した時点ではなく、取引②が終了した時点となるということです。

そのため、取引①の完済日から既に10年以上が経過している場合であっても、取引②が終了した時点から10年以上がまだ経過しなければ、時効はまだ完成しておらず、過払い金を請求できるということになるのです。

この場合、取引①と取引②を一つの取引として見ているため、取引①も含めた取引全体について過払い金請求ができます。

他方で、取引①と取引②が別々の(分断した)取引であると判断されてしまうと、「取引が終了した時点」は、取引①については取引①が終了した時点、取引②については取引②が終了した時点となり、それぞれ別々に時効が進行することとなります。

そのため、取引①で生じた過払い金は、「取引が終了した時点」である完済日から10年以上経っている場合は時効により請求できなくなってしまいますので、請求できるのは取引②で生じた過払い金のみということとなります。

以上のように、2つの取引を一連のものとみるか、分断されたものとみるかによって、取り戻せる過払い金の金額に大きな差が出ることになりますので、この取引の一連性・分断と呼ばれる論点は実際の裁判でも多く争われています。

貸金業者にとっては、2つの取引が別々の取引であると認められれば支払うべき過払い金の金額を大幅に減らすことができるため、完済から再び借り入れるまで期間が空いている場合は、必ずといっていいほど、取引の分断を主張してくるのです。

それでは、どのようなケースであれば、取引①と取引②が一連の取引と判断されるのでしょうか、以下、解説します。

 

基本契約が同一の場合

取引①を完済してから、取引②で借り入れを再び始めるまでに空白期間があったとしても、取引①と取引②が同一の基本契約に基づく場合は、取引①及び取引②は一つの(一連の)取引が継続していると判断される可能性が高いといえます。

基本契約とは、利用限度額の範囲内で継続的な借り入れを行うことを予定して締結する包括契約のことをいいます。

同一の基本契約に基づく取引の場合は、取引①と取引②との間に空白期間があっても、取引①で発生した過払金はその後の取引②の借入金債務に充当される合意があったとされて、一連の取引であると判断される可能性が高いのです。

ただし、取引①と取引②の間の空白期間があまりに長い場合など、例外的事情がある場合は、同一の基本契約に基づく場合であっても、取引が分断されていると判断される可能性もありますので、注意は必要です。

 

基本契約が同一でない場合

取引①と取引②が同一の基本契約に基づくものでない場合は、原則は別個の取引と考えられるものの、取引①で発生した過払金を取引②の借入金債務に充当するという合意が存在するなど特段の事情がある場合は一連の取引と評価する、との考え方が最高裁の判例で示されています。

判例

「同一の貸主と借主との間で継続的に貸付けとその弁済が繰り返されること を予定した基本契約が締結され,この基本契約に基づく取引に係る債務の各弁済金 のうち制限超過部分を元本に充当すると過払金が発生するに至ったが、過払金が発 生することとなった弁済がされた時点においては両者の間に他の債務が存在せず、 その後に、両者の間で改めて金銭消費貸借に係る基本契約が締結され、この基本契 約に基づく取引に係る債務が発生した場合には、第1の基本契約に基づく取引によ り発生した過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するなど特段の事 情がない限り、第1の基本契約に基づく取引に係る過払金は、第2の基本契約に基 づく取引に係る債務には充当されないと解するのが相当である。」

参考判例:最判平成20年1月18日|最高裁ホームページ

すなわち、基本契約が同一でない場合であっても、様々な事情を考慮することにより、取引①と取引②が事実上一連の取引であると判断される可能性があるのです。

上記最高裁判例は、一連の取引であるか判断するための考慮要素として、以下の事項を挙げています。

 

第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が反復継続して行われた期間の長さやこれに基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間

ここでは、取引①が継続した期間の長さと、取引①から取引②までの空白期間の長さが考慮されています。

取引①が継続した期間が長ければ長いほど、取引①から取引②までの空白期間が短ければ短いほど、一連の取引であると認められやすくなります。

取引①から取引②までの空白期間については、裁判実務上、一年未満かどうかを基準にみていることも多く、1年を超えていると別個の取引であると判断される可能性が高くなります。

もっとも、取引①が継続した期間が長い場合などは、取引①から取引②までの空白期間が1年を超えていても、一連の取引と評価されることもあり、1年未満かどうかのみで判断されるわけではありません。

反対に、取引①から取引②までの空白期間が1年未満であっても、取引①が継続した期間が短い場合や後述する考慮要素を加味して、別個の取引と評価される場合もあり得るということです。

空白期間の長さは、特に重要な考慮要素ではあるものの、これのみで一連の取引か否かが決定されるわけではないので、ご留意ください。

 

第1の基本契約についての契約書の返還の有無

取引①で完済した際に契約書が返還されているという事情がある場合については、取引①で生じた過払金を取引②の借入金債務に充当する合意がないとして、別個の取引であったと評価されやすくなります。

 

借入れ等に際し使用されるカードが発行されている場合にはその失効手続の有無

取引①で完済した後に、取引①で借り入れを行うときに使用していたカードについて失効手続が取られている場合、再び借り入れを行うことが容易ではなかったということになりますので、別個の取引であったと評価されやすくなります。

 

第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約が締結されるまでの間における貸主と借主との接触の状況

取引①と取引②の空白期間中に、貸金業者から積極的なキャッシングの勧誘があったなど、一定の接触があった場合は、一連の取引であったと評価されやすくなります。

 

第2の基本契約が締結されるに至る経緯

取引②で再び借り入れを行うこととなった経緯が、例えば、貸金業者からキャッシングの勧誘を受けたことであったというような場合は、一連の取引であったと評価されやすくなります。

 

第1と第2の各基本契約における利率等の契約条件の異同

取引①と取引②の各基本契約の内容が同一であれば、一連の取引であったと評価されやすくなります。

他方で、利率や限度額等の契約条件について、取引①と取引②で基本契約の内容が異なっている場合は、別個の取引であったと評価されやすくなります。

以上の通り、取引①と取引②が同一の基本契約に基づくものでない場合は、個別案件ごとに、上記で列挙したような事情が総合的に考慮されて、一連の取引であったか否かが判断されることになります。

この取引の一連性・分断の判断は非常に難しいものであり、事案により争い方や結論の見通しは異なりますので、過払い金請求に詳しい弁護士に相談し状況を見てもらうことをおすすめします

 

 

時効にかからないためのポイント

時効にかからないためのポイント

 

①時効の起算点を認識する

過払い金請求を時効にかからないようにするためには、まずは時効の起算点をしっかりと把握しておくことが重要です。

時効の起算点を把握しておくことで、あとどれくらいで時効がかかるのかという予想ができ、時効が経過する前に余裕をもって対処することが可能となります。

前述したとおり、過払い金請求の時効の起算点については、民法改正前は、「取り引きが終了した時点」のみ、民法改正後は「取り引きが終了した時点」と「権利を行使することができることを知った時」の2つとなります。

「権利を行使することができることを知った時」については、貸金業者から取引履歴を取り寄せた上で引き直し計算をして過払い金があることが分かった時や貸金業者から過払い金があると伝えられた時などとなりますので、これは比較的認識しやすいものといえます。

一方で、「取り引きが終了した時点」については、何年も前に完済し終わっている人にとっては、最後に弁済した日がいつであったか記憶が薄れてしまっていることも多いかと思います。

そのような場合は、手元にある借入れと返済に関する資料により確認することもできますが、確実なのは、貸金業者から取引履歴を取り寄せて、当該履歴から取り引きが終了した時点を確認する方法です。

 

②時効の更新を行う

時効の完成を阻止するためには、「時効の更新」という手段を講じる必要があります。

時効の更新とは、それまで進行してきた時効期間をリセットさせる制度のことをいい、これにより時効の完成を阻止することができます。

根拠条文

第百四十七条 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。

一 裁判上の請求

二 支払督促

三 民事訴訟法第二百七十五条第一項の和解又は民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)による調停

四 破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加

2 前項の場合において、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。

引用元:民法|電子政府の窓口

時効を更新するための事由は法律上いくつかありますが、過払い金請求の実務で主に用いられるのは「裁判上の請求」という手段です。

「裁判上の請求」とは、裁判所に民事訴訟を提起することをいいます。

厳密には、裁判所に訴訟を提起すると、その時点で時効の完成猶予(一時ストップ)の効果が生じ、その後、確定判決等により権利が確定すると、これまでの時効期間が更新(リセット)され、また時効期間が新たにその進行を始めることとなります。

このように、過払い金返還請求訴訟を提起することで、過払い金の時効をリセットすることが可能となりますが、訴訟を提起するにはある程度の準備期間がどうしてもかかりますので、時効期間が直前に迫っているようなケースでは、時効期間経過までに訴訟を提起することが困難な場合も考えられます。

例えば、過払い金請求を行うためには、通常は、貸金業者から取引履歴を取り寄せた上で引き直し計算を行う必要がありますが、それだけでも一定の期間を要します。

そのため、場合によっては、貸金業者から取引履歴を取り寄せている間や、引き直し計算を行っている間に、時効期間が過ぎてしまう可能性もあります。

このような場合に用意されている手段として、法律上、「催告による時効の完成猶予」という制度が設けられています。

引用元:催告による時効の完成猶予|電子政府の窓口

「催告」とは、債権者が債務者に対して債務の履行を請求する意思の通知をいい、訴訟を提起する必要はありません。

すなわち、「催告」は、裁判外で貸金業者に対して過払い金の返還を請求するだけで足りるということです。

また、「催告」は、具体的な金額を明示せずに、発生している過払金を全て請求するというような抽象的な通知内容であっても効力は認められると解されていますので、引き直し計算が終わってない段階でも行うことが可能です。

ただし、「催告」を行っただけでは、時効は更新(リセット)されないということには十分注意する必要があります。

すなわち、「催告」は、時効の完成が6カ月猶予されるという一時ストップの効果を生じさせるにすぎず、時効をリセットさせるためには、その猶予された6カ月の間に、上述した「裁判上の請求(過払い金返還請求訴訟の提起)」等を別途行う必要があるのです。

「催告」は、あくまでも時効が間近に迫っている場合の緊急手段なので、時効完成が猶予された6カ月の間に何もしないと、そのまま時効が完成してしまうことになってしまいますので、十分気を付けてください。

ちなみに、「催告」によって時効の完成が猶予されている6カ月の間に2回目の催告を行ったとしても、時効の完成猶予の効力がまた生じるわけではないため、再度「催告」することは意味がありませんので、この点もご注意ください。

なお、「催告」は、書面でも口頭でもその方式は問わず効力は生じますが、貸金業者から時効について後々争われるリスクを念頭において、催告の事実を証拠で残しておくために、内容証明郵便によって行うことが適切な方法であるといえます。

 

③できるだけ早く弁護士に相談する

過払い金について時効にかからないようにするには、気になった段階でできるだけ早めに弁護士に相談するということです。

具体的にいつ完済したかまでは覚えていないことも多いでしょうから、弁護士に相談して、貸金業者に取引履歴の開示を請求するか検討しましょう。

完済していれば、過払い金の調査は弁護士報酬は無料で、郵送代等の実費のみで対応してくれる事務所も多くありますので、まずはお問い合わせしてみましょう。

 

 

まとめ

以上、過払い金の時効について、詳しく解説しましたが、いかがだったでしょうか。

過払い金請求の時効期間が経過すると、請求ができなくなってしまうリスクがありますので、時効が迫っている方は、過払い金請求に向けて早く行動に移す必要があります。

また、時効が直前に迫っているような場合は、貸金業者に対して内容証明郵便で過払金返還請求書を送ったり、過払い金返還請求訴訟を提起するなどして、時効の成立を阻止する対応を講じることが必要となってきます。

そのため、過払い金請求を考えている方は、なるべく早めに過払い金請求に精通した弁護士にご相談されることをおすすめします

この記事が過払い金請求でお困りの方にとってお役に立てれば幸いです。

デイライトでは、過払い金も含めた借金問題に精通した弁護士が皆様を強力にサポートしています。

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