過払い金を請求するリスクとは?弁護士がわかりやすく解説

払い過ぎたお金が戻ってくるという過払い金ですが、基本的にはお金が戻ってくるかどうかなので、それほどリスクはないといえますが、気をつけなければならないポイントもあります。

以下では、過払い金を請求することによるリスクについて解説していきます。

 

過払い金を請求することによる5つのリスク

  • ブラックリストに登録されてしまうリスク
  • 請求先の貸金業者を利用できなくなるリスク
  • 時効によって過払い金が請求できなくなるリスク
  • 貸金業者が倒産して過払い金を取り戻せなくなるリスク
  • 自分で請求することにより失敗するリスク

 

過払い金とは

過払い金とは、債務者(借金をした人)が貸金業者に支払いすぎたお金のことをいいます。

債務者が消費者金融をはじめとする貸金業者から、法定利息である利息制限法の利率を越えた利息で借金の借入れをしている場合、利息制限法を基に再計算(引き直し計算といいます。)をして算出された結果と比較したとき、本来支払う義務がなかったお金のことです。

 

リスクとその対応法

ブラックリストに登録されてしまうリスク

過払い金を請求することにより、場合によっては、信用情報機関のブラックリストに登録されてしまうことがあります。

信用情報機関とは信用情報(支払能力に関する情報)の収集、提供を行う機関をいい、下記の3つが存在しています。

  • 全国銀行個人信用情報センター(KSC)
  • 株式会社日本信用情報機構(JICC)
  • 株式会社シー・アイ・シー(CIC)

これらの3つの機関は、それぞれ提携して情報交流を行っています。

ブラックリストとは、信用情報のうち、長期の延滞や債務整理などの金融事故を起こすと登録される事故情報のことをいいます。

過払い金の請求は、貸金業者に支払いすぎていたお金の返還を求めているだけであり、債務整理手続とは全く異なりますので、過払い金請求を行ったことのみをもってブラックリスト(事故情報)に登録されることはありません。

そのため、貸金業者への借金を完済した後に過払い金を請求する場合であれば、ブラックリストに登録されることはありませんので、ご安心ください。

しかし、注意が必要なのは、貸金業者への借金が残っているタイミングで過払い金請求を行うケースです。

このケースでは、過払い金を請求した結果として、①過払い金が借金よりも多かった場合、②過払い金が借金よりも少なかった場合という2つのパターンが考えられます。

このうち、①過払い金が借金よりも多かった場合については、過払い金によって借金を完済することができますので、ブラックリストに登録されることはありません。

一方で、②過払い金が借金よりも少なかった場合については、過払い金で借金を完済することができず、借金が残ってしまう結果となるため、この場合は債務整理と同じ扱いとなり、ブラックリストに登録されてしまいますので、注意が必要です。

なお、クレジット会社からのキャッシングに関して過払い金を請求する場合、キャッシング枠とは別にショッピング枠があることについて注意が必要です。

クレジットカード会社に対する借金額は、キャッシング機能・ショッピング機能の両方における未払分がカウントされて把握されることになります。

そのため、返還された過払い金でキャッシング利用分を完済できる見込みがある場合でも、ショッピングの未払分についても完済できなければ、ブラックリストに載ってしまうことになるのです。

まとめると、以下のとおりとなります。

ブラックリストに登録されない
  • 借金完済後に過払い金請求を行う場合
  • 借金返済中に過払い金請求を行った結果、過払い金>借金だった場合
ブラックリストに登録される 借金返済中に過払い金請求を行った結果、借金>過払い金だった場合

この表からも明らかなとおり、現在も利用していたり、返済していたりする会社に対して過払い金を請求する場合にはブラックリストにのるリスクがあるので、慎重な判断が必要になります。

それでは、信用情報機関のブラックリストに登録されてしまうと、どのような影響が出るのでしょうか。

具体的には、以下のような悪影響が生じることとなります。

 

クレジットカードが使えなくなる

ブラックリストに登録されると、クレジットカードが使えなくなってしまいます。

 

既に使用しているクレジットカード

クレジットカード会社は、定期的に、信用情報を照会して利用者の支払能力をチェックしていますので、そこでブラックリストに登録されていると分かると、そのタイミングで支払能力に問題ありと判断されて強制的に解約されてしまいます。

定期的なチェックのタイミングはクレジットカード会社毎に異なりますので、場合によっては、しばらく使える状態が続くこともありますが、時間が経過すれば、やがて利用することができなくなってしまいます。

 

新しく作成するクレジットカード

クレジットカード会社は申込者の信用情報を必ず参照した上で入会審査を行いますので、その際にブラックリストに登録されていることが判明すると、審査が通ることはまずありません。

以上のように、信用情報機関のブラックリストに登録されている間は、クレジットカードを新しく作成したり、利用することができなくなってしまいます。

 

住宅ローンが契約できない

銀行などの金融機関に住宅ローンの審査を申し込むと、金融機関は必ず信用情報機関の記録を参照して、本人の信用情報を確認します。

そして、そのときに、ブラックリストに登録されている場合、支払能力に問題があると判断されるため、金融機関が住宅ローンの審査を通すことはまずありません。

そのため、信用情報機関にブラックリストが登録されている間は、住宅ローンを申し込んだとしても、審査が通る可能性は事実上ないと考えられます。

 

リスクを無くす対応法

前述したとおり、借金を完済した後であれば、過払い金請求を行ってブラックリストに登録されることはありません。

そのため、ブラックリストに登録されるのは絶対に嫌だという方は、今ある借金を支払い終えてから過払い金請求を行うことで、そのリスクを避けることができます。

ただし、後に説明するとおり、時効によって過払い金請求ができなくなってしまうこともあります。

完済するまで待っている間に時効を迎え、過払い金を取り戻せなくなることもあるので、ブラックリストに載るのを避けたい場合でも、早めに過払い金請求を専門的に扱っている弁護士に相談することをおすすめします。

 

請求先の貸金業者を利用できなくなるリスク

過払い金を請求すると、請求先の貸金業者については今後利用できなくなるリスクがあります。

貸金業者は、その会社独自の内部情報として、過払い金を請求した事実をブラックリスト(いわゆる、社内ブラック)に記録していることがあります。

そのため、貸金業者によっては、過払い金請求を行った顧客をこの社内ブラックに記録し、今後借り入れの申込みがあっても審査を通さないようにしていることがあります。

信用情報機関のブラックリストに登録されていなかったとしても、過払い金の請求を行った貸金業者については、社内ブラックにより、再び利用することができなくなると思っておいた方が無難です。

また、情報共有により、過払い金請求の相手方となった貸金業者と同じグループ・系列の業者からの新たな借入も難しくなるといわれています。

それでも、払い過ぎたお金を戻してもらうことは非常に重要ですし、お金を借りられるところは今は色々と会社がありますので、大きなリスクとはいえないでしょう。

リスクを無くす対応法

過払い金請求先の貸金業者を今後利用できなくなるのは絶対に嫌だという方は、当該貸金業者への請求を行わないことでそのリスクを避けることができます。

もっとも、特定の貸金業者の利用にそこまでこだわりを持っている方はおそらくほとんどいないでしょう。

それに、信用情報機関のブラックリストに登録されていなければ、他の貸金業者を利用することは問題なくできますので、社内ブラックのリスクがあるからといって過払い金請求を躊躇う必要はないといえるでしょう。

 

時効によって過払い金が請求できなくなるリスク

過払い金の請求には時効があり、時効期間が経過してしまうと、請求ができなくなってしまいます。

時効期間については、2020年4月1日に施行された改正民法で時効に関する規定が改正され、「取引が終了した時点から10年、又は過払い金請求ができることを知った時から5年」となっています。

もっとも、2020年4月1日より前に発生した過払い金については、改正前の民法が適用されることとなっており、「取引が終了した時点から10年」とされています。

「取引が終了した時点」は通常、完済日のことを意味します。

そのため、基本的に、完済日から10年が経っている場合は、時効により過払い金を請求できなくなってしまうと思ってください。

ただし、完済日から10年経っているとしても、一度完済してその後再び同じ貸金業者から借り入れているような場合については、一つの(一連の)取引が継続していると判断されれば、例外的に過払い金を請求できる可能性があります。

これは、取引の一連性・分断と呼ばれる裁判所でも争われることが多い論点ですが、事案により争い方や結論の見通しは異なりますので、過払い金請求に詳しい弁護士に相談し状況を見てもらうことをおすすめします。

 

リスクを無くす対応法

過払い金請求の時効期間が経過すると、請求ができなくなってしまいますので、時効が迫っている方は、過払い金請求に向けて早く行動に移す必要があります。

過払い金請求を行うためには、基本的に、貸金業者から取引履歴を取り寄せた上で引き直し計算を行う必要がありますが、それだけでも一定の期間を要します。

そのため、場合によっては、貸金業者から取引履歴を取り寄せている間や、引き直し計算を行っている間に、時効期間が過ぎてしまう可能性もあります。

もし時効が直前に迫っているような場合は、貸金業者に対して内容証明で過払金返還請求書を送ったり、過払い金返還請求訴訟を提起するなどして、時効の成立を食い止める対応を講じることが必要となってきます。

 

貸金業者が倒産して過払い金を取り戻せなくなるリスク

過払い金の請求先である貸金業者が倒産してしまっていると、過払い金を取り戻せなくなるリスクがあります。

過払い金返還請求訴訟が相次いだ頃から、実際に多くの貸金業者が倒産を余儀なくされています。

例えば、2010年に業界大手の武富士が倒産した際は、ニュースでも大きく報道されましたので、記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。

貸金業者が倒産する際は、手続上、残っている財産を債権者に配当することにはなっていますが、実際には、財産が残っていないか、残っていても僅かであるケースがほとんどです。

そのため、倒産している会社に過払い金請求を行ったとしても、取り戻すことができないか、取り戻せたとしても僅かな金額のみというケースが多いのが実情です。

例えば、武富士が倒産した際は、過払い金を請求した方に僅か3.3%の返金があったのみでした。

上記のとおり、いざ過払い金を請求しようと思っても、そのタイミングで請求先の貸金業者が倒産してしまっていると、過払い金を取り戻すことが非常に厳しくなってしまいます。

リスクを無くす対応法

貸金業者が倒産して過払い金を取り戻せなくなるリスクを回避するためには、出来る限り早めに過払い金請求を行って過払い金を取り戻すことです。

今後も、経営悪化などで、特に中小の貸金業者が倒産するケースは少なくないと考えられます。

また、大手の貸金業者であっても、過去に武富士のように倒産する例は実際にありますので、今後、倒産する可能性が全くないわけではありません。

貸金業者が倒産する前に過払い金を取り戻すこと、これが唯一の対応法です。

なお、過払い金請求を行ったときに貸金業者が既に倒産手続きに入っていた場合は、残念ながら、その倒産手続きの中で回収を図るしか方法はありません。

この場合は、裁判所に債権届出書を提出することで、過払い金がいくらか返ってくる可能性がありますので、忘れずに提出するようにして下さい。

 

自分で請求することにより失敗するリスク

過払い金の請求は、弁護士に依頼せずに自分で行うことも可能ですが、この場合、様々な要因で失敗するリスクをはらんでいます。

以下、解説します。

引き直し計算を間違えるリスク

過払い金を請求するためには、貸金業者から取引履歴を取り寄せて、引き直し計算をする必要があります。

引き直し計算とは、利息を利息制限法の上限金利に直して計算することで、これにより、過払い金の有無や金額がわかることになります。

発生している過払い金をきちんと取り戻すためには、引き直し計算を正確に行うことが重要です。

引き直し計算を電卓だけで行うことは非常に困難かつ面倒であるため、通常は専用のソフトなどを利用して行います。

専用のソフトなどを利用して行えば正確に計算できそうにも思えますが、事案によっては特別な考慮を要する場合もあるので、ソフトなどによる計算結果が必ず正しいものになるとは限りません。

正確な過払い金の金額を出すためには専門知識を心得ている必要があるため、ご自身で引き直し計算した場合、過払い金の額を間違えてしまうリスクがあるのです。

 

過払い金の返還金額が少なくなるリスク

過払い金請求をしたとしても、貸金業者が素直に全額支払いに応じてくれることはなく、減額を提案されることがほとんどです。

特に自分で請求した場合は、貸金業者に甘く見られてしまい、弁護士に依頼して請求した場合よりも大幅な減額を提案されたり、「ゼロ和解」(借金も0円、過払い金も0円として和解すること)を提案されたりすることも多いです。

これらの提案に乗る必要はなく、裁判をしてきちんと過払い金を回収していった方がよい場合がほとんどです。

しかし、貸金業者から「裁判よりも和解した方が得だ」「倒産しそうなので払えない」などといわれると、「裁判は大変そう」「裁判になったら弁護士を雇う必要が出てきてお金がかかる」「裁判の結果どうなるかわからない」といったイメージも相まって、提案に乗ってしまうことがあるかもしれません。

以上のように、自分で請求することによって、弁護士に依頼して請求したときよりも過払い金の返還金額が少なくなってしまうリスクがあるのです。

 

法律上の争点に対応できないリスク

過払い金請求では、いくつかの法律的な争点(例えば、取引の一連性・分断、時効、悪意の受益者など)が存在しますが、それらの争点の結論次第で、取り戻せる過払い金の金額に大きな差が生じます。

これらの法律的な争点に対応するには専門的な知識が必要になってきますが、法律の専門家でない方が、適切に主張を述べたり、貸金業者からの主張に適切に反論することは、非常に難しいことであるといえます。

そのため、弁護士に依頼せずに自分一人で請求した場合、法律的な争点にきちんと対応できずに、本来取り戻せるはずの過払い金を取り戻せなくなるリスクがあるのです。

 

借金していたことが家族にバレるリスク

自分で過払い金返還請求をする場合、貸金業者と手紙や電話で直接やりとりをする必要があります。

そのため、自宅に貸金業者からの郵送物が届いたり、電話がかかってくることもあります。

借金返済中であったり、過去に借金をしていたことを家族に内緒にしたい場合であっても、自宅に届く郵便物や電話の様子から、家族に何かしら感づかれてしまう可能性もあります。

 

仕事をしながら対応しなければならないリスク

過払い金を自分で請求する場合には、貸金業者からの連絡を取り合わなければなりません。

返済の督促については、貸金業者のタイミングでかけてきますが、こちらから電話をかける場合には、過払い金の交渉については、平日の9時〜17時までが対応時間という会社も多く、仕事の合間をぬって対応しなければならず負担になるというリスクがあります。

 

リスクを無くす対応法

弁護士に依頼すれば、全て弁護士に任せることができるため、上記に説明したリスクは回避することができます。

そのため、できる限り過払い金請求を専門的に扱っている弁護士に依頼して進めることをおすすめします。

司法書士に依頼するという方もいますが、司法書士には140万円以内のものしか取り扱いができないという制限があります。

 

まとめ

以上、過払い金の請求を行った場合のリスクについて、詳しく解説しましたが、いかがだったでしょうか。

過払い金請求のリスクは重大な支障をもたらすものではなく、全てが問題になるわけでもありませんので、基本的に、過払い金請求を躊躇う必要はありません。

状況によっては注意が必要な場合もありますが、過払い金請求を専門的に扱っている弁護士にご相談されることで、詳細な説明を受けることができます。

また、時効を迎えてしまったり、貸金業者が倒産してしまったりすると、請求できなかったり、戻ってくる過払い金の総額が減ってしまうため、なるべく早めに過払い金請求に精通した弁護士にご相談されることをおすすめします。

デイライトでは、破産再生部を設けており、過払い金も含めた借金問題に精通した弁護士が皆様を強力にサポートしています。

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当事務所は、ZOOMやスカイプを活用して、全国に対応を行っておりますので、まずは一度ぜひご相談ください。

 

 


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