ソフト闇金とは、違法な貸付を行う闇金のうち、利用者に親切に接するもののことをさします。
闇金と聞けば、マンガや映画で描かれているような、違法な高利率での貸付や厳しい取り立てというイメージが比較的湧きやすいのではないでしょうか。
一方でソフト闇金には「ソフト」とついているので、「ひょっとしたら闇金というよりかは消費者金融に近い存在なのではないか」と思っている人もおられるかもしれません。
先に一番伝えたいことを言いますが、ソフト闇金は闇金と一緒です。
「ソフト」という字面に騙されないようにしてください。
たしかに、ソフト闇金の多くは闇金とは違って丁寧な接客などが特徴で、そのような対応に多くの方は安心してしまうようです。
しかし、ソフト闇金も違法な金利で貸付をしているなどその実態は闇金と何ら異なるところはありません。
この記事では、そもそもソフト闇金とは何なのか、闇金とは何が違うのか、どういうところに気をつければよいのか、そして既にソフト闇金から借金をしてしまい返済が苦しい場合にはどういう対処法をとりうるのか、などについて弁護士が解説していきます。
ソフト闇金とは？
ソフト闇金とは、違法な貸付を行う闇金のうち、利用者に親切に接するもののことをさします。
「ソフト闇金」と「闇金」との違い
ソフト闇金と闇金とでは、おおむね以下の違いがあります。
- 対応が比較的丁寧
- 取り立てが厳しくない
- 決まったオフィスや店舗を構えていない
対応が比較的丁寧
ソフト闇金では、闇金とは違い、明らかに怖そうな男性ではなく物腰の柔らかな人が貸付けの対応をしてくれます。
このような対応を受けることで、多くの利用者は「ここは闇金とは違って返済で苦しむことや怖い取り立てに遭うこともない」と安心してしまうかもしれません。
しかし、これではソフト闇金の思うツボです。
ソフト闇金は、消費者金融で融資を断られ続け、状況的に追い込まれている人に対して親切に接することで利用者の警戒心を解いたうえで違法な金利で貸し付けをしているのです。
取り立てが厳しくない
闇金と言えば、数々のマンガやアニメで取り立てシーンが描かれていますので、皆さんの中でもどういった取り立てが行われているかは比較的容易に想像できるのではないでしょうか。
またこれを想像することで、闇金からは出来るだけ借金をしたくない、あのような取り立ては絶対に受けたくないと考えるのではないでしょうか。
ソフト闇金は、基本的には返済が遅れたときでも闇金とは違って暴力や脅迫を用いて返済を迫るようなことはしません。
期限までに弁済できなくても、返済期限を先延ばししてくれることもあるようです。
しかし、これは親切心からとっている行動ではありません。
警察や弁護士が介入してこないようにそのような行動をとっているのです。
というのも、既に述べたとおり、ソフト闇金も闇金と同じで違法な高金利で貸付を行っています。
高圧的な取り立てをして警察や弁護士に介入されれば、自分たちの違法行為も明るみに出てしまう可能性があり、彼らはそれを恐れています。
そのため、一見親切に見える態度で接してくるのです。
もっとも、上記はあくまで”傾向”に過ぎず、全てのソフト闇金に当てはまる違いや特徴ではありません。
闇金ではないからと思って安易な気持ちで借り返済が遅れてしまうと途端に豹変し、闇金と同じような取り立てを受ける可能性は十分にあります。
したがって、注意が必要です。
決まったオフィスや店舗を構えていない
これも傾向に過ぎませんが、ソフト闇金は決まったオフィスや店舗を持っていないことが多いです。
これは警察の目を出来る限り逃れたいからでしょう。
ではどうやって貸付をしているのかというと、電話やメール、それから最近ではSNSを使っているようです。
利用者から、各媒体を使った融資申し込みをして、条件を確認してからお金が指定口座に振り込まれるという流れをとることが多いようです。
ソフト闇金は闇金同様に違法であること
闇金に対する法律上の規制とは？闇金業を営むと罰則がある？
先ほどから何度も述べているとおり、ソフト闇金は明らかに違法です。
具体的には以下の規定に違反しており、それぞれ刑罰もあります。
貸金業法違反
ソフト闇金は、貸金業法という法律に違反しています。この違反の刑罰はかなり重いです。
第三条 貸金業を営もうとする者は、二以上の都道府県の区域内に営業所又は事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあつては内閣総理大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所又は事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあつては当該営業所又は事務所の所在地を管轄する都道府県知事の登録を受けなければならない。
引用元：貸金業法 | e-Gov法令検索
貸金業法3条1項には、「貸金業を営みたいんだったら、きちんとした手続を経て貸金業の登録をしてくださいね」という規定があります。
そして、この規定を受けて、貸金業法11条1項では、
引用元：貸金業法 | e-Gov法令検索
と、「登録を受けなかったら貸金業を営んではいけませんよ」という規定があります。
ソフト闇金は当然貸金業の登録を受けていないので、この規定に違反して違法に貸金業を営んでいるということになります。
上記規定の違反には、刑罰規定があります。
すなわち、貸金業法47条2号によると刑罰は「10年以下の懲役若しくは3,000万円以下の罰金に処し、又はこれを両方科する」というものであり、かなり重い刑罰が課せられることが分かります。
（1号省略）
二 第十一条第一項の規定に違反した者
引用元：貸金業法|e-Gov法令検索
出資法違反
貸金業法違反だけでなく、出資法5条2項にも違反しています。
引用元：出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律 | e-Gov法令検索
出資法では、「年20％を超える高金利での貸付をしてはいけませんよ。」と規定しています。
しかし、ソフト闇金はこれを大きく超える貸付をしていますから、この法律にも違反していることとなります。
ちなみに違反した場合の刑罰は、「5年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金に処し、またはこれを両方科する」というものです。
条文まで覚えてもらう必要は全くありませんが、ソフト闇金が明らかな違法業者であり、違反した場合の刑罰もかなり重いということを分かってもらえたのではないでしょうか。
こんな闇金業者には要注意
ソフト闇金が違法であることは既に述べたとおりですが、それでもソフト闇金を頼ってしまい、苦しい思いをしてしまう人は一定数います。
では、ソフト闇金から借入をしない、かかわりを持たないためにはどういうところに気をつければよいのでしょうか。
以下では、こういった点に注意が必要だという主な特徴について紹介します。
ソフト闇金と言って安心感をもたせる
ソフト闇金を営む業者の中には、自分たちのことを「ソフト闇金です。」と公言したうえで、ソフト闇金は普通の闇金とは違って安心できる業者であるというセールストークをするものもいます。
既に述べましたが、ソフト闇金については怖い男性ではなく物腰が柔らかい人が対応するケースが多いです。
こういった言動が相まって、つい安心して彼らを信用してしまい、結果として違法な金利なのに借金してしまうということがあります。
SNSで個人的な融資をもちかける
TwitterなどのSNS上で、個人的な融資をもちかける投稿を目にしたとしても、その人からは借りないようにしましょう。
既に述べましたが、ソフト闇金は、SNSを使って利用者を募り融資をしていることもあります。
このパターンだと、あくまで表面上は「個人間でのお金の貸し借り」という扱いがされています。
SNSを使ったケースによく引っかかってしまうのは、SNSを比較的多く利用する若い世代が多い傾向にあります。
軽い気持ちから借金をしてしまい、ソフト闇金との関係を断ち切れなくなる場合も少なくありません。
また、より深刻なのは、女性がそうしたところからお金を借りた場合だとわいせつな画像や肉体関係を要求されるというトラブルもあるということです。
女性でなくても、融資を申し込む際に相手に渡した個人情報を悪用すると脅され、いわば個人情報を人質に取られた状態で脅されるなど、さらなる被害を生むこともあります。
一度借り入れてしまうと、完全に返済するまでの間に非常に大変な思いをすることになります。
たとえ一見して個人での融資であるようにみえた場合であっても、その背後にはソフト闇金業者がいるかもしれないと思って踏みとどまることがとても重要です。
後から説明しますが、消費者金融から融資を断られたとしても、諦めずに他の消費者金融をあたるか、返済が厳しいのであれば弁護士に相談してみてください。
Ａ社ではダメだったけどＢ社では審査に通った、ということは決して珍しいことではありません。
次のような言葉で宣伝をする
次のような言葉を使って宣伝している業者にはくれぐれも注意してください。ソフト闇金の可能性があります。
「優良」業者
ソフト闇金は、自分達は闇金とは違うということをしきりにアピールして利用者を安心させようとします。
その際によく使われるのが、自分達は「優良」業者であるという言葉です。
ソフト闇金の場合、対応が比較的丁寧である場合も多く、それと相まって、ついつい「本当に優良業者なのではないか。」と信じてしまう人もいます。
本当に優良な業者は自ら優良とは名乗りません。
そもそも貸金業の登録をしていないことも多いですからその点も確認しましょう。
「在籍確認なし」
在籍確認では、あなたが勤務先として届け出た企業・事務所に対して闇金業者からあなたが本当にそこに勤めているか確認の連絡がされます。
自身の勤務先にそういった電話をされたくないと考える方が大半です。
そのため、在籍確認をしないということをセールスポイントとしているソフト闇金もあります。
ネットで検索してもヒットします。
在籍確認をされないということでハードルが下がり、ついつい融資の申し込みをしてしまいがちかもしれませんが注意すべき点です。
「LINE完結」や「電話申し込みOK」
LINEや電話でのやりとりだけで融資を受けられるという点で魅力を感じる人は多いかもしれません。
しかし、これはソフト闇金が事務所を持たずに営業していることが理由です。
わざわざ店舗に足を運ぶ必要がなくなるので便利ではありますが、こういうセールスポイントを掲げる業者はソフト闇金の可能性がありますので、注意が必要です。
「土日融資OK」や「即日融資」
LINEや電話でのやり取りだけで融資を受けられる点と同様に、土日に融資を受けられたり、申込みからすぐに融資を受けられるという点に魅力を感じる人は多いかもしれません。
たしかに、「明日までにどうしても〇〇円必要」というように、急を要する場合もあるでしょう。
しかし、ソフト闇金も違法な金利で貸付をしているという話は既に述べたとおりです。
ササっと借金を受けられるということは、契約条件などをしっかり把握して考える時間もなく契約してしまっていることが多いでしょう。
そうなると、結局返済のときに苦しい思いをするのは他でもないあなた自身です。
消費者金融で融資を受けることを諦めない
ソフト闇金で借金をしてしまう人の多くは、消費者金融での借入審査が下りず断られてしまっています。
しかしながら、その結果、ソフト闇金での高い金利に返済が苦しくなり、ソフト闇金で借金をしたことを後悔するという方が多いです。
たとえ消費者金融で融資を断られてしまったとしても、諦めずに他の消費者金融で審査を受けてみてください。
消費者金融によって、審査で利用する信用情報機関は異なります。
Ａ社では断られたけどＢ社では借りられた、というケースもあります。
これまでに見たように、ソフト闇金は借金をするまでのハードルは比較的低いですが、返済を終えるまでが非常に大変です。
「入り口は広いが出口は非常に狭いため一度入ると出られなくなる。」ということをしっかり理解してください。
そもそも他の貸金業者への返済に困っているということであれば、ソフト闇金から借入するのではなく、弁護士に相談して借金の整理を検討すべきでしょう。
ソフト闇金の4つのデメリット
以下では、ソフト闇金を利用するデメリットを紹介します。
返済が苦しくなる
再三申し上げているとおり、ソフト闇金も闇金と同じく、法律の制限を超える高利率で貸付をしています。
「トイチ（10日で1割の利息）」や「トゴ（10日で5割の利息）」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
法律上の金利の上限は最大で年利20％です。
トゴだと、年利に直すと約1825％です。
桁違いな金利であることが明らかです。
このような金利で借りてしまうと、いずれ返済に行き詰まります。
厳しい取り立てに遭うおそれがある
返済が出来なかった場合、業者によってはそれまでの親切な対応を豹変させ、暴力・脅迫で返済を迫ってきます。
家などに押しかけてくることもあるかもしれません。
そうなると、取り立てが怖くて平穏な日常を送ることは難しくなるでしょう。
別のソフト闇金から借入をさせられる
返済が苦しいと伝えると、別のソフト闇金から借金をしてそれを返済に充てるようにいわれることがあります。
当然別のソフト闇金も違法な高利率で貸付をしていますから、別のソフト闇金で借金するたびに借金は雪だるま式に膨らんでいくこととなるでしょう。
いわゆる負のスパイラルです。
こうなると自転車操業で抜け出すのは大変になってきます。
口座の売却をもちかけられる
口座の売却は犯罪になる
借金の返済ができなかった場合、口座の売却を要求されることもあるようです。
「使っていない口座であれば中にお金も入っていないから、口座の売却は大した問題ではない。」と思われる方もいるかもしれませんが、それは間違いです。
口座の譲渡しは、無償・有償問わず犯罪となります。
他人になりすまして特定事業者（第二条第二項第一号から第十五号まで及び第三十七号に掲げる特定事業者に限る。以下この条において同じ。）との間における預貯金契約（別表第二条第二項第一号から第三十八号までに掲げる者の項の下欄に規定する預貯金契約をいう。以下この項において同じ。）に係る役務の提供を受けること又はこれを第三者にさせることを目的として、当該預貯金契約に係る預貯金通帳、預貯金の引出用のカード、預貯金の引出し又は振込みに必要な情報その他特定事業者との間における預貯金契約に係る役務の提供を受けるために必要なものとして政令で定めるもの（以下この条において「預貯金通帳等」という。）を譲り受け、その交付を受け、又はその提供を受けた者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、有償で、預貯金通帳等を譲り受け、その交付を受け、又はその提供を受けた者も、同様とする。
2 相手方に前項前段の目的があることの情を知って、その者に預貯金通帳等を譲り渡し、交付し、又は提供した者も、同項と同様とする。通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、有償で、預貯金通帳等を譲り渡し、交付し、又は提供した者も、同様とする。
引用元：犯罪による収益の移転防止に関する法律 | e-Gov法令検索
犯罪による収益の移転防止に関する法律の28条2項では、預貯金通帳やキャッシュカードなど口座を譲り渡す行為をした場合、渡した側も貰い受けた側も1年以下の懲役又は100万円以下の罰金刑を受けることとなります。
しかし、いざ返済が出来なくなった（又は遅れたしまった）場合に、口座を譲り渡すよう要求されて、勇気を持って断ることはなかなか難しいでしょう。
そういった意味でも、最初からソフト闇金とは関わりを持たない、つまりソフト闇金で借金をしないことがとても重要と言えるでしょう。
ソフト闇金の被害に苦しむ方の相談窓口
ソフト闇金に関する問題でお困りの方は、一人で抱え込もうとせず、弁護士に相談しましょう。
まとめ
以上、ここまでソフト闇金について解説してきました。
この記事が、みなさまのお役に少しでも立てれば幸いです。
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