風俗で盗撮したらどうなる?事例・罰則・今後の流れを弁護士が解説

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA
  

近年、盗撮についてのご相談の中で、風俗での盗撮事案も寄せられるようになりました。

この記事では、風俗での盗撮はどのような犯罪になるのか、盗撮の罰則、風俗店に盗撮が発覚したときの対処法などを、弁護士が解説します。

風俗店で盗撮行為に及んでしまった方のご参考になれば幸いです。

風俗での盗撮は犯罪となる?

盗撮とは

風俗で盗撮を行ったときに成立する可能性のある犯罪としては、①迷惑防止条例違反、②撮影罪(性的姿態撮影等処罰法)、③軽犯罪法違反、④刑法の建造物侵入罪があり得ます。

以下、それぞれについて解説します。

 

迷惑防止条例違反

迷惑防止条例の内容は、各都道府県によって異なる点がありますが、ほとんどの都道府県において、盗撮は迷惑防止条例違反に当たります

東京都の場合、2020年9月までは、迷惑防止条例違反となる盗撮は、道路、公園、広場、駅などの「公共の場所」や、電車、乗合自動車、船舶、航空機などの「公共の乗物」で行われたものに限定されていました。

そのため、風俗の店舗・プレイルーム、ラブホテル、自宅などで盗撮を行っても、これらの場所は、特定の人たちだけが利用するところであり、公共の場所にも公共の乗り物に該当しないことから、迷惑防止条例違反となることはなく、警察からの警告が行われる程度にとどまっていました。

しかし、2020年10月に迷惑防止条例が改正され、①「住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所」と、②「学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物」の2つが、処罰の対象となる盗撮場所に追加されました。

風俗の店舗やラブホテルなどは、「人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所」に該当すると考えられていますので、改正後の条例では処罰の対象となります。

また、迷惑防止条例では、「人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること」が盗撮に当たると定められています。

したがって、実際に「撮影」した場合に処罰されることは当然のことながら、撮影のためにカメラの「差し向け」や「設置」を行っただけの場合であっても、盗撮として処罰の対象となります

引用元:公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例|警視庁

 

撮影罪

撮影罪が成立するための構成要件(犯罪が成立するための条件)は、大きく分けると以下のとおりです。

引用元:性的姿態等撮影処罰法2条1項1号から4号

  1. ① 人の性的姿態を
  2. ② 禁止された方法により撮影すること
  3. ③ 撮影行為を行う「正当な理由」がないこと

性的姿態とは?

性的姿態とは、具体的には次のものをいいます。

  • 性的な部位、すなわち、性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部
  • 人が身に着けている下着のうち現に性的な部位を覆っている部分
  • わいせつな行為又は性交等がされている間における人の姿態

「禁止された方法により撮影する」とは?

具体的には次の方法です。

  • 正当な理由がないのに、ひそかに撮影する行為
    典型的なものとしては、スカートの中にスマートフォンを差し向けたり、隠しカメラを使って撮影したりなど、撮影の対象者に気づかれないようひそかに撮影する盗撮行為が挙げられます。
  • 同意しない意思の形成・表明・全うが困難な状態にさせ、又はその状態にあることを利用して撮影する行為
  • 誤信をさせ、又は誤信をしていることを利用して撮影する行為
  • 正当な理由がないのに、16歳未満の者を撮影する行為(13歳以上16歳未満の場合、行為者が5歳以上年長の者であるとき。)

風俗店での盗撮が撮影罪に該当するケース

風俗店において、性的な部位、下着、又はわいせつな行為をひそかに撮影する行為は、撮影罪に該当する可能性が高いといえます。

自分以外にはその画像は見ないと嘘を言って撮影する行為についても、撮影罪に該当すると考えられます。

撮影罪について詳しい解説はこちらをご覧ください。

軽犯罪法違反

軽犯罪法では、「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」を処罰すると定められています(第1条23号)。

風俗での盗撮は、カメラのレンズを通して「のぞき見た」行為に該当しますので、軽犯罪法違反として処罰される可能性もあり得ます

引用:軽犯罪法|e−GOV法令検索

刑法の建造物侵入罪

店舗型風俗店のプレイルームの中で盗撮をした場合や、デリヘルを呼んだホテルの客室内で盗撮した場合には、刑法の建造物侵入罪で処罰される可能性があります(刑法130条)。

建造物侵入罪は、正当な理由がないのに建造物に侵入した場合に成立する犯罪であるところ、盗撮を行う目的のためにプレイルームやホテルに侵入することが、正当な理由に当たるとは認められないことが理由です。

ただし、実務上、建造物侵入罪で処罰されるのは、証拠がないなどの事情により迷惑防止条例違反や軽犯罪法違反に問えないという、例外的な場合に限られることが多いように思われます。

引用元:刑法|e−GOV法令検索

盗撮がどのような犯罪であるかの解説については、次の記事も参照してください。

 

盗撮の刑罰

盗撮は、①迷惑防止条例違反、②撮影罪(性的姿態撮影等処罰法)、③軽犯罪法違反、④刑法の建造物侵入罪のいずれにも当たり得る犯罪です。

それぞれの犯罪の罰則は、次の表のとおりです。

迷惑防止条例違反
(東京都の場合)
【撮影】
1年以下の懲役
又は
100万円以下の罰金
※常習の場合、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金【差し向け、設置】
6月以下の懲役
又は
50万円以下の罰金
軽犯罪法違反 1日以上30日未満の拘留
又は
1,000円以上1万円以下の科料
刑法の建造物侵入罪 3年以下の懲役
又は
10万円以下の罰金
撮影罪 3年以下の懲役
又は
300万円以下の罰金

引用:公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例|警視庁

引用:軽犯罪法|e−GOV法令検索

引用:刑法|e−GOV法令検索

引用:性的姿態等撮影処罰法|e-GOV法令検索

 

なぜ風俗で盗撮が発生するのか?

犯罪として処罰されるリスクを負うことになるにもかかわらず、なぜ、風俗での盗撮は発生するのでしょうか。

主な理由としては、次のようなものが考えられるでしょう。

  • コレクションをして自分自身で見返すため
  • 違法動画サイトにアップロードするため
  • 有料での配信や販売をするため
  • リベンジポルノとして利用するため

ネット上に動画をアップすれば、わいせつ物頒布罪が、被害者が未成年の場合には児童ポルノ禁止法違反が、風俗店員との関係性によってはリベンジポルノ法違反が、盗撮とは別に成立する可能性がありますので、実刑判決などの重い刑罰となることも予想されます。

 

どのような行為が盗撮となる?〜代表的な3つの事例〜

風俗店側に発覚しないように行われる盗撮ですが、ニュースなどで報道される代表的な事例としては、次の3つが挙げられます。

性行為中の盗撮

ニュースなどの報道でよく見聞きする事例の1つ目は、風俗店員との性行為を盗撮していたことが発覚して現行犯逮捕されたというケースです。

このケースでは、実際に盗撮した動画などがスマホなどの中に保存されており、それが直接的な証拠となることから、検挙される可能性が高いといえるでしょう。

このほかには、別件で検挙されてスマホを調べたところ、動画が発見されたため盗撮でも検挙に至り、事後逮捕されたというケースも存在します。

 

自宅やホテル室内へのカメラの設置

サービスを受ける自宅やプレイルーム、ホテルの室内などにカメラを設置し、実際に撮影する前に発覚するケースも見聞きすることが多いケースです。

既にお伝えしたとおり、盗撮は未遂に終わっていても、カメラを設置すると、それだけで迷惑防止条例違反に当たり、処罰の対象になります

実際に盗撮できていないことから証拠がなく、立件が難しいのではないかとも思われますが、風俗店でサービスを受けている最中にカメラを設置すること自体が、通常は盗撮のためであると考えられ、迷惑防止条例違反に当たると判断されることが多いといえるでしょう。

 

メガネ型、ペン型、USB型などの小型カメラが増加

このほかには、メガネ型、ペン型、USB型などの小型カメラを用いた盗撮や、車のスマートキーに似せたカメラによる盗撮なども行われているようです。

これらを用いた盗撮についても、風俗店のサービス中に、盗撮以外の目的でこのような特殊なカメラを設置することは考えがたいことから、盗撮のために設置されたものと判断される傾向にあるでしょう

 

 

風俗での盗撮で逮捕される場合

風俗で盗撮をして逮捕されるのは、①被疑事実について嫌疑があり(刑事訴訟法199条)、②罪証隠滅・逃亡のおそれがある(刑事訴訟規則143条の3)という要件に該当する場合です。

①に該当するケースとしては、動画が残っていて盗撮をしたことが強く疑われるような場合が該当します。

②に該当するのは、盗撮が発覚したときに動画を消去しようとしたり逃走しようとしたケースや、比較的近い時期に前科があるケース、常習的に盗撮を行っているケース、定まった住居や身寄りがないケースなどが該当し得ます。

バレないだろうなどと軽い気持ちで行うことがあるかもしれない盗撮ですが、店舗側から通報や被害届の提出が行われれば、犯罪として逮捕される可能性もあり得る行為です。

実際に、盗撮で逮捕された事例として、次のようなものが報道されています。

事例 デリヘルで小型カメラを使って盗撮した事例

「緊急事態宣言中に東京都内に行って盗撮をしていたとして、埼玉県人事課は28日、危機管理課の男性主査(52)を停職3カ月の懲戒処分にしたと発表した。主査は、コロナ対策本部会議の運営を手伝う職員だった。

人事課によると、主査は県や都が緊急事態宣言中だった2月27日夜、派遣型風俗店を使って呼び出した女性を都内のホテルで盗撮したという。女性が盗撮に気づき通報し、警視庁が都迷惑防止条例違反の疑いで主査を逮捕していた。3月29日に不起訴処分(起訴猶予)になったという。盗撮には、秋葉原で買ったというUSBメモリーとモバイルバッテリーに似せたビデオカメラ2台を使っていた。自動車の鍵に似せたカメラを使って昨年11月からほかに7回盗撮しており、「ネットに上がっていた盗撮映像をみて、やってしまった」と話しているという。」

参考:2021年5月29日付け朝日新聞デジタル(2023年1月13日閲覧)

事例 盗撮した動画をネット上で有料配信した事例

「眼鏡型のカメラで女性を盗撮し、動画をインターネットで販売したとして、警視庁は30日、東京都台東区小島、会社員の男(42)をわいせつ電磁的記録等送信頒布容疑で再逮捕したと発表した。再逮捕は29日。発表によると、男は6月28日と今月14日、派遣型風俗店員の女性2人とのわいせつな行為を撮影した動画を販売サイト「FC2コンテンツマーケット」に公開し、不特定多数が閲覧できる状態にした疑い。容疑を認めている。

女性の1人から「眼鏡型のカメラで盗撮された」と相談を受け、警視庁は今月18日、男を都迷惑防止条例違反(盗撮)容疑で逮捕していた。

警視庁は男が3月以降、風俗店員の女性33人を盗撮した動画を同じサイトで販売し、約100万円を得ていたとみている。」

参考:2021年7月30日付け読売新聞オンライン(2023年1月13日閲覧)

 

 

風俗での盗撮で逮捕されない場合

盗撮した動画が残っていて、容疑者(被疑者)も盗撮を認めている、容疑者の住所・勤務先・通学先などが判明しているなどといったケースでは、罪証隠滅・逃亡のおそれがないとして、逮捕されないことも考えられます。

東京都の場合、迷惑防止条例違反の罰則は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金であり、他の重大犯罪と比べれば重くはありませんので、前科のない初犯で、常習性もない場合には、適切に対応すれば、逮捕の回避を期待することができます

逮捕されて引き続き勾留されてしまうと、長期間にわたって身柄を拘束され、外部と隔離されることになりますので、実際に盗撮を行っている場合には、謝罪して示談を成立させてもらうなど、逮捕や起訴を回避するための対応を取ることが望まれます。

万が一、盗撮をしてしまったという場合には、弁護士への速やかな相談をお勧めします。

 

 

風俗での盗撮で逮捕、その後の流れ

逮捕されると、警察署内の留置場に身柄を拘束され、外部との連絡や面会も制限されます。

この章では、逮捕後の刑事手続きの流れをお伝えします。

刑事手続き全般の流れについては、次のフロー図を参照してください。

※あくまでも一般的な手続きを示したものですので、個別具体的な点は、弁護士にご相談ください。

 

立件

盗撮で刑事事件として立件されるきっかけとしては、風俗店員に盗撮が発覚し、その場で通報される、被害届を出される、私人(風俗店員)による現行犯逮捕が行われるなどといったケースが多いと思われます。

刑事事件として立件された後は、検察官が起訴/不起訴を決めるために、警察によって取り調べなどの捜査が行われます。

捜査には、自宅から取調べなどを受けに出向く在宅事件と、逮捕・勾留されて留置場に身柄を拘束される身柄事件の2種類があります。

 

在宅事件の場合

在宅事件となった場合、警察から呼出しがあれば、指定された日時に出頭して取調べを受けなければなりませんが、それ以外は通常の生活を送ることが可能です。

そのため、留置場に身柄を拘束される身柄事件と比べて、私生活に対する不利益は小さいということができます。

このような在宅事件として取り扱ってもらうためには、罪を認めて示談交渉を行っていること(速やかに行う予定であること)、家族などの監督・身元引受けがあり逃亡のおそれがないこと、呼出しには必ず応じることなどを、警察に説明して理解してもらうことが重要です。

したがって、盗撮が発覚した場合には、なるべく早く弁護士に相談し、示談交渉を始めることや、警察との窓口となることを依頼することが望ましいといえます。

また、弁護士に依頼すれば、警察での取調べに同行し、どのような内容を供述すべきかや、供述調書に署名押印すべきかどうかなどについて、起訴/不起訴や裁判となった場合を見据えたアドバイスを受けることも可能となります。

 

逮捕された場合(身柄事件)

逮捕

逮捕されれば、最大で72時間、身柄を留置場に拘束され、その間、弁護士以外の外部の人間とは、連絡・面会することが一切できなくなります

逮捕は最大で72時間ですが、約93.9%の確率で逮捕に引き続いて勾留請求がなされ、追加で最大20日間の身柄拘束を受ける可能性があります(2022年の統計資料)。

参考:令和5年版犯罪白書|被疑者の逮捕と勾留

 

勾留請求

逮捕された後、身柄が検察官に送られ(「送検」と呼ばれます)、そこで、勾留請求するか釈放するかの判断がなされます。

勾留は、検察官からの勾留請求を受けた裁判所が判断しますが、容疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があり、かつ、次の3つのいずれか1つに該当すれば、認容されることとなります(刑事訴訟法60条1項)。

    • 定まった住居を有しないとき
    • 罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき
    • 逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき

引用元:刑事訴訟法|e−GOV法令検索

裁判所が勾留請求を認容する確率は、約96.2%と極めて高い数値になっています(2022年の統計資料)。

引用元:令和5年版犯罪白書|被疑者の逮捕と勾留

こうした長期の身柄拘束による不利益を受けないようにするためには、早期に弁護士に相談して示談交渉を開始するなどして、逮捕・勾留請求を回避することが重要です。

 

勾留

逮捕から勾留に移行すれば、逮捕と併せた身柄の拘束が最大23日間と長期間になりますので、仕事や学校などの社会生活に大きな影響が及びかねません。

勾留段階になれば、弁護士以外との連絡や面会が可能となるケースが多くなりますが、それでも、弁護士以外との面会には、警察官の立ち合いがあり、回数は1日1回、時間は平日の日中に1回15分など、多くの制限が設けられています。

しかし、勾留請求が裁判所に認容された後であっても、釈放を見込むことは可能です。

被害者と示談が成立した、身元引受人が見つかったなど、新たな事情が生じた場合には、準抗告や勾留取消請求という手続きによって、勾留を取り消すことができることもあり得ます

早期釈放を実現するためにも、早い段階で弁護士に相談なさることをお勧めします。

 

検察官による終局処分

捜査が終了すれば、検察官による終局処分が行われ、起訴/不起訴が決定されることとなります。

盗撮事件については、初犯で、常習性もなく、被害者との示談が成立しているなど適切な対応を尽くしていれば、書面審理を行う略式起訴が行われ、罰金刑で済むことも期待できます。

以下では、通常起訴の場合の流れをお伝えします。

 

起訴

盗撮事件だけに限定した数値は公表されていませんが、刑事事件全体のうち、起訴される確率は約36.2%です。

参考:令和5年版犯罪白書

すなわち、全ての刑事事件のうち、約63.8%の事案で不起訴になるということですから、比較的軽微といえる盗撮事件については、不起訴になる確率はさらに高いと見込まれます。

これに加えて、被害者との示談が成立していれば、不起訴となる確率はさらに高くなることが期待できます。

他方、起訴されて裁判を受けたときの有罪率は99.9%ですので、起訴されるということは、前科が付くこととほとんど同じであると考えておかなければなりません。

そのため、不起訴処分を獲得して前科を回避するためには、検察官の終局処分までに示談を成立させることを最優先とした対応をとることが重要ということができます。

 

判決

起訴された事実に争いがなければ、多くの場合、審理のための期日は1回だけで、2回目の期日で判決となります。

このようなケースでは、起訴されてから約1~2か月後に1回目の期日が設定され、1回目の期日から2週間程度で2回目の期日が設定され、全て合わせて約3か月以内には手続きが終了することがほとんどです。

1回目の期日では、50分程度の時間枠が取られ、次のような流れで手続きが進められます。

1回目の期日の流れ
人定質問

検察官による起訴状の朗読

黙秘権の告知

起訴された事実に対する意見の陳述(罪状認否)

冒頭陳述(検察官が立証しようとする事実の陳述)

証拠調べ

身元引受人などの情状証人の尋問

被告人質問

検察官による論告求刑、弁護人による弁論、被告人による最終陳述

2回目の期日は、判決が言い渡されるだけとなりますので、設定される時間枠としては5分程度のことがほとんどです。

既にお伝えしたように、検察官による終局処分までに示談を成立させて不起訴処分を獲得することを最優先とすべきですが、終局処分までに示談成立が間に合わなければ、次は、判決までに示談を成立させ、執行猶予付き判決や罰金刑判決の獲得を目指すこととなります。

 

不起訴(起訴猶予など)

起訴猶予や証拠不十分などで不起訴処分となれば、その時点で、その事件に対する刑事手続きは終了となります(身柄事件の場合、不起訴処分が決定した時点で、身柄も釈放されます)。

証拠不十分となり得るケースとしては、盗撮動画が一切残っておらず、容疑者も一貫して否認しているか黙秘しているような場合が考えられますが、あまり例がないといえるでしょう。

他方、起訴猶予となり得る典型的なものは、被害者との示談が成立し、被害届が取り下げられたというようなケースであり、通常は、起訴猶予による不起訴処分の獲得を目指すことになります

逮捕された後の流れ・身柄拘束からの早期釈放については、次のリンクも参照してください。

 

 

風俗店側からお金を要求、支払い義務は?

慰謝料を請求されたらどうなる?

盗撮が発覚した場合、風俗店側から、盗撮被害に遭った女性店員の精神的苦痛に対する慰謝料、(女性店員がショックで仕事を休めば)休業損害、(女性店員がショックで店を辞めれば)売上の減少額や新たに採用するコストなどについて、損害賠償を請求される可能性があります。

これらについては、風俗店側から適切な根拠資料をもって金額が立証されれば、支払義務が発生する可能性があります

しかし、慰謝料の相場は、盗撮の内容・時間・回数、動画をどのような目的で利用していたかなどによって大きく変化しますし、休業損害などについても、直近の収入を基礎として適切に計算する必要がありますので、事案毎にどの程度の金額が適切であるかを慎重に検討する必要があります

そのため、盗撮が発覚したその場で、「いくら払えば許してやる」などと言われたとしても、その金額が妥当かどうかの判断がつきませんし、後になって「前の支払は全体の一部だったから、残りを払え」などとトラブルが蒸し返されるリスクもありますので、その場で直ちに応じるべきではないでしょう

 

罰金を請求されたらどうなる?

風俗店によっては、入店前やサービス開始前に禁止行為の説明が行われ、違反した場合には罰金が発生するとの告知や掲示がなされていることもあり得ます。

罰金という表現からすれば、違反に対するペナルティや刑罰であるかのように感じられますが、風俗店側からは、民事上の損害賠償額をあらかじめ予定したものであり、事前に説明を受けて合意の上でサービスを利用したのだから支払義務がある、と主張されることが予想されます。

しかし、仮に風俗店側の主張するとおりであったとしても、あまりに高額過ぎる罰金の額が設定されている場合には、それについての合意は、公序良俗に違反して無効となることがあり得ます

したがって、仮に盗撮が発覚して罰金を請求されたとしても、その場で風俗店側に言われるがままの額の罰金を支払うべきではない、ということができます。

盗撮が発覚したその時点では気が動転していて、冷静な判断ができない可能性が高いですので、「何らかの金銭を支払う意思はあるけれども、妥当な金額がいくらかなど、弁護士に相談した上で対応する」などと説明して、持ち帰って検討する必要があります。

 

示談書を強要されたらどうなる?

風俗店によっては、あらかじめ風俗店側で作成している示談書への署名を強要するというケースがあるかもしれません。

通常、弁護士が関与して作成する示談書には、「示談の対象とする盗撮行為は何か」「示談金として、いつまでに、いくら支払うか」「第三者に口外しない」「個人情報を破棄する」「示談をもって一切の解決とする」などの内容を盛り込み、後になって金銭を要求されたりトラブルが蒸し返されたりすることを防止します。

しかし、風俗店側が用意している示談書は、その内容が適切であるかどうかがわかりませんし、後になって再び金銭を要求することが可能な内容になっている可能性も否定できません

そのため、この場合にも、示談書を持ち帰って検討したいと言い、弁護士に相談することが望ましいといえるでしょう。

 

 

悪質な風俗店へどう対応すればいい?

利用した店舗が悪質な風俗店であった場合、「今すぐ罰金を支払わなければ警察に通報する」「会社や家族にバラされたくなかったら示談書にサインしろ」「動画が残っているか確認するから、スマホを渡してパスワードを教えろ」「反社会勢力とつながっている」などと言って、罰金の支払や示談書へのサインを強要されることがあるかもしれません。

しかし、このように身体・名誉・財産に害を与えると脅して人を怖がらせることは、恐喝罪(刑法249条)や脅迫罪(刑法222条)に当たり得る行為であり、犯罪となる可能性があります

引用:刑法|e−GOV法令検索

自身にも盗撮をしてしまったという落ち度はありますが、そうだからといって、風俗店側の恐喝や脅迫が正当化されることはありません。

万が一、悪質な風俗店から恐喝や脅迫の被害に遭ったときには、言いなりになるのではなく、相手を刺激しないよう密かに録音を開始するなどしたうえで、身の安全を確保しながらその場を離れることに注力すべきです。

無事に相手から離れることができれば、一刻も早く弁護士に相談し、被害届を提出すべきかどうかなどを検討してください。

なお、あまりの恐怖から、相手に言われるがまま罰金を支払ってしまったという場合であっても、詐欺又は強迫による取消し(民法96条1項)を行うことによって、支払ってしまった金銭を取り戻すという方法も残されていますので、泣き寝入りするのではなく、弁護士に相談することをお勧めします。

引用元:民法|e−GOV法令検索

 

 

まとめ

風俗での盗撮は、迷惑防止条例違反、軽犯罪法違反、建造物侵入罪のいずれにも該当する可能性がある行為であり、犯罪です。

しかし、初犯であり常習性もないケースであれば、被害者に謝罪して示談を成立させるなどして適切に対応することにより、逮捕の回避や不起訴処分を期待することもできます。

盗撮が発覚したその場で、風俗店側から、慰謝料や罰金を要求されたり、示談書へのサインを強要されることがあるかもしれませんが、事案に応じた適切な金額かどうかを確認しなければなりませんし、トラブルの蒸し返しを防止できる内容で示談を成立させる必要がありますので、現場で相手の要求に応じることは得策ではありません。

盗撮が発覚すれば、刑事手続きへの対応と風俗店との示談交渉の2つを並行して行わなければならないこととなりますので、個人で対応するにはどうしても限界がありますので、弁護士に依頼して全てを委任することが望ましいといえます。

盗撮事件でお悩みの方は、刑事事件に強い弁護士が最大限サポートいたしますので、ぜひお早めにご相談ください。

 

 


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