管財事件とは?

破産には、「同時廃止」と「管財事件」の2つがあります。

同時廃止の場合、基本的にはスピーディーに終了します。

これに対して、管財事件となると、手続は長期化し、かつ、裁判所に収める予納金の額が増加するため申立人(債務者)には大きな負担となります。

すなわち、管財事件の場合、裁判所から破産管財人が選任されて、申立人の資産や免責不許可事由がないかを調査したりします。また、申立人にめぼしい財産があれば、それを換価(お金に代える)して債権者に配当したりします。そのため手続が長期化するのです。

また、この破産管財人には、弁護士が選任されるのですが、その破産管財人にも報酬が必要です。この報酬に当てるために、一定額の予納金を収める必要があるのです。

なお、予納金の額については、こちらをご覧ください。

そのため、「同時廃止」で済むか、それとも「管財事件」となるかは、債務者にとって、重大なポイントとなるのです。

 

 

管財事件となるのは?

六法全書破産に関して、法律は、「裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をしなければならない。」と規定しています(破産法216条1項)。

したがって、「破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるとき」に該当すれば同時廃止、これに該当しなければ管財事件、という判断がなされることとなります。

ただ、これだけでは同時廃止・管財事件の該当性判断として不明確です。

そこで、福岡県弁護士会と福岡地裁は、どのような場合に同時廃止となり、管財事件となるかについての基準を申し合わせています。

その申し合わせが以下の基準です。

福岡における同時廃止基準

【福岡における同時廃止基準】

第1 財産の価額による判断

1 破産手続開始決定時において、債務者が有する次の(1)から(7)までの財産の項目ごとの合計額のいずれかが20万円以上である場合は、管財事件とする。

(1)預貯金1及び代理人弁護士への預け金
(2)保険契約解約返戻金
(3)居住用家屋以外の敷金等返還請求権
(4)退職金債権の8分の1
(5)自動車2
(6)家財道具その他の動産3
(7)債権、有価証券その他の財産権3

2 現金、預貯金4及び代理人弁護士への預け金については、その合計額が一定額を超える場合には、管財事件とする。

上記の一定額は、標準的な世帯の1か月の必要生計費(33万円)を参考とする。

 

第2 事件の類型による判断

次の1から5までに該当する場合には、破産手続開始申立ての段階で「破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足する」と認めることが類型的に困難であることなどから、管財事件とする。

ただし、破産管財人による調査・換価を要しないことが破産手続開始申立て段階の資料のみから明らかである場合5は、この限りでない。


1 申立直前の給与・年金を原資とする普通預金を除く。
2 初度登録から5年を経過した自動車については、なお相当な価値があることが類型的にうかがわれるもの(ハイブリッド車、電気自動車、外国製自動車、排気量2500ccを超えるものなど)を除き、価額を0円とみなすことができるものとする。
3 差押えを禁止されているものを除く。
4 申立直前の給与・年金を原資とする普通預金も含む。
5 例えば、4(否認対象行為調査型)については、現有の破産財団がなく、かつ財団から逸失している財産があっても否認権行使によって回収すべき財産がないことが、破産手続開始申立て段階の資料のみから明らかである場合などが挙げられる。なお、2(不動産型)については、不動産の実勢価格や被担保債権額、売却の難易等を考慮するものとする。

 

1 法人代表者及び個人事業者型
債務者が法人代表者の地位にあり、若しくは過去にその地位にあった場合、又は現に個人事業を営んでおり、若しくは過去に営んでいた場合

2 不動産型
破産財団に不動産がある場合

3 資産調査型
債務者の資産状況(資産の存否や価額及びその取得や処分の経緯等)や負債増大の経緯等が明らかでない場合

4 否認対象行為調査型
否認権の行使の対象となる行為が存在する可能性がある場合

5 免責調査型
免責の許否を判断するのに、管財人による免責不許可事由の有無又は裁量免責の可否についての調査を要する場合

以上

福岡においては、2005年に同時廃止基準(以下「旧基準」といいます。)が策定されていました。

しかし、10年以上経過し、その間に、日本の社会経済情勢や多重債務者を巡る問題状況は大きく変化しました。

このような背景から、2017年に新たな基準が策定され、同年10月から運用が開始されました。

以下、旧基準と大きく異なる点について、簡単にご紹介します。

 

 

旧基準との変更点

管財事件に該当する場合、事前に管財費用の準備を行わなければなりません。

また、破産手続の長期化から、債務者は財産管理が制限されるなど、大きな影響が生じます。そのため管財事件に該当するか否か、本基準を参考にして検討されていください。

 

振り分けの基準額

旧基準 新基準
債務者の各種財産の「総額」が、50万円以上の場合に管財事件 「財産の項目ごと」(例えば、「預貯金」、「保険解約返戻金」等のそれぞれの項目ごと)の合計額のいずれかが20万円以上の場合に管財事件
【理由】福岡の管財事件の最低予納金額は、原則として、官報公告料を除き20万円とされており、これが最低限の手続費用、すなわち、破産管財人の報酬等として確保されるべき金額として運用されている。

 

財産

旧基準 新基準
第1の財産の価額による判断に「現金」を含めていた。 第1の財産の価額による判断に「現金」を含めない。
【理由】99万円までの現金は「破産財団」に属しないとされている(破産法34条3項1号)ため、進行振り分けに際して積算すべき債務者の財産に現金を含めないこととした。

 

預貯金について

旧基準 新基準
申立直前の給与・年金を原資とする普通預金も精算対象 「(1)預貯金」について、「申立直前の給与・年金を原資とする普通預金を除く」

【理由】現代社会において、債務者の生計の基盤となる給与・年金収入は、債務者の預貯金口座で管理されるのが一般的となっている。

 

自動車について

旧基準 新基準
5年落ちの自動車については、外車もしくは排気量2500ccを超えるものでない限り、無価値とみなしていた。 5年落ちの自動車については、なお相当な価値があることが類型的にうかがわれるもの(ハイブリッド車、電気自動車、外国製自動車、排気量2500ccを超えるものなど)を除き、無価値とみなす。
【理由】近時は、燃費や環境性能が向上したいわゆるエコカーが広く普及しており、排気量にかかわらず、車両価格が高額な自動車もみられるようになっている。

 

現金等の判断

旧基準 新基準
新設 現金、預貯金(申立直前の給与・年金を原資とする普通預金も含む。)及び代理人弁護士への預け金の合計額が33万円を超える場合は管財事件
【理由】債務者が多額の現金等を保有している場合、そのこと自体が、申告のあった現金以外にも相当程度の財産を保有しているとの疑いを抱く事情となり得る。

 

個人事業者型

旧基準 新基準
過去に事業を営んでいた場合を「原則として6か月以内」と限定していた。 過去に事業を営んでいた時期を限定せず個別判断

※事業に関する補足説明書の提出については、従来どおり、債務者が直近3年間で事業をしている場合には、提出

【理由】申立てが遅延すればするほど破産管財人の調査を要しないことになって不合理な結果を招くおそれがある。

 

不動産型

旧基準 新基準
管財事件に該当しない場合として当該不動産の被担保債権額が「固定資産課税評価額の1.3倍を超えている場合」を明記 オーバーローンであったとしても、直ちに同時廃止として進行することとはしない。

※申立書類の書式や提出資料の範囲について当面は現在の取扱いを維持

【理由】不動産の実勢価格は地域ごとの実情、不動産取引の時々の実情に左右される面が大きいといった特質がある

 

資産調査型

旧基準 新基準
管財事件になる場合として「保証債務や住宅ローンを除いた債務が3000万円以上ある場合」を明記 債務額にかかわらず、債務者の資産状況や負債増大の経緯等が明らかでない場合、管財事件とする。
【理由】3000万円の根拠が不明確であった。

 

管財事件に該当する場合、事前に管財費用の準備を行わなければなりません。

また、破産手続の長期化から、債務者は財産管理が制限されるなど、大きな影響が生じます。

そのため管財事件に該当するか否か、本基準を参考にして検討されていください。

 

 

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