損害賠償の金額の決め方は、
というものになります。
損害賠償を請求する際には、正確に損害賠償の金額を算定することが大切になります。
損害賠償請求を受ける立場にある場合も、相手方が請求してきている損害賠償の金額が妥当なものなのかを確認するため、損害賠償の金額を見積もることが必要になります。
そこで、今回の記事では、損害賠償の金額の決め方、損害賠償の対象となる費目などについて、損害賠償の種類などにも触れながら解説していきます。
目次
損害賠償の金額の決め方とは、損害賠償の金額を決める方法のことです。
損害賠償の金額は、次のような手順で決めていきます。
損害賠償の金額を決める際には、まずは、どのような損害が生じたかを明確にしていきます。
たとえば、ケガをした場合(人身損害)であれば、病院で検査を受け、どのようなケガがあったかを調べます。
その後治療を続けていく中でも、治療に必要な費用(治療費、入院雑費、付添費、通院交通費など)や必要な治療期間、仕事を休む必要の有無、後遺症の有無などがはっきりし、損害の内容、程度がより鮮明になっていきます。
物的損害の場合は、何がどの程度壊れたか、どのように処分することが必要か、修理は可能か、対応にかかる人件費はあるかなどについて確認していきます。
発生した損害がはっきりしてきたら、損害賠償の対象となる範囲かどうか(因果関係があるか)についても検討することが必要です。
どのような損害が損害賠償の対象となるかがはっきりしてきたら、それを費目ごとに分類します。
損害賠償の費目としては、たとえば次のようなものがあります。
費目 | 内容 |
---|---|
慰謝料 | 精神的苦痛を償うために支払うお金 |
逸失利益 | 事故などにより後遺障害が残った又は死亡した場合に、事故などがなければ得られていたであろう収入に対する補償 |
休業損害 | ケガの治療・療養のために仕事を休まざるを得なくなったことで生じた減収に対する補償 |
治療費 | ケガの治療に要する費用。薬剤費、検査費用などを含む |
修理費 | 破損した物の修理に要する費用 |
評価損 | 事故歴により物の時価評価額が下がる損害 |
それぞれの費目について、それぞれ相場や計算方法がありますので、まずは、生じた損害を分類していくことになります。
ただし、分類すること自体が目的ではありませんので、分類できない損害、分類の仕方が分からない損害については、無理に分類しなくても問題ありません。
損害を費目ごとに分類できたら、それぞれの相場や計算方法に従って、損害額を算定していきます。
上で挙げた費目に関する詳しい説明は、以下のページをご参照ください。
各費目の損害額を算定することができたら、全ての費目の損害額を合算し、損害賠償の金額を決めます。
損害賠償の請求には、法律上の根拠(法的根拠)が必要です。
この法的根拠によって分類すると、損害賠償請求は、主に次の2種類に分けられます。
①と②の違いは、②債務不履行に基づく損害賠償請求は当事者間に契約関係がある場合に請求することができ、①不法行為に基づく損害賠償請求は契約関係がない場合でも請求できるという点にあります。
それぞれについて簡単にご紹介します。
不法行為に基づく損害賠償請求は、加害者の故意又は過失によって損害を受けた場合に行うことができます(民法709条)。
不法行為に基づく損害賠償請求をするには、加害者の故意又は過失による行為があって損害が発生したこと、損害と加害者の行為の間に因果関係があることなどが必要になります。
不法行為に基づく損害賠償請求をする事例としては、次のようなものがあります。
不法行為は、債務不履行の場合と違い、当事者間に契約関係がない場合でも成立します。
ただし、当事者間に契約関係がある場合にも、債務不履行と同時に不法行為が成立することがあります。
たとえば、医療ミスの場合、以下の両方の請求が可能です(ただし、賠償金を二重取りできるわけではありません。)。
債務不履行に基づく損害賠償責任は、契約で定められた義務を果たさなかった(債務不履行があった)ために相手方に損害が生じた場合の責任です(民法415条1項)。
引用元:民法 | e-Gov 法令検索
具体例としては、以下のようなものがあります。
債務不履行に基づく損害賠償が認められるには、その債務不履行について債務者(義務を履行するべき側)に故意又は過失があり、さらに、生じた損害と債務不履行の間に因果関係があることなどが必要となります。
債務不履行に関する説明、債務不履行と不法行為の相違点については、以下のページも参考になります。
損害賠償には、上に挙げた2つのほかにも、以下のようなものがあります。
不法行為に基づく損害賠償請求の金額は、発生した損害を金銭的に換算した額となります。
金銭的に換算するに当たっては、「損害賠償の金額の決め方とは?」の項でご説明したとおり、発生した損害を調査して明確にし、損害を各費目に分け、それぞれの費目の相場、計算方法に沿って金額を算定し、それらを合算することになります。
不法行為の損害賠償の費目は、既にご説明したとおり、慰謝料、逸失利益、休業損害、治療費、修理費などが主なものになります。
損害の内容は事案によって様々ですので、発生した被害について詳細に検討し、被害額を見積もっていくことが重要になります。
債務不履行に基づく損害賠償請求の場合も、損害賠償の金額の決め方は、不法行為の場合と同様に、債務者の債務不履行によって生じた損害を調べ、費目ごとに分類し、金銭に換算していくというものになります。
債務不履行に基づく損害賠償の費目、内容は、不法行為と共通する部分もありますが、契約や債務不履行の態様によって様々です。
損害賠償には、ケースごとに様々な内容が含まれ、請求できる金額の算定方法も事案ごとに様々です。
たとえば、人身事故の場合であれば、典型的には、慰謝料、逸失利益、治療費などが損害賠償の内容となります。
ただ、これらの項目を算定する際には、それぞれのケースの事情が大きく影響してきます。
たとえば、逸失利益や休業損害を算定する際、原則的には、被害者が得ていた収入を基に計算します。
しかし、被害者が主婦で収入がない場合や学生・子どもの場合、被害者に障害があった場合などには、それぞれの事情を考慮して、損害額を算定することになります。
ケースによっては、将来必要となる介護費用(将来介護費)、家や車のリフォーム費用なども損害賠償の内容に含まれることがあります。
このように、損害賠償で何をいくらまで請求できるかはケースによってそれぞれ異なります。
賠償金の内容については、以下のページもご参照下さい。
交通事故の損害賠償の金額の決め方には、以下の3通りの基準があります。
交通事故の損害賠償の金額を決める際には、場面に応じてこれらの基準を使い、各費目の損害賠償額を算定していくことになります。
上に挙げた基準の中では、弁護士基準が、最も被害者に有利なものとなっています。
弁護士基準は、内容的にも最も公正かつ客観的なものとなっており、裁判所でも用いられています。
一方、最も金額が低くなるのは、自賠責基準です。
任意整理基準による算定額は、自賠責基準よりも少し高くなる程度のことが多いです。
なお、加害者側の保険会社から提示される示談金額は、任意保険基準で算定されているため低めになっている場合が多くなっており、注意が必要です。
各基準での慰謝料額を比較した記事を、以下のページで掲載しておりますので、興味のある方はぜひご一読ください。
交通事故の損害賠償の費目には、次のようなものがあります。
具体的な賠償金額は、被害の程度によって大きく異なります。
軽いケガや物損だけで済んだ場合には、損害賠償額は数十万円程度にとどまることもあります。
一方、被害者が大けがをした、死亡したといった場合には、数百万円~数千万円、あるいは1億円を超える損害賠償責任が発生することもあります。
賠償金に関しては、以下のページも参考になります。
自転車事故の場合も、自動車による交通事故の場合と同じように損害賠償の金額を決めます。
自転車事故の場合には、自賠責保険からの支払いは受けられないので、自賠責基準が使われることはありません(任意保険会社が自賠責基準で賠償提示してくることはあります)。
そのため、自転車事故では、基本的に、弁護士基準に従って損害賠償の金額を決めることになります。
ただ、自転車の運転者などが自転車保険や個人賠償保険に加入している場合には、保険会社は、自社の任意保険基準を使って示談金額を算定してきます。
そのため、保険会社からの提示額は、自動車事故の場合と同様低めに抑えられていることが多くなっており、注意が必要です。
自転車事故の損害賠償の金額も、自動車事故の場合と同様、被害の程度によって大きく変わります。
被害者のケガが擦り傷程度の場合や自転車や積荷が壊れただけの場合であれば、数万円~数十万円の損害賠償で済むでしょう。
しかし、被害者に後遺症が残るような大けがを負わせてしまった、被害者を死亡させてしまったという場合には、数百万円から数千万円、場合によっては1億円を超える損害賠償が必要になることもあります。
自転車事故の損害賠償については、以下のページで詳しく解説しています。
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仕事の事故(労災)の損害賠償の金額も、人身損害ですので、交通事故や自転車事故の場合と同様に決めていきます。
労災の場合、自賠責保険も任意保険も関係してこないので、弁護士基準によって損害賠償の金額を決めていきます。
労災の損害賠償については、以下のページでも解説しています。
医療過誤(医療ミス)の損害賠償の金額を決める場合にも、交通事故の弁護士基準を参考にします。
ただ、医療過誤の場合、被害者に元から病気やケガがありますので、この点を考慮され、損害賠償の金額を減額されることがあります。
医療関係ではほかに、医師による説明が不十分だったとの説明義務違反に基づいて、慰謝料を請求する場合があります。
この場合の慰謝料額は、事案によって、10万円~200万円程度の範囲となることが多いです。
医療過誤の賠償金の相場については、以下のページもご参照ください。
その他の人身傷害事故の損害賠償の金額は、基本的に、交通事故の算定基準のうちの弁護士基準に沿って算定することになります。
上に見てきたように、人身損害の損害賠償の金額を決める際には、弁護士基準の内容を調べて理解し、自分の場合に当てはめて計算を行うことになります。
これは、人身損害の損害賠償を算定した経験がない方にとっては、大変手間のかかる負担の大きい作業になります。
そこで、当事務所では、人身損害の損害賠償の費目のうち
について、どなたでも手軽に相場をご確認いただけるよう、交通事故賠償金計算シミュレーターをご用意いたしました。
このシミュレーターをご利用いただけば、ご年齢、ご年収、入通院期間などの基本的な情報をご入力いただくだけで、それぞれの方の状況に応じた慰謝料、逸失利益、休業損害の相場をご確認いただくことができます。
ご利用に際して、お名前、電話番号、メールアドレスなどの個人情報をご入力いただく必要はございません。
後で当事務所からご連絡するようなこともなく、算定結果もその場ですぐにご確認いただけます。
ご関心がおありの方は、以下のリンクから、ぜひ一度お気軽にお試しください。
精神的苦痛に対する慰謝料については、個別の被害者の精神的苦痛そのものを金銭的に評価することが困難なため、各種のケースに関する相場を参考に見積もっていくことになります。
人身被害が生じている(交通事故、労災などの人身事故など)場合、以下の慰謝料を請求することができます。
それぞれの慰謝料の金額の相場は、以下のとおりです(なお、以下でご紹介する金額は、弁護士基準によるものになります。)。
死亡慰謝料の相場は、被害者の家族内での立場などによって、以下のようになります。
後遺障害慰謝料の金額の相場は、後遺障害等級に応じて、次のようになっています。
弁護士基準 | |
---|---|
第1級 | 2800万円 |
第2級 | 2370万円 |
第3級 | 1990万円 |
第4級 | 1670万円 |
第5級 | 1400万円 |
第6級 | 1180万円 |
第7級 | 1000万円 |
第8級 | 830万円 |
第9級 | 690万円 |
第10級 | 550万円 |
第11級 | 420万円 |
第12級 | 290万円 |
第13級 | 180万円 |
第14級 | 110万円 |
入通院慰謝料は、実際の入通院期間をもとに、以下の表を用いて算出します(表2は、他覚所見のないむちうち、軽い打撲・挫傷の場合に用います。)。
なお、通院期間に比べて実際に通院した日数が少なすぎる場合には、実際に通院した日数の3~3.5倍程度を通院期間とみなされてしまうことがあります。
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不貞行為(不倫や浮気)があった場合には、不貞行為をした配偶者や不倫相手などに対し、不法行為に基づいて損害賠償を請求することができます。
この場合に請求できる損害賠償は、不貞行為による精神的苦痛に対する慰謝料です。
不貞行為があった場合の慰謝料の相場は、
となっています。
浮気・不倫の慰謝料の相場については、以下のページもご覧ください。
正当な理由なく婚約破棄された場合には、婚姻という契約の債務不履行があったとして、慰謝料を請求することができます。
慰謝料の相場は、事案によって、数十万円~数百万円となっています。
なお、婚約は契約の一種とはいっても、相手に義務の履行(結婚)を強制することはできません。
「損害賠償を請求したいが、金額をどのように算定したらよいのかわからない」
「自分で損害賠償額を算定してみたが、妥当な金額になっているのか自信がない」
「相手方から損害賠償額を提案されたが、適正な金額になっているのかわからない」
という場合には、損害賠償に強い弁護士に相談してみましょう。
損害賠償に強い弁護士に相談すれば、次のようなメリットが得られます。
さらに、弁護士に示談交渉などを依頼すれば、
といったメリットもあります。
損害賠償について弁護士に相談、依頼することのメリットについては、以下のページでもご紹介しています。
物損事故で請求できる賠償金の費目としては、たとえば次のようなものがあります。
物損事故の場合の損害賠償については、以下のページで詳しく解説しています。
同じ交通事故であっても、軽く車の塗装に傷がついた程度であれば数万円~十数万円の損害賠償となりますが、被害者が死亡した、被害者に重い障害が残ったという場合であれば、1億円を超える損害賠償が必要になることもあります。
このように、損害賠償の金額には、事案によって非常に大きな開きがあります。
今回は、損害賠償の金額の決め方について解説しました。
損害賠償の金額の決め方は、損害を各費目に分類し、それぞれの費目について、それぞれの相場や計算方法に従って損害額を算定していき、それらを合算するというものになります。
損害賠償の金額を的確に決めていくためには、損害賠償にくわしい弁護士に相談することが重要です。
当事務所でも、様々な分野の問題に対応する専門部署(企業法務部、離婚事件部、人身障害部など)を設置し、きめ細かく質の高い対応を行える体制を整え、損害賠償についてお困りの方を全力でサポートしています。
電話やオンラインによる全国からのご相談もお受けしております。
損害賠償についてお困りの方は、ぜひ一度、当事務所まで、お気軽にご相談ください。