推定相続人とは?具体例でわかりやすく図解


弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA



推定相続人とは、「将来相続が開始した場合に相続人になるはずの(予定の)人」のことです。

ただし、死亡・離婚・養子縁組・相続廃除などの事情の変化によって、推定相続人は変わる可能性があります。

法定相続人との違いは、「相続人になる可能性」ではなく「現時点で相続人になる予定」である点です。

本記事では、推定相続人の意味と基本知識、相続人・法定相続人との違いなどについて、相続に強い弁護士が図解による具体例を用いながらわかりやすく解説します。

推定相続人とは?

推定相続人の意味

推定相続人とは、「(将来)相続が開始した場合に相続人となるべき者(相続人になる予定の人)」です (民法第892条)。

  • 現時点でまだ相続は発生していない
  • 実際に相続人になるかはまだ確定していない

という点がポイントです。

最終的に相続人になるかどうかは、原則としてある人が亡くなった時点で確定します。

相続の発生していない段階では、相続人になることはあくまで予定(相続人になることが「推定」される)にすぎません。

そのため、「推定」相続人と呼称されます。

 

推定相続人と相続人との違い

推定相続人と相続人の大きな違いは、①相続開始前か開始後か、②遺産を相続できる地位にあることが確定しているか、という2点にあります。

推定相続人と相続人との違い

そもそも「相続人」とは、相続の開始時点(相続開始後)において、「被相続人(亡くなった方のことです。)の財産に属した一切の権利義務を承継」する地位にある人のことです(民法第896条本文)。

「被相続人の財産に属した一切の権利義務」とは、被相続人のプラスの財産・マイナスの財産(借金など)のすべてを意味します。

以上の点を整理すると、「相続人」にあたる場合には、被相続人の死亡(=相続の開始)という事実によって当然に、その時点で被相続人の一切のプラスの財産・マイナスの財産を引き継ぐ地位にあることが確定します。

これに対して、「推定相続人」は、相続開始前の時点で被相続人の一切の権利義務を相続するはずの(予定の)人を指す言葉であり、実際に遺産を相続するかどうかは未確定です。

相続の開始時点か 遺産の相続が確定しているか
推定相続人 NO(相続開始前) 確定していない
相続人 YES(相続開始時点) 確定している

例えば、現時点で「推定相続人」にあたる妻がいるケースで考えてみましょう。

このケースで、相続の開始までに何の事情の変化がなければ、基本的に妻はそのまま相続人となります。

これに対して、相続の開始までに妻と離婚した場合や、妻が先に亡くなった場合には、妻が「相続人」になることはありません。

このように、推定相続人はあくまで暫定的(未確定)な存在であり、後に変化する可能性があります。

「推定相続人」にあたる妻がいるケース

死亡や離婚以外にも、相続廃除、相続欠格、離縁などによって推定相続人としての地位を失う(=将来相続人になる予定ではなくなる)場合があります。

推定相続人が変化するケースについては、後ほど解説します。

 

推定相続人と法定相続人との違い

推定相続人と法定相続人の違いは、「予定」か「可能性」か、という点にあります。

 

法定相続人とは

「法定相続人」とは「法律によって定められた、相続人になる可能性がある人」のことです。

すでに解説したように、「相続人」にあたる場合には、相続の開始によって被相続人の一切の権利義務を引き継ぐという重大な効果が発生します。

そのため、相続人になる可能性がある人(相続人になることができる人)の範囲は法律で定められています(民法第887条、889条、890条など)。

この法律で定められた(「法定」の)範囲に含まれる人が「法定相続人」です。

 

法定相続人の範囲

「法定相続人」にあたる(含まれる)のは、被相続人の配偶者(妻・夫)、子ども、直系尊属(父母・祖父母等)、兄弟姉妹です。

これ以外の人は原則として相続人になることができません。

 

法定相続人の順位

また、すべての法定相続人が実際に「相続人」として遺産を相続するわけではありません。

法定相続人には、以下のような優先順位があります。

常に相続人 配偶者
第1順位 子ども
第2順位 直系尊属(父母・祖父母等)
第3順位 兄弟姉妹

実際に相続が開始した時点で上の順位の法定相続人がいる場合、下の順位の法定相続人は遺産を相続することができません。

 

「予定」と「可能性」の違い

ここまで解説してきたように、法定相続人は「相続人になる可能性がある人」です。

これに対して、推定相続人は「相続人になる予定の人」であるという違いがあります。

「法定相続人」の方が「推定相続人」よりも範囲が広く、実際に相続するかどうかが不確実な人(特に第2・第3順位の相続人)も含まれます。

 

具体例

次のような家族関係にあるAさんの例で考えてみましょう。

Aさんの家族関係イメージ

この例で、Aさんの「法定相続人」にあたるのは、妻、娘、父、母、兄の5人です。

これに対して、Aさんの「推定相続人」にあたるのは、妻と娘の2人だけです。

上で解説したように、法定相続人には優先順位があるためです。

仮に現時点で相続が発生した場合、父母(第2順位)や兄(第3順位)は娘(第1順位)より順位が低いため、相続人になることができません。

※妻(配偶者)は常に相続人となります。

したがって、現時点で「相続人になる予定である」といえる(推定相続人にあたる)のは、Aさんの妻と娘の2人だけです。

以上のように、法定相続人と推定相続人は、相続人となる「可能性」か、それとも相続人となる「予定」か、という違いがあります。

推定相続人とは、「法定相続人のうち、現時点で相続が開始した場合に相続人になる予定の人」とい
うこともできます。

法定相続人と推定相続人の関係

 

 

推定相続人をわかりやすく図解

基本的な推定相続人の考え方

「推定相続人と法定相続人との違い」の項目で解説したように、ある人の法定相続人の中で高い順位にある人だけが「推定相続人」にあたります。

※配偶者は常に推定相続人になります。

したがって、推定相続人を特定するためには、現時点での①法定相続人を洗い出し、②その中で順位の高い人を確認する、というプロセスを踏む必要があります。

 

具体例

推定相続人の図解

例えば、上の図でAさんの「法定相続人」にあたるのは、妻、父・母、兄・妹です。

兄の子である甥は法定相続人にあたりません。

現時点で相続が開始した場合、妻は常に相続人になるため推定相続人にあたります。

兄・妹(第3順位の相続人)はより高い順位の父・母(第2順位の相続人)がいるため、推定相続人にはあたりません。

以上より、Aさんの推定相続人は妻、父・母の3人です。

 

推定相続人が変化するケース

事情の変化によって推定相続人は変わることがあります。

「現時点の推定相続人が将来も同じとは限らない」という点がポイントです。

推定相続人が変化する代表的なケースとしては、以下のようなものがあります。

  • 子どもの出生
  • 養子縁組・離縁
  • 結婚・離婚・再婚
  • 推定相続人の死亡・代襲相続
  • 推定相続人の廃除
  • 相続欠格

以下では、いくつかのケースについて具体例をあげて解説します。

ケース①離婚・再婚によって推定相続人が変わるケース

Xは、2010年にAと結婚し、Aとの間に子どもBが生まれた。

Xは2014年にAと離婚し、BはAが引き取った。

Xは2017年にCと再婚した。

Cには前の夫との間の子どもDがいる。

離婚・再婚によって推定相続人が変わるケース

このケースで、現時点でのXの推定相続人は、現在の妻Cと前妻との間の子どもBです。

2014年にXがAと離婚するまで、Xの推定相続人はAとBでした。

離婚によってAは「配偶者」ではなくなったため、推定相続人としての地位を失いました。

AがBを引き取って親権を持った場合でも、Bが「Xの子ども」であることに変わりはありません。

そのため、離婚後もBはXの第1順位の法定相続人であり、推定相続人にあたります。

また、2017年の再婚によってXの現在の妻(配偶者)であるCが推定相続人になりました。

Cの連れ子であるDは、XとCが再婚しただけで「Xの子ども」になるわけではありません。

Dが「Xの子ども」として推定相続人になるためには、XとDとの間で養子縁組をする必要があります。

 

ケース②父母の死亡によって兄弟姉妹が推定相続人になるケース

Xは妻Aと2014年に結婚したが、Aとの間に子どもはいない。

Xの祖父母と父は、Xが幼い頃に亡くなっている。

その後、2020年にXの母も亡くなった。

Xには兄Bと妹Cがいる。

父母の死亡によって兄弟姉妹が推定相続人になるケース

このケースで、現時点におけるXの推定相続人は妻Aと兄B・妹Cです。

2020年に母が死亡するまで、Xの推定相続人は妻Aと母(第2順位の法定相続人)でした。

母が亡くなったことにより、第2順位の推定相続人がいなくなりました。

その結果、第3順位の法定相続人である兄Bと妹Cが繰り上がって推定相続人となります。

 

ケース③子どもの死亡によって孫が推定相続人になるケース(代襲相続)

Xには妻Aとの間に生まれた子Bがいたが、Bは2024年に亡くなった。

Bには子ども(Xにとっての孫)Cがいる。

子どもの死亡によって孫が推定相続人になるケース(代襲相続)

このケースで、現時点におけるXの推定相続人は、妻Aと孫Cです。

2024年にBが死亡するまで、Xの推定相続人は妻AとB(第1順位の法定相続人)でした。

Bは相続開始前に亡くなったことにより、相続権を失います(推定相続人としての地位を失います)。

このような状況でXの相続が開始した場合、亡くなったXの子どもC(Xにとっての孫)が、Bの代わりにXの遺産を相続します。

このように、本来の相続人の代わりにその子どもが遺産を相続することを「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」といいます。

このケースではBの死亡によって代襲相続が発生し、推定相続人がBからCへと変わっています。

 

推定相続人になる人・ならない人一覧

以下は、よく問題になる推定相続人になる人・ならない人の一覧です。

関係 推定相続人になるか 条件・備考
配偶者 ○ 婚姻中のみ(離婚したら✕)
子ども ○ 第1順位(養子や認知された子どもも○)
孫 ✕ / △ 代襲相続の場合は例外的に推定相続人
父母 △ 子どもがいない場合(第2順位)
兄弟姉妹 △ 子どもや父母がいない場合(第3順位)
内縁配偶者 ✕ 法律上の婚姻関係が必要
再婚者の連れ子 ✕ 養子縁組が必要

 

 

推定相続人の廃除について

推定相続人の廃除とは

推定相続人の廃除(相続廃除)とは、相続人の意思で特定の推定相続人の相続権を失わせる制度です。

 

相続廃除の条件

相続廃除をするためには、以下のような重大な事情があることが必要です。

  • 被相続人への虐待
  • 被相続人に対する重大な侮辱
  • その他の著しい非行

単に不仲というだけでは認められません。

 

 

相続廃除の対象

相続廃除の対象となるのは、「遺留分を有する推定相続人」です。

そもそも「遺留分(いりゅうぶん)」とは、「兄弟姉妹以外の相続人」に対して法律上保障されている遺産の最低限の取り分のことです(民法第1042条第1項)。

したがって、遺留分のない兄弟姉妹は相続廃除の対象になりません。

兄弟姉妹に遺産を渡したくない場合には、遺言書を作成して兄弟姉妹以外にすべての遺産を取得させてしまえば足りるからです。

 

廃除の方法

廃除の方法には次の2つがあります。

 

①家庭裁判所への申立て

被相続人が生前に家庭裁判所への申立てを行う方法です。

被相続人が生前に家庭裁判所への申立てを行う方法

相続廃除の申立てが認められた場合、その時点で推定相続人としての地位を失うことになります。

 

②遺言による廃除

被相続人が遺言書を作成して廃除の意思を示し、被相続人の死後に遺言執行者が家庭裁判所への申立てを行う方法です。

相続廃除の申立てが認められた場合、相続開始の時点(被相続人が亡くなった時点)に遡って推定相続人の地位を失うことになります。

遺言による廃除

 

相続欠格との違い

相続廃除と似ている制度として、「相続欠格(そうぞくけっかく)」があります。

「相続欠格」とは、相続によって利益を受けるために違法な行為をした人について、法律上当然に相続権を失わせる制度です。

いずれも相続権を失わせる点で共通していますが、相続廃除は被相続人の意思で相続権を失わせるのに対して、相続欠格は被相続人の意思にかかわらず、法律上当然に相続権を失わせるという違いがあります。

相続欠格にあたるのは、法律で定められている次の5つの場合です(民法第891条)。

  1. ① 殺人罪・殺人未遂罪を犯し、刑に処せられた場合
  2. ② 被相続人が殺害されたことを知りながら、告発等をしなかった場合
  3. ③ 被相続人が遺言の作成や取り消し・変更をしようとしていることを知って、それを詐欺や恐喝で妨害した場合
  4. ④ 被相続人に対する詐欺や脅迫を行って、被相続人に遺言の作成や取り消し・変更をさせた場合
  5. ⑤ 被相続人の遺言書を発見して、これを偽造・変造・破棄・隠匿した場合

これらのいずれかに該当した場合、家庭裁判所への申立て等の手続きなしに、当然に推定相続人としての地位を失います。

 

 

推定相続人についてのQ&A

推定相続人には遺留分がありますか?


兄弟姉妹以外の推定相続人には遺留分があります。

ただし、相続開始前における「推定相続人」の段階での遺留分は潜在的な権利にすぎず、具体的な権利主張をすることはできません。

そもそも「遺留分」とは、兄弟姉妹以外の相続人に法律上保障された遺産の最低限の取り分のことです(民法第1042条第1項)。

遺留分を侵害された「相続人」は、侵害の原因となっている遺贈や生前贈与を受けた人に対して、金銭の支払いを請求することができます(民法第1046条第1項)。

このように、具体的な遺留分の主張(請求)は、「相続人」としての地位が確定した相続の開始後に限って行うことができます。

遺留分の侵害の有無や侵害額は、相続が開始してはじめて確定するためです。

もっとも、以下のような理由から、推定相続人の段階であっても潜在的な遺留分が保障されていると考えられます。

  • 民法第892条は「遺留分を有する推定相続人が」という文言を使用している
  • 民法第1049条第1項は、家庭裁判所の許可を得て「相続の開始前(筆者注:推定相続人の段階)における遺留分の放棄」をすることができる旨を規定している

以上より、兄弟姉妹以外の推定相続人には潜在的な遺留分があります。

 

推定相続人は誰がなる可能性がありますか?


推定相続人になる可能性があるのは、法定相続人です。

つまり、配偶者(妻・夫)、子ども、父母・祖父母・曽祖父母、兄弟姉妹です。

法定相続人のうち誰が実際に推定相続人となるのかは、法定相続人の順位によって決まります。

 

どういった状況で推定相続人は変わりますか?


推定相続人が変わるのは、子どもの出生や養子縁組・離縁、結婚・離婚・再婚、推定相続人の死亡・代襲相続、推定相続人の廃除、相続欠格などが発生した場合です。

詳しくはこの記事の「推定相続人をわかりやすく図解」の項目で解説しています。

 

 

 

まとめ

  • 推定相続人とは、「現時点で相続が発生した場合に相続人になる予定の人」のことです。
  • 実際に「相続人」として遺産を相続できるかどうかは相続の開始時点で決まります。

「推定相続人」の段階ではまだ相続が発生しておらず、実際に遺産を相続できるかどうかは未確定な地位にあるという点がポイントです。

  • 「誰が推定相続人になるのかわからない」、「前妻の子や連れ子に相続権があるのか不安」、 「相続廃除が認められるのか知りたい」といったお悩みがある場合には、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
  • 当事務所では、相続に強い弁護士で組織する「相続対策専門チーム」を設置しています。

推定相続人に関するトラブルや遺言書の作成、相続廃除・相続欠格に関するご相談を含む、全般に関するご相談をうけたまわっていますので、ぜひ安心してご相談ください。

 

 

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