相続の単純承認とは?具体例から注意点まで完全ガイド


弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

単純承認とは相続の単純承認とは、亡くなった人が有していた権利義務の全てを、相続によって引き継ぐことをいいます。

単純承認をすると、亡くなった方が有していたプラスの財産(預貯金、現金、不動産など)だけでなく、マイナスの財産(借金、保証責任、損害賠償責任等)も引き継ぐことになります。

このように、単純承認はリスクのあるものなので、亡くなった方が遺した財産について十分に調査してから、慎重に行う必要があります。

今回の記事では、相続の単純承認とは何か、限定承認との違い、単純承認をしたとみなされてしまう場合(法定単純承認)に関する解説、単純承認のメリット・デメリット、注意点などについて解説します。

相続の単純承認とは?

相続の単純承認とは?

相続の単純承認とは、亡くなった方(被相続人)が遺した権利義務の全てを、何の限定も付けずに相続して引き継ぐことをいいます。

単純承認をすると、プラスの財産(現金、預貯金、不動産、株式など)だけでなく、マイナスの財産(借金、損害賠償責任、保証責任など)も全て引き継ぐことになります。

単純承認をして借金などのマイナスの財産を引き継いでしまうと、単純承認をした相続人は、自分自身の財産を費やしてでも、支払義務を果たさなければならなくなります。

 

単純承認が成立する条件

単純承認が成立するのは、次の2つの条件のいずれかを満たした場合になります。

  • ①相続人が「単純承認する」との意思表示をする
  • ②法定単純承認により、単純承認をしたとみなされる

①の場合は、相続人自身の意思表示によって単純承認が成立します。

一方、②の場合は、相続人が単純承認をするとの意思表示をしていなくても、「法定単純承認」に当たる事実があれば、単純承認があったとされてしまいます。

この「法定単純承認」の意味について、次の項でご説明します。

 

法定単純承認の意味

法定単純承認とは、民法に定められた一定の事実が生じることで、単純承認をしたとみなされてしまうことを意味します。

そのため、法定単純承認が成立すると、「単純承認をする」との意思表示をしたわけではないにもかかわらず、単純承認をしたこととなってしまいます。

法定単純承認は、次の場合に成立します(民法921条)。

  1. ① 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。(ただし、保存行為及び短期賃貸借(民法602条)の期間を超えない賃貸をすることは含まない)
  2. ② 相続人が、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月(熟慮期間)以内に、限定承認又は相続放棄をしなかったとき。
  3. ③ 相続人が、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。

*限定承認又は相続放棄の後である場合も含む。

ただし、その相続人が相続放棄をしたことによって相続人となった人が相続の承認をした後である場合は除く。

これを分かりやすくいうと、法定単純承認があったとされるのは、次のような場合になります。

  • 相続人が遺産を処分した場合
  • 所定の期間内に相続放棄か限定承認をしなかった場合
  • 相続人が遺産を隠したり、ひそかに使ってしまったりした場合
  • 限定承認をする際に提出する相続財産の目録に、実際には存在する相続財産を、その存在を知っていながら記載しなかった場合

法定単純承認があったとされる具体的なケースについては、後ほど単純承認とみなされる場合とは?具体例で解説でご紹介します。

 

単純承認と限定承認との違い

マイナスの財産を引き継ぐ範囲が違う

単純承認では、被相続人のマイナスの財産を、限定を付けずに引き継ぐことになります。

相続財産の収支がマイナスで、預貯金、不動産、株式等のプラスの相続財産全てをもってしても相続した借金等を返済できない場合でも、そのままの状態で相続財産全体を引き継ぐことになります。

そのため、引き継いだ相続財産の収支がマイナスであれば、相続人は、自分の財産も借金等の返済に充てなければならなくなります。

一方、限定承認では、相続財産の限度でのみ被相続人の債務・遺贈を弁済するとの条件を付けて相続することになります。

そのため、限定承認をすれば、相続した遺産の範囲でだけ被相続人の負債を支払えばよく、相続人自身が元々持っていた財産に影響を及ぼさずに済みます。

 

手続きが違う

単純承認は、特に手続きをしなくともすることができます。

一方、限定承認をするには、家庭裁判所での手続きをすることが必要です(民法924条)。

限定承認の手続きの際には、相続財産の目録を提出する必要もあります。

 

一人でできるかどうかが違う

単純承認は一人ですることができ、他の相続人と一緒に行う必要はありません。

一方、限定相続をする場合は、共同相続人全員が共同して行う必要があります(民法923条)。

 

 

単純承認とみなされる場合とは?具体例で解説

相続放棄や限定承認を考えていても、単純承認とみなされること(法定単純承認となる事実)があると、もはや相続放棄や限定承認をすることはできなくなります。

そのため、相続放棄・限定承認をする可能性がある場合は、単純承認とみなされることを慎重に避けなければなりません。

次は、単純承認とみなされる場合について、具体例で解説していきます。

 

相続財産を処分した場合

被相続人が遺した財産(相続財産)を処分した場合は、単純承認をしたとみなされます。

たとえば次のようなケースでは、単純承認をしたとみなされる可能性が高いです。

  • Aの死後、子Bが、Aの預貯金口座を解約し、入金されていたお金を自分の預貯金口座に入金した(又は、現金で受け取り、自分の現金と一緒にした)
  • Aの死後、子Bが、Aの預貯金を自分の名義に変更した
  • Aの死後、子Bが、Aが所有していた宝石、着物等を売却した
  • Aの死後、子Bが、Aが所有していた不動産を売却・賃貸した
  • 亡Aの物を廃棄、損壊した(建物の取り壊しを含む)
  • 亡Aの債務の支払いに亡Aの財産を充てた
  • 受取人が「法定相続人」又は「被相続人」とされている生命保険金を受け取った

 

【ワンポイント】単純承認とみなされないケース

上にあげた単純承認とみなされるケースと同じように見えても、以下のような場合には、単純承認とみなされずに済む可能性が高いです。

  • 亡Aの葬儀費用、仏壇・墓石の費用などの支払いに、亡Aの財産を充てた
  • 支払期日が来た亡Aの債務を、相続人である子Bの財産で支払った
  • 亡Aの預貯金を子Bが引き出したが、現金で、自分の財産とは区別して保管していた
  • 子Bが受取人となっている亡Aの生命保険金を受け取った
  • 法定相続分による相続登記の申請・相続人申告登記の申出をした

 

相続財産を隠した、悪意で財産目録に記載しなかったなど

相続財産を隠してしまった場合や、財産があることが分かっていながら限定承認の際に提出する財産目録に記載しなかった場合、相続財産をひそかに使ってしまった場合には、相続放棄や限定承認をした後でも、法定単純承認が成立します。

そうなると、相続放棄や限定承認をしていたとしても、その効果がなくなり、単純承認したものとして、マイナスの財産を含めた財産を全て引き継ぐことになってしまいます。

財産目録がどのようなものかについては、以下のページをあわせてご覧ください。

 

熟慮期間内に限定承認又は相続放棄をしなかった

自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月の熟慮期間内に、家庭裁判所で限定承認又は相続放棄をしなかった場合は、単純承認をしたとみなされます。

熟慮期間は、上にあるように、「自己のために相続の開始があったことを知った時」つまり被相続人が亡くなって自分が相続人になったことを知った時から始まります。

そのため、以下の例のように、被相続人が亡くなったことを知らなかった、自分が相続人になったことを知らなかったという場合は、熟慮期間は、被相続人が亡くなったことや自分が相続人となったことを知った時から計算します。

具体例 絶縁していた親族が死亡し、知らせを受け取ったのが半年後だった

⇒知らせを受けた時から熟慮期間開始

具体例 行方不明になっていた親族が死亡していたが、死後しばらく遺体が発見されなかったり、身元が判明しなかったりしたため死亡したことを知るのが遅れた

⇒死亡したことを知った時から熟慮期間開始

具体例 先順位の相続人が全員相続放棄し、後順位の相続人が新たに相続人となった

⇒先順位の相続人が全員相続放棄をしたことを知った時から熟慮期間開始

被相続人に相続財産があったことを知らなかった、被相続人に負債があったことは知らなかったなどの場合も、事情によっては、熟慮期間を延ばしてもらうことができる可能性があります。

単純承認した後に、調べてもわからなかった負債を請求されたような場合には、熟慮期間を延ばしてもらえる可能性もありますので、一度弁護士に相談してみることをおすすめします。

相続放棄ができなくなるケースや熟慮期間を経過した場合の扱いについては、以下のページでも解説しています。

 

 

単純承認をするとどうなる?

単純承認をすると、被相続人に属していた全ての財産を引き継ぐことになります。

引き継ぐ財産は、相続人が認識している財産、プラスの財産だけでなく、相続人が知らない財産やマイナスの財産も含めた全ての財産です。

その結果、単純承認をすると、被相続人が負担していた借金、未払金、損害賠償責任、保証責任などの全責任を、たとえ相続の際に知らなかったとしても、相続人自身の財産を費やしてでも支払う責任を負ってしまいます。

 

 

単純承認のメリットとデメリット

単純承認のメリットとデメリット

 

単純承認のメリット

特別な手続きが必要ない

単純承認は、特に手続きをしなくとも済ませることができ、手軽に行うことができるというメリットがあります。

一方、相続放棄・限定承認をするには、家庭裁判所での手続きが必要であり、一定の労力がかかります。

 

遺産分割を円滑に進めることができる

単純承認をすれば、そのまま引き続き遺産分割についての話し合いを進めることができ、遺産分割を円滑に進めることができます。

一方、限定承認をすると、債権者等への公告・催告、債務の弁済などを済ませた後でなければ遺産分割を行うことができず、時間がかかってしまいます。

相続放棄をした場合も、相続人や相続分が変動しますので、相続放棄をしなかった相続人において、遺産分割協議をやり直すことが必要になる可能性があります。

 

単純承認のデメリット

マイナスの財産も全て引き継いでしまう

単純承認することの一番のデメリットは、マイナスの財産も全て引き継いでしまうことです。

単純承認してしまうと、被相続人の負債も自分のものとして引き継いでしまいますので、自分の財産を費やしてでも弁済をしなければならなくなります。

 

認識していなかった財産も引き継いでしまう

単純承認では、限定を付けることなく、被相続人の財産全てを引き継ぐことになります。

そのため、分かっていなかった借金、被相続人が亡くなる前には請求されていなかった損害賠償責任・保証責任など、認識していなかったマイナスの財産も引き継いでしまうことになります。

不測の損害を被らないためにも、遺産の調査を十分に行うことが必要です。

 

 

単純承認についての注意点

単純承認についての注意点

 

相続放棄・限定承認ができなくなる

一度単純承認をしてしまう(又は単純承認をしたとみなされてしまう)と、もはや相続放棄・限定承認をすることができなくなります。

原則として、単純承認の取消し・撤回もできません(詐欺や強迫により単純承認をした場合、未成年が親権者の同意を得ずに単純承認した場合などには可能)。

相続放棄や限定承認をする可能性がある間は、単純承認の意思表示や単純承認とみなされることをしないよう、慎重に行動しましょう。

 

身の回りの物を処分する際には価値のある物に注意

遺品整理などで亡くなった方の身の周りの物を処分し、形見分けなどをしたとしても、直ちに単純承認とみなされて相続放棄ができなくなるわけではありません。

ただ、価値が高い物を分けたり、売却・質入れなどをしたりすると、被相続人の財産を処分したとして単純承認したとみなされ、相続放棄ができなくなるおそれがあります。

判断に迷う場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

 

 

単純承認についてのQ&A

単純承認したら相続放棄のときにバレる?


単純承認をしたことや法定単純承認に当たる行為等があったことは、相続放棄をしたときにバレる可能性があります。

相続放棄があると、債権者は、単純承認や法定単純承認がなかったかを確かめるべく調査を行う可能性があります。

その過程で、単純承認や法定単純承認があったことがバレてしまうことは、十分あり得ます。

他の相続人が事情を調べ、それによってバレてしまうこともあり得ます。

相続放棄や限定承認を視野に入れている場合は、単純承認すると思われるような言動や単純承認とみなされる可能性があること(相続財産の処分、隠匿等)は、慎重に避けるようにしましょう。

 

クレジットカードの解約は単純承認ですか?


クレジットカードの解約は、単純承認とはなりません。

クレジットカードの解約は、相続財産の価値を減少させるものではなく、財産の処分には当たらないとされるのです。

なお、携帯電話の解約も、相続財産からの出費を抑えることになる行為ですので、財産の処分とはされません。

 

 

まとめ

今回は、相続の単純承認について解説しました。

相続の単純承認をしてしまうと、被相続人の負債などマイナスの財産を含めた全ての財産を引き継ぐことになります。

そのため、相続の単純承認は、大きな負債を抱えてしまうリスクも有するものとなっています。

相続の単純承認の意思表示をしたり、単純承認をしたとみなされる行為(相続財産の処分など)をする前には、相続財産の内容を十分に調査しておくことが大切です。

相続財産の調査については、早いうちに、相続に強い弁護士に相談・依頼することをおすすめします。

当事務所でも、相続問題を集中的に取り扱う相続対策チームを設け、遺産の調査や単純承認についてお悩みの方へのサポートをご提供しております。

電話・オンラインによる全国からのご相談にも対応しております。

単純承認や遺産の調査をはじめ、相続について分からないことや不安なことがおありの方は、ぜひ一度、当事務所まで、お気軽にご相談ください。

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