非嫡出子とは?相続分やデメリットをわかりやすく解説


弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

非嫡出子とは?
「非嫡出子」とは、法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子をいいます。

現在の民法では、非嫡出子であっても、相続分や遺留分については嫡出子と同一の扱いがされています。

もっとも、認知の有無や準正の制度、戸籍の記載方法などについては、正しく理解していないと、誤解やトラブルにつながりやすい分野でもあります。

この記事では、非嫡出子の基本的な意味から、相続分、デメリットとされがちな点までを、できるだけ分かりやすく解説します。

非嫡出子について正確な法的知識を得たい方や、相続や将来への影響が気になっている方は、ぜひ参考にしてください。

非嫡出子とは?

非嫡出子とは?

「非嫡出子」という言葉は、日常生活ではあまり耳にする機会がないかもしれません。

しかし、相続や扶養、戸籍の記載など、親子関係が前提になる場面では重要な法律上の区分です。

ここでは、非嫡出子の意味や嫡出子との違いなど、基本的なポイントを整理して解説します。

 

非嫡出子の意味や読み方

非嫡出子(ひちゃくしゅつし)とは、法律上の婚姻関係にない(結婚していない)男女の間に生まれた子のことです。

具体的には、婚姻届を提出していない男女の間に生まれた子や、いわゆる事実婚関係にあるカップルの間に生まれた子が非嫡出子にあたります。

また、非嫡出子と同じ意味で「嫡出でない子」という表現が用いられることもあります。

非嫡出子であること自体が法律上不利に扱われることを意味するものではありませんが、父親との親子関係の取扱いについては、嫡出子とは異なる点があります。

 

非嫡出子と嫡出子との違い

非嫡出子と嫡出子の最も大きな違いは、その両親が法律上の婚姻関係にあるかどうかという点です。

嫡出子(ちゃくしゅつし)とは、法律上の婚姻関係にある(結婚している)夫婦の間に生まれた子をいいます。

婚姻関係にある夫婦の間に生まれた子については、原則として民法の定めにより夫を父と推定する制度(嫡出推定)が適用され、法律上の父子関係が早期に安定します。

これに対して、非嫡出子は婚姻関係にない男女の間に生まれた子です。

母との親子関係は出産によって当然に成立しますが、父との親子関係は、認知という手続きを経て法律上成立します。

この違いが、相続・扶養・戸籍の取扱いにおいて、実務上の差となって現れやすいポイントです。

 

嫡出推定とは?

嫡出推定とは、子どもの法的地位を安定させるために、一定の条件のもとで「法律上の父親は誰か」を推定する制度です。

母子関係は出産の事実によって明らかになる一方で、父子関係は外形上は必ずしも明白ではありません。

そこで民法は、婚姻との関係や出生時期を手がかりに、父を推定する仕組みを設けています(民法772条)。

民法772条の内容は、次の3点に分けて整理することができます。

  1. 民法772条の内容

 

① 「誰の子と推定するか」に関する規定

妻が婚姻中に妊娠した子は、その婚姻における夫の子と推定されます。

また、女性が婚姻前に妊娠した子であっても、婚姻成立後に生まれた子の場合は、同様にその婚姻における夫の子と推定されます。

いわゆる「授かり婚」のように、婚姻前に妊娠していても、婚姻後に出産した場合は、夫の子と推定される仕組みです。

 

②「いつ懐胎したと推定するか」に関する規定

婚姻成立の日から200日以内に生まれた子は、婚姻前に妊娠したものと推定されます。

また、婚姻成立の日から200日を経過した後に生まれた子、または婚姻の解消から300日以内に生まれた子は、婚姻中に妊娠したものと推定されます。

 

③妊娠から出生までの間に婚姻が複数ある場合に関する規定

女性が子を妊娠した時から出産までの間に2回以上の婚姻をしていたときは、原則として、その子は出産の直近の婚姻における夫の子と推定されます。

参考:民法|e−Gov法令検索

 

非嫡出子と婚外子との違い

「非嫡出子」と「婚外子(こんがいし)」は、基本的に同じ意味を持つ言葉です。

法律用語としては「非嫡出子」が正式な表現として民法などで使用されていますが、一般的な会話や報道などでは「婚外子」という表現が使われることも多くあります。

婚外子という表現の方が、「婚姻関係の外で生まれた子」という意味が直感的に理解しやすいため、分かりやすい言葉として用いられています。

ただし、どちらの用語を使う場合でも、指し示す法律上の地位や権利義務に違いはありません。

婚外子については、以下の記事で詳しく解説をしていますので、ぜひ以下のページをご覧ください。

 

 

非嫡出子の相続分

結論から述べると、現在の民法では、非嫡出子であっても、嫡出子と法定相続分は同じです。

「非嫡出子だから相続分が少ない」「相続で不利になる」ということは、法律上はありません。

もっとも、相続の場面では、遺言の内容や認知の有無などによって、実際に問題となるポイントが異なります。

以下で、具体的に整理していきます。

 

非嫡出子の法定相続分は嫡出子と同じ

現在の民法では、非嫡出子と嫡出子の法定相続分に差はありません。

かつては、非嫡出子の法定相続分が嫡出子の「2分の1」とされていた時代もありました。

しかし、この規定は平成25年(2013年)12月5日の民法改正によって、削除されました。

そのため、平成25年9月5日以降に開始した相続については、出生の態様による相続分の差別はなくなっています。

たとえば、被相続人(亡くなった方)に嫡出子と非嫡出子がそれぞれ1人ずついる場合、両者の相続分はそれぞれ2分の1ずつとなります。

嫡出子と非嫡出子の相続割合

ここで重要なのは、非嫡出子が法律上の相続人となるためには、父親との法律上の親子関係が成立していることが必要という点です。

非嫡出子が父親との法律上の親子関係を成立させるためには、「認知」が必要となります。

認知については、後ほど詳しく解説します。

 

遺留分が問題になるケースとは

遺留分(いりゅうぶん)とは、一定の相続人に法律上保障された最低限の相続分のことです。

遺留分が問題となりやすい典型的なケースは、被相続人が「全財産を妻〇〇と、長男〇〇(嫡出子)に相続させる」といった内容の遺言書を作成していた場合です。

このような遺言があると、原則として、遺産は被相続人の妻と嫡出子が相続することになります。

しかし、非嫡出子であっても、民法上、遺留分を請求する権利が認められています。

そのため、非嫡出子は、他の相続人に対して「遺留分侵害額請求」を行うことができます。

遺留分の額は、本来の法定相続分の2分の1です。

たとえば、相続人が妻・嫡出子・非嫡出子の3人の場合は、非嫡出子の法定相続分は4分の1のため、遺留分は8分の1となります。

つまり、遺言で相続分が与えられていなくても、遺産の8分の1に相当する金銭の支払いを請求できるということです。

なお、遺留分侵害額請求には以下の時効があり、これを過ぎると請求できなくなるため、注意が必要です。

  • 相続開始と遺留分を侵害する遺贈または贈与を知ってから1年
  • 相続開始から10年

※いずれか早い時の到来をもって、時効が成立します。

 

 

非嫡出子のデメリットとは?

非嫡出子であること自体が、法律上不利に扱われるわけではありません。

相続分や遺留分についても、現在の民法では嫡出子と同じ扱いがされています。

しかし、現実には、父親との法律上の親子関係(認知)の有無や、相続・戸籍の取扱いをめぐって、非嫡出子特有の問題が生じることがあります。

以下では、非嫡出子に関して問題となりやすいデメリットを整理して解説します。

非嫡出子のデメリット

 

認知がないと父親に扶養を請求できない

父親から認知を受けていない非嫡出子は、原則として父親に扶養を請求することができません。

扶養義務は、法律上の親子関係が成立していることを前提としています。

母親との親子関係は出産により当然に成立しますが、父親との親子関係については、認知がなければ法律上は「親子」とは扱われません。

そのため、たとえば、父親が養育費を支払わないといった場合でも、認知がない限りは、父親に対して法的に支払いを求めることはできないのが原則です。

 

認知がないと父親の相続人になれない

父親から認知を受けていない非嫡出子は、父親の相続人にはなれません。

相続人となるためには、被相続人との間に法律上の親子関係が成立していることが必要です。

認知された非嫡出子であれば相続人になることができますが、認知がない場合には、父親が亡くなっても相続権は発生しません。

この点は、非嫡出子にとって最も大きなデメリットの1つといえます。

 

認知があっても相続で揉めることがある

認知があり、法律上の相続人となっていても、相続トラブルに発展するケースは少なくありません。

非嫡出子が認知されている場合、法律上は嫡出子と同じ相続分・遺留分が認められます。

しかし、実際の相続の場面では、次のような事情から、遺産分割協議や遺留分請求をめぐって紛争化しやすい傾向があります。

  • 他の相続人(配偶者や嫡出子)が、非嫡出子の存在を知らなかった
  • 感情的な対立が強く、話し合いが難航する
  • 遺言の内容が一部の相続人に大きく偏っている

特に、相続開始後に初めて非嫡出子の存在が明らかになったようなケースでは、協議が難航し、裁判に発展することも珍しくありません。

 

戸籍の記載から非嫡出子だとわかる可能性がある

非嫡出子の出生届は、一般的には母親が提出し、子は母親の戸籍に記載されます。

その際、父親から認知を受けていない場合には、戸籍の「父」の欄は空欄となります。

このため、戸籍を詳しく確認すれば、非嫡出子であることがわかる場合があります。

もっとも、現在の戸籍制度では、非嫡出子であることが一見して分からないよう配慮がされています。

以前は、非嫡出子の場合、父母との続柄欄に「男」「女」と記載され、嫡出子とは異なる表記がされていました。

しかし、平成16年11月1日以降に出生届がされた子については、嫡出・非嫡出の区別なく、母が分娩した子の出生順に「長男(長女)」「二男(二女)」などと記載される取扱いに改められています。

ただし、父欄の記載状況や認知の有無などを含めて戸籍を確認すれば、非嫡出子であることが判明する場合もあります。

 

 

非嫡出子が認知されるとどうなる?

非嫡出子が父親から認知されると、父親との法律上の親子関係が成立し、扶養や相続などの法的権利が認められるようになります。

認知は、非嫡出子にとって、法律上の地位を大きく左右する重要な手続きです。

以下では、認知の意味や方法、そして認知によって具体的に何が変わるのかを整理して解説します。

 

認知とは

認知とは、婚姻していない男女の間に生まれた子について、父親が「自分の子どもである」と法的に認める手続きのことです。

非嫡出子の場合、母との親子関係は出産によって当然に成立しますが、父との親子関係は、認知がなければ法律上成立しません。

そのため、認知は、非嫡出子について父親との法律上の親子関係を成立させるための唯一の方法といえます。

 

認知の方法

認知には、次のような方法があります。

認知の種類 内容
任意認知 父親が市区町村役場に認知届を提出して行う
遺言認知 父親が遺言書に「認知する旨」を記載して行う
強制認知
(認知の訴え)
父親が生きている場合:認知調停→認知の訴えの順で行う
父親が死亡している場合:認知の訴えを提起する

このように、認知は必ずしも父親の任意の行為に限られず、法的手段によって成立させることも認められています。

なお、父親が任意に認知を行う場合、母や子の同意は不要とされています。

 

認知されるとなにが起こる?

認知がされると、非嫡出子の法律上の地位は大きく変わります。

具体的には、次のような効果が生じます。

認知されるとなにが起こる?

 

父親との法律上の親子関係が成立する

認知がされると、父親と子どもとの間に法律上の親子関係が成立します。

これにより、子どもは法律上、父親の「子ども」として扱われることになります。

この親子関係は、将来に向かって成立するのではなく、出生時にさかのぼって成立するとされています。

そのため、後から認知された場合でも、法律上は出生当初から父子関係があったものとして扱われます。

 

父親に扶養を請求できるようになる

認知によって父子関係が成立すると、父親に対して扶養(養育費など)を請求できるようになります。

認知前は、父親に対して法的に養育費の支払いを求めることはできません。

しかし、認知後は、父親も法律上の親として扶養義務を負うため、生活費等について請求することが可能になります。

 

父親の相続人として遺産を相続できるようになる

認知がされると、非嫡出子は父親の相続人となります。

その結果、父親が亡くなった際には、嫡出子と同じ法定相続分で遺産を相続することができます。

また、遺言によって相続分が与えられていない場合でも、遺留分を請求する権利が認められます。

この点は、非嫡出子にとって非常に重要な効果といえます。

 

戸籍に認知の事実が記載される

父親による認知が行われると、非嫡出子の戸籍に「認知された事実」が記載されます。

具体的には、以下の事項が戸籍に記載されることとなります。

記載欄 記載事項
父の欄 父親の氏名
身分事項欄 認知の日
認知した者の氏名
認知した者の本籍地

もっとも、認知されたからといって自動的に父親の戸籍に移るわけではなく、子どもは引き続き母親の戸籍に残ります。

 

 

非嫡出子が嫡出子になるには?

非嫡出子が嫡出子となるためには、「準正(じゅんせい)」という制度を利用する必要があります。

準正とは、一定の要件を満たすことにより、非嫡出子が法律上「嫡出子」として扱われるようになる制度です。

準正には、次の2種類があります。

種類 内容
婚姻準正 父親からの認知の後に、両親が法律上の婚姻関係を結ぶことで成立
認知準正 両親がすでに婚姻関係にある状態で、父親が認知を行うことによって成立

これらの要件がそろえば、特別な申立てや裁判手続を行わなくても、法律上当然に準正の効果が生じます。

その結果、子は出生時にさかのぼって嫡出子として扱われます。

 

 

非嫡出子についてのQ&A

ここからは、非嫡出子について、よくあるご質問にお答えします。

 

非嫡出子で困ることはありますか?


非嫡出子であること自体が、必ずしも大きな不利益につながるわけではありません。

現在の民法では、非嫡出子であっても、法定相続分や遺留分については、嫡出子と同じ扱いがされています。

もっとも、実務上は、次のような点で困る場面が生じることがあります。

  • 父親から認知を受けていない場合に、扶養や相続の問題が生じる
  • 相続の場面で、感情的な対立が生じやすい
  • 戸籍の記載をめぐり、配慮が必要となることがある

そのため、非嫡出子をめぐる問題では、認知の有無や遺言の内容などを早めに整理しておくことが重要です。

 

非嫡出子であることは世間にわかりますか?


日常生活の中で、非嫡出子であることが周囲に知られることは、通常ほとんどありません。

確かに、戸籍の記載を詳しく確認すれば、事情に詳しい人には非嫡出子であることがわかる場合もあります。

しかし、戸籍を取得できるのは、原則として、本人やその父母、祖父母、子ども、配偶者など、限られた範囲の人に限られます。

また、現在では、進学や就職の際に戸籍の提出を求められるケースも稀です。

そのため、自分から事情を明かさない限り、世間に非嫡出子であることが知られる可能性は低いといえるでしょう。

 

 

まとめ

非嫡出子については、過去の制度や誤った情報が残っており、現在の法的取扱いが正しく理解されていないケースも少なくありません。

本記事で解説したとおり、相続分や遺留分については、すでに嫡出子との区別はなくなっています。

もっとも、認知や準正、戸籍の取扱いなど、個別の事情によって注意すべきポイントが存在します。

非嫡出子をめぐる問題は、感情面と法律面が複雑に絡み合う分野です。

そのため、制度を正しく理解したうえで、早めに対応を検討することが重要です。

少しでも不安や疑問がある場合には、問題が表面化する前に専門家へ相談することが、将来のトラブル防止につながります。

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