先払い買取とは?おすすめしない理由や注意点を解説

監修者:弁護士 西村裕一
弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

先払い売買とは先払い買取とは、商品の買取において代金が先に支払われる取引形態を指します。

具体的には、利用者が売却を希望するスマートフォンやブランド品、家電製品、金券など、市場価値のある物品の画像や情報を買取業者に提供し、業者による査定が完了した時点で、実際に品物が業者に届くよりも前に、その査定額が利用者の指定口座に振り込まれるサービスです。

このような仕組み自体は、民法上の売買契約の自由に基づき、当事者間の合意によって成立しうるものであり、一概に違法と断じることはできません。

しかしながら、この先払いという性質が悪用され、実質的には高金利の貸付(いわゆるヤミ金)として機能しているケースもあるため、注意が必要です。

安易な気持ちで先払い買取を利用すると、深刻な被害や経済的な苦境に立たされる危険性があります。

この記事では、先払い買取の仕組み、なぜそれが違法とされるのか、具体的な被害例、利用をおすすめしない理由などについて、弁護士が詳しく解説していきます。

先払い買取とは?

先払い買取の意味

先払い買取とは

そもそも、「先払い買取」とは、どのようなサービスなのでしょうか。

先払い買取とは、商品の買取において代金が先に支払われる取引形態を指します。

具体的には、利用者が売却を希望するスマートフォンやブランド品、家電製品、金券など、市場価値のある物品の画像や情報を買取業者に提供し、業者による査定が完了した時点で、実際に品物が業者に届くよりも前に、その査定額が利用者の指定口座に振り込まれるサービスです。

一般的にスマートフォン、ブランド品、商品券などの品物を業者に売却する際、通常の買取のように商品を発送し、業者に到着した後に代金を受け取るのではなく、査定が完了した段階ですぐに代金を受け取れるサービスを指します。

通常の買取取引では、利用者が商品を業者に発送し、業者が商品の現物を確認・査定した上で、最終的な買取金額を決定し、その後代金が支払われるのが一般的です。

これに対し、先払い買取は、代金支払いのタイミングが「商品の物理的な引渡し前」である点に最大の特徴があります。

このサービスは、急な現金が必要な場合に利用されることが多く、「商品を売却して現金を得る」ことができます。

このような仕組み自体は、民法上の契約自由の原則に基づき、当事者間の合意によって成立しうるものであるため、一概に違法と断じることはできません。

しかしながら、この先払いという性質が悪用され、実質的には高金利の貸付(いわゆるヤミ金)として機能しているケースが散見されるため、そのような実態とリスクについては理解しておく必要があるでしょう。

 

先払い買取の具体例

先払い買取の具体的な取引の流れは以下のようになります。

先払い買取の具体的な取引の流れ

以下それぞれの流れについて詳しく解説していきます。

 

①申し込み

利用者は、インターネット上のウェブサイト、スマートフォンアプリ、あるいはLINEなどのSNSを通じて、買取業者のサービスに申し込みます。

この際、氏名、住所、連絡先といった個人情報を提供します。

 

②商品情報の提供と査定

売却を希望する品物について、複数の角度から撮影された写真や、型番が分かる写真を業者に送信します。

業者はこれらの情報に基づき、独自の基準で査定を行い、利用者に買取金額を提示します。

 

③代金の受領

利用者が提示された査定額に同意した場合、業者は速やかに全額または一部を利用者が指定する銀行口座に振り込みます。

この時点で、まだ商品は利用者の手元にあります。

 

④商品の発送

代金の受領後、利用者は契約で定められた期限(多くの場合、数日以内)までに、査定を受けた品物を業者へ発送します。

 

⑤取引完了

業者が商品を受け取り、事前情報と現物の状態に差異がないことを確認すれば、取引は完了となります。

万が一、差異があった場合や、商品が期限内に届かない場合は、キャンセル料や違約金の請求など別途契約上の取り決めが適用される可能性があります。

 

先払い買取の特徴

先払い買取は審査がない

多くの先払い買取業者は「審査なし」と宣伝していることがあります。

これは、通常の金融機関からの融資のように、信用情報機関への照会や収入の確認といった厳しい審査が行われないことを意味します。

そのため、過去に金融事故を起こした経験がある方や、他社で借り入れができない方でも利用できるとアピールされることが少なくありません。

したがって、信用情報に傷がある方、安定した収入がない方、あるいは緊急に少額の現金が必要な方々にとって、手軽な資金調達手段として魅力的なサービスに思われるでしょう。

しかし、業者がリスクを負わずに審査を省略できる背景には、高額なキャンセル料や手数料を徴収することで、事実上の利息を回収する仕組みとなっている可能性もあるため、注意が必要です。

このように、先払い買取業者は「審査なし」・「信用情報不問」・「ブラックOK」といった誘い文句で利用者を募集するという特徴があります。

 

LINEで完結できる

先払い買取のもう一つの大きな特徴は、LINEなどのSNSを通じて手続きが完結できるとアピールしている業者が多い点です。

申し込みから査定、金額の受け取り、さらには商品発送に関するやり取りまで、すべてオンライン上で手軽に行えます。

これにより、利用者は場所に縛られず、手軽に手続きを進めることが可能です。

対面でのやり取りや書面での契約が不要であるため、利用への心理的ハードルが低く、急ぎの資金調達を求める利用者にとっては利便性が高いと感じられるでしょう。

しかし、この手軽さの裏には、契約内容が不明瞭になりやすいという重大なリスクが潜んでいます。

SNS上でのやり取りは、後から証拠として残りにくく、重要な契約条件や手数料に関する説明が十分にされないまま、取引が進められてしまうおそれがあります。

また、利用者が深く考えずに安易に契約を結んでしまい、後になって高額なキャンセル料や手数料を請求され、トラブルに巻き込まれるケースも少なくありません。

このように、申し込みから取引の大部分をLINEなどのSNSアプリを通じて完結できるという先払い買取の特徴は、後々のトラブルに発展する原因になることから、慎重な利用を心掛ける必要があります。

 

 

先払い買取は違法?

先払い買取については、一見すると合法的な商取引に思えますが、実態が違法なヤミ金に該当するケースがあるため、注意が必要です。

形式的には商品の買取取引を装っていても、その経済的な本質が「高金利の金銭貸付け」であると判断される場合、違法となる可能性があります。

違法な先払い買取業者の典型的な手口は、品物の売買を装いながら、実際には利用者に現金を貸し付け、法外な利息を「キャンセル料」や「違約金」という名目で巧妙に徴収する点にあります。

たとえば、あなたがスマートフォンを売却するとして、画像を送ればすぐに商品代金が振り込まれます。

しかし、その後、業者はあなたに商品の発送をキャンセルさせ、あるいは最初から商品を受け取るつもりがなく、数日後に商品代金とキャンセル料の支払いを要求してきます。

この場合、あなたは実質的に商品代金に相当する金銭を借り受け、わずか数日で利息を付けて返済したことになります。

このような取引は、貸金業法が規定する「貸金業」に該当する可能性があります。

貸金業を営むには貸金業登録が必須ですが、これらの業者は無登録で営業していることがほとんどです。

これは「無登録営業」という重大な犯罪であり、10年以下の懲役や3000万円以下の罰金が科される可能性があります。

そして、業者が徴収する「キャンセル料」や「違約金」と称するものは、実質的には高額な利息です。

利息制限法では、貸付け元本に応じ年15%から20%と上限が定められており、これを超える利息は無効となります。

出資法は、年20%を超える金利での貸付けは刑事罰の対象としています。

さらに、多くの先払い買取業者は古物商としての許可を得ていないか、虚偽の許可番号を提示していることがあります。

古物を「業として」売買するには、古物営業法に基づき公安委員会の許可が必要であり、無許可での営業は罰則の対象となります。

このように、一見すると便利な「先払い買取」というサービスであっても、隠された実態は違法な高金利貸付けである可能性があるため、注意が必要です。

 

 

先払い買取の被害例

「先払い買取」は、一見すると手軽な資金調達手段に見えますが、その裏に隠された実態は、利用者を深刻な被害へと陥れる違法なヤミ金に他なりません。

多くの被害報告が寄せられており、その手口は巧妙化の一途を辿っています。

典型的な被害例としては、まず、利用者が金券やスマートフォンの画像を送るだけで、すぐに「買取金額」と称する現金が振り込まれる、というものです。

ある利用者は、急な出費で資金が足りなくなり、インターネット上で「WEBから申込可能」、「当日現金化」といった手軽さをアピールする先払い買取に申し込みました。

ネットで見つけた商品券の画像を業者に送ると、数時間後に買取代金として1万円が振り込まれました。

しかし、実際に商品券を持っていなかったため、業者から違約金として2万円を請求され、これを支払うことになりました。

この業者との取引を続けた利用者は違約金が払えなくなり、次々と別の先払い買取業者にも手を出してしまいました。

その結果、違約金が雪だるま式に膨らんでいき、わずか4か月で7社への総額約30万円もの返済を抱えて、どうにもならない状態になってしまいました。

このように、「キャンセル料」や「違約金」といった名目で、最初に振り込んだ金額をはるかに上回る高額な金銭を業者から要求されるという被害が発生しています。

さらに悪質な事案では、違法な取り立て被害に遭ったケースもあります。

利用者が支払いを滞納すると、事前に提供した運転免許証の画像や勤務先の情報、さらには名刺の写真や自撮り画像などの個人情報が悪用され、インターネット上にさらされたり、勤務先に嫌がらせの電話をかけられたりといった被害も報告されています。

これにより、利用者は社会的な信用を失うだけでなく、精神的にも追い詰められ、さらなる金銭要求に応じざるを得ない状況に追い込まれてしまうケースもあります。

 

 

先払い買取をおすすめしない理由

高額な違約金やキャンセル料を請求される

「先払い買取」は、手軽に現金を手にできる魅力的なサービスに見えるかもしれませんが、実態として違法なヤミ金である可能性があります。

安易な気持ちで先払い買取サービスを利用していると、取り返しのつかない苦境に陥る危険性があります。

先払い買取と称する取引では、実質的な利息に当たる「キャンセル料」や「違約金」が、最初に受け取った金額の5割以上という高額に設定されているケースもあります。

このような先払い買取業者を利用し続けると、結果として、新たな借金を重ねる「自転車操業」に陥り、最終的には自己破産を含む経済生活の破綻へと追い込まれてしまう危険性もあるのです。

実際に、先払い買取サービスを装って無登録で貸金業を営み、出資法に違反する高金利で貸し付けを行った業者が逮捕される事例も発生しています。

これらの事案は、まさに先払い買取がヤミ金行為であることを明確に示しています。

 

執拗な取り立てや嫌がらせに遭う危険性

また、先払い買取業者を利用したことで、執拗な取り立てや嫌がらせ行為を受けるリスクがあります。

支払いが滞ると、業者からの電話やメールによる催促が始まり、その頻度は「鬼電」と称されるほど異常なものになります。

さらに悪質な場合、自宅や職場へ直接押し掛けたり、家族や親族にまで連絡を試みたりするなど、違法な手段を用いた取り立てが行われることがあります。

こうした行為は利用者の精神を極限まで追い詰め、日常生活や仕事にも甚大な悪影響を及ぼし、精神的な健康を損なう原因となることも少なくありません。

 

個人情報が悪用される危険性

また、先払い買取業者の利用申し込み時に提供した個人情報が悪用される可能性も非常に高いです。

氏名、住所、勤務先、給与明細、さらには顔写真や身分証明書に至るまで、業者はあらゆる情報を収集します。

これらの情報は、支払いが滞った際の悪質な取り立てに利用されるだけでなく、利用者の口座が組織犯罪の資金洗浄に利用されるといった犯罪行為に巻き込まれるリスクも存在します。

最悪の場合、利用者が意図せず犯罪組織の一端とみなされ、口座凍結や警察の捜査対象となる可能性も否定できません。

「簡単に現金が手に入る」という甘い言葉に誘われて先払い買取を利用することは、一時的な金銭の問題を解決するどころか、経済的な破綻、精神的な苦痛という、人生を破壊しかねない事態を招く可能性が高いことを理解しておくべきです。

 

 

先払い買取の注意点

ランキングを信用しない

インターネット上には「先払い買取業者ランキング」や「優良業者紹介サイト」といったものが多数存在しますが、これらを安易に信用してはいけません。

なぜなら、これらのサイトは、違法な先払い買取業者が自作自演で運営していたり、提携している業者を意図的に上位表示させたりしている可能性があるためです。

あたかも中立的な情報源であるかのように装い、利用者を危険な業者へと誘導する役割を担っているケースも散見されます。

「即日現金化」や「審査なし」といった甘い言葉で誘惑し、高評価を並べることで利用者の警戒心を解こうとする手口には十分な注意が必要です。

 

詳細な個人情報を要求してくる業者に注意

正規の古物買取業者が品物を買い取る際に、利用者の勤務先や収入に関する詳細な情報を要求することは通常ありません。

あくまで買い取る商品の価値を評価するために必要な情報(商品の状態、型番など)が中心となります。

しかし、実質的にヤミ金である先払い買取業者は、申し込みの段階で、給与明細、給与の振込先口座、勤務形態、さらには他社の借入状況といった、返済能力を見極めるための情報を執拗に求めてきます。

このような業者は、「商品の買取」ではなく「お金の貸し付け」を目的としている可能性が高まります。

まるで消費者金融のような質問内容に違和感を覚えたら、その業者は違法なヤミ金である可能性が極めて高いと判断し、すぐに利用を中止してください。

 

 

生活が苦しい場合の対処法

債務整理を検討する

債務整理とは、法律に基づき借金を減額したり、返済の猶予を得たり、あるいは免除してもらったりするための手続きの総称です。

債務整理には以下のように、3つの方法があります。

債務整理、個人再生、自己破産

 

①債務整理

これは裁判所を介さず、弁護士があなたの代理人として直接債権者と交渉し、将来発生する利息や遅延損害金をカットしてもらい、無理のない範囲で元金を3年から5年程度で分割返済する計画を立てることを目指します。

比較的早期に解決が見込め、柔軟な手続きが特徴です。

 

②個人再生

これは裁判所の監督のもと進められる手続きで、借金総額を大幅に、通常は5分の1から10分の1程度にまで減額してもらい、減額された借金を原則として3年かけて分割返済します。

多額の借金があるものの、自宅などの重要な財産を手放したくない場合や、特定の職業上の制限を避けたい場合に有効な選択肢となります。

 

③自己破産

これは裁判所に申し立てを行い、借金の支払い義務を全額免除してもらう手続きです。

裁判所が「免責」を認めれば、どれほどの借金であっても全てが帳消しになります。

しかし、その一方で、自宅や車など一定以上の価値がある財産は処分する必要があり、一時的に就業が制限される職業があるといったデメリットも存在します。

これらの債務整理は、「先払い買取」による負債を含む、あらゆる種類の借金が対象となります。

 

債務整理に強い弁護士に相談する

自身の状況に合った最適な債務整理の方法を見つけ、適切な手続きを進めるためには、債務整理に強い弁護士に相談することが不可欠です。

特に、先払い買取のようなヤミ金被害に遭っている場合、弁護士に依頼するメリットは計り知れません。

まず、弁護士が介入することで、ヤミ金業者からの執拗な督促が止まります。

弁護士からの警告は、違法な取り立てを行っているヤミ金業者にとって摘発のリスクを高めることになります。

また、ヤミ金からの違法な取り立てに対しても、法的な根拠に基づき返済義務がないことを業者に毅然とした態度で告げ、その後の返済をストップさせることが期待できます。

さらに、弁護士に依頼することで、ヤミ金業者とのすべてのやり取りを弁護士が窓口となって行ってくれます。

これにより、あなたはヤミ金からの連絡に一切対応する必要がなくなり、精神的な負担から解放されます。

借金問題はひとりで抱え込まず、できるだけ早い段階で専門家の力を借りることで、根本的な解決を図ることが重要です。

 

 

先払い買取についてのQ&A

先払い現金化とは何ですか?

先払い現金化とは、実際には品物の売買ではないにもかかわらず、その形式を装って現金の融資を受ける取引のことです。

品物の売買に見せかけて、実質的には高金利の貸し付けを行う手口であり、多くの場合、利用者が手元にない架空の商品を対象としている点に特徴があります。

しかし、先払い買取の現金化をした場合、最初に振り込まれた金額よりもはるかに高額な「キャンセル料」や「違約金」と称する金銭を業者に支払うことになり、経済的苦境に陥る可能性があります。

 

先払い買取がヤミ金とされる理由は何ですか?

先払い買取がヤミ金とされる主な理由は、その取引の実態が違法な高金利の金銭貸付けと同視できるからです。

業者が振り込む「買取金額」は実質的に貸付金であり、後日請求される「キャンセル料」や「違約金」は、法外な利息に当たります。

このような取引行為は、貸金業法に違反する無登録営業であり、利息制限法や出資法で禁じられている暴利行為に該当するため、実質的に「ヤミ金」と評価されるのです。

 

 

まとめ

先払い買取は、一見便利なサービスに見えますが、物品の売買を装った違法な高金利で金銭を貸し付けるヤミ金であるリスクがあります。

先払い買取を安易な気持ちで利用すると、法外な手数料や違約金を請求され、多重債務に陥るだけでなく、執拗な取り立てや個人情報の悪用といった深刻な被害に遭うリスクがあります。

経済的に苦しい状況にあり、先払い買取の利用を検討しているのであれば、絶対に踏みとどまってください。

そして、お一人で抱え込まず、債務整理に強い弁護士に早めに相談することが重要です。

デイライトでは、債務整理に詳しい弁護士による破産再生チームを設け、皆様の借金問題の解決に尽力しています。

Zoomなどによるオンライン相談の対応も可能です。

借金問題については当事務所まで、どうぞお気軽にご相談ください。

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