
「夜逃げ」とは、借金、家賃滞納、人間関係のトラブルなど、何らかの深刻な問題を抱えた人々が、誰にも告げることなく、夜間や人目を避けてひそかに住居から姿を消し、生活拠点を移す行為を指す言葉です。
夜逃げ自体は違法ではありませんが、夜逃げに至るまでの経緯や、夜逃げ後の行動によっては、法的な問題が生じる可能性があります。
そもそも、夜逃げとはどのようなもので、夜逃げの理由や夜逃げをすることのデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
この記事では、夜逃げに関するさまざま疑問点について、弁護士がわかりやすく解説していきます。
目次
夜逃げとは?
夜逃げとは?
そもそも、夜逃げとはどのような行為を指すのでしょうか。
一般的に「夜逃げ」とは、借金、家賃滞納、人間関係のトラブルなど、何らかの深刻な問題を抱えた人々が、誰にも告げることなく、夜間や人目を避けてひそかに住居から姿を消し、生活拠点を移す行為を指す言葉です。
計画的に行われることもあれば、突発的に行われることもあり、夜逃げの原因や背景にはさまざまなものが考えられます。
夜逃げは、法的な定義があるわけではなく、あくまで社会的な通念として認識されている行為であり、その実態は個々の状況によって大きく異なります。
また、夜逃げの方法についても様々です。
文字通り、真夜中に家財道具をほとんど持たずに逃げるケースもあれば、事前に少しずつ荷物を運び出し、周到に準備をしてから姿を消すケースもあります。
移動先も、知人や親戚を頼る場合、友人やインターネットを通じて見つけた新たな住居に身を隠す場合、あるいは全く見知らぬ土地へ行く場合などもあります。
夜逃げは、追い詰められた人々が取る最後の手段の一つと言えるかもしれません。
しかし、その後の生活は不安定で困難なものとなる可能性が高く、法的なリスクも伴います。
そのため、夜逃げを検討する前に、弁護士や専門機関に相談し、より建設的な解決策を探ることが重要です。
夜逃げは違法?
夜逃げという行為そのものを直接的に禁止する法律は、現在の日本の法令には存在しません。
したがって、「夜逃げをした」という事実のみをもって、直ちに刑事罰が科されるわけではありません。
ただし、夜逃げに至るまでの経緯や、夜逃げ後の行動によっては、法的な問題が生じる可能性があります。
例えば、家賃滞納が長期間にわたり、大家や管理会社からの再三の支払催促を無視して夜逃げした場合、債務不履行として損害賠償請求を受ける可能性があります。
これは、賃貸借契約という法的な契約を一方的に破棄したとみなされるためです。
また、夜逃げの際に、意図的に家賃を踏み倒す意思があったと判断された場合、詐欺罪に問われる可能性もあります。
ただし、詐欺罪の成立には、当初から相手を欺く意思と欺罔行為が必要となるため、単なる家賃滞納だけでは直ちに成立するものではありません。
また、夜逃げの際に、借金取り立てから逃れるために、意図的に連絡を絶ち、財産を隠匿するなどの行為を行った場合、強制執行妨害目的財産損壊等罪に問われる可能性もあります。
強制執行妨害目的財産損壊等罪とは、強制執行を妨害する目的で財産を損壊したり隠したりする場合に成立する犯罪です。
夜逃げという行為自体が直ちにこの罪に当たるわけではありませんが、夜逃げの状況や目的によっては、該当する可能性が出てきます。
さらに、夜逃げによって、住民票を異動しないまま生活拠点を移した場合、住民基本台帳法に違反する可能性があります。
同法では、居住地を変更した場合、原則として14日以内に転出・転入の手続きを行うことが義務付けられています。
正当な理由なく住民票を移さないと、5万円以下の過料が科せられる可能性があります。
過料とは、行政法規上の義務違反に対して金銭の支払が命じられる罰則のことです。
夜逃げの場合、様々な事情から住民票の異動が困難な場合も考えられますが、法的には適切な手続きを行う必要があります。
以上のとおり、夜逃げという行為そのものは違法ではありませんが、その背景にある事情や、夜逃げ後の行動によっては、様々な法的問題を引き起こす可能性があります。
安易な夜逃げは、かえって状況を悪化させる可能性もあるため、慎重に検討する必要があります。
法的な問題を回避するためにも、夜逃げを検討する前に、弁護士などの専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることが重要です。
借金問題や生活困窮など、夜逃げを考えるに至った根本的な原因を解決するための法的な手段についても、弁護士であれば適切な情報を提供することができます。
なぜ夜逃げをするの?夜逃げの理由とは?
借金の返済から逃れたいため
夜逃げをする理由として、借金の返済から逃れるためというものが挙げられます。
多重債務による返済の重圧は、精神的にも肉体的にも限界をもたらし、日常生活を脅かします。
債権者からの絶え間ない取り立ては、電話、訪問に留まらず、時には職場や家族にまで及ぶことがあり、平穏な生活を送ることは困難を極めます。
「この苦しみから逃れるには、もう夜逃げしかない」という絶望的な心理状態に陥り、差し迫った状況から一刻も早く脱したいという強い衝動に駆られる方もいらっしゃいます。
債権者に見つからなければ、少なくとも直接的な取り立てからは解放されると考え、一時的な安堵を求めてしまうのは、追い詰められた人々にとっては藁にもすがる思いで夜逃げを選択する可能性があります。
借金が時効によって消滅するのを待つため
一部の債務者の中には、夜逃げして債権者から取り立てを受けなくなれば、時効が成立して借金を返済せずに済むと考える方もいます。
これは、「一定期間請求を受けなければ借金が時効消滅するだろう」という、時効制度に対する無理解や誤解によるものであると考えられます。
なぜなら、債権者が有している金銭の支払い請求権が時効期間の経過によって消滅するためには、一定の条件を満たす必要があるからです。
単に姿を隠し連絡を絶つだけでは時効は成立せず、債権者による裁判上の手続きや、債務者自身による一部返済や債務承認などがあった場合、時効は中断または更新されます。
したがって、不確かな時効への期待のみに基づいた夜逃げは、多くの場合、期待外れの結果に終わる可能性が高いことを理解しておく必要があります。
法的な解決手段の無理解や諦めから
借金問題に苦しむ人々の中には、債務整理という法的な解決手段があることを知らない、あるいは知っていても手続きが複雑で難しいと感じ、専門家への相談を躊躇してしまう場合があります。
自己破産、個人再生、任意整理といった債務整理の手続きは、借金の減額や免除を可能にし、生活再建の道を開く有効な手段です。
しかし、これらの制度に関する知識が不足していると、「自分にはどうすることもできない」と諦めてしまい、法的な解決という選択肢があることに気づかないことがあります。
また、誰に相談すれば良いかわからない、費用が心配といった理由から、専門家への相談をためらい、結果として、手軽に思える夜逃げという手段に頼ってしまうケースも少なくありません。
借金問題に加えて複合的な苦境から脱出するため
借金問題に加えて、人間関係の深刻なトラブル、DV(ドメスティックバイオレンス)、職場でのハラスメント、精神的な疾患など、複数の問題を抱え、誰にも相談できずに孤立している状況も、夜逃げの大きな原因となります。
これらの問題を抱える人々にとって、現状は耐えがたい苦痛であり、夜逃げは、これらの苦しみから同時に逃れるための、唯一の手段と捉えられてしまうことがあります。
見知らぬ土地で新たな生活を始めることが、現状を打破する唯一の希望となる可能性があります。
夜逃げは、差し迫った苦境から一時的に逃れるための手段となり得るかもしれませんが、根本的な問題解決には繋がらず、むしろその後の生活を不安定で困難なものにするリスクも存在しています。
夜逃げを検討するほど追い詰められた状況にある場合は、決して一人で悩まず、まずは弁護士などの専門機関に相談し、法的な支援を含めた適切な解決策を探ることが最も重要です。
夜逃げのその後はどうなる?
夜逃げはバレる?
夜逃げをしたとしても、その後に身元が特定されて所在がバレる可能性はあるのでしょうか。
夜逃げをしたとしても、完全に人目を避けて生活することは現代社会において非常に困難です。
その大きな理由の一つが、日本の住民票と戸籍という公的な記録システムです。
戸籍謄本には、本籍地における身分事項が記録されており、戸籍の附票には、その戸籍が作成されてからの住民票の異動履歴が詳細に記録されています。
これらの公的書類には、個人の氏名、生年月日、そして過去から現在に至るまでの住所の履歴が詳細に記録されています。
本籍地を変更していない限り、これらの書類を辿ることで、転居の履歴を把握し、現在の居住地を特定されるリスクがあります。
夜逃げ後に新たな住居に移り、住民票を異動させたとしても、債権者は以前の住所地の市区町村役場に住民票の除票(転出証明書に基づいて作成される、過去の住所地の住民票)を請求することで、転出先の情報を把握できる可能性があります。
また、現在の住所地の住民票を請求することも可能です。
債権回収を目的としたこれらの情報開示請求は、法律によって正当な理由として認められているため、夜逃げによってこれらの追跡を逃れることは難しいのが現状です。
知り合い同士のネットワークから所在が判明する可能性
夜逃げを決行する際、誰にも知らせずに実行しようと考えるのは自然な心理ですが、実際には、家族、親戚、友人、職場の同僚など、様々な人間関係が存在します。
それらの人々は、夜逃げした人物の安否を心配し、連絡を取ろうと試みることが少なくありません。
しかし、債権者や捜索者がこれらの関係者に接触した場合、意図せずとも過去の生活状況、交友関係などの情報が漏れてしまう可能性があります。
特に、親しい友人や家族は、夜逃げした人物の行動パターンや行きそうな場所などを推測できる場合があり、債権者からの執拗な問い合わせや、情に訴えかけるような言葉によって、情報を開示してしまうことがあります。
また、現代ではSNSやインターネットの利用が普及しており、夜逃げ前に利用していたアカウントの情報やオンラインでの交友関係から、生活圏や興味関心が推測され、居場所特定の手がかりとなることもあります。
新しい生活を始めたとしても、安易なSNSへの投稿から所在地の情報などが特定されるリスクがあります。
住所がわからなくても裁判は起こされる
債権者は、債務者の現住所が不明な状況でも、債権回収のための法的な手続きを諦めることはありません。
例えば、債務者の最後の住所地を管轄する裁判所に対して、支払督促の申し立てや訴訟の提起を行うことができます。
そして、書類を相手に直接届ける通常の送達手続きが不可能である場合であっても、債権者は裁判所に公示送達を申し立てることができます。
裁判所がこれを認めると、訴状や呼出状などの重要な書類が裁判所の掲示板に一定期間掲示され、その期間が満了すると、法的には債務者に書類が送達されたものとみなされます。
債務者が実際に掲示を見たかどうかは関係なく、法的な手続きは進行し、債権者の主張通りの判決が下される可能性があります。
この判決に基づいて、債務者の財産が差し押さえられるという重大なリスクが生じるため、夜逃げによって法的な責任から逃れることはできません。
警察によって失踪者が捜索される可能性がある
夜逃げが、単なる失踪としてではなく、事件や事故に巻き込まれた可能性、あるいは自殺の恐れなど、安否確認の必要性が高いと判断された場合、家族や親族からの捜索願に基づいて警察が捜索を開始することがあります。
警察は、過去の犯罪情報や行方不明者のデータ、関係者からの聞き込み、防犯カメラの映像などを活用して行方を追跡します。
また、夜逃げ後に何らかの理由で警察官による職務質問を受けた際、過去のデータと照合され、捜索対象者であることが判明する可能性も十分にあります。
さらに、稀ではありますが、警察は捜索対象者の情報を公開したり、メディアを通じて情報提供を呼びかけたりすることがあり、一般市民からの目撃情報が寄せられることで、居場所が特定されることもあります。
引越し業者・夜逃げ業者から個人情報が漏れる可能性
夜逃げを円滑に進めるために、通常の引越し業者や、夜逃げを専門とする業者を利用することを検討する人もいるかもしれません。
しかし、これらの業者を介することで、かえって個人情報が外部に流出してしまうリスクが存在します。
一部の悪質な業者は、顧客の個人情報を他の業者や第三者に売却し、不当な利益を得ようとする可能性があります。
また、情報管理体制がずさんな業者を利用した場合、意図せず情報が漏洩してしまうことも考えられます。
さらに、夜逃げ屋の中には、高額な料金を請求するだけでなく、依頼者の弱みにつけ込み、更なる不利益をもたらすような悪質な業者も存在するため、安易な利用は非常に危険です。
このように、夜逃げは一時的に問題から目を背ける行為に過ぎず、実際には様々な経路で居場所が特定される可能性が非常に高いと言えます。
それだけでなく、法的な責任から逃れることはできず、むしろ状況を悪化させたり、新たなトラブルに巻き込まれるリスクも伴います。
夜逃げを考えるほど追い詰められた状況にあるならば、安易な行動に出る前に、弁護士などの専門家に相談し、法的な支援を含めた適切な解決策を探ることが、長期的に見て最も賢明な選択といえるでしょう。
夜逃げの5つのデメリット
遅延損害金が発生しつづけて借金の総額が増大する
借金問題を抱え、その返済から逃れるために夜逃げを敢行したとしても、借金そのものが消滅するわけではありません。
通常の借入契約においては、返済期日を一日でも過ぎると、その時点から遅延損害金が発生し始めます。
そして、この遅延損害金は、滞納している借金の元本に対して、契約時に定められた遅延損害金利率に基づいて日割りで計算され、元本に加算されていくため、時間が経過するほど借金の総額は加速度的に膨らんでいくことになります。
遅延損害金は、通常の借入利率よりも高い利率で設定されていることが一般的です。
金融機関や貸金業者にとって、遅延損害金は、債務者の返済遅延によって生じる損害を補填する意味合いを持つと同時に、早期の返済を促すための抑止力としての役割も担っています。
そのため、消費者金融のカードローンやクレジットカードのキャッシングなど、比較的金利の高い借入においては、遅延損害金利率も年率20.00%といった高水準に設定されているケースが少なくありません。
夜逃げによって数ヶ月、あるいは数年といった長期間にわたり返済を放置した場合、この遅延損害金の累積額は無視できないほど大きくなり、元々の借金額を大幅に上回る可能性すらあります。
債権者は、この増え続けた借金総額に対して、引き続き返済を請求する権利を有しており、夜逃げによって一時的に取り立てから逃れたとしても、根本的な解決には全く繋がらず、むしろ将来的に、より一層返済が困難な状況に追い込まれるリスクがあります。
夜逃げは、借金問題の解決策としては全く機能せず、むしろ問題を深刻化させる要因となることを強く認識しておく必要があります。
住民票を異動しないことによる不利益
夜逃げ後に、債権者に新たな居場所を知られることを極度に恐れるあまり、住民票を以前の住所地のままにしておくという選択は、一見すると追跡を逃れるための有効な手段のように思えるかもしれません。
しかし、この行動は、日常生活のあらゆる面において、広範囲にわたる深刻な不利益をもたらします。
住民票は、単なる住所の記録というだけでなく、行政サービスの提供、各種証明書の発行、そして社会的な信用を築く上での根幹となる情報です。
まず、行政サービスへのアクセスが著しく制限されます。
育児に関する手当金や保育サービスの利用、介護保険サービス、生活保護といった公的な支援制度は、原則として住民登録のある自治体において提供されます。
住民票を異動しない場合、これらのサービスを受けることができず、特に生活困窮に陥った際には、必要な支援を得られないという深刻な事態を招きかねません。
また、教育面においても大きな支障が生じます。学齢期のお子様がいる場合、住民票がないとその地域で学校に就学する手続きが非常に複雑になったり、就学自体が困難になったりする可能性があります。
これは、お子様の教育を受ける権利を侵害するだけでなく、将来の可能性を大きく狭めてしまうことにも繋がりかねません。
さらに、法的な側面からも、住民票の異動は義務付けられています。
住民基本台帳法では、新たな住所に住み始めてから14日以内に、転入の手続きを行うことが義務付けられており、正当な理由なくこの手続きを怠った場合、5万円以下の過料が科される可能性があります。
このように、住民票を異動しないことは、自身だけでなく、家族にも広範囲にわたる不利益をもたらし、社会生活を著しく困難にして、法的なペナルティを受ける可能性もあるため、非常に大きなデメリットとなります。
保証人に迷惑がかかる
もし借金をする際に保証人や連帯保証人を立てている場合、夜逃げによって返済が滞ると、その保証人や連帯保証人に債権者から請求されることになります。
保証人は、債務者が返済できなくなった場合に、代わりに返済義務を負う立場であり、特に連帯保証人は、主債務者と全く同じ返済義務を負い、債権者から一括での返済を求められる可能性もあります。
もし、保証人や連帯保証人が返済に応じることができない場合、その個人の預貯金、不動産、給与などの財産が差し押さえられるという、極めて深刻な事態に発展する可能性があります。
最悪の場合、保証人や連帯保証人個人の生活が破綻し自己破産に繋がる可能性も否定できません。
夜逃げによって借金を放置することは、自分自身の経済的な信用を失墜させるだけでなく、信頼して保証人になってくれた大切な人々の人生をも狂わせてしまう可能性があります。
そのため、夜逃げは、信頼して保証人になってくれた人々の人生にも大きな影響を与え、人間関係を損なうという重大なデメリットがあります。
したがって、夜逃げを検討する前に、保証人や連帯保証人に与える影響を深く考慮する必要があります。
銀行口座から預金を引き出すことができなくなる
銀行系のカードローンなどを利用している場合、長期間にわたって返済を滞らせると、金融機関によって銀行口座が凍結される可能性があります。
銀行口座の凍結とは、金融機関が口座の利用を一時的に停止する措置であり、預金の引き出し、口座からの自動引き落とし、他口座への振込などが一切できなくなります。
口座が凍結されると、公共料金(電気、ガス、水道)、携帯電話料金、家賃、クレジットカードの引き落としなど、生活に必要な支払いが滞ってしまうため、サービスが停止したり、遅延損害金が発生したりする可能性があります。
また、給与や年金などが凍結された口座に振り込まれたとしても、引き出すことができず、日々の生活に必要な資金を確保することが極めて困難になります。
さらに、凍結された口座は、その後強制的に解約されるケースも少なくありません。
最悪の場合、口座そのものが強制的に解約されることもあり、その後の金融取引にも悪影響を及ぼす可能性があります。
このように、夜逃げによって借金問題を放置することは、金融機関との信頼関係を損なう行為であり、口座が凍結されてしまうと、深刻なデメリットを受ける可能性が高いでしょう。
詐欺罪に問われるリスクもある
借金を返済しないという行為そのものは、民事上の債務不履行に該当しますが、原則として刑法上の罪に問われることはありません。
しかし、夜逃げに至るまでの経緯や、借入時の状況によっては、詐欺罪という刑事犯罪に問われる可能性はゼロではありません。
最初から返済する意思がないにも関わらずお金を借りたり、嘘の情報を伝えて借入契約を結んだり、一時的にでも返済を遅らせるために虚偽の理由で支払い条件の変更を求めたりする行為は、人を欺いて財産上の利益を得たとして、詐欺罪に問われる可能性があります。
また、時効による借金の消滅を意図的に狙って借り入れを行う行為も、詐欺罪とみなされる場合があります。
詐欺罪で有罪となった場合、懲役刑や罰金刑が科される可能性があり、夜逃げによって借金から逃れようとした結果、より重い法的責任を問われるおそれがあります。
夜逃げせずに借金問題を解決する方法
債務整理を検討する
借金問題から解放され、生活を再建するための正当な手段として、「債務整理」を検討することが非常に重要になります。
債務整理とは、法律に基づいた手続きを通じて、借金を減額したり、支払いを免除してもらったりすることで、経済的な立て直しを図る方法の総称です。
個々の状況や借金の状況に応じて、主に以下の3つの方法があります。
- 自己破産
- 個人再生
- 任意整理
まず、自己破産は、裁判所の決定を経て、抱えている借金のほとんどの返済義務を免除してもらう手続きです。
自己破産の手続きを行うことで、夜逃げをすることなく、借金という重荷から解放され、新たな生活をスタートさせることが可能になります。
自己破産には、借金がほぼ全て免除されるという大きなメリットがあります。
他方で、価値のある財産(不動産、自動車、貴金属など)が処分され、債権者への配当に充てられる、信用情報機関に事故情報が登録される(いわゆるブラックリストに載る)、官報に住所・氏名が掲載される、一部の職業や資格が一定期間制限されるといったデメリットも存在します。
次に、個人再生は、裁判所の認可を得て、借金総額を大幅に減額し、原則として3年〜5年で分割返済していく手続きです。
自己破産とは異なり、住宅ローンが残っている自宅を手放すことなく、他の借金を減額できる可能性がある「住宅ローン特則」という制度がある点が大きな特徴です。
借金総額が大幅に減額されるため、毎月の返済負担を軽減することができ、生活の立て直しを図ることが可能です。
ただし、減額された借金を計画的に返済していく必要があり、一定の収入があることが条件となります。
そして、任意整理とは、裁判所を介さずに、債務者と個々の債権者が直接交渉し、将来利息のカットや返済期間の延長などについて合意を目指す手続きです。
自己破産や個人再生に比べて手続きが比較的簡便であるというメリットもあります。
しかし、元本自体の減額は原則として難しく、交渉がまとまらない場合は解決に至らない可能性もあります。
時効の援用を検討する
最後に借金の返済を行ってから5年以上が経過している場合、その借金は消滅時効を迎えている可能性があります。
消滅時効とは、債権者が一定期間権利を行使しないことで、その権利が消滅する制度です。
ただし、時効が自動的に成立するわけではなく、「時効の援用」という手続きを債務者自身が行う必要があります。
時効の援用とは、債権者に対して、時効が成立したので借金の返済義務はないという意思表示を明確に伝えることです。
ただし、時効が完成しているかどうかの判断は難しいケースもあるため、まずは弁護士などの専門家に相談したうえで対応してもらうようにしてください。
夜逃げする前に利用したい無料の相談窓口
借金問題に強い弁護士
借金問題が深刻化し、夜逃げを検討するほど追い詰められている状況であれば、まずは借金問題に強い弁護士に無料で相談してみることを強くおすすめします。
弁護士は、法律の専門家として、個々の状況を詳細に分析し、最適な解決策を提案してくれます。
債務整理(自己破産、個人再生、任意整理)の手続きや、時効の援用など、法的な手段を用いて借金問題を根本的に解決するためのサポートを受けることができます。
債権者との交渉や、複雑な裁判所の手続きを代行してもらえるため、精神的な負担を大幅に軽減することも可能です。
各自治体の相談窓口
お住まいの市区町村役場など、各自治体が運営する相談窓口も、無料で借金問題について相談できる窓口の一つです。
定期的に弁護士や司法書士などの専門家による法律相談会を実施している場合があり、地域住民であれば誰でも利用することができます。
生活困窮に関する相談も可能であり、借金問題と合わせて、生活再建に向けたアドバイスを受けることができるでしょう。
国民生活センターや消費生活センター
国民生活センターや各地の消費生活センターは、消費者トラブル全般に関する相談を受け付けており、多重債務などの借金問題についても無料で相談することができます。
「消費者ホットライン」に電話をかけることで、最寄りの消費生活センターに繋がります。
借入れ状況や滞納状況などを伝えることで、問題解決に向けたアドバイスや、適切な専門機関の紹介を受けることができます。
法テラス(日本司法支援センター)
法テラスは、国が設立した法的トラブル解決のための総合案内所です。
借金問題をはじめとする様々な法律相談を無料で受けることができ、同じ内容であれば3回まで相談が可能です。
「どこに相談すれば良いかわからない」という場合に、適切な情報を提供してくれます。
また、経済的に余裕がない場合には、無料の法律相談や弁護士費用の立て替え制度(民事法律扶助)を利用できる場合があります。
夜逃げについてのQ&A
夜逃げしたら住民票はどうなりますか?

夜逃げをして住民票を異動させると、債権者は住民票や戸籍を確認して調べることができます。
また、夜逃げして住民票を異動させないでいると、居住の実態がないことを元の市区町村が確認した場合には、住民登録が職権で抹消される可能性があります。
夜逃げする家の特徴とは?

- 家賃を滞納している
- 借金の返済に苦労している
- 生活に必要な食料や衣類が不足している
- 近隣の人が姿を見かけない など
夜逃げ屋は実在?何をするの?

夜逃げ屋と呼ばれる業者が存在していることは事実ですが、その実態は法的に曖昧な部分が多く、利用には慎重な判断が求められます。
高額な費用を請求されたり、違法な業務によって法的なトラブルに巻き込まれたりするリスクがあります。
まとめ
「夜逃げ」とは、借金、家賃滞納、人間関係のトラブルなど、何らかの深刻な問題を抱えた人々が、誰にも告げることなく、夜間や人目を避けてひそかに住居から姿を消し、生活拠点を移す行為を指す言葉です。
夜逃げ自体は違法ではありませんが、夜逃げに至るまでの経緯や、夜逃げ後の行動によっては、法的な問題が生じる可能性があります。
借金問題は遅延損害金によって増大し続け、住民票を移せないことで社会生活に支障が生じ、保証人に迷惑をかける可能性もあります。
夜逃げを検討するほど追い詰められた状況にあるのであれば、安易な行動を起こす前に、まずは弁護士に相談してください。
債務整理をはじめとする様々な法的手段を用いることで、夜逃げをせずに借金問題を根本的に解決できる可能性があります。
デイライト法律事務所では、破産再生部を設けており、借金問題に精通した弁護士が皆様を強力にサポートしています。
借金に関するご相談は初回無料でご相談いただけます。
当事務所は福岡を拠点にしながら、東京にもオフィスがあり、ZOOMやスカイプを活用して、全国に対応を行っておりますので、まずは一度ぜひご相談ください。