盗撮の慰謝料|示談金の相場・罰金について刑事弁護士が解説

  
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盗撮とは

盗撮は、刑法において犯罪として定められているわけではありません。

各都道府県において、迷惑行為防止条例が定められており、その中で盗撮を禁止するとともに罰則が設けられています。

それでは、盗撮とは具体的にどのような行為のことを指すのか、福岡県の迷惑行為防止条例を参考に見ていきます。

福岡県の迷惑行為防止条例において禁止されている盗撮とは、次のようなものです。

福岡県迷惑行為防止条例第6条

2項1号
通常衣服で隠されている他人の身体又は他人が着用している下着を〜写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器を用いて撮影すること
2号
衣服等を透かして見ることが出来る機能を有する写真機等の当該機能を用いて、衣服等で隠されている他人の身体又は他人が着用している下着の映像を〜撮影すること
3号 前二号に掲げる行為をする目的で写真機等を設置し、又は他人の身体に向けること

3項1号
公衆便所、公衆浴場、講習が利用することができる更衣室その他の講習が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所で当該状態にある人の肢体を〜写真機等を用いて撮影すること
2号 前号に掲げる行為をする目的で写真機等を設置し、又は他人の身体に向けること

このように、多くの人が盗撮ではないかと考えるようなものは、条文のどれかに該当することになります。

その他、事例として多くはありませんが、全身を写すような形で無断撮影をした場合も、その態様等によっては、「卑猥な言動」として同じく迷惑行為防止条例の処罰対象となることもあります。

 

 

慰謝料とは

慰謝料とは、被害者が被った精神的苦痛に対して支払われるお金のことを指します。

よく耳にするのは不貞に対する慰謝料や交通事故の被害に遭った際の通院慰謝料などではないかと思いますが、盗撮の被害に遭った被害者も、当然精神的苦痛を被っていると考えられていますので、同じく慰謝料を受け取る権利があります。

 

 

盗撮の示談金(慰謝料)の相場

慰謝料の傾向

それでは、盗撮の示談金(慰謝料)の相場はどのような傾向にあるでしょうか。

裁判上で認められる金額の相場ではなく、示談交渉の中での相場ではありますが、盗撮の示談金(慰謝料)は、近年の性犯罪厳罰化の方向性を受けて、やや高額化の傾向にあるように感じられます。

基本的には現在の相場から大きく落ち込むことはないように思います。

 

被害者が未成年の場合

被害者が未成年の場合、示談交渉の窓口は、被害者の親権者となることがほとんどです。

親として当然の感情ですが、自分の子供が被害に遭ったことに憤り、強い怒りを持つ方が多くいらっしゃいます。

そのため、被害者の方が求める示談金(慰謝料)も成人が被害に遭った場合と比べて高額となるケースが往々にしてあります。

まだ精神的に未熟な部分がある未成年者の被害であることも考えると、相場としても、成人の場合よりはやや高くなると思って頂いた方がよいでしょう。

 

盗撮未遂の場合の慰謝料

カメラを起動して差し向けたけれども、実際には動画や画像を撮影することは出来なかったという場合、盗撮は未遂ではないかと考えられる方がいらっしゃるかもしれません。

しかしながら、先ほどの定義で見たとおり、各都道府県の迷惑行為防止条例においては、「写真機等を差し向けること」自体が禁止されています。

そのため、カメラを差し向けたけれども、実際には動画や画像を撮影することが出来なかったという状態は、法的には盗撮未遂ではなく、既遂として処罰対象となってしまいます(ただし、本稿では理解しやすいようにあえて「盗撮未遂」として記載をします。)。

また、動画や画像が撮影されていなかったとしても、被害者の立場としては、公共の場で見られたくない部分を撮られそうになったという精神的苦痛が発生しています。

そのため、裁判ではともかく、示談交渉の中では、盗撮未遂と思っている場合でも、示談金(慰謝料)の相場が大きく変わることは無いように思います。

 

盗撮の慰謝料の裁判例

盗撮の慰謝料を請求した裁判例は、ほとんどありません。

特殊な事例ではますが、次のような裁判例が存在します。

事例 令和2年1月29日東京地裁

無店舗方性風俗特種営業を営む風俗店において、接客従業者として勤務していた者(原告)が、サービスを受けた客(被告)から盗撮被害にあったとして訴訟を提起した事案。被告は一貫して盗撮の事実を争っていた。

判決
慰謝料として50万円を認定。
解説

判決理由の中では、①盗撮した動画を保存するためのSDカード等が挿入されていたはずのカメラから、SDカード等が見つからなかったことから、2時間にも及ぶ性的サービスの内容を記録した媒体がどこかに存在するのではないか、今後、インターネット上に流出・公開されるのではないかといった恐怖、不安を感じること、②盗撮の場所、時間、行為態様、撮影された動画内容、盗撮が発覚した後の経緯、接客従業者が風俗店を退店していることなどを挙げて、上記の慰謝料を認定しています。

この裁判例は、性風俗店による長時間の性的サービスを行っている場面を盗撮し、更には記録媒体の所在が判然としないという状況、最後まで盗撮の事実を否定し続けていたという状況など、一般的な盗撮の事案とは異なる点が多く存在しますので、慰謝料の基準とはなり得ません。
しかしながら、極めて悪質な事例では、このような判決が出る可能性もあるということは頭に入れておく必要があります。

 

住居侵入して盗撮した場合の慰謝料

盗撮をするために、他人の敷地や部屋に侵入した場合、各都道府県の迷惑行為防止条例違反だけでなく、住居侵入罪(刑法第130条)も成立する可能性があります。

街中での盗撮と比べた場合、プライベートな領域に侵入して行われる盗撮の方が悪質性は高く、住居侵入の被害に遭ったという事実も併せて慰謝料を考えると、相場も少しだけ高くなると考えられます。

 

 

盗撮の罰金の相場

罰金の法定刑と傾向

それでは、盗撮をしてしまい、刑事処分を受ける場合、どのような処分が下されるのでしょうか。

福岡県の迷惑行為防止条例では、盗撮に関する法定刑は、1年以下の懲役刑か100万円以下の罰金刑とされています(同条例11条1項)。

初犯で刑事処分を下すという結論となった場合、ほとんどのケースで罰金刑が選択されます。現在では概ね40万円前後の罰金刑となることが多いように感じます。

同種の前科前歴があると、徐々に刑事罰は重くなっていきます。

以下では、同種前科前歴を有する被告人に対する迷惑行為防止条例違反の罪(痴漢・盗撮)の量刑に関する統計を示しますが、法定刑が現在よりも随分と軽い時期のものがほとんどですので、現在であればより重い刑が言い渡される可能性があります。

参照:第一東京弁護士会刑事弁護委員会 量刑調査報告集

 

盗撮未遂の場合の罰金

盗撮未遂と思える類型の場合も、既に解説したとおり、法律上は既遂として処罰されます。

そして、実際に動画や画像が撮れているかどうかは刑事処分の決定において、ほとんど意味を持たないと考えておいた方がよいでしょう。

そのため、罰金の相場としても特に変化はなく、初犯で処罰を受ける場合は40万円程度、それ以降は70万円以上となることもあり得るということになります。

 

 

盗撮で慰謝料の請求をされたら

示談のメリット

盗撮を行ってしまい、被害者から慰謝料の請求を受けた場合に、支払うべきか否か悩まれる方がいらっしゃるかもしれません。

そこで、加害者側の立場で示談をすることのメリットを紹介しようと思います。

 

刑事処分が軽くなる可能性がある

被害者が存在する犯罪は、刑事処分の決定において、被害者の処罰意思が考慮されることが多々あります。

各都道府県によって多少運用が異なる部分はありますが、盗撮の場合も同様に被害者が加害者を許しているかどうかという点が処分に大きく影響するといえます。

すなわち、示談をして被害者に許してもらえたならば、不起訴となる可能性や、少しでも軽い刑事処分としてもらえる可能性が出てくるということです。

前科がつくかどうか、罰金刑なのか懲役刑なのかということは加害者にとって最大の関心事でしょうから、この点は加害者側にとって示談をすることのメリットといえるでしょう。

 

身体拘束を受けている場合、釈放される可能性がある

迷惑行為防止条例違反の事件で長期間身体拘束をされる例はさほど多くはありませんが、身体拘束を受けている理由の一つとして、被害者と接触して証拠隠滅を図るおそれがあるということが挙げられがちです。

被害者と示談をした場合、加害者にとって有利な証拠が既に収集できており、それ以上被害者に働きかける必要性が全くなくなりますから、身体拘束の理由をなくすことが出来ます。

そのため、もしも身体拘束を受け続けている場合は、示談を行うことで日常生活に戻れる可能性があるということになりますから、この点も加害者側にとって示談をすることのメリットとなります。

 

民事上の問題を残さずに解決できる

盗撮を行ってしまった場合、刑事責任を負うことは当然です。

そして、民事上も盗撮は不法行為と評価できますから、慰謝料を中心とする損害賠償を行う責任が生じることになります。

示談をせずに刑事事件を終えてしまう場合、民事上の責任は残ったままですから、刑事罰を受けた後に被害者から損害賠償請求をされる可能性が残ってしまいます。

そのため、刑事事件の中で示談を済ませておくことで、紛争を一体的に解決することができ、再起に向けて集中することができるという点も加害者側が示談を行うメリットとして挙げられます。

 

 

盗撮の示談を弁護士に依頼するときの費用

盗撮の示談を弁護士に依頼される場合、身体拘束を受けているのかどうか、相手方が未成年なのかどうか等、必要となる弁護活動の程度に応じて弁護士費用は異なります。

身体拘束を受けているような場合、短期間優先的に弁護活動を行う必要があり、弁護士の労力も増すため、身体拘束を受けていない場合と比べて費用が高くなるのが一般的です。

また、刑事事件についての弁護士費用は、日頃からどの程度注力しているか否か等の差異もあり、各法律事務所によって金額が異なります。

そのため、具体的な費用については相談の際に確認されることをお勧めいたします。

明朗会計の法律事務所であれば、ご相談時にお願いされるとお見積りを出してくれるでしょう。

合わせて読みたい
弁護士費用

 

まとめ

盗撮を行ってしまった場合の慰謝料相場や罰金の相場を解説しましたが、これらはあくまで参考として考えるようにしてください。
一番大事なのは盗撮をしてしまった事実としっかり向き合い、被害者に誠心誠意謝罪をすること、二度と再犯を行わないよう取り組んでいくことです。
目先の刑事処分を軽くすることだけでなく、再犯をしないよう一緒に考えていくことも弁護士の仕事の一つです。
盗撮をしてしまったという方は、まずはお気軽に弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

 

 


なぜ刑事事件では弁護士選びが重要なのか

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盗撮についてよくある相談Q&A