民事再生とは

民事再生とは、債権者の多数の同意を得、かつ、裁判所の認可を受けた再生計画を定めること等によって、債務者の事業又は経済生活の再生を図る手続を言います(民事再生法1条)。

裁判所が関与する再建のための手続としては、他に会社更生もありますが、民事再生は原則として、会社の経営陣が交代せずに会社の再建を図ります。

また、会社更生は株式会社のみが対象となりますが、民事再生はそのような限定はありません。

そのため、会社更生よりも現経営状態に与える影響は小さいといえます。

もっとも、後述するように、民事再生には注意点があり、破産と比べて成功率は決して高いとはいえません。

 

 

民事再生の流れ

民事再生は、債務者等が裁判所に申立てを行い、裁判所が再生手続開始決定を下すことで始まります。

その後、債務者の資産調査や債権届・債権調査などが行われます。

そして、再生計画案が作成されます。

その再生計画案が債権者によって可決され、裁判所の認可を受けることで再生計画案が正式に成立します。

申立て・保全処分の決定

民事再生の申立てから開始決定までの間に、情報を嗅ぎつけた債権者が強硬に債権回収を行う可能性があるため、実務上、弁済禁止の保全処分を発令する。

監督委員の選任

通常、倒産手続に精通した弁護士を監督委員に選任。

債務者は財産の処分、借り入れなどについて監督委員の同意を得なればならない。

再生手続開始決定

「再生計画案の作成若しくは可決の見込み又は再生計画の認可の見込みがないことが明らかであるとき」など、一定の場合申立てが棄却される。

申立てから開始決定まで通常は2週間程度。

債権届出

債権者が再生手続に参加するためには、裁判所が定める期間内に債権届出を行うことが必要

財産評定・財産状況の報告

申立人(再生会社)は、裁判所に対し、財産価額の評定や財産状況の報告を行う。

債権認否書の提出・債権調査期間

申立人(再生会社)は、債権届出があった債権の認否を行い、その結果を裁判所の提出する。

再生計画案の作成

申立人(再生会社)は、裁判所に対し、再生計画案を作成して提出する。

債権者に対する「弁済率」は、最低限、仮に再生会社が倒産した場合の配当を上回るものでなければならない。

再生計画案の決議・認可

再生計画案について債権者集会で決議を行う。

可決には次の2つを満たす必要がある。

  1. 議決権者の過半数の同意(頭数要件)
  2. 議決権の総額の2分の1以上の議決権を有する者の同意(議決権数要件)

申立てから認可まで通常は5か月程度

再生計画の遂行

再生計画が可決すると、弁済がスタート。

監督委員は3年間、再生計画の遂行を監督する。

 

 

民事再生の注意点

社長が退任する場合もある?

民事再生は、会社の事業の再生を図る手続ですので、通常の場合、経営陣の変更はありません。

しかし、民事再生は、債権者の多数の同意がなければ手続を進めることができません。

そのため、債権者の納得を得るために、社長の退任などが必要となる場合があります。

 

民事再生のハードルは高い?

民事再生は、次のいずれかに該当する場合、開始決定が出されることなく棄却されてしまいます(民事再生法25条)。

  1. 再生手続の費用の予納がないとき。
  2. 裁判所に破産手続又は特別清算手続が係属し、その手続によることが債権者の一般の利益に適合するとき。
  3. 再生計画案の作成若しくは可決の見込み又は再生計画の認可の見込みがないことが明らかであるとき。
  4. 不当な目的で再生手続開始の申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでないとき。

また、開始決定がなされても、再生手続廃止、再生計画不認可又は再生計画取消しの決定が確定した場合裁判所は職権で破産手続きに移行させることができます(民事再生法250条)。

このようなことから、民事再生のハードルは決して低くはないといえるでしょう。

 

一律に弁済が禁止される

民事再生は、一定額以下の少額債権を除き、債権者への弁済が禁止されていまします。

この債権者には、金融期間だけでなく、商取引による債権者も含まれます。

したがって、取引先には「倒産した」とのマイナスイメージが生じるでしょう。

取引先の信用を失い、取引の終了などによって企業価値の著しい毀損も予想されます。

 

 

民事再生が成功する3つのポイント

POINT1経営戦略を策定する

民事再生は、会社を「再建」するために行うものです。

そのためには、負債の問題をクリアすれば、企業が成長し、発展する見込みがなければなりません。

わかりやすく言えば、「儲け」を出すことができるか否かが重要です。「儲け」を出せなければ、ただの延命措置にすぎず、周囲に迷惑をかけるだけになるでしょう。

「儲け」を出す方法は2つです。

一つは売上を増加させることです。

もう一つは、コストを削減することです。

売上の増加やコスト削減のためには、まずは自社の置かれた環境を冷静に分析しなければなりません。

環境分析においては、上述した企業価値の毀損も考慮すべきです。

そして、企業価値の毀損を克服し、効果的かつ具体的なアクションプランを策定することがポイントとなります。

 

POINT2バランスのよい再生計画案を作成する

再生計画案は、倒産しかけた会社について、どのようにして再生させるかを策定したプランです。

この再生計画案が裁判所や債権者に認められるかによって、民事再生の成否が決まります。

そのために、債権者の同意を得られるように、債権者にも配慮した計画を策定すべきです。

具体的には、会社が破産するよりも、民事再生の方が多くの額を回収できるようにすることがポイントとなります。

他方で、無理な返済計画だと実現可能性がないと判断されるため、実現可能な計画とすべきです。

 

POINT3資金繰りの問題を解決する

民事再生は、上記のとおり、申立から再生計画が認可されるまで、通常5ヶ月以上を要します。

その間、通常、信用取引は期待できず、現金決済を覚悟しなければなりません。

金融機関による融資もほぼ不可能なため、資金繰りの問題が浮上します。

この問題を解決するために、通常はスポンサーを探す必要があります。

したがって、民事再生を申立てる場合、事前にスポンサーについて検討しておくべきです。

 

 

事業再生に必要な費用とは?

民事再生は、通常、破産手続よりも高額な費用が必要となります。

民事再生に要する費用は、裁判所に納付する額(予納金)と申立ての代理人となる弁護士に支払う費用の合計となります。

 

裁判所に収める額

福岡地裁の場合は、次の額が予納金の基準額となります。

負債総額 予納金額
債務者申立て 法人又は事業者である自然人 事業者ではない自然人
負債額 申立時の納付額 追加納付額 申立時の納付額 追加納付額
~5千万円 100万円 50万円 50万円 25万円
~1億円 150万円 75万円
~3億円 200万円 100万円 75万円 35万円
~5億円 250万円 125万円 100万円 50万円
~20億円 300万円 150万円 125万円 60万円
~50億円 350万円 175万円 150万円 75万円
~100億円 400万円 200万円 175万円 85万円
100億円を超えるもの 500万円以上 250万円以上 200万円以上 100万円以上
債権者申立て 1000万円以上(分納不可) 500万円以上(分納不可)

注1 区分された負債額内における予納金の最低額を示すものであり、事案の複雑さや会計帳簿の整備具合、債務者の具体的近況(後に判明したものを含む。)により増加することがある。
注2 追加納付額の納付時期については、再生手続開始決定に定める再生計画案の提出期限までとする。なお、監督委員による再生計画の履行監督の必要性が乏しい場合は、追納を命じないこともある。
注3 監督委員に否認権を行使する権限を付与する場合(民事再生法56条1項)には、上記金額に加えて、別途そのための手続費用分の予納が必要となる

 

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